ラーメン大好き小泉さんU 俺と彼女の不可思議な幸福 作:しゅみタロス
人には踏み込んではならない言葉というのがある。触れてはいけない傷も、それらは一度口にしてしまうと中々考えてしまうものだ。
楽観主義者はドーナツを見て、悲観主義者はその穴を見る。オスカーワイルドは上手く言ったモノだ。俺は今、現状2人の女の子の心の狭間に立っているが選べるのは1人だけ、どちらかは諦めなければならない。
そう思いつつも買い物を終えて韓国系のレモンスカッシュの栓をを開ける。
凛「まさか、今の時期にリマスター版のフェアリーズストーリー2が出るなんてな。結局3途中なのに買ってしまった」
こういう時こそこの迷いを埋めるのにはゲームが一番だ、早く帰ってゲームをしたいところだが……
凛「もう少しだけ遊んでいくか」
小泉「それなら良い所あるよ」
凛「ああ、それは良い……
って小泉さん!!」
しれっと現れる小泉さん、猫かよ……。
凛「いつからいたんだよ」
小泉「ついさっき、なんか凛君から別の女の気配がしたから」
凛(ナチュラルに人の思考を読まれてる!!)
どちらにせよ悠の事で悩んでいた事は明白だが。
凛「とにかく、行きたい所あるなら付き合うけどどこ行くんだ?」
小泉さんはスマホで写真を出す。
凛「ああ、その店か」
小泉「時には食べたくなりますよね、味付き玉子」
凛「それいいな、よし、行こうか」
俺達は商店街方面を目指し、バスへと乗車した。
多くの人で賑わい、あちらこちらから良い匂いが漂う商店街。新鮮な魚からお惣菜、定食もあればラーメンの店もそこかしこに点在している。
そんな中俺達が訪れたのは……
凛「こんにちは」
小泉「味付き玉子ありますか?」
おばちゃん「ああ、いらっしゃい。丁度出来立てがあるよ」
凛「4つお願いできますか?」
おばちゃん「はいよ、4つね。440円だよ、熱いから気を付けてね」
凛・小泉「ありがとうございました」
そして俺達は適当な場所に座りつつ、包みを開けた。
小泉「早く食べよ」
凛「それじゃあ」
熱々で茶色に染まった玉子、手触りはさらりとしつつも柔らかい。一口食べれば染み出す醤油の味とそれに溢れ出る濃厚で半熟な卵の黄身、しょっぱさとまろやかさが自然と溶け合い、舌を満たす。
凛「久々に食べたけど、これうまいな」
小泉「あ~ラーメンも食べたくなる~」
すると小泉さんは目を輝かせる。
小泉「この味付き玉子の店の上階が定食屋だからこの玉子のラーメンもある。ついでに食べていきましょう」
凛「そうだな、俺も昼飯まだだったし、食ってくか」
二階 定食屋
注文を終えての待ち時間、俺は相変わらず考え込んでいた。悠は俺をどう思ってるのか?あの一件以降、何度か会っていたが悠は挙動不審になっていた。ああされるとこっちの方も対応に困るのだが。どちらにせよこのままじゃいけない。迷惑かもしれないが味付き玉子を手土産に悠の家を訪ねてみよう。どうせ明日も休みだ、ゲームだって徹夜しても良いだろう。まずは優先すべきことはすぐにやるべきだ。
小泉(凛君、やっぱり何かあったんじゃ……)
一抹の不安を抱えながらも本気で向き合うしかないな、小泉さんとの関係を崩したくはない、それでも悠にはなるべくしがらみとか関係なく、仲良くなれる様に不安は要素は取り除いておこう。
店主「はい、卵味噌ご飯付き、おまち」
小泉「ああ、久しぶり……」
凛「早く食べよう」
俺達は備え付けの割りばしを割り、手を合わせる。
凛・小泉「いただきます」
赤く染まったスープは辛みが強くも深いコクのある濃厚な味噌、それに絡むちぢれ麺は啜る度に喉を辛さと柔らかさで満たしていく。カリカリに揚げられたネギは辛みと程よい食感で麺に深みを持たせる。そしてスープに浮かぶこだわりの味付き玉子、割れば黄身が染み出してスープと交わり、より濃さが強くなる。そして麺を啜った後、スープにご飯を入れればシメの雑炊。スープは麺だけではなくご飯とも合い、スープを吸った米が辛みと濃厚さ、そして割られた味付き玉子を潰して混ぜ合わせる背徳的な食べ方、味噌と玉子の辛さとまろやかさが混ざり合う、最後の最後まで胃袋を掻き鳴らすこの味を楽しみようやく平らげた。
凛・小泉「ごちそうさまでした」
用を終