ラーメン大好き小泉さんU 俺と彼女の不可思議な幸福   作:しゅみタロス

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企画2 店の裏レポート

客1「エビチリランチお願いします」

客2「春巻きとレモンチューハイ追加で」

凛「かしこまりましたー」

 

土曜日の昼時、俺は大廉時中華飯店に来るお客さんの接客に追われており、メニューを取っては出来た料理を次々に運んでいた。

 

凛「はい、ギョーザランチの方、お待たせしました」

安田「ありがとう、相変わらず凛君も働き者だねぇ」

凛「ええ、これも修業ですから」

安田「ははは、つくづく真面目だな」

 

そう言ってギョーザを食べる白い髭の男性、この店にかれこれ40年通い続ける現役弁護士の安田孫介ことアンダーソンさんだ。この街でアンダーソン法律事務所と言う名の通った事務所を経営している。人の事情に首を突っ込むのが好きと言う少し変わった人でもあるのだが……

 

安田「凛君、一応言っておくが」

凛「?」

 

安田「常に背後は気にした方が良い、刺されかねないからな」

 

振り向くとそこには……

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!

 

凛「!!!!」

 

無言の圧力で今にも俺を潰しかねない小泉さんが座っていた。

 

安田「責任はしっかりとれよ、な」

 

逃げ道すら塞がれた俺は小泉さんに声を掛ける。

 

凛「いらっしゃいませ、それではご注文を……」

小泉「放置された私に言う事あるんじゃないの」

凛「気持ちは分かるけど俺仕事中だし……」

 

小泉さんはコップにセルフの水を注ぐと答える。

 

小泉「かに玉ランチ、揚げレンコンの甘酢かけ単品、ご飯大盛りで」

凛「かしこまりました」

 

そう言って立ち去ろうとすると小泉さんは声を掛ける。

 

小泉「これ終わったら、北極行きましょう」

凛「ほ、北極かよ……あれはヤバいぞ……」

小泉「当たり前、シカトした罰ゲームだから」

凛「わかったよ、とりあえず終わるまで待っててくれ」

小泉「ふふッ♪」

 

悪戯な笑みを浮かべる小泉さん、北極って何だよと思う人もいるだろうがこれについては後々話すとして、俺は出来上がった小泉さんの注文したメニューを運ぶのだった。

 

凛「お待たせしました、かに玉ランチ、揚げレンコンの甘酢かけ単品、ご飯大盛りです」

 

目の前には大きなかに玉、中華スープ、キュウリの中華漬け、ご飯。その横にはキャベツの上に黄金色に揚げられたレンコンの上に甘酢がかけられ、香ばしい音と匂いを出している。

 

目を輝かせながら小泉さんは散蓮華を取る。

 

かに玉を二つに割ると具が溢れ出し、ふわふわの卵と一緒に掬い上げる。小泉さんはそれをご飯の上に乗せるとゆっくりと馴染ませ、ご飯と一緒に口に含んだ。

 

小泉「はう、はふッ、ん―ーーーーー♡」

 

可愛く声を上げながら食べるとそれを飲み込み、恍惚とした表情でキュウリの中華漬けを箸で掴む。

 

ごま油と醤油、唐辛子の辛みを感じるが小鉢と侮るなかれ、ご飯を食べる量は加速する。

 

次に小泉さんは揚げレンコンの甘酢を取る、分厚く、シャキッとした食感のレンコンとサクサクの衣、じゅわりと染みこむ甘酢が絡み、下に敷かれたキャベツと一緒に食べればザクザクの食感を楽しめる。

 

小泉さんは手を止めることなく、美味しそうに食べていた。

 

俺は厨房に戻ると父さんがチンジャオロースを作っていた。

 

凛「父さん、次はどれ持ってく?」

 

父さんは答えた。

 

孔「凛、お前はもう何もしなくていい。小泉と約束があるんだろう?行ってやれ」

凛「え?良いの、でも仕事が……」

 

父さんはチンジャオロースを皿に盛るとこう伝えた。

 

孔「仕事を理由に女との約束をフイにする様な息子に育てた覚えはないぞ、ラーメン屋行くんだろう、他の店の味を学んだ方が良い

 

行ってこい、後は風と何とかする」

 

父さんの言葉に背中を押された俺はタオルを解いた。

 

凛「わかった、行って来る」

 

そうして俺はジャージに着替え、ウェストポーチを付けて小泉さんの元に向かった。

 

 

 

 

 

