デュエルアカデミアを卒業後、北米のデュエルカレッジへと留学した天上院明日香。
そこでより深いデュエルの研究を行っている彼女の前に、十代が倒したはずの破滅の光の残滓が現れる。
力を失っている破滅の光の残滓は、力を取り戻すために明日香に再び光の洗礼を浴びせる事を狙っており、それを知った明日香は破滅の光を今度こそ完全に倒すためデュエルを挑むのだった。

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遊戯王GX~デュエルカレッジに留学した明日香が破滅の光の残滓とデュエルする話~

 北米のデュエルカレッジ。デュエルの名門たるデュエルアカデミアで優秀な成績を修めた生徒がより深くデュエルの研究を行うためのデュエルの大学的施設。

 

「バァイ、アスカ」

 

「ええ、また明日。レジー」

 

 そのカレッジに通う生徒――天上院明日香もまた、デュエルについて深く学び・研究を行っている。

 そして夕暮れ時、明日香は学友と別れて現在住んでいる寮へと帰路につく。その道中、公園の辺りを通りがかろうとした時だった。

 

「ねえ、お姉さん」

 

 突然声をかけられ、明日香はつい声の方を向く。そこに立っているのは小学生、あるいは中学生くらいだろう、白色の髪を長く伸ばした水色の瞳の少年。彼はにこり、と無邪気な笑みを明日香に向けた。

 

「デュエルカレッジの人だよね?」

 

「ええ」

 

 微笑みを向けられ、明日香もつい微笑を返す。それから「何かご用?」と明日香が尋ねると、少年は笑みを浮かべたまま、左腕に付けているデュエルディスクを見せた。

 

「僕とデュエルしてほしいんだ。強いデュエリストと戦って、もっと強くなりたくて」

 

 要するにデュエルの誘い。断る理由など彼女にはなく、明日香もフフッ、と優しい微笑の中に強気なものを覗かせた。

 

「もちろん、いいわよ。だけど手加減しないからね?」

 

「うん。そうでなくちゃ」

 

 デュエルの了承を行い、明日香は先導する少年の後について歩くように公園へと向かう。しかしその少年が怪しい笑みを浮かべている事に彼女は気づいていなかった。

 

 そして何故か人気のない公園の真ん中、そこに二人は立って向かい合う。その時に明日香が思い出したように少年へと声をかけた。

 

「そういえば、君、名前はなんていうの? 私は――」

 

 そういえば彼の名前を聞いていなかった、と思い出した明日香は少年の名前を尋ねつつ、まずは自分から名乗るべきだと名前を名乗ろうとする。

 

「天上院明日香、だよね」

 

 しかしそれを遮り、少年が明日香の名前を言い当てる。名乗った事はないし、初対面。名前なんて知っているはずがないと明日香が訝し気になったその時、少年の背後に後光のような眩い、それでいて不気味が光が人型を取った。

 

「これは!?」

 

「名乗っておこうか。私はそう……破滅の光、その残滓とでも言おうか」

 

「破滅の光!?」

 

 辺りの様子の変貌、そして少年の言葉、いや、少年の背後の人型の光が言わせているのだろう言葉に明日香が驚愕を見せる。

 破滅の光、それは彼女がデュエルアカデミアに通っていた頃に現れた男――斎王にとり憑いていた存在。自分や友人の万丈目準がそれに取り込まれて洗脳され、学園に敵対していた事もあった因縁の相手だ。

 

「だけど、十代が倒したはず……」

 

「だから残滓だと言ったのだよ。だが私はこの世界を破壊する事をまだ諦めていない――」

 

 明日香の言葉を破滅の光は一蹴。だがその時、人型の光にザザザとノイズが走ったように、光が僅かに透けた。

 

「とはいえ、今はこうやって何の力もない弱い子供にとり憑くのが精一杯でね。だが斎王琢磨が光の結社という集団を作った事で、新たな事が分かった。どうやら私の力は、私を信望する者が増える事でより強力になっていくらしい。君一人を我が信者にするだけでも、この子供を完全に支配し私の存在を定着させるには充分だろう」

 

「そう上手くいくと思っているの?」

 

「そうだな。私の力は微々たるものしかない。このデュエルに負ければ私は霧散してしまうだろう」

 

 つまり、明日香にとっては負ければ再び破滅の光に洗脳されてしまう。だが勝てば破滅の光の残滓をここで倒す事が出来る。

 

(十代があそこまで苦労して倒した相手……また、十代にそんな苦労をかけさせるわけにはいかない!)

 

 破滅の光は今は力を失っている。しかし放っておけば力を取り戻す可能性がある。ここで倒せば全てが終わる。そうなれば明日香に退く選択肢はなかった。

 

「いいわ、破滅の光! ここであなたを倒して、終わらせてあげる!」

 

「そう言ってくれると思っていたよ」

 

 明日香が雄々しく吠え、破滅の光、正確にはそれがとり憑いている少年がニヤリと笑い、二人はデュエルディスクを構える。

 

「「デュエル!!!」」

 

 そして二人の声が重なり合った。

 

「先攻は貰うわ! 私のターン、ドロー!」

 

 先手必勝とばかりに明日香が先手を取り、カードをドロー。六枚の手札をざっと見て、決まっているかのように動き出す。

 

「手札から儀式魔法[機械天使の儀式]を発動! レベルの合計が儀式召喚するモンスターのレベル以上になるように自分の手札・フィールドのモンスターを生贄に捧げ、手札からサイバー・エンジェル一体を儀式召喚する。

