ラーメン大好き小泉さんU 俺と彼女の不可思議な幸福 作:しゅみタロス
安田「で、最近周りで女子と関わる事が多いと?」
凛「はい、そのせいで以前ちょっと無礼をやらかして……」
北極の件から3日、俺は仕事の休憩を利用してアンダーソンさんに相談していた。
安田「その後は出会ったのか?」
凛「はい、連絡を取り合うぐらいには。でも若干ぎこちない感じで……」
安田「若いもんがそんな調子じゃこの先思いやられるなあ」
凛「なんかすみません、自分の事なのに」
安田「まあ、これまで小泉さんと二人でやって来たんだろう?女の子が増えたところで寧ろ良い事じゃないか。関係は広く持った方がいいぞ、俺の様にな」
凛「そうですね、自分なりに考えて付き合っていこうと思います」
安田「それでいいんだよ、悩むぐらいが丁度いい、世の中そういうモノだ」
ガラッ!!
凛「いらっしゃいませー」
潤「あ、どうも」
入店してきたのは空気感が爽やかのメガネの女子高生。少なくともウチでは見ない人だから新参のお客さんか?
って制服どう見ても小泉さんと同じ学校じゃん!!
凛「空いている席にどうぞ」
俺は水の入ったグラスを渡す。
凛「この店、初めてですか?」
潤「ええ、今日は待ち合わせでここに」
待ち合わせか、この店に来る高校生は現状小泉さんと悠の2人だけ。切り込んでも良いかもしれないな。
凛「待っている人、絶対小泉さんと悠と美沙なんじゃないか?」
潤「ええ!!し、知ってるんですか!!」
やはりな、この人も小泉さん達のご友人か。
凛「友達兼この店の常連、よく一緒になって遊んでるんだ」
潤「じゃあ、君が悠の言ってた」
凛「大廉時凛です、初めまして」
潤は納得したように笑みを浮かべる。
潤「高橋潤です、友達がお世話になっています」
その頃店の外では……
悠「小泉さんこっち!!」
美沙「なんでこうなるのよ!!」
小泉「追って来る、この先に凛君が」
そして強引にウチの扉を開けられるのだった。
小泉さん「凛君!!」
凛「いらっしゃいってその姿、何があったんだ?」
息を荒げる3人その後ろから……
若者1「あ、どうもーす」
若者2「いやーすまないねぇ、ちょっと失礼するよ」
笑顔と裏腹に一つ腹に抱えた男共。
凛「どういった状況でしょうか、これは」
若者1「彼女たちにラーメン奢ろうとしたんすよ、そしたら店に着くな否や逃げ出して」
若者2「まあ、とりあえず彼女たち連れてすぐ引かせてもらうんで。迷惑かけてすみません」
男は小泉さんたちに近付く。
悠「あ……」
美沙「い……」
小泉「や……」
この状況、見過ごすわけにはいかないな。
凛「失礼ですが」
若者1・2「!!」
凛「ウチはただの中華料理屋、客に飯を食ってもらって幸せになってほしいと言う思いで看板を掲げてる。
飯を食うなら席に、食わない、あるいは客とのトラブル目的ならお引き取りいただきたいのですが、
どうされますか?」
若者1「で、でも彼女たちとの約束が……」
美沙「ビジネスホテルで約束した覚えはないわ!!」
悠「そうだよ、何するつもりだったのさ!!」
凛「ふーん、そういう事か」
若者2「よ、余計な事を……」
これでこいつらが黒なのは証明できた。
凛「5秒以内にこの店からお引き取りください」
若者1・2「え?」
凛「でなければわいせつ未遂で警察に通報しますよ」
若者1・2「すすみませんでしたアアアアアアアアアア!!」
店から逃げ出した二人を見届けた俺は3人に声を掛ける。
凛「皆、大……」
潤「悠、皆、良かった~」
美沙「心配かけたわね」
潤「凛君、ありがとう」
凛「良いよ、このぐらい」
安田「俺も加勢しようと思ったが、よくやるじゃないか」
凛「あんなの父さんやアンダーソンさんが出る必要ないよ」
