田舎者に冒険者は難しい?   作:おもちぴん様

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下町にて

 アウトが町に出てきて3ヶ月が過ぎた。

既にその名と顔が知られてきているが、相変わらず文字は覚えられない。

仕事をしては文字を忘れ、文字を忘れては代書家の骨を折る。

そんなこんなで彼女は冒険者ランクがFからEになっていた。

 

「アウトさん、おめでとうございます。Eランクに昇格です」

「上がったら何か変わるのか?」

「いや、特に。Eランクの依頼が受けられるくらいです」

「ふーん」

 

 ランクが上がれば特典がある訳ではない。

社会的信用が上がるわけでも無いから、お金が借りられたり、家が借りられたりもしない。

無い無い尽くし、残業代を払いたくない会社の如く、階級だけ上げられる。

 アウトはつまらなさそうに冒険者証を振り回しながら、件の代書家に近づいた。

件の代書家とは、町到着時からの腐れ縁のあの男である。

腕の骨を折られ続けた彼の骨は、それはそれは丈夫となっていた。

 "おい!"と声を掛けられた男はビクッとして背筋を伸ばす。

選択肢をミスると骨が折られるのでビクビクである。

 

「Eランクの依頼見繕って来い!ハリーハリー!」

「イエッサー!」

 

 今では彼女は自分で依頼を選ぶことすらしない。

馴染みの代書家に"お願いして"依頼を取ってこさせる。

さてさて、今日の依頼はと言うと。

 

「なになに……気に入らない店へのカチコミぃ?冒険者は破落戸(ゴロツキ)じゃねえぞ!」

「そ、そうですかね……」

「当たり前だろ!許せねえ!この依頼主締めてくるぜ!」

「酒瓶持ってくんじゃねえ!」

 

 今日の依頼は何と無償奉仕。

気に入らない依頼主をボコボコにする簡単なお仕事です。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 ここは下町、ダウンタウン。

貧乏人とスネに傷のある者の溜まり場。

気に入らない依頼主の経営する店がある場所でもある。

そんなところにアウトは来ていた。

そして絶賛道に迷い中だ。

隠れる場所として最適な下町は、地元の下町育ち以外にとっては迷路の様なものだった。

 

「見つからねえなあ」

「お姉ちゃん、何探してるの?」

「○○って名前の店だ!」

「そこなら知ってるよ、お金くれるなら案内してあげる」

「なに〜!?金取るのかよ!仕方ねえなあ!おらあ!」

「ふぎゃあ!」

 

 道に迷ったアウトは親切なちびっ子にお金を渡して道案内をしてもらうことに。

その前にちびっ子の鳴き声がしたが気のせいだ。

決して、腹が立ったので銭袋を思いっきりぶん投げてぶつけるとかはしていない。

有り金全部渡したので、児童虐待投擲は無い事になった。

つまりは問題ないのだ。

 

「ここだよお姉ちゃん」

「ありがとよ!おらあ!出てこい!」

 ちびっ子に案内されたアウトは件の依頼主の店に到着する。

到着して1秒で恫喝。流石である。

それを受けて依頼主と思われる男が出てきた。

不安そうな顔でアウトとちびっ子を見て、それから口を開いた。

 

「な、何ですかあなたは?」

「依頼のやつだ!」

「おお、ではあなたが依頼を受けて……」

「おらあ!」

「ぐべっ!」

 

 必殺の左ストレートが依頼主の腹に突き刺さる。

アウト以外の面々は理解が追いついていない。

依頼主の胸ぐらを掴んだアウトが更に恫喝する。

 

「てめえ、どう言う了見だ!」

「あたた……いきなりなんですか!?」

「他の店を襲わせるなんて恥ずかしくねえのか!」

「恥ずかしくないです!」

「おらあ!」

「ぐへえ!」

 

 "気合"と言う名の張り手を依頼主に入れたアウトは"提案"をする。

 

「今からそいつの店行くぞ!」

「えっ!やってくれるんですか!」

「ちげえよ!てめえでやるんだよ!」

「は?」

「案内しろ!」

「は、はい!」

 

 アウトwith依頼主と何故かちびっ子の3人組は、カチコミ先の店に向かう。

カチコミ先には何人か護衛の冒険者がいた。

こっちもこっちだが向こうも向こうである。

アウトはぷるぷる震えながら声を荒げた。

 

「カス野郎!冒険者雇いやがって!お前らもお前らだ!」

「なんだこのアマ!やんのか?!」

 一触即発、もう止まらない。アウトは続けて叫ぶ。

「タイマンだ!おらあ!」

「上等だこら!」

 依頼は受けていないのに、依頼を遂行してる形になっているが気のせいだ。

 

 チームタイマンバトル、アウト側先鋒ちびっ子。

あわあわしているがアウト腕を組み無視。

パンチ一発、ちびっ子は敗北。

 

バトル1

勝ち 冒険者1 vs ちびっ子 負け

決まり手 パンチ

 

 アウト側の次鋒は掟破りの依頼主。

普通大将では?と思われるが、アウトがルールなので問題ない。

パンチ一発、依頼主は敗北。

 

バトル2

勝ち 冒険者1 vs 依頼主(アウト側) 負け

決まり手 パンチ

 

 残るは大将アウトのみ。

ここからの勝敗は割愛。勝者アウト側。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「よし、お前ら殴りあえ」

「「は?」」

 依頼主×2を叩き起こしたアウトは"平和的"な解決方法を提案する。

方法は依頼主同士のタイマン。

勝ったほうが相手の店を破壊する下町ルールだ。

 

「そんなこと言われましても……」

「ああん?」

「「やります!」」

 

 その後の結果は知らないが問題解決したことには違いない。

しかし、有り金全部失ったアウトに、勝った側の依頼主がボコボコにされて飯を奢らされた事だけは言っておきたい。

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