 私はレベル6の[サイバー・エンジェル-弁天-]を生贄とし、レベル6サイバー・エンジェルの儀式召喚を執り行う。出でよ、レベル6[サイバー・エンジェル-韋駄天-]!」

 サイバー・エンジェル-韋駄天- 守備力:2000

 

 明日香の場に姿を現すのはデュエルアカデミア時代から彼女を支えていた相棒――サイバー・エンジェル。しかしその機械天使はただ麗しい見た目を晒すために出てきたわけではない。

 

「韋駄天の効果発動! このカードが儀式召喚に成功した場合に発動でき、自分のデッキ・墓地から儀式魔法カード一枚を選んで手札に加える。

 それにチェーンして生贄に捧げた弁天の効果発動! このカードを生贄に捧げた場合に発動でき、デッキから天使族・光属性モンスター一体を手札に加える。

 私は弁天と韋駄天の効果で、デッキから[サイバー・エンジェル-那沙帝弥-]と[高等儀式術]を手札に加え、[高等儀式術]を発動!

 レベルの合計が儀式召喚するモンスターと同じになるように、デッキから通常モンスターを墓地へ送り、手札から儀式モンスター一体を儀式召喚する。

 私はデッキからレベル4の[ブレード・スケーター]とレベル1の[キーメイス]を墓地に送り、レベル5儀式モンスターの儀式召喚を執り行う! 出でよ、レベル5[サイバー・エンジェル-那沙帝弥-]!」

 サイバー・エンジェル-那沙帝弥- 守備力:1000

 

「ほう……」

 

 明日香の場に並ぶ二体のサイバー・エンジェル。その姿に破滅の光がニヤリと笑う。

 儀式召喚、それは儀式カードと儀式モンスター、そして儀式召喚に使用する生贄から大抵の場合最低三枚のカードの消費が必要になる召喚法。しかし二体の儀式モンスターを並べたにも関わらず、まだ彼女の手札は三枚残っていた。

 

「那沙帝弥のモンスター効果発動。一ターンに一度、自分フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動でき、そのモンスターの攻撃力の半分だけ自分のライフポイントを回復する。

 私は韋駄天の攻撃力1600の半分、800ポイントライフを回復するわ。カードを一枚セットし、ターンエンド」LP4000→4800

 

 僅かな回復とはいえ効果発動に条件もリスクもないため発動するだけ得。そして明日香はカードをさらに一枚伏せるとターンエンドを宣言した。

 

(那沙帝弥は儀式モンスターが攻撃対象になった時、その攻撃を無効にする効果がある。私の場のモンスターは全て儀式モンスター、これで相手からの攻撃はほとんどシャットアウト出来る。効果破壊を狙ってきても一度だけなら墓地の機械天使の儀式を除外する事で対応できる……)

 

 ステータスこそイマイチだがそれを補って余りある効果を持つ機械天使(サイバー・エンジェル)。その守りを信頼している明日香だったが、

 

「え……?」

 

 次の瞬間、その表情が呆けたものになる。彼女の場の二体の機械天使が突如、溶岩のような手に握り潰されたのだ。

 

「私は手札の[溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム]を自身の効果により、君の場の二体のサイバー・エンジェルを生贄に、君の場に特殊召喚させてもらったよ」

 

「く……」

 溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム 攻撃力:3000

 

 破滅の光がクククと笑いながら告げると共に、二体の機械天使が溶岩に飲み込まれるように消滅し、彼女の場に溶岩によって形作られた魔神が姿を現す。

 信頼していた鉄壁のはずの守りがたった一枚のカードによって崩される。だがそれでも攻撃力3000の強力モンスターを得たのだから無駄ではない、と明日奈は気を取り直そうとしたが、破滅の光はさらに一枚の手札を取った。

 

「魔法カード発動[所有者の刻印]。フィールドの全てのモンスターのコントロールは元々の持ち主に戻る。ラヴァ・ゴーレムを返してもらおう」

 

「なっ!?」

 

 明日香の場の溶岩魔神が動き出し、破滅の光の場に移動すると、出現するための代償として贄を喰らった相手である明日香に敵意を向ける。

 たった二枚のカードだけで明日香の場の二体のモンスターを守りの穴を掻い潜って除去し、その上高い攻撃力のモンスターを呼び出したことになる。そのタクティクスに明日香はクッと唸り声を上げた。

 

「バトルだ。ラヴァ・ゴーレムでプレイヤーにダイレクトアタック」

 

「っ! トラップ発動[ガード・ブロック]! その戦闘によって私が受ける戦闘ダメージは0になり、私はデッキからカードを一枚ドローする!」

 

 破滅の光の指示と共に溶岩魔神が己の身体である溶岩を津波のように放って明日香を襲うが、伏せカードを発動した明日香に周囲に出現した半透明の障壁が溶岩の津波から彼女を守り、さらに一枚ドローの権利をも与える。

 

「クク、流石にこの程度では終わらないか。私はカードを二枚セットし、ターンエンド」

 

「私のターン、ドロー!」

 

 破滅の光のターンエンド宣言を聞き、明日香は気合いを込めてカードをドロー。一気に形勢逆転とばかりに笑う破滅の光に対し、明日香もまた不敵な笑みを見せた。

 

「墓地の那沙帝弥の効果発動! このカードが墓地に存在する場合に自分の墓地からこのカード以外のサイバー・エンジェルモンスター一体を除外し、相手フィールドのモンスター一体を対象として発動、このカードを墓地から特殊召喚し、対象のモンスターのコントロールを得る!

