私は全生命力を使って太陽から逃げだした。
音を超え、光を超えて。
その速さは希望すら超えていた。
──リニアはもっと速い。
「できるのはもっと遅いからいいの」
お気に入りの場所で私は悲観的な私といつも通りに会話する。
これでいい。
私なんかが。
ギターヒーローに。
喜多さんになるなんて。
背負うギターはもう取りだせなかった。
──でも話しかけることはできた。
論理的な私が復活する。
「そうだね」
──でもそれだけ。
悲観的な私は答える。
それだけ。
それだけ?
かくれんぼができない私が。
見つけられない私が。
この指にとまれない私が。
それだけ?
話しかけることができた。
私なんかが。
私でも。
それが喜多さんの力を借りたとしても。
──じゃあこれで満足?
論理的な私はまた確認する。
──でも。
悲観的な私はうつむく。
──話しかけられたから。
私なんかはそれで満足?
「でも」
もう一度話しかけるのはもっと難しい。
いきなり話しかけられて。
突然なヒューマンビートボックス。
逃げだして。
もう一度。
私はなんて言えばいいのか。
──怖い。
怖い。
「怖い」
やっぱりこの指にとまるのは怖かった。
──諦めるの?
論理的な私はまた確認する。
「諦めるのは悪いの?」
頑張ったのに。
こんなに頑張ったのに!
悲観的な私は叫ぶ。
──頑張ったらいいの?
──頑張ったら偉いの?
わからないよ!
私は叫ぶ。
「頑張ることなの?」
論理的な私はまた確認する。
違うの?
「さあ?」
わからないの?
「わからないよ。だって答えを考えるのは」
いつも私。
悲観的な私も。論理的な私も。
全て私。
モンスターも。ギターヒーローも。キタさんも。
全て私。
じゃあどうしたいか。
私はわかってるはず。
私ならどうする?
「私なら」
私は私の意思で喜多さんを探しだした。
喜多さんはどこにいるんだろう。
さすがに押入とか、ロッカーとか。
屋上とか、宇宙には隠れてないよね。
見つけられる場所にいるはず。
かくれんぼだから。
喜多さんの教室にはいなかった。
どこかに行ってしまったらしい。
もう帰ったのかな。
悲観的な私がつぶやく。
悲観的な私は私だ。
受け入れて批判する。
帰ってない。
これはかくれんぼだから。
だから。
キターン!!
いた!
「きっ喜多さん、今自分のバンドのギタボ探してて。
えっとその、喜多さんギター弾けるって聞いたので。
うっうちのバンドに興味ないですかっ!?」
喜多さんはこの誘いを断った。
でもメンバーと会う約束はできた。
──私すごい!
モンスターは復活した。
どの私が好きですか?
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全ての私
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ここにはいないよ