田舎者に冒険者は難しい?   作:おもちぴん様

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税の金

「そういやお前、税金払ってるのか?」

「ぜいきん?なんだそりゃ?」

 今回の話はひょんなことから始まった。

税金、税の金。忌々しい金。

ファンタジー世界にだって税金は存在する。

払ってない奴は人扱いされない。公共サービスとか何もないけれども。

税金を知らないアウトに、酒場の店主が簡単に説明する。

 

「えーと、領主様に払うお金だよ」

「は?何で俺を殺そうとしてきた奴に金払わねえといけねえんだよ」

「一応ランクごとに払う額決まってんだよ。Eまでは免除だけど、お前最近Dランクに上がっただろ?」

「聞いてねえぞ!おい!受付!こっち来て説明しろ!」

「ひぃ〜、説明しましたよ〜」

「うるせえ!俺が聞いてねえって言ったら聞いてねえんだよ!」

 説明を受けるアウト。滾々と説明する受付嬢。

税金を納めるのは毎年2回。その期限はすぐそこまで来ていた。

 

「お前さん、金持ってるのかい?」

「持ってねえよ。全部使った」

「結構異例の早さで昇進してたのに降格しそうだな」

「ランク下がるだけなら良いかあ」

「いや、払わなかったらランクの降格にくわえて労役3ヶ月が課せられるぜ。タダ働きだ」

「道路とか作るやつだろ?やりたくねえなあ」

「頑張って金稼ぐんだな」

「くそ面倒くせえ!」

 

 数日後に控えた納税日のためにギルドを飛び出し、金策に走るアウト。

初めの協力者(犠牲者)は……。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「おい!ガキ!金貸せ!」

「ええ……いきなり何?お姉ちゃん、最悪だよ……」

 毎度お馴染みのちびっ子だった。

子供だろうと金をせびる。アウトに恥や外聞などは無い。

 ちびっ子の巾着袋を奪い取り、逆さにするアウト。

チャリンと音がして、アウトの手にお金が落ちる。

 "アウトは100cp手に入れた。目標まで残り9900cp"

 

「ちっ!湿気てんな!昨日やった金はどうした?」

「みんなで分けたよ」

「そいつら呼んで来い!」

「絶対来ないよ」

「オレが探してたって言っとけ!」

「うん、言っとくね」

 

 ちびっ子から金を巻き上げたアウトの次なる行き先は……。

 

「よお、代書家ぁ。儲かってるか?儲かってるよな!金貸せ!寄越せ!10000cp!」

「ひええ!急に何ですか!10000cp?嫌です!貸せません!」

 予想通り、代書家であった。

アウトの親しい?知り合いは少ないので行く先は絞られるのである。

 

「んだとぉ!いくらまでなら出せる!」

「せ、せ……「ああ!」、5000cp出せます!」

「最初からそう言えば良いんだよ!貰ってくぞ!」

 

 "アウトは5000cp手に入れた。目標まで残り4900cp"

 ギルドの中で行われるえげつない行為。

アウト、お前冒険者辞めて、地上げ屋か強請り屋になれ。

ギルドにいた面々はそう思った次第であった。

※代書家はアウトがギルドを出ていったのを確認してからギルドに来るため、最初飛び出した時はいない。

 

 丸3日間、方方(ほうぼう)手を尽くしたアウトであったが、どうしても残り9000cpが集まらなかった。

何でお金が減ってるかって?使ったからに決まっている。

急な大金(アウト基準)が手元にあったらこの女は使うのだ。

そういう風に生きてきた。

そして1000cpを握った彼女は最終手段に出る。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「チーにゃ!」

「ポンにゃ!」

 ここは場末の賭博場。

猫獣人コミュニティの運営するこの鉄火場には町の賭博師達が集まる。

鴨にされるのはいつも田舎者。

博打覚えたての者達が、百戦錬磨の博徒共に勝てる謂れは無いのだ。

 

 そんなところにアウトがぶらりと降り立つ。

"真面目に働く"事をモットーにしているアウトは勿論、博打などしたことが無い。

ルールも知らない。金が貰えるらしいから来ただけだ。

 そんなヨチヨチ歩きの鴨に猫獣人が話し掛けた。

彼等は鴨の匂いに敏感だ。猫だけに。

 