 私は墓地の弁天を除外し、ラヴァ・ゴーレムを対象とする。墓地の那沙帝弥を特殊召喚し、ラヴァ・ゴーレムのコントロールを得るわ!」

 

 那沙帝弥の攻撃力は1000、ラヴァ・ゴーレムの攻撃力は3000。この二体の攻撃が通れば一気に相手のライフ4000をピッタリ削り切れる。

 

「そうはいかない」

 

 だが、当然破滅の光もそれに対処する。

 

「リバース・マジック発動[神秘の中華なべ]。自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げ、生け贄に捧げたモンスターの攻撃力か守備力を選択し、その数値だけ自分のライフポイントを回復する。

 私はラヴァ・ゴーレムを生贄に捧げ、その攻撃力3000ポイント、私のライフを回復する」LP4000→7000

 

「く……那沙帝弥が特殊召喚されるけど、対象が消えたことでコントロールを得る効果は不発になる……私は[エトワール・サイバー]を召喚し、那沙帝弥の効果発動! エトワール・サイバーの攻撃力の半分、600ポイントライフを回復するわ!」LP4800→5400

 サイバー・エンジェル-那沙帝弥- 攻撃力:1000

 エトワール・サイバー 攻撃力:1200

 

 明日香の場に現れる機械天使とはまた違う、しかし彼女が信頼する戦士。そして再び明日香のライフが回復し、これで今出来る準備は終わったとばかりに明日香はキッとした顔を見せた。

 

「バトル! エトワール・サイバーでダイレクトアタック! エトワール・サイバーは相手プレイヤーを直接攻撃する場合、ダメージステップの間攻撃力が500ポイントアップする!」

 エトワール・サイバー 攻撃力:1200→1700

 

「っ!」LP7000→5300

 

 エトワール・サイバーの直接攻撃(ダイレクトアタック)。そしてその時エトワール・サイバーの攻撃力が突如上昇し、一気に破滅の光に大ダメージを与える。しかし破滅の光はニヤリと笑って再びリバースカードを翻した。

 

「私が戦闘ダメージを受けた時、手札を一枚捨ててトラップカード[ダメージ・コンデンサー]を発動する。自分が戦闘ダメージを受けた時、手札を一枚捨てて発動でき、受けたそのダメージの数値以下の攻撃力を持つモンスター一体をデッキから表側攻撃表示で特殊召喚する。私がこのカードの発動のために受けた戦闘ダメージは1700。よって攻撃力1400の[チョウジュ・ゴッド]を特殊召喚する」

 チョウジュ・ゴッド 攻撃力:1400

 

「チョウジュ・ゴッド……? いえ、これは、まさか!?」

 

 明日香は未知のモンスターに一瞬怪訝な目を向けるが、直後何かに気づく。

 チョウジュ・ゴッド。これと同じパターンの命名方式を持つモンスターが存在する。

 

「そう。これはセンジュ・ゴッド、マンジュ・ゴッドがさらに進化した新たな存在。

 チョウジュ・ゴッドの効果発動! このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合に発動でき、デッキから儀式モンスター一体と儀式魔法カード一枚を手札に加える!!」

 

「そんな!? 一体で儀式モンスターと儀式魔法、両方を手札に加えるなんて!?」

 

 センジュ・ゴッドは儀式モンスターのみ。その進化形たるマンジュ・ゴッドでも儀式モンスターか儀式魔法のどちらか一方のみ。しかしチョウジュ・ゴッドはマンジュ・ゴッドがさらに進化し、儀式モンスターと儀式魔法、その両方を一気にサーチする力を得ている。その力に同じ儀式使いである明日香ですら悲鳴を上げてしまっていた。

 

「私は儀式モンスター[大邪神レシェフ]と儀式魔法[高等儀式術]を手札に加える!」

 

「(まずい! 儀式モンスターと一緒に高等儀式術を手札に加えられた以上、次のターン確実に儀式召喚がくる!…)…私はカードを一枚セットしてターンエンド!」

 

 高等儀式術の儀式魔法としての汎用性は同じカードを使っているだけ分かっており、明日香は直感的に危機を感じ取って手札から一枚伏せ、ターンエンドを宣言した。

 

「私のターン、ドロー」

 

 破滅の光は静かにカードをドローし、明日香の予想した通りの行動を取る。

 

「儀式魔法[高等儀式術]を発動。デッキから通常モンスター、レベル4の[メルキド四面獣]と[仮面呪術師カースド・ギュラ]を贄とし、儀式召喚を執り行う! 出でよレベル8[大邪神レシェフ]!!」

 大邪神レシェフ 攻撃力:2500

 

「大邪神……レシェフ……」

 

 破滅の光の場に姿を現す大邪神の名を持つモンスター。その威圧感に明日香は声を震わせつつ、だがただ攻撃を仕掛けてくるだけなら那沙帝弥でどうにかなるはず、と視線を向ける。

 だがそれに対し、破滅の光はフッと笑みをこぼした。

 

「大邪神レシェフの効果発動。一ターンに一度、手札の魔法カードを一枚捨てる事で相手フィールド上モンスター一体のコントロールをエンドフェイズ時まで得る」

 

「な!?」

 

 その言葉に明日香が声を上げる。コントロール奪取、那沙帝弥が守りの要だった今の状況、そして那沙帝弥の効果を踏まえると単に除去する以外に厄介な効果だった。

 

「さあ、那沙帝弥よ。光の洗礼を受けるがいい!」

 

 彼の手札の魔法カードの力を吸収し、真っ白な眩い光を放つ大邪神レシェフ。その光はかつて彼女を侵食した光の洗礼を思わせ、明日香は「っ」と僅かな声を漏らす。するとその光を浴びた那沙帝弥の身体が白く染まっていき、彼女はレシェフに導かれるように破滅の光のフィールドへと移動。明日香に敵対するように向き直った。