店に向かう途中、俺は新刊の小説を買う為に書店に寄り道していた、中華料理のレシピ本を立ち読みする小泉さんの近くで会計を済ませると小泉さんが寄って来る。

 

小泉「それ、桜葉桃八先生の新作だよね?」

凛「ああ、面白いぞ。見るか?」

小泉「後でね」

 

すると後ろから……

 

悠「小泉さああああああああん!!」

小泉「ええ……」

凛「おお、悠!!」

 

突然悠が走り向かって行く。

 

悠「二人とも、ここに来てたんだ」

凛「ラーメン屋に向かう途中」

悠「じゃあ、一緒に……」

 

美沙「へえ~、付き合い無い割には男がいるとか……

 

意外だね、小泉さん」

 

突然意味ありげな少女がこちらを見てくる。

 

凛「君は?」

 

美沙「初めまして、中村美沙よ。悠とは友達なの」

悠「まあ、仲良くしてよ」

凛「それじゃあ、よろしく」

 

小泉さん「凛君、私から間隔7センチ。少しでも離れたら北極2杯だから」

凛「北極を脅しに使うのはどうかと思うぞ」

 

美沙「北極?」

凛「折角だし、美沙もついてきなよ」

 

そうして俺達は書店から少しバスに揺られ、ラーメン屋を目指した。

 

 

そして

 

悠「今日はどんなラーメンなの?」

小泉「この店は激辛ラーメンの鉄板中の鉄板の店です、中でもここに来る人の大半は北極ラーメンですが素人が下手に挑むと地獄を見ます」

凛「因みに俺はここで北極ラーメンを罰ゲームとして食べる事になってる」

悠「凛君、何やったの?」

凛君「ちょっとな……」

 

店で小泉さんを無視したとは言えず、少しはぐらかした。

 

凛「美沙はどうだ?辛いの行ける?」

美沙「ええ、こう見えて辛いのは結構好きよ」

凛「それは良かった」

 

店主「お待ちどう、北極ラーメンです」

 

目の前に出されたラーメンは……

 

悠「な、なにこれ……マグマ、凄く赤い……」

美沙「それに顔を近付けるだけで汗が……」

凛・小泉「いただきます」

 

悠「ええッ!!」

 

何食わぬ顔で俺はラーメンを啜り始めた。

 

凛「ッ!!」

 

喉を焼き尽くすかの如く、強烈な辛みが襲って来る。その横で……

 

悠「はあぁ……辛い……辛いよぉ……でも止まらないよぉ……」

 

涙を流しながらラーメンを啜っていく悠、言っている事とは裏腹にどうやら美味しい様だ。

 

美沙「はあ、はあ、この辛さ……身体が熱くなるわね……でもいいじゃない……」

 

白くなる息と同時に麺を啜り、途中から辛みが麻痺してその旨さに驚く。北極ラーメンは食べ進めるほどこの辛さに病み付きになっていく。

 

スープを飲み干した頃には辛さがどうでもよくなっていた。

 

凛・小泉・悠・美沙「ごちそうさまでした」

 

帰り道

 

美沙「あの店、良かったわね」

凛「罰ゲームにしてはかなり楽しかったな」

小泉「もう、凛君はそうやってなんでも楽観的に見るから……」

美沙「小泉さん、凛君の前ではそんな顔するんだ」

小泉「?」

美沙「いや、何でもない、それじゃあ私家この辺だから」

小泉「私もここで、ありがとう。凛君」

凛「おう、気を付けてな」

 

2人を見送ると俺は悠と二人で帰路に着く。

 

噴水のある公園に差し掛かると悠は……

 

悠「ねえ、凛君。小泉さんって凛君にとって大事なの?」

凛「なんだよ、藪から棒に」

悠「小泉さん、私の目の前であんな顔しないから。よく思われていないのかなって」

 

俺は思っていたことをそのまま言葉にした。

 

凛「見てくれの通りだ、でも俺さ。小泉さんの事は大事だけど恋人にはまだ踏み込む勇気が無いんだ。情けないけど」

悠「そっか……悩んでるんだね」

 

俺は暗い空を見上げるた。

 

凛「小泉さん、悠の事は友達だと思ってるよ。対応がそっけないだけで悪い奴じゃないから。

 

それに、悠も俺から見れば優しいよ、一緒に居たいと心からそう思えるぐらい」

悠「え……」

 

不意に言われた発言に悠は突然顔を赤くしてしまう。今のは軽率だったか。

 

 

悠はその後、目を合わせてくれずそのまま帰ってしまった。

 

何やってんだよ、俺……

 

 

 

 

 

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