田舎者に冒険者は難しい?   作:おもちぴん様

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蛮族

 中世ヨーロッパの歴史の多くは"ヨソモノ"との戦いであった。

フン族然り、異教然り、ヴァイキング然り、遊牧民然り。

ヨソモノのオスマン帝国がビザンツ帝国のコンスタンティノープルを陥落せしめたことで中世は終わりを告げ、近世が始まったのだ。

 

 中世ヨーロッパをベースとしたこの謎の中世ファンタジー世界も同じ様なモノで、度々"ヨーロッパとしている"側は襲撃を受けていた。

今回のお話はそんなヨソモノのお話。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 ここはいつものギルドに併設された酒場。

ここにアウトが来てから早9ヶ月、季節は冬になろうとしていた。

 冬は寒い、雪も降るため現場作業系の仕事は無くなる。

外で野生動物や魔物を狩ろうにも雪が積もれば普段と勝手が違う。

冬場で食料が減り、腹を空かせたソイツらと戦うのは、少ない報酬に対して割に合わない。

 冬場に冒険者がする事と言えば、ダラダラするの一択である。

金?そんなものはある奴が払う。

冬だけは謎の仲間意識を発揮するのだ。

 

「アウトさん、ここ置いときますね」

「おう、いつもありがとな!」

「いえいえ、"アイツら"を片付けて頂いて貰ったお礼です」

「あいつら?よく分からんけど、どういたしましてだ!」

 商人風の格好をした男がアウトに金を届けに来た。

大した額では無いが冬の間中は渡しに来るらしい。

 男の言う"アイツら"とは教会勢力の事である。

商人達は浄財と言って少くない額を教会に払わされていたのでアウトに金を払うくらい訳ないのだ。

 そもそも、宵越しの金は持たない主義のアウトの場合、金の流れが商人→アウト→酒場、ガキ→……→商人なので商人は少しも損していない。

汚い、流石商人。

 

 冒険者達は、冬にやることが無いと言ったが、それはヨソモノ達も同じである。

いっちょ近隣の町襲いますか〜くらいのノリで、冬は蛮族エルフや蛮族ドワーフ、蛮族ハーフリングに蛮族肌白い奴が攻めてくる。

 攻めてくると言っても切迫している訳では無いので、喧嘩してくるノリだ。

今年も場外の特設リングで町の兵士達とヨソモノ達の熱き殴り合いやレスリングが行われるだろう。

当然そんな野蛮なイベントには、暇な冒険者達も少ない金で駆り出される。

 アウトの所にも町のお偉いさんから"そう言う"指示が出ていた……。

 

「ですから、何人かと戦うだけで良いんですよ」

「やだ。外寒い」

「ちょっとー!これじゃあ狂犬じゃなくて子犬じゃないですかー!話が違いますよ!」

「諦めろ。嬢ちゃんは室内じゃないとテコでも動かねえ」

 交渉決裂。理由は寒いので。

傍若無人、悪逆無道、魔物に育てられた、その魔物を食い殺した等々、悪名高いアウトであるが、彼女にも苦手なものがある。

暖かいとこ生まれ、暖かいとこ育ちの彼女は寒さに激弱であった。

 

「都会舐めてたわ」

 16歳の冬、町に出てから9ヶ月、彼女に初めに土をつけたのはお天道様であった。

 

「分かりましたー!じゃあ酒場に連れてきますね!」

「"じゃあ"じゃねえだろ!うちは蛮族お断りだ!」

「領主命令なので!では行って参ります!」

「誰か止めろ!」

「「「寒いから嫌っす」」」

 

 シュババババっと偉い人(領主)からの使者は酒場を後にする。

流石は使者に選ばれるだけはある。

めちゃくちゃ足が早い。

店主が外に出た時には既に遠くの方を走っていた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 使者が酒場から立ち去って一時間後、使者に加えて男と女がそれぞれ2人ずつ酒場を訪れた。

 エルフ女にドワーフ男、ハーフリング女に肌白の男。

見た目も性別も違う面々である。

恐らく彼らが件の蛮族なのだろう。

 使者が彼らに二言三言話すと、彼らは奥の席で丸まっているアウトを取り囲んだ。

剣呑な気配に気付いたのか、流石のアウトも寒さに震えるのを辞めてガンをつける。

見えはしないが、明らかにアウトと彼らの間に火花が散っているであろう。

そして、口火を切ったのはアウトだ。

 

「何だこら!やんのかコラ!」

 いつもの対応である。

何処にでもいるヤンキーの様に取り敢えずコラコラ攻撃だ。

やることは極悪非道なのに中身(知性)が伴わない。

そこがある意味、木っ端冒険者や下町小僧達に好かれる理由なのだろうが、蛮族からしてみれば関係ない。

すぐさま応戦される。

最初の相手は蛮族エルフ。

 

「%$#^&&&*;田舎者!」

「……何言ってるか分からねえが田舎者だけ聞き取れたぞ!」

 ボコッと良い音がしてエルフが床に崩れる。

見ると顔が腫れ上がっている。

お見事と言いたいところだが、アウトのほっぺも赤くなっていた。

 

「やるじゃねえか!おらあ!起きろ!」

 ぶっ倒れたエルフをガシガシ蹴り飛ばすアウト。

他の三人は何やら使者に抗議をしている。

途中で面倒くさくなったのか、使者はアウトにこう告げた。

 

「アウトさん、こいつらアウトさんの事を田舎者って馬鹿にしてますよ!」

「なに!許さねえ!」

 その辺の酒瓶片手に突っ込むアウト。

1対3?そんなの関係ねえ。

ビビったほうが負けるのがチンピラの喧嘩の掟だ。

 いち、にの、さんであっという間に頭を割られた残りの蛮族。

ついでに使者もぶん殴られた。勢い余ったので。

 

「雑魚が!田舎者舐めんな!」

「酒瓶弁償な」

「俺は悪くない!」

「駄目!」

 

 弁償の費用は勿論使者から出た(奪った)。

 ちなみに蛮族は賓客待遇で来ていたので後で外交問題に発展したそうな。

あんまり文句を言うと田舎者(アウト)をけしかけるぞと説得したら、なあなあになったらしい。

めでたし、めでたし。

 

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