 だがそれだけでは終わらない。そう言うように彼の場に一枚の魔法カードが浮かび上がる。

 

「それは、[おジャマジック]!?」

 

「そう。大邪神レシェフの効果で捨てたこのカードの効果発動、デッキから[おジャマ・グリーン]、[おジャマ・イエロー]、[おジャマ・ブラック]を一体ずつ手札に加える」

 

(でも、おジャマ自体は単体ではただの通常モンスター……)

 

 おジャマ三兄弟。それは彼女の友人である万丈目がデュエルアカデミアで愛用していたモンスター達であり、その特徴は彼女も熟知している。今の状況ではそれほど使えるカードではないはずと明日香は考え、破滅の光も一連の効果処理が終わったためか、次にコントロールを奪った那沙帝弥の効果でレシェフの攻撃力2500の半分、1250のライフを回復してから次の手を取る。

 

「魔法カード[手札抹殺]。互いのプレイヤーは手札を全て捨て、その枚数分ドローする」LP5300→6550

 

「な!? おジャマ達は手札を増やすためだけだったというの!?」

 

「その通り。レシェフの効果コストを補いつつ、手札も増やす。これ以上ない使い道だろう。私の手札は三枚(おジャマ三体)。全て捨てて三枚ドローだ」

 

「く……私の手札は二枚。これを捨てて二枚ドローよ…(…まずい、一気に手札が三枚にまで増えるなんて……)」

 

 相手の手札が一気に三枚に増え、明日香は歯噛み。同時に破滅の光も「バトル」と宣言した。

 

「チョウジュ・ゴッドでエトワール・サイバーを攻撃。そして那沙帝弥、大邪神レシェフ。連続ダイレクトアタックだ」

 

「っ――きゃああぁぁぁっ!!!」LP5400→5200→1700

 

 敵に回った那沙帝弥含めた連続攻撃に大ダメージを受け、明日香は悲鳴を上げる。

 

(……けど那沙帝弥のコントロール奪取はこのターンのみ、このターンさえ耐えれば……)

 

 だがこのターンの終了時には那沙帝弥は戻ってくる、と明日香は構えていた。その時、「メインフェイズ2に入る」と宣言した破滅の光は、手札から一枚のカードをモンスターゾーンに置いた。

 

「私は[サイバー・ヴァリー]を召喚」

 サイバー・ヴァリー 攻撃力:0

 

「サイバー……っ、そのカードは!?」

 

「そう。サイバー・ヴァリーの効果発動、自分フィールドの表側表示モンスター一体とこのカードを対象として除外し、その後私はデッキから二枚ドローする。私はサイバー・ヴァリーと那沙帝弥を除外し、デッキからカードを二枚ドローする」

 

「っ……」

 

 防御の要である那沙帝弥が消滅し、破滅の光の新たな手札の糧となる。しかしそれだけではない。

 除外、即ちただ除去されるだけではなく那沙帝弥の蘇生とコントロール奪取効果が封じられてしまった。

 

「ククク、これで君の場からモンスターは失われた。私はリバースカードを二枚セットしてターンエンド」

 

「いえ、まだよ! あなたのエンドフェイズにトラップカード[活路への希望]を発動! 自分のLPが相手より1000以上少ない場合、1000LPを払って発動でき、お互いのLPの差2000につき一枚、私はデッキからドローする! 1000ポイントライフを支払った後の私のライフは700!」LP1700→700

 

「私のライフは5300……」

 

「その差は4600! よって私は二枚カードをドロー! そして私のターン、ドロー!」

 

 破滅の光の手札が二枚なのに対し、明日香の手札はこのドローを含めて五枚。手札枚数だけなら追い越したが、破滅の光の場に彼の切り札なのだろう大邪神レシェフがいるのに対し彼女の場はがら空き。まずはこれをどうにかしなければ始まらない。

 

「私はフィールド魔法[祝福の教会-リチューアル・チャーチ]を発動!」

 

 だがそのための手は揃っている。そういわんばかりの明日香の初手と共にフィールドが教会のような場へと変化、それと共に祝福の鐘が響き始める。

 

「リチューアル・チャーチの効果発動! 手札から魔法カード一枚を捨てて発動、デッキから光属性の儀式モンスター一体または儀式魔法カード一枚を手札に加える。私は手札から魔法カード[契約の履行]を捨て、デッキから儀式魔法[機械天使の絶対儀式]を手札に加える。

 続けて[サイバー・プチ・エンジェル]を召喚し、サイバー・プチ・エンジェルの効果発動! このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合に発動、デッキからサイバー・エンジェルモンスター一体または[機械天使の儀式]一枚を手札に加える。私は[サイバー・エンジェル-荼吉尼-]を手札に加える。

 そして儀式魔法[機械天使の絶対儀式]を発動! レベルの合計が儀式召喚するモンスターと同じになるように、自分の手札・フィールドのモンスターを生贄に捧げる。または生贄の代わりに自分の墓地から天使族または戦士族のモンスターをデッキに戻し、手札から[サイバー・エンジェル]儀式モンスター一体を儀式召喚する。

 私はフィールドのサイバー・プチ・エンジェルを生贄に捧げ、さらに墓地の天使族[サイバー・エンジェル-韋駄天-]をデッキに戻し、レベル2のサイバー・プチ・エンジェルとレベル6の韋駄天で儀式召喚を執り行う! 出でよ、レベル8[サイバー・エンジェル-茶吉尼-]!!」

