後藤さんすぐ調子に乗るのね。
ちょちょいのちょいですよぉ
私、後藤ひとりはこの度、結束バンドの作詞大臣に就任しました。
「どうしてこうなった」
──どうしてこうなった?
などてかくなりにけり(古語)
絶賛混乱中の私は大変貴重な1週間を無駄にした。
その間、手は勝手に動いてサインが完成していた。
「そういえば中学の頃に書いた作詞ノートがあったはず」
押入れから過去の私の詞を探す。
たくさんの教科書や参考書、ノートの中から目当てのものを見つける。
──呪詛?
過去の私はどうかしていたのだろうか。
悲観的な私ですら過去の私に理解が苦しんでいた。
──整理しよう。この曲は喜多さんが歌うもの。
「やっぱり明るい詞、青春ソングかな」
──暗い詞だったらいくらでも書けるけど。
明るくて優しくて可愛い喜多さんが歌う曲。
「私なんかが書けるだろうか」
正反対の私はため息がでる。
──喜多さんはどうな曲を歌う?
喜多さんなら。
「私は陽キャ!ナイトプールでサーフィンをする女!」
キタさんになりきるんだ!
「うぇーい!いっき!いっき!」
「皆バイプスあげてこぉ!」
「おにーさんテキーラ追加ぁ!」
キタさんが暴走した。
「違う。これは明るい人じゃなくてただのパリピだ」
散々やってようやく気づく。
──明るい人、私と違いすぎて想像がつかない。
「暗示じゃダメだ」
──喜多さんから連想してみよう。
「喜多さん。喜多さんといったらイソスタ」
──イソスタといったら渋谷。
──渋谷といったら花火大会。
花火大会といったら。
「今日渋谷行く人この指とーまれっ!」
お母さんから除霊を薦められた。
部屋にはたくさんの盛り塩とお札が飾る。
私にも念入りにお塩をすりこまれた。
おでこが痛い。
──青春ソングが難しいなら応援ソングにしてみよう。
塩の匂いが微かに香る部屋で私は発想を変える。
「応援ソングか」
無責任に現状を肯定するのはあまり好きじゃないんだけど。
できた詞はやっぱり薄っぺらい。
あと読んでてちょっとムカつく。
気分も悪くなる。
──こんな曲、落ち込んでる時に聴いたらさらに悪化する。
ほんとにこれでいいのだろうか。
答えは考えても見つからなかった。
塩は舐めるとしょっぱかった。
「とりあえずリョウさんに見せよう」
返信はすぐに来た。
誘われたのはここからほど近い喫茶店。
外観はおしゃれなカフェだ。
──そういえば店にどうやって入ればいいんだっけ?
外食なんて一度もひとりでしたことない。
なにか儀式があったはず。
「へっへい!大将やってるぅ?」
ここはアウェイになった。
ロックって何だろう。
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──ロックはロック。
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──ロックはひとりごと。
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「わからない」