酔っ払いのお姉さんはそれだけ言って駅の方に向かった。
酔いが冷めたからもう一回飲んでくるらしい。
今度一緒にお酒飲もうねと誘ってくれたが未成年だからと断った。
ちなみに電車賃が足りなかったみたいなのでお金を貸した。
お金がないのにどうやって飲むんだろう。
そして私は目的地に辿り着く。
下北沢の一角に潜むライブハウス『STARRY』。
あの春の日。
たしかギターボーカルの喜多さんが抜けて。
ドラムとベースのリズムバンドになりかけて。
それでも虹夏ちゃんは諦めなくて。
公園にひとり歌っていた私を見つけてくれたことで繋がった居場所。
あの時虹夏ちゃんもこんな気持ちだったのだろうか。
私が最も避けていたこと。
私が最も望んでいたこと。
それはかくれんぼだと思っていた。
でも違った。
私の最初の記憶はかくれんぼではなかった。
最初の記憶。
私は思い違いをしていた。
私が悩んでいたのはかくれんぼではなかった。
私が初めて拒絶したこと。
私が初めて期望したこと。
私の最初の記憶はこの指とまれだった。
わたしがやりたかったこと。
それはみんなとすることだった。
最初は不思議だった。
なぜそれがやりたいのかをただ考えていた。
気がつくとそれは終わっていた。
私はまた不思議に思った。
それはやりたいことではなくなったのだ。
私は不思議だった。
ただ考えていた。
ずっと考えて。
そして選ぶ機会を失った。
私は選ぶことができなかった。
やりたいことをするのかしないのか。
それ以降も同様に。
いつしか考えることをしなくなった。
でも選ぶことを知らなかった。
やったことがなかったから。
だからただ待っていた。
それが終わるのを。
やりたいことが。
やりたいことではなくなるまで。
私の中のわたしに言い訳をして。
断られたくない。
群れたくない。
失敗したくない。
恥ずかしいから。
でも本当は。
選ぶことをしたことがなかったから。
ただ待っていた。
ずっと待っていてもいいことは見つからなかった。
私はずっと逃げている。
でも何から逃げているのかわからなかった。
もし言い表すなら。
漠然とした恐怖から。
でも考えてみたらすぐわかった。
それは全責任を負う不安だった。
いいことを見つけるには。
私がわたしである為には。
私は選ばないといけない。
したいことをするのかしないのか。
その場の流れに乗るのではなく。
私から。
だから私は『STARRY』の扉を開けた。
「あ、あの、い、一緒にやってほしいことがあるんですけど!」
──私すごい!
みんなって誰ですか?
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仲間
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友だち
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同期
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同僚
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わからない