 サイバー・エンジェル-茶吉尼- 攻撃力:2700

 

 明日香は一気にサーチ効果を駆使して儀式魔法と儀式モンスターを手札に揃え、儀式召喚へと繋げる。

 そして呼び出されるのは荼枳尼天の名を冠する機械天使。その雄々しい咆哮と共に明日香は再び口を開いた。

 

「サイバー・エンジェル-茶吉尼-の効果発動! このカードが儀式召喚に成功した場合に発動、相手は自身のフィールドのモンスター一体を墓地へ送らなければならない!」

 

「ふむ……チョウジュ・ゴッドを墓地に送る」

 

 破滅の光は僅かな思考の後、チョウジュ・ゴッドを消滅させ、明日香は破滅の光の場を睨む。

 もしもあの二枚の伏せカードが防御系のカードでレシェフを守られてしまえば次のターン茶吉尼のコントロールが奪われる可能性がある。しかしそうなってまたも相手のペースに乗せられてしまうのならば自分に勝機はない、ここはデュエリストとして勇気を出し、一歩を踏み出して攻めるべき。

 明日香はそう、己の直感を信じてレシェフを指さした。

 

「サイバー・エンジェル-茶吉尼-で大邪神レシェフを攻撃!!」

 

「くっ!」LP5300→5100

 

 攻撃が通り、その衝撃で破滅の光のライフも僅かに削られる。そしてこれで今度は相手の場のモンスターが全滅。やった、と僅かに口元に笑みを見せた。

 

「リバースカードを一枚セットし、エンドフェイズに茶吉尼の効果発動! 自分エンドフェイズに自分の墓地の、儀式モンスター一体または[機械天使の儀式]一枚を対象とし、そのカードを手札に加える。私は墓地の[サイバー・エンジェル-弁天-]を手札に加えるわ。ターンエンドよ」

 

「おっと待った。そちらのエンドフェイズにトラップカードを発動させてもらおう。[戦線復帰]、自分の墓地のモンスター一体を対象として発動でき、そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。

 私は墓地の[カタパルト・タートル]を守備表示で特殊召喚する。そして私のターン、ドロー」

 カタパルト・タートル 守備力:2000

 

(く、モンスターがなかなか途切れない……だけど、茶吉尼さえ守り切れば。私の手札には[アームズ・ホール]がある。これでデッキから装備魔法[巨大化]などの装備魔法をサーチすれば戦況は私に有利になる)

 

 アームズ・ホール等の魔法カードの使用の他、リチューアル・チャーチの効果で魔法カードを捨てるなどして墓地に魔法カードを溜めればリチューアル・チャーチのさらなる効果によりサイバー・プチ・エンジェルの蘇生も狙え、そこから新たなサイバー・エンジェルの儀式召喚にも繋げられる。と、明日香は戦術を考えていく。

 しかしその間に破滅の光は静かに自身のターンを宣言し、カードをドローしていた。

 

「私は[レスキューラビット]を召喚し、効果発動。フィールドのこのカードを除外して発動でき、デッキからレベル4以下の同名の通常モンスター二体を特殊召喚する。ただし、この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズに破壊される。

 私はデッキからレベル4の通常モンスター[メルキド四面獣]を二体特殊召喚」

 メルキド四面獣 ×2 攻撃力:1500

 

 破滅の光の場に現れた兎が消え去り、それと入れ替わるように四つの仮面をつけた不気味な化け物が二体姿を現す。するとその次の瞬間、その二体の化け物が闇へと包まれ、その闇の中から一枚のカードが浮き出た。

 

「このカードは、[メルキド四面獣]または[仮面呪術師カースド・ギュラ]を含む二体のモンスターを生贄に捧げた時に特殊召喚できる」

 

 そしてそのカードにまるで内側から切り裂かれるように鉤爪状の切り傷が入り、破壊。まるでそのカードの中に封印されていた魔獣が解き放たれたかのように、モンスターがそのカードの中から、闇の中から姿を現す。

 

「[仮面魔獣デス・ガーディウス]、特殊召喚」

 仮面魔獣デス・ガーディウス 攻撃力:3300

 

「っ、攻撃力――3300!?」

 

 茶吉尼を上回る攻撃力のモンスターがたった二枚の手札消費で出現した。その単体の攻撃力による戦闘だけならライフは残る。しかし――

 

「カタパルト・タートルの効果発動。一ターンに一度、自分フィールド上のモンスター一体を生贄に捧げて発動でき、生贄に捧げたモンスターの攻撃力の半分のダメージを相手ライフに与える」

 

 仮面魔獣デス・ガーディウスの攻撃力の半分は1650。平均的な下級モンスターの攻撃力にも及ばないが、明日香のライフを削り切るには充分だった。

 デス・ガーディウスがカタパルト・タートルのカタパルトに乗せられ、闇の弾丸と化して射出される。

 

「――トラップ発動[ホーリーライフバリアー]! 手札を一枚捨てて発動、相手から受ける全てのダメージを0にする!」

 

 しかしそれが直撃する直前、明日香の場に聖なる障壁が展開され、闇の弾丸は弾け飛び消滅する。

 耐えた、そして相手の強力モンスターもこれで無駄に消えた。明日香がそう安堵した時、彼女は先程消滅した闇の弾丸から何かの残滓が噴き出ているかのように闇の霧が残っている事に気が付いた。

 

「仮面魔獣デス・ガーディウスの効果発動。デス・ガーディウスはフィールドから墓地へと送られた時、仮面を残す。

 己の怒りと復讐心を込めたその仮面の名は――[遺言の仮面]!」

 

