リョウさんに誘われたカフェレストラン。
リョウさんはひとりもくもくとカレーを食べる。
……私は水を飲む。
リョウさんは水を飲む。
私も水を飲む。
リョウさんはカレールーに浸ったブロッコリーを食べる。
……私は水を飲む。
リョウさんは白いご飯をカレールーに混ぜて食べる。
…………私は水を飲む。
リョウさんは……
………………気まずい。
──なんで全然喋ってくれないんだろう。
私から切り出せばいいの?
──でもリョウさんがここに呼んだんだから喋り始めるのを待つべきでは?
わからない。
喋るのも苦手だけど沈黙も同じくらい嫌だ。
よく考えたらリョウさんとふたりきりなんて初めてだ。
話しかけるならどんなことだろう。
リョウさんは普段何してるのかな。
カレーは好きなのかな。
野草は詳しいみたいだけど。
だからブロッコリーを食べてたのかな。
肉はそんなに好きじゃない?
飲み物は水なんだ。
私はコーラが飲みたいな。
もう水がないや。
頼んだらもらえるかな。
でも私何も注文してない。
注文しないと追いだされるのかな。
何か注文しないと。
ぐるぐるぐる踊る思考に鬱々と真っ暗闇になる私の中。
──いったい何が正しいんだ。
話しかけるのか。
待てばいいのか。
──正しい答えなんてあるのだろうか。
私はどうしたらいいの?
私は何をしたらいいの?
私は──
『早く歌詞見せて』
「あっ、はい。お願いします」
気がつくとリョウさんはカレーを食べ終わっていた。
ひとしきりの悶着を終えてリョウさんは私が書いた詞を読んでいる。
──これでよかったのか。
よくはないけどバンドのことを考えると。
──バンドのことって?
私の新しい居場所?
──そのことを考えるとなんでこれでいいの?
みんなが望んでる、から。
それなら──
『ぼっち的にはこの詞で満足?』
「えっ。それは……」
私は答えることができなかった。
リョウさんはひとりごとを呟く。
楽しかったこと。
辛かったこと。
悲しかったこと。
虹夏ちゃんのこと。
これからのこと。
──リョウ先輩しっかりした人だったんだ。
リョウ先輩はすごくかっこいい人だった。
私は詞を書き直すことにした。
頼りになる虹夏ちゃん。
かっこいいリョウ先輩。
眩しすぎる喜多さん。
正反対の私。
私たちの結束バンドにふさわしい曲。
私なんかが見つけられるかわからないけど。
お礼を言って店をでる。
リョウ先輩が先に。
お金を払わず。
「あっ、えっ?リョウ先輩、お金」
『ごめん。今お金ないから奢って』
リョウさんの株は底を抜けた。
ロックって何だろう。
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『ロックはかっこいい』
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『ロックは私』
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『ロックはむずかしい』
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「ロックは█」