「お姉さん、ここは初めてですかにゃ?」

「あ?舐めた口聞いてんじゃねえぞ!なにが"にゃ"だ!ぶち転がすぞ!」

「ひい!すみません!」

 猫獣人は猫かぶっていた。

どこの世界に"にゃーにゃー"喋る人間がいるのだ。

そんな奴は、かまととぶってるか狂人だけだ。

 

 で、説教かましたアウトは猫獣人に連れられ、サイコロ賭博場に到着する。

そこは、コロコロと転がるサイコロと、ゴロゴロと頭を抱えて転がる者達が混在しているスペース。

 サイコロ賭博は敷居が低い。

その為か、生き馬の目を抜く博徒達が、田舎者(鴨)を今か今かと待ち構えていた。

 

「サイコロのルールは分かりますか…に……」

「かに?分からねえ。教えろ」

「ではチンチロリンを教えます…な……」

「おう、早くしろ」

 

 ………………

 

「よし!大体分かったぜ!」

「本当ですか?」

「おう!さっさと案内しろ。沢山貰えるとこが良いぜ!」

 ルール説明を受けたアウトは、早速高レートのチンチロリンで勝負をすることにした。

当たり前だが高レートでの勝負は種銭が沢山必要ある。

彼女の手持ちは1000cp、まあ、勝負にならない。

だが、それで終わらないのがアウトである。

 

「おい、俺と有り金全部賭けて勝負しろ」

「姉ちゃん、いくら持ってんだ?」

「1000cp」

「はん、話にならねえ。だがよう、腕一本でも掛けるなら良いぜ」

 腕一本掛けるなら良いぜ──伝説の博徒レッドウッドが使った言葉である。

余りにも強かった彼は、無用な勝負事を避ける為にこの言葉を良く使ったと言う。

 しかし、そこはアウトである。

迂遠な言い回しは逆効果。

彼女はブレーキの効かない馬車、度胸だけで生きてきた女である。

当然、その条件を承諾した。

 焦ったのは言った側だ。

まさか受けるとは思わなかった彼はアワアワし、そしてすぐにある考えに到達する。

イカサマすれば良いだけだと。

相手は素人、万に一つも負ける訳がないのだ。

腕の代わりに体を好きにしてやると下衆な考えが頭をよぎる。

 

「……分かった、サシでやるぞ!」

「タイマンだな!良いぜ!」

 通常チンチロリンは4,5人でやるが今回は特別マッチ、特別ルールでやることになった。

1対1、一方は腕を、もう一方は有り金を賭けた一本勝負。

周りの客も勝負をやめ、行方を見守る。

 博徒のターン……ピンゾロ(1が3つの役。即勝ち)だ。

グヘヘといやらしい顔で笑う博徒。

当然イカサマだ。

 

「これって俺の負けなのか?」

 周りの客に尋ねるアウト、頷く客。

「そうか……おらあ!」

「ぎゃあ!」

 アウトの左ストレートが博徒の顔面に突き刺さる。

別に負けたのが悔しいとか、イカサマを見破ったから殴った訳では無い。

"腕一本"払ってやったのだ。

 

「腕一本くれてやったぞ!もう一回勝負だ!」

「は、話が……」

「ああん!早くやれよ!」

「ひぃ!」

 出たのはピンゾロ。そしてまた殴られる博徒。

1対1のルールだ。誰も口出しは出来ない。

3,4回それを繰り返したところで博徒が折れた。

丼からサイコロが溢れる。

"ションベン"──即負けだ。

 

 "おおー"と観客から感心した声が漏れ出る。

アウトがそれを聞いて観客に尋ねた。

「これって俺の勝ち?」

「おうよ!お姉さんの勝ちだ」

「こいつもイカサマしてたから自業自得だぜ」

「え!イカサマしてたのか?」

「え!だからぶん殴ってたんじゃないのか?」

「いや、別に」

 

 こうしてアウトはサイコロを一回も振ることなくチンチロリンに勝利し、税金を払っても余る程の金を手に入れた。

しかし、宵越しの金は持たない主義のこの女。

税金払った余りを一日で溶かしてしまう。

きっと次の税金を払う時も苦労するのであろう。

 

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