 闇の霧の中に残されていた、仮面魔獣の身体にとり憑いていた三つの仮面。それが一つとなって新たな仮面が出現し、それは突如まるで襲い掛かるように明日香の場の茶吉尼へと飛び掛かった。

 

「茶吉尼!?」

 

「仮面魔獣デス・ガーディウスの効果により、相手フィールドの表側表示モンスター一体を対象としてデッキから[遺言の仮面]一枚を装備カード扱いとして対象のモンスターに装備する。

 そして遺言の仮面が仮面魔獣デス・ガーディウスの効果で装備されている場合、装備モンスターのコントロールを得る。

 私は遺言の仮面を仮面魔獣デス・ガーディウスの効果でサイバー・エンジェル-茶吉尼-に装備し、遺言の仮面の効果により茶吉尼のコントロールを得る」

 

「そんな!?」

 

 遺言の仮面が顔にとり憑いた茶吉尼は仮面魔獣の怒りと復讐心に支配され、破滅の光の支配下に落ちる。

 

「だが、ホーリーライフバリアーに守られた君は戦闘ダメージも受けない……私はこれでターンエンドだ」

 

「くっ……私のターン、ドロー!」

 

 破滅の光が幼い少年の顔でくつくつと意地の悪い笑みを浮かべながら、ターンエンドを宣言。同時に明日香も苦しい顔でカードをドローする。

 これで次のターン、再びカタパルト・タートルで茶吉尼を射出されれば、その攻撃力の半分、1350ポイントのダメージが襲い掛かってきて敗北。もしカタパルト・タートルを除去したとしても茶吉尼には貫通効果があり、そんじょそこらの守備モンスターではそれごと貫いてダメージを与えてくる。自らの切り札が牙を剥く、その恐ろしさを明日香は痛感していた。

 

(しかも、私のライフは風前の灯火。たとえ茶吉尼を除去したとしても、ちょっとした下級モンスターをカタパルト・タートルで射出されただけでも致命傷になる……)

 

 例えばさっきのターン出してきたメルキド四面獣。攻撃力はたったの1500だがそれを射出されるだけでも明日香のライフは尽きる。

 つまり茶吉尼はもちろんカタパルト・タートルも除去しなければ明日香の負けは決まったようなものだった。

 

(とにかく、この状況をなんとかしないと――)

 

 負ければ再び破滅の光の光の洗礼を受ける。その恐ろしさに明日香は身震いしながら、さっきドローしたカードを含めた手札を確認。手札は残ったアームズ・ホールと……

 

(……これは! そういえばあいつはさっきのターン……)

 

 考えが纏まり、この二枚の手札があれば勝てる。明日香はそう確信し、彼女が教会を見上げると再び祝福の鐘が響き始めた。

 

「祝福の教会-リチューアル・チャーチのさらなる効果発動! 自分の墓地の魔法カードを任意の数だけデッキに戻し、デッキに戻した数と同じレベルを持つ、自分の墓地の天使族・光属性モンスター一体を対象として発動、そのモンスターを特殊召喚する!

 私は墓地の契約の履行と機械天使の絶対儀式をデッキに戻し、自分の墓地のレベル2・天使族・光属性の[サイバー・プチ・エンジェル]を特殊召喚!

 サイバー・プチ・エンジェルの効果発動、デッキから[機械天使の儀式]一枚を手札に加える」

 サイバー・プチ・エンジェル 守備力:200

 

「儀式召喚か。しかし、手札に儀式モンスターと生贄にするモンスターはあるのかな?」

 

「おあいにく様。魔法カード[死者蘇生]を発動! 自分または相手の墓地のモンスター一体を対象として発動、そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する!」

 

「成程、それで儀式の生贄を揃える気か……」

 

「いいえ。残念だけど私の手札に儀式モンスターはない……私はあなたの墓地の[大邪神レシェフ]を特殊召喚!」

 大邪神レシェフ 攻撃力:2500

 

 明日香の場に蘇生されるのは破滅の光の切り札なのだろう大邪神レシェフ。その威圧に明日香は僅かに表情をしかめ、破滅の光もクククと笑みを零す。

 

「だが、たとえ大邪神レシェフの攻撃によってカタパルト・タートルを破壊したとしても、次のターン君の茶吉尼のサイバー・プチ・エンジェルへの貫通攻撃で、君のライフは尽きる」

 

 その言葉通り、ただの攻撃だけでは勝てない。だが明日香は不敵な笑みを消していなかった。

 

「いいえ、このターンで終わりよ! 大邪神レシェフの効果発動! 一ターンに一度、手札の魔法カードを一枚捨て、相手フィールド上モンスター一体のコントロールをエンドフェイズ時まで得る!

 私は機械天使の儀式を捨て、この効果を発動! サイバー・エンジェル-茶吉尼-を返してもらうわ!」

 

 大邪神レシェフが光を放ち、その光を浴びた茶吉尼を支配していた遺言の仮面が落ちると共に茶吉尼は明日香の場へと舞い戻る。

 

「残念だったわね。サイバー・エンジェル-茶吉尼-にはエンドフェイズ、儀式モンスターを手札に戻す効果があった。これで大邪神レシェフを手札に戻しておけば私に利用される事もなかったわ…(…よし! あとは[アームズ・ホール]でデッキから装備魔法[巨大化]をサーチし、茶吉尼に装備すれば。倍加した攻撃力でカタパルト・タートルを攻撃し、戦闘破壊。その貫通ダメージと大邪神レシェフのダイレクトアタックで勝てる!)」

 

