梅雨のジメジメとした日々
バンドの方向に迷ってた私へ
あれから二カ月がすぎました
お元気ですかと聞いてみます
初夏のサンサンとした日々
バンドの意味に迷ってた私へ
あれから一カ月がすぎました
お元気ですかと聞いてみます
真夏のジリジリとした日々
ノルマ五枚の路頭に迷う私は
父母妹犬
一枚余りました
どうしたらいいですか
どうしたらいいですか
作詞作曲、私『八景迷子』
──ライブハウスは飲食店だからジミヘンは無理なのでは?
「そうだよね」
──ふたりはまだ5歳だからライブハウスは無理なのでは?
「そうだよね」
あと三枚。
がんばってビラを作ってみたけど私コミュ症だから配るとか無理だった。
「どうしよう」
真っ暗闇の中で塞ぎ込む私。
なにも成長していなかった。
『きみ、ここでよく弾いてるの?』
「え?は、はい。えっ?」
ひとりぼっちの私に声がかけられる。
振り返ると深く濁りきった眼のお姉さんが覗く。
手には紙パック?
──もしかしてヤバい人かも。
ひき気味の体勢にうつると、お姉さんは顔色が悪くなり膝が折れる。
「えっ!な、なに!?」
──倒れた!
水が欲しいみたい。
──尋常じゃない!
水を買いに急ぎ立つ。
お姉さんは復活してまたお酒を飲んでいる。
──ヤバい人を助けてしまった。
さっきからひとり石像に話しかけてる。
──三秒後にダッシュで逃げよう。
うん。
三秒後、私は逃げることに失敗し、ついた嘘に本気で心配された。
思ったよりまともな人だった。
斯々然々で丸々旨々なこれまでのできごとを辛々切々と伝える。
お姉さんは泣きながら私の話を聞いてくれた。
──いい人だ!
お姉さんも自身の話をしてくれた。
お酒とベースは命よりも大事。
お酒で将来の不安を忘れる。
──ヤバい人だ!
私も将来こうなるのかな。
──私ならギターも弾けない。
……。
気がつくとお姉さんがビラを配っている。
周りにはなぜかアンプ機材もある。
『あっひとりちゃん起きた?今からライブするよ』
ライブ?
誰が?
私が?
むりむりむり!
お姉さんは私にギターを持たせる。
お姉さんは私の足元に座る。
お姉さんはひとりごとを呟く。
私はギターを鳴らす。
お姉さんはうまかった。
それに比べて私は
周りが怖くて目をつむり、
周りが怖くて耳をふさぎ、
真っ暗闇の中泣いていた。
『がんばれー』
不意に聞こえてきた応援の声。
しんと静まりかえった私の中。
私は目をひらく。
私は耳をすます。
周りはみんな私を見ていた。
私だけが私を見ていなかった。
私はひとりギターを弾く。
──ライブって何だろう。
-
──ライブはライブ。
-
『今夜はやけ酒だ……』
-
わからない。