Refrain - Welsh Dragon:Ddraig×Ddraig   作:桜咲く日に

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迎撃の備えを

 旧校舎二階にて、ふたりに女王を加えた形での密談があった──それは、ゼノヴィアと祐人との決闘が行われた、その日の陽が落ちた後のことであった。

 支取蒼那──ソーナ・シトリー。駒王学園の生徒会長でありながら、加え、魔王セラフォルー・レヴィアタンの実妹である彼女は、鼻上に掛けられた眼鏡を右手の中指で軽く押し上げた。それに釣られるように、切りそろえられた前髪の毛先が揺れる。耳元より僅かに下であるショートのそれは、小猫よりも短かった。

 利発そうでいて、しかし、時として狡猾さを窺わせる相好はまさしく、策士という形容に沿っていた。

 背後にいるのは、女王の真羅椿姫である。

 ソーナは面前にいる──自分と似通ったら境遇である女へ視線と言葉をくれた。

 

「では、リアス。あなたは──いや、あなた達は、教会からの遣いと行動を共にするということですね?」

「……怒ってる?」

 

 リアスは僅かに顎を引き、そして上目遣いがちにソーナの顔色を窺う。それはやはり、グレモリーの彼女──というよりは、同胞に見せる少女のそれと言ったほうが適切にある。

 ソーナは一度睨むようにしてから、しかし、首を軽く左右へと振り、そして息を吐いた。

 

「……呆れています。グレモリー眷属がこな町外で何かをするのなら、いいでしょう。しかしですね、この町──果てはこの駒王学園を巻き込むことになるかもしれないという状況下において、私に無断でエクソシストと手を組んだというのは、少しひどいのではないですか」

「……いや、あのさー」

「言い訳はなしですよ」

「……ごめんね」

 

 リアスは呟くようにして、謝罪を口にした。リアス自身は、一誠のこともあって、気が回らなかったのも確かであった。いまだに赤龍帝を欲しがる悪魔は絶えることなく、存在していた。

 ひどく申しわけなさそうなリアスに対して、ソーナはこの件はとりあえずいいとして、とだけ言うと、話題を変えた。

 

「赤龍帝のこともそうです。私はそれを世界に発信されたあれで知ったんですよ? 他にも気が付けばあなたの婚約の問題も解決していますし……私はそこまで信用がないのですか、リアス」

「ち、違うわ」

「少しはあなたのために奔放していた私を労ってもバチは当たらないでしょう。老婆心が過ぎると言われれば、悲しくもそうなのかもしれませんが」

 

 二度目のため息は、先程よりも深くつかれた。ソーナにとって、正直なところ、気にとめてしまうのは町のことよりも、親友であるリアスのことであった。

 ライザーとの一件に胸を痛めていなかったということは、前述からしても有り得なく、むしろ、悩み続けていた。しかし、気がつけばそれらの全ては終わっているのだ。

 なんともし難い想いである。

 だからというわけではないが、今回のことで少しばかりリアスを責めたい気持ちになる。ちょっとでも自分の言葉で傷つくのもいい。それくらいは許されると、意地が悪くも思ってしまうのは、まあ、仕方がないのだろう。

 今、リアスが自責の念に駆られているのかどうか、胸襟の内をソーナが見ることは叶わないが、しかしそれをする意味もないのだろうと思う。リアスが外見からでも充分に責任を感じていることが分かるからだ。

 ソーナはそれを確認すると、やがて本題へと入っていく。

 

「まあ、いいでしょう。とりあえず──話を戻します。リアス、単刀直入に訊ねますが、あなたはコカビエル及びエクスカリバーの件をどのように解決するつもりでしょうか」

 

 ソーナの問いに、リアスは相好をひとまず変えて、グレモリーの長としてのそれとなり、応える。

 

「未定の部分はあるけれど、でも、エクソシストと組みコカビエルを迎えることは決定しているわ。詳しくは明日ね。けれど、私とソーナ、そして──赤龍帝をつけねらうことは確定していると言ってもいい」

「ですね……特にあなたは狙われるでしょう。なんと言っても──ルシファーの、妹なんですから。

 それに──こう言うのはなんだか、悔しいのですが、赤龍帝を拾ったのも、ルシファーの妹であるが故に──紅髪が縁を呼んだのだ、なんて想像をしている者どももいるでしょうし、それを顧みれば、あなたはあまりに狙いやすい目標でもあります」

「だから──お願いがあるの。ソーナ」

 

 リアスが眼光を強める。

 

「ここは人間が住む町。私の、町でもある。そして──コカビエルには、そんなものは関係ない。つまりは、この町ごと壊したって構わないような奴でもある。だから、」

 

 ソーナが継ぎ、言葉を発す。

 

「だから、せめて私たちには後方のサポート。要するにあなた方は敵を倒すから──私たちは町を守れ、と」

 

 ええ、と言ってリアスが頷く。

 

「手柄があなた方のほうが大きいようですが?」

「あら、手柄を取りたいようなタイプだっけ、あなたは?」

「まさか」

「ふふ、でしょうね」

 

 軽く互いに笑い合ったところで、ソーナが言った。

 

「分かりました。しかし、事前に魔王様たちにはお伝えしますよ。もちろん、エクソシストの言い分からして、天界側には悪魔との協力などあり得ないのでしょうから、魔王サイドが大きく動くことは難しいでしょうが、けれどそれは向こうの都合。私たちの町に被害が出そうなのであれば、最善の形で堕天使を迎えるのは、天界の与り知るところではありません。椿姫」

「なんでしょうか、会長」

 

 ソーナの声に真羅椿姫が反応し、前にでる。

 ソーナは凛々しさを崩すことなく、告げた。

 

「眷属に伝えなさい。私たちは今回の件、徹底してサポートに回ることを」

 

 して、女王の返信は。

 

「──了解しました、会長」

 

 

 この日、この時、この場所で。

 魔王実妹二名による、加えての天界的使者による堕天使コカビエル迎撃の連携が、繋がりを見ることとなった。





短いのかもしれませんが、しかし、ご勘弁下さい。
小説を書いていられる心境では一切ありませんでした。


次回からは、文字数を増やし、そしてバトルなども交えていこうと考えています。

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