 大邪神レシェフの場に一枚残る伏せカード。あれが攻撃反応系のトラップではないだろうという事は前のターンの攻防で推測できる。

 明日香はギリギリながら勝利を収める事が出来るという確信に笑みを零していた。

 

「ク、クク……クックック」

 

 その時、破滅の光が不気味に笑い出す。

 

「何がおかしいの!?」

 

「いや、私の想定通りに動いてくれたなと。斎王琢磨の言葉を借りれば――これが運命というものか?」

 

 声を荒げる明日香に破滅の光は笑いながらそう答える。その時明日香は気づいた。

 彼の場に一枚残った伏せカードが翻っている事と、その隣に一枚のカードが出現している事に。

 

「私は大邪神レシェフの効果発動にチェーンし、トラップカード[アームズ・コール]を発動していた。

 デッキから装備魔法カード一枚を手札に加え、その後、そのカードを装備可能な自分フィールドのモンスター一体に装備できる。私はデッキから装備魔法[反目の従者]を手札に加え、サイバー・エンジェル-茶吉尼-に装備しておいた。

 反目の従者の効果、装備モンスターのコントロールが移った時、装備モンスターのコントローラーに装備モンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える」

 

「なっ!!??」

 

「私の場のサイバー・エンジェル-茶吉尼-のコントロールが、君の大邪神レシェフの効果により、君の場へと移った。よって反目の従者の効果により、その攻撃力2700ポイントのダメージを受けてもらおう」

 

「そ、そんな……!?」

 

 元は破滅の光のモンスターである大邪神レシェフの効果により、元は明日香のモンスターであった茶吉尼のコントロールを明日香が得た事で、反目の従者の効果発動条件が満たされた。

 まるであべこべ。それでいてまるで自ら敗北の道に誘い込まれたかのような錯覚に陥った明日香がふらりとふらつき、無意識に縋るように茶吉尼を見上げた時、彼女は気づいた。

 遺言の仮面から解き放たれた茶吉尼の目に光がない。十代達から聞いた話でしかないが、まるで斎王に操られていた時の自分のように。

 

「さあ、自らのモンスターによって破滅し、再び我が洗礼を受けよ! 天上院明日香!!!」

 

 [ア、アアアァァァァッ!!!]

 

 破滅の光の叫びと共に茶吉尼が悲鳴のような雄叫びを上げ、その身体から放たれる真っ白な光のような衝撃波を受け、

 

「きゃああああぁぁぁぁぁっ!!!」LP700→0

 

 明日香のライフが尽きるのであった。

 

 

 

 

 

 その翌朝、早朝へと時間は進む。

 

(……アスカ、朝早くにデュエルをしたいからカレッジ近くの公園まで来てほしいってお願いされたから来てみたら……一体なにが……?)

 

 明日香のデュエルカレッジでの同期生である女性――レジー・マッケンジー。

 明日香に呼び出されて公園へと来た彼女は、明日香から有無を言わさずデュエルを挑まれてどうにも様子がおかしいと首を傾げつつも承諾。

 しかしデュエル中にレジーは彼女の様子もおかしさに気づく。彼女は冷静ながらも熱い心を持ったデュエルをしていた。しかし今の彼女のデュエルはまるで氷のように冷たいデュエルという印象である。

 

「私のターン、ドロー」

 

 そして明日香のターンへと移り、レジーはその間にフィールドの状況を整理する。

 今自分の場には切り札であるThe splendid VENUSと守りの要であるマシュマロンとジェルエンデュオ。伏せカードには相手の攻撃宣言時に相手モンスターの攻撃を自分の場のモンスター一体に集中させる立ちはだかる強敵。

 何が来ようとも攻撃を戦闘破壊耐性を持つマシュマロンに集中させれば相手の攻撃をスカせる事が出来、さらにVENUSの効果により相手モンスターは大抵弱体化を余儀なくされる。

 

(アスカは私と同じ天使族使いだから、弱体化までは期待できないけどネ……)

 

 そう心の中でレジーが独りごちた時、明日香が祝福の教会-リチューアル・チャーチの効果で[サイバー・プチ・エンジェル]を特殊召喚し、その効果で一枚のカードをサーチ。そして間髪入れずにそのカードを発動した。

 

「儀式魔法[機械天使の儀式]を発動! 手札の[サイバー・エンジェル-韋駄天-]とフィールドのサイバー・プチ・エンジェルを儀式の生贄とし、儀式召喚を執り行う! 出でよ、[サイバー・エンジェル-茶吉尼-]!! 韋駄天の効果発動、このカードが生贄に捧げられた場合に発動、自分フィールドの全ての儀式モンスターの攻撃力・守備力は1000アップする」

 サイバー・エンジェル-茶吉尼- 攻撃力:2700→3700

 

(く、まずい……)

 

 明日香の場に現れた茶吉尼の姿にレジーが歯噛みする。茶吉尼、明日香の扱いサイバー・エンジェルの中でも切り札級のカードであり、その貫通効果の前ではいくら戦闘破壊耐性を持っていようと守備力の低いモンスターはむしろいい的。

 それどころかここまでのデュエルで削られた残りライフの前ではあの攻撃力でマシュマロンを殴られればライフポイントが尽きてしまう。

 

「茶吉尼の儀式召喚に成功した時――」

「オーケー。ジェルエンデュオを墓地に送るわ」

 

 皆まで言うなとばかりに茶吉尼の効果を冷静に処理するレジー。

 ジェルエンデュオには光属性・天使族モンスターを生贄召喚する場合、二体分の生贄に出来る効果があるが、同時に戦闘でも効果でもダメージを受ければ自壊する厄介な特性もある。貫通効果持ちにノーダメージで立ち回れる状況ではなく、それなら茶吉尼の効果で除去する囮にするのが一番マシな使い方だった。

 

「続けて魔法カード[アームズ・ホール]を発動。デッキの上から一枚墓地に送り、デッキから装備魔法を一枚手札に加える」

 

(さて、何が来るのか……ライフはあっちの方が上だから、巨大化はないだろうけど……)

 

 アームズ・ホールによる多彩な装備魔法のサーチからの使い分けも明日香の得意戦術の一つ。何が来るのかと警戒するレジーに、明日香は一枚のカードを示した。

 

「装備魔法[白のヴェール]を手札に加える」

 

(白のヴェール……?)

