ロケット花火は構造的にシンプルで改造しやすい。
なんであんな危険なものが市販されているのかいまいちわからない・・・
8月。夏の青空に向かって、俺は右手のガトリングガンを掲げた。
「英梨々、準備はいいか?」
「いつでもOKよ」
「よし、発射!」
右手のスイッチを押す。これが内部のジェットライターに連結して、ロケット花火に点火していく。
弾数は10発で、左手で回転させることで連射が可能だ。フルオートにしたかったが予算が足らなかったこは言うまでもない。
シュッ!という音とともに一発目が撃ちあがった。弾けるよりも前に2発目がシュッ!と発射される。
「おっ、いい感じだな」
パンッ!高いところで音が鳴った。3発目は発射されない・・・
パンッ!と2発目が鳴ったところで、シュッ!と4発目が発射された。
・・・少し間延びしている。
振り返ると英梨々はスマホで俺の手元を映している。
シュッ!と5発目。そして、6,7と成功し、8が失敗。9,10が無事に発射されて、空でパンッ!と鳴って終わった。
俺は右手を下ろした。なんか、思ったのと違った感じになった。
「止めるわよ」
「ああ、止めてくれ」
ピッと小さな音が聞こえた。英梨々が動画を確認している。
「なんか、思ったのと違ったわね・・・迫力も連射性もないじゃない」
「・・・そうだな。まぁ最初だし、こんなもんだろ」
「倫也の青春はこれでいいのね」
「そんな青春の総括みたいいうなよ・・・」
「だって、倫也がガトリング砲作りたいっていったのよね」
そう。俺が言い出した。男のロマン『ガトリング砲』
ゲームの中では人気の武器の一つで、高い連射性と爽快感が売りだ。
俺はロケット花火を連射で撃てないものかと、設計し工夫したつもりだった。
「回転しながら連発で発射するというミッションはこなしただろ」
「爽快だったかしら?」
「いや・・・」
「外装はかっこいいのに」
「そっちに予算かけすぎじゃね?」
ガトリングの機構は俺が設計し組み立てた。もちろんシンプルな物で10個の円筒を円に組み込んだだけだ。それでも点火と回転には試行錯誤が行われている。
外装のデザインは英梨々が担当し、プラ板を金属色で塗装し、しかもLEDランプが内臓していて近未来的に光る。夜の方がより映えると思われる。
右手を包み込むような大型のデザインはかっこよく、文句のいいようもない。装着しただけでもテンションがあがる。
「回転させずに時間差で次々と着火させる構造なら、もう少し迫力がでたんだろうけどな・・・」
「やっぱり、弾倉もつけた方が良かったんじゃないかしら?」
「棒が邪魔で絡んじゃったからなぁ・・・短いと危ないのはみたろ」
ロケット花火の棒の部分が長すぎて、並べたものが順番に落ちてくるようなものは作れなかった。ちなみに棒を切ったロケット花火はまっすぐに飛ばずに非常に危険である。試してすぐに諦めた。そんなものを連発して発射したら危なくてしかたがない。
「改良の余地ってあるのかしら?」
「導火線を短くすると、もう少し連続で発射できるかもしれない。あとは弾を別なものにすることだけどな。円筒状のものから発射する構造は銃に該当するから違法性を帯びるしな・・・」
「じゃ、もう諦めなさいよ」
「そうする」
右手からガトリング砲を抜き取って地面に置いた。ゴツイみための割りには軽い。
「見た目はかっこよかったろ?」
「そりゃそうだけど、それデザインしたのあたしだし、そんなドヤ顔で言われても納得いかないわよ?」
「だよな」
とはいえ、2次元のものを3次元にするのはなかなか難しく、夏休みの前半は英梨々と
宿題を終わらせた後、これの制作にかかりきりになった。
「じゃ、次あたしのね」
英梨々は地面に設置した打ち上げ台に自家製二段ロケット花火をセットした。
こちらの構造は簡単で、1本のロケット花火を6本のロケット花火が囲っている。6本の方は追加された導火線でほぼ同時に着火する予定だ。
この構造の練習のために庭先で導火線を作っては燃やす練習をしていた。もう気分はテロリストである。その後一本の導火線が中央のロケット花火に点火する仕組みの二段構えだ。
英梨々の実験による計算が正しければ、一段目の6本が空で破裂する頃に、中央の1本が発射されるはずだ。
「倫也、撮影準備できたかしら?」
「画角は横からでいいんだよな。少し離れるか」
「そう言いながら逃げるんじゃないでしょうね」
実はちょっと怖い。何しろ1段目部分の6本は、和紙とセロテープという構造である。着火がバラバラ場合にどうなるのか?はたまた、無事に打ちあがるのかもわからない。
英梨々がチャッカマンを使って、発射台の下に出ている導火線に火をつけ、走ってこちらに逃げてきた。
シュ・・・シュン
点火した音が聞こえるがすぐには打ちあがらない。失敗か?と思ったところで、
シュバッーーーーー!!と音を立てて、ロケット花火の束が打ちあがった。
「おおっ」と2人して見上げながら声を出してしまう。
パンっ! パンパンッ!
連続した破裂音の後に、二段目のロケット花火が打ちあがった。「シュ」という音はもう聞こえない。
「成功したわね」
英梨々が手で光を遮りながら、二段ロケットを見つめている。かなり高くまで打ちあがったいた。
『パッ』という、乾いた音が微かに空に鳴った。
パチパチパチパチッ・・・と英梨々が自分で小さく拍手している。
「倫也、撮影できた?」
「できたと思うぞ」
かなり明るいので手で隠さないと動画が見えない。英梨々も今は確認するのは諦めたようだ。
「どやっ」と言いながら、英梨々はふふん♪と、作ったようなドヤ顔をこちらにみせた。
なんか、腹立つ。俺のは確かにしょぼかった。だが、それは認めたはずだ。
「結局さ、英梨々には男のロマンがわからないんだな」
「はぁ?何言ってんの。ただの負け惜しみよね」
カチーン。
「自分だけ成功したからって、舞い上がって喜んでんじゃねーよ」
「ロケット花火だけに?」
・・・おあとがよろしくないので、この後ロケット花火のゴミを集めて帰った。
(了)