ラーメン大好き小泉さんU 俺と彼女の不可思議な幸福 作:しゅみタロス
凛「はあ……」
仕事の最中、俺は韓国系のレモンスカッシュを手にカウンター席で後ろめたさに襲われていた。それもそのはず俺には好きな人が二人いてどちらかを選ばなければならない。その選択の時がとうとう来てしまったのだ。昨日の夏祭りの件で俺は悠に告白された。その時の俺の返答は……
凛『気持ちは嬉しけど、その返答はまだできない。真剣に、考えさせてくれ』
この回答の際、俺は近くでこの一部始終を見ていた小泉さんに気付いていた。だからこそ迂闊に返事が出来なかった。だがいつまでも2人への返答を先延ばしには出来ない。どちらにせよあと2日、いや1日でも早く2人に対する答えを決めなければ。
七海「迷ってる?」
凛「あ、フレデリカさん」
隣の席に現れたのはフレデリカさんだった。
凛「珍しいですね、昼間に来るなんて」
七海「今日は取引先の企業の人がこっちに来るので出迎えついでにここに寄って来たんです。とは言えまだ3時間もありますが」
凛「フレデリカさんは恵まれてますね、何でも叶って」
七海「不本意ですけどね」
俺はそんなフレデリカさんに聞く。
凛「フレデリカさんは、自分の事を最低だと思った事。ありますか?」
七海「自分が最低か……少なくとも僕は何でも思い通りになる自分の体質故に、周りから陰口叩かれてましたしそんな自分を恨んだことはあるかな」
凛「成程、俺と同じで幸せを恨んでたんですね」
七海「じゃあ、君は何故今の自分が最低だって思えるの?」
俺はフレデリカさんを信じて答えた。
凛「好きな人が2人いるんだ、一人は小泉さんもう一人は悠、どちらも俺にとって大切な友人で、高校に入ってから楽しくやってた。でも、昨日の夏祭りで俺、悠に告白されたんだ。その時には答えが出せなかったけど今になって悩んでる。初恋の悠を取るか、それとも、長年付き合い続けてきた小泉さんを取るか。
正直言って、どっちを取れば後悔しないのかの選択を迫られてるんだ」
俺には重すぎる二択、今まで友達関係で満足してきて今更になって目を背けてきた問題に真っ正面からぶつかっている。それはそれで男として情けないが。
七海「聞いてみたら随分ヘビーな内容の悩みですね」
凛「ただ、どちらにしても初恋と幼馴染、大事な方を一つ選べと言うのは……」
フレデリカさんにこの相談は流石に不味かったか、黙り込んでしまった。
7秒の沈黙の後、フレデリカさんは口を開いた。
七海「一つ、凛君に聞いても良いかな?」
凛「な、何を?」
フレデリカさんはこう答えた。
七海「君にとっての初恋は確かに大切だと思う。でも、初恋以上に大切なのって、一緒に居続けてどうだったか、満足できたかだと思う。少なくとも僕は過ごした時間を大切にしたいし、どちらにしてもそれを無かった事にはしたくない。
だから、凛君は2人の中で、過ごした時間が尊いと思った方を、選べば良いと思う。凛君は誰と居て楽しかった?」
その時、
俺の脳裏に浮かんだのは……
凛「何やってんだ……俺……」
ようやく気付いた自分の気持ち、多少の罪悪感を感じながらも俺は顔を覆うのだった。
七海「それでいい、君の大事な物を裏切らずに済んだでしょ」
凛「はい、ありがとうございます」
するとフレデリカさんは俺の肩を叩いてこう言った。
七海「前に進むのにいい言葉がある。
世の中はゲームだ、勝ち負けで人生も変わっちまうクソッタレのな」
凛「え?」
七海「僕と仕事をしている、ある神様の言葉だ。その神様は君と同じで日々向き合う事を続けている。
君の答え、すぐにでも伝えてくると良い。行ってきて、凛君」
凛「フレデリカさん、ありがとうございます」
そう言って俺は一礼するとスマホと財布を手に夕暮れの外を飛び出した。
孔「ようやく覚悟を決めたらしいな、あの息子は……」
七海「余計なお世話でしたか?」
孔「いや、寧ろ感謝してるよ。あいつの背中を蹴ってくれて、礼を言う」
その頃俺は
ピンポーン
悠『あ、はい、どちら様で』
凛「こんばんわ、凛だけど、これから時間ある?」
ガチャガチャ
悠「凛君!!」
物凄い音と共に扉を開ける悠、俺は悠の手を掴む。
凛「悠の告白、返事をしに来た」
悠「!!!!」
動揺する悠に対し、俺は心を落ち着かせて近くの噴水の公園へとやって来た。
凛「それじゃあ、伝えるよ」
悠「わかった、聞かせて」
俺は一呼吸置くと語り始めた。
凛「悠は俺と一緒で、優しい人だ、誰とでも本心から向き合える事、だから俺は悠を好きになったんだと思う」
悠「……!!」
顔を赤くする悠だが俺は言葉を続けた。
凛「でも、俺には悠以上に大切にしなきゃならない人がいる」
悠「え……」
凛「俺はこれまで自分に寄り添い続けてきた人、その人の気持ちに対してどこかで気づいていた。だからこそ、俺はその自分の夢を隣で応援してくれた彼女。
小泉さんを幸せにしたい。
だから、ホントにごめん」
それを聞いた悠は、
悠「そっか、
そうだよね」
今にも泣きそうな悠の頭を撫でる。
凛「ありがとう、悠」
悠「凛君、早く小泉さんの所へ行ってあげて」
凛「いいのか?」
悠「伝えてあげて、凛君は小泉さんを選んだよって」
凛「わかった」
そうして俺は悠を送り届けると小泉さんの自宅まで走るのだった。