 

 聞いたことのないカードだとレジーが首を傾げる。彼女の父はアメリカ・アカデミアの校長であると共に、今は亡き優秀なカードデザイナーMr.フェニックスの親友でもあった。その関係からカードデザインに携わる事も多く、そこから色々なカード知識を吸収していき今もなおその時の習慣から様々なカードの情報を仕入れている彼女をして未知のカード。

 まさかそんなレアカードを手に入れて嬉しくなってデュエルを挑んできたのかしら、と、アスカにも可愛いところがあるのね。とレジーは微笑を見せる。

 

「白のヴェールを発動し、茶吉尼に装備。バトルよ、サイバー・エンジェル-茶吉尼-でマシュマロンに攻撃!」

 

「レアカードを手に入れて嬉しい気持ちは分かるけど、そう簡単に負けてあげられないわ! 貴女の攻撃宣言時にトラップ発動[立ちはだかる強敵]! その攻撃対象をVENUSに変更してもらう!」

 

 VENUSの攻撃力は茶吉尼より低いとはいえ、無防備にマシュマロンを攻撃されて負けるよりはまだ次のターンに繋がるだけマシ……と、思ったレジーは怪訝な顔になる。立ちはだかる強敵のカードが翻らない。

 その時、明日香が冷たい笑みを見せた。

 

「白のヴェールを装備したモンスターがバトルを行う時、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない」

 

「な、なんですって!?」

 

「さあ、光の洗礼を浴びなさい、レジー!!!」

 

 仰天するレジーに明日香が叫び、同時に茶吉尼の攻撃がマシュマロンを切り裂く。その斬撃の威力そのものは軟体の身体が受け流したとはいえ、その真っ白な衝撃波までは防ぎ切れずにレジーまで届く。

 

「きゃあああぁぁぁぁぁっ!!」

 

 そしてその一撃が一気にレジーのライフを削り取り、彼女の意識は真っ白にホワイトアウトしていくのだった。

 

 

 

 

 

「デス・タイニー」

 

 場所は明日香が借りている部屋へと移る。

 そこに我が物顔で居座っている破滅の光がとり憑いた少年。いや、明日香に勝利して力を取り戻した破滅の光が少年の人格を完全に封印したため、もはや破滅の光が完全に身体を乗っ取っている彼――せめてもの慈悲として少年の名前であるタイニーを名乗る事にした破滅の光の前に明日香と、その隣でレジーが恭しく跪く。

 

「ふふ。またもう一人、我が洗礼を受けたか」

 

「はい。レジー・マッケンジー、タイニー様の手足となる事をここに誓います」

 

 タイニーの笑みを浮かべながらの言葉に、レジーは光を失った目でタイニーを見ながら誓いの言葉を述べる。

 

「出来ればデス・タイニーと呼んでほしいかな」

 

「お心のままに。デス・タイニー」

 

 デス・タイニー。少年の名前であるtiny(タイニー)に、破滅を意味するDestructionの頭文字Desを付けた愛称。

 この二つを組み合わせればDestiny(運命)となり、たかが遊び心だがこの世界を破壊する運命の子とすればなかなかに面白い遊びとなるだろう。

 

「まずはデュエルカレッジを掌握する。そして最後には遊城十代を倒し、この世界を今度こそ破壊する」

 

「「仰せのままに、デス・タイニー」」

 

 タイニーの言葉に、明日香とレジーはそれが世界の破壊に加担する事であってもなお、主に忠誠を誓うようにそう告げていた。




《後書き》
 なんか思いついたので書きました。大邪神レシェフ(を使う破滅の光の残滓)VS明日香。
 いや、ふと「大邪神レシェフをメインとしたコントロール奪取系デッキ使ったデュエル書きてえなー」とか思いついて、色々考えた結果何故か「破滅の光の残滓的な存在が大邪神レシェフをメインにしたコントロール奪取系デッキを使って明日香とデュエルし、再び破滅の光に洗脳する」という題材に落ち着きました。それ以上の理由はありません。
 ちなみに最終案のもう一つは「何故か大邪神レシェフを扱う明日香の従姉弟が飛び級でデュエルアカデミアに編入する。明日香メインヒロインおねショタもの」でした。絶対短編で終わらなくなるからボツにしました。
 そして短編です絶対続きませんこんなバッドエンドしかなくなりそうなもん書いてたまるもんですか!

 で、今回破滅の光がとり憑き支配した少年ことタイニー君。由来は作中でも最後(取ってつけたように)説明した、「Destiny」の後半取った「tiny」で、破滅を意味する「destruction」の頭文字「des」と組み合わせて、作中ラストに名乗った「デス・タイニー」(「des(破滅の)tiny(タイニー)」(言うまでもなく「運命」とのダブルミーニング))になります。
 ちなみに作者はダレン・シャンを日本語版小説と漫画版を読破しています。(唐突)


 では今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。

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