すると店の奥から……
孔「ご苦労だったな、皆、走って疲れてるだろう」
小泉「ええ、お腹空いてます」
美沙「私も……」
すると父さんは壁紙に指を指す。
孔「今日は良い鶏ガラが手に入ってな、1週間限定でゆず鶏白湯ラーメンを出している。良かったら食っていけ」
俺は寧ろ食べたかったんだよな~、ナイス、父さん。
悠「鶏……パイタン?……」
小泉「鶏白湯とは鶏ガラや鶏骨を白濁色になるまで煮込んだスープの事、通常豚骨よりも油が軽く、濃厚な味に反してサッパリさが強い。因みにパイタンは白い湯と書いてパイタンと呼びます」
潤「詳しいわね、流石ラーメン屋を渡り歩いているだけあるわ」
小泉さん、説明しながらヨダレ垂らすのはみっともないぞ、まあいいか。
凛「じゃあ、父さん。俺も含めて5杯頼むよ」
孔「オーダー承りました、少々お待ちください」
待っている間、隣にいる潤から話を聞かれることになった。
潤「小泉さんとは仲いいの?」
凛「昔からつるんでいたよ、今となっては一番この店の事情に深く関わってる」
小泉「凛君の全てを知っているのは私だけ、凛君の全てを支えるのも私だから」
潤「なんか小泉さんキャラ違くない?」
小泉「凛君の前ではかわいい女の子でいたいから、それが凛君の前での私の在り方、ねえ~凛君」
凛「腕にすり寄るなよ、一応客がいるんだから」
美沙「小泉さん、なんて都合のいい女ッ!!」
悠「そう怒らずに仲良くね」
潤「あの、つかぬ事をお伺いしますがもしかして恋人同士とか?」
やっぱ聞かれるよなぁ、まあ答えても良いか。
凛「ただ幼馴染で仲がいいだけなんですけど、何れはそうなれればみたいな」
潤「じゃあ、今なっても良い気がするような……」
凛「いや、それはその……」
すると店のカウンター席から
孔「はい、ゆず鶏白湯ラーメン、お待ちどう様」
風「たくさん食べてね~」
潤「あなたは?」
風「凛の母の風です。あ、因みに鶏チャーシューは私の手作りなので期待してね。よろしく~」
凛・小泉「いただきます」
美沙「早くない!!」
ツッコミはさておきラーメンに集中しよう。
鶏の濃厚な白湯スープに、皮ごとすりおろした柚子が浮かぶ。麺は細くストレートだが啜ればそのコシの強さに唸る。鶏の旨味が引き出された白湯スープは強い濃厚な味と塩がそれを引き立て、後から来る柚子の風味がとても優しく、爽やかだ。ネギと合わせれば辛みと白湯スープが刺激を強くし、上に豪快に3枚乗せられた鶏チャーシューから濃い油と肉質が良く一口食べれば甘く、上質な味がする。
進めば進むほど惹かれていく、これがウチのゆず鶏白湯ラーメンだ
凛・小泉・悠・美沙・潤「ごちそうさまでした」
孔「新参2人、ウチの味、気に入ってくれたか?」
美沙「ええ、凄く美味しかったわ、今まで近くにあったのに行かなかったのが不思議なくらい」
潤「この街で有名なお店なのは知ってたので、来る機会が無かったのが嘘みたいでした」
凛「それはどうも、腹が減ったらいつでも来てくれ」
美沙「そうするわ」
潤「また来るわね」
こうして4人が満足して帰って行くのを見送った俺は、夜の営業へと移るのだった。
ガラッ!!
七海「やあ、ご飯食べに来たよ。凛」
凛「あ、フレデリカさん。待ってましたよ」
入店してきたスーツの青年、常連の一人の藤原フレデリカ七海さんだ。
七海「チャーハンセット、あるかな?」
凛「丁度ラストですよ」
フレデリカさんはコインを見せると呟く。
七海「予想通りだ、やっぱり僕はツイてる。チャーハンセット、頂こう」
凛「はい、少々お待ちください」
注文を待つ間、フレデリカさんはメモを手にする。
七海「全く、退屈しない人ですね、彼女は……」
そのメモの間には、ある一人の女性の写真が挟まれていた。