文化祭でライブ。
小さい頃から夢見たもの。
中学では結局1回もできなかった。
妄想では1000回以上してるけど。
じゃあいいかな。
私の中でまた諦めの声が聞こえる。
何もせず現状維持。
むしろ一歩後退。
ため息がひとつ漏れる。
私の手元には夢を叶えるものがある。
持ち上げることができないほどとても重たいペラ紙1枚。
そこにほんの数文字書くだけなのに。
私の手は動かない。
何がそんなに私をたじろがせるのか。
バンドはもう結成した。
ライブはもう経験した。
中学の頃とは比べ物にならないほど夢に近づいた。
私のことを小さな私に話しても信じてもらえないだろう。
それぐらい私は大きくなった。
それでもなんで動けないのか。
私はその日、ライブハウスに行くことができなかった。
作詞作曲、私『ナサケナイワタシ』
「後藤さん、昨日はどうしたの?」
次の日のお昼休み。
喜多さんとのギターの練習中に尋ねられる。
「うぇっ、き、昨日ですか。なんだったかなぁ。その、あんまり体調が良くなかったような」
しどろもどろに、嘘でも本当でもない曖昧な返事をする。
今朝のスマホには珍しく通知があり、虹夏ちゃんからも同じことを訊かれてた。
同じような返事をして心配された。
埋まりたくなった。
「そう……。そういえば、後藤さんのクラスは文化祭、もう何するか決めた?」
喜多さんも珍しく、奥歯に物が挟まったような喋り。
「ぶ、文化祭ですか?えっと確か、め、冥途喫茶、だったような……」
「メイド喫茶?後藤さんメイド服着るの?」
「き、着るようなぁ、着ないようなぁ」
「着るのね!絶対見にいくわ!」
さっきまでとの雰囲気とは一点、喜多さんは抱えるギターをジャカジャカ鳴らしてキャーと興奮した様子。
「そ、そんなことより、喜多さんのクラスは何をするんですか?」
「私?私のところはドラマを撮影してそれを流すの。だから文化祭中はずっと後藤さんのそばにいれるわ!」
「それは、その、あんまり……」
キターンっと圧が、すごい何か圧を感じる。
イカロスの翼のように溶けてしまいそうだ。
その後、喜多さんから謎の圧力を感じながらも予鈴のチャイムが鳴り、その場はお開きとなった。
ホームルームでは昨日に引き続き文化祭の準備。
なんと裁縫の得意な子たちがメイド服を人数分自作するらしい。
もうサボることはできなくなった。
『2日目のステージ楽しみだね』
仲の良い2人が話し合ってる。
『クラスの誰かがライブしたらわたし惚れちゃうな〜』
……。
最後にみんなと遊んだのはいつですか?
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けっこう前
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おぼえてない