アンジュ・カトリーナ、ヘルエスタ王国の国家錬金術師の資格を持っている錬金術師の天才と言われている錬金術師であり稀代の錬金術師などと言われている。その反面、彼女の私生活はズボラと言っても過言ではなく常にカップラーメンを食べ、床には本が散乱し彼女が書いたと思われる研究資料が散らかっている程部屋は汚い。それはリビングとダイニングか併用されている部屋も同じで散らかっている部屋のソファーの上で彼女は、つい先日まで戦争に参加していた様な面影はなくあどけない寝顔を浮かべ熟睡していた。
「……ん、んん」
ソファーの上で器用に寝返りを打つ彼女の他にもその部屋には、白髪に青いエクステを入れているオレンジ色のエプロンを着たポニーテールの少女がおりキッチンで鼻歌を歌いながらも朝ごはんを作っていた。
ーートントントントントン
少女は慣れた手つきでまな板の上に置いてあった大根を切り刻む。心地の良い音を発しながらもまな板の上で切り刻まれた大根を少女は隣で沸騰しかけていたお湯の中に投下する。入れ終わると少女はキッチンの隣にあった冷蔵庫を開けて味噌を取り出し、下の収納だなから味噌を越すようお玉を取り出す。そのお玉の上に箸で味噌を乗せ沸騰していたお湯をある程度収まったあたりで、そのお玉をお湯につけ溶け始め味噌の匂いが漂い始める。
「……ん、あれ、この匂いは」
その匂いに誘われてアンジュは目を覚まし体を起こす。
家中に広がる味噌汁の匂いに釣られて起き上がったアンジュは頭が回らない中ソファーから降り、おぼつかない足取りで積み上げていた本を倒しながらもキッチンにいた白髪の少女ーーリゼ・ヘルエスタに後ろから抱きつく。
「あ、やっと起きた、おはよう、アンジュ」
「……おは、よう、リゼ」
辛うじてアンジュがそう返したのを聞いてリゼは苦情を浮かべる。
あの戦争が終わって以降、アンジュの家にはリゼが毎朝、家に来るようになった。一昔も何回かあったもののここ最近だとほぼ毎日の様に、それこそ、通い妻と過言ではない状態だった。
「アンジュ、今ご飯作ってる所なんだから抱きつかないでよ」
「んーんー」
リゼの首元に顔を埋めたアンジュは首を横に振る。それを受け入れているのかそれ以上何も言わないままリゼは調理を続ける。アンジュに抱きつかれて料理をする、それがまるで日常かのようにリゼは手際良く料理を進めて行く。
「ん、この味でいいかな」
しばらくして味噌汁の味見をリゼが終えると共に、主食にする魚が焼き上がる音やご飯が炊ける音がする。それは即ち今朝のメニューが一通り揃ったという形になった。
「ほら、朝ご飯が出来たから一緒に準備しよ?」
「うーうん」
「ほら、目を覚ましなって」
首元に顔を埋めているアンジュの頭を寄せて彼女の口にキスをする。一瞬、小鳥な啄むようなキスだったものの彼女を起こすには十分すぎる刺激だった。
「起きた?」
ニコリとはに噛むように笑ったリゼ、それと対極的にアンジュは顔を少し赤らめながらも視線を逸らす。
「……起きた」
「なら、一緒に準備しようか」
リゼから離たアンジュはキッチンの上の棚の扉を開け、数少ないお皿を手に取り始める。
「ごめんな、最近、毎朝の様に朝ごはん作ってもらってさ」
「いいよ、いいよ、こうでもしないとアンジュはご飯食べないしまともな物も食べないでしょ?」
「まぁ、それは否定できないな」
アンジュが下ろした皿を何処からともなく取り出したお盆の上に乗っけてリゼは楽しそうに魚や味噌汁、ご飯を盛り付ける。そんな彼女を見てアンジュは目を細める。
もし、このまま順調に育ったったらいいお嫁さんになるだろうなぁと頭の片隅で彼女は思うけど。
「あ、そうだ、アンジュ」
「ん、あーなんだ、リゼ」
棚を閉めたアンジュと彼女の事を見たリゼの視線が合い、リゼの紫色の瞳がキラリと光る。
「今日、宮殿に来てもらえる?」
「どうしてだよ」
訝しげにしているアンジュを他所にパチっとリゼはウィンクをする。
「数日前の戦争の功績の話よ」
そこでおおよそ話の流れをアンジュは理解する。
先日の戦争が終わった後、同盟パーティは開いたけど、勲章やら何やらの授与式が行われていない。だから、この誘いは多分それでこいと言っている。だからと言って、行きたいかと言われると、正直な話、面倒臭いから行きたくない。
「えー行きたくないって言ったら?」
「ここで食べ物に睡眠薬投下して強制的に連れて行くから」
ニッコリと目を瞑りリゼは脅迫するような笑みを浮かべる。
多分ここで駄々を捏ねたところで未来が変わる事はないと悟る。
「あ、はい、自分で行きます」
「よろしい、じゃ、はい、これ、アンジュの分」
リゼに朝ご飯一式が乗ったお盆を持たされたアンジュは、振り返りダイニングルームに置かれている机の上に置いて椅子に座る。その彼女の前に同じくお盆を机の上に置いてエプロンを脱いだリゼが座る。
「あ、そう言えば、昨日、とこちゃんとあってさ、最近私たちの周辺で私達を嗅いでいる何者かがいるかもしれないから二人とも気をつけてだって」
「え、急にどう言う事だ?」
眉間に皺を寄せたアンジュにリゼは肩をすくめる。
「知らないよ、私も会っていきなりそう言われただけだからね」
「そっか、なら、用心しておくべきだな」
「うん、それがいいと思うよ」
ぐぅーとタイミング良くアンジュのお腹が鳴り彼女は顔を少し赤らめる。それを見てリゼはふんわりとした笑みを浮かべる。
「さぁ、ご飯食べよ」
「あ、あぁ、そうだな」
机の上に置いてあった箸を手に取って二人は朝ご飯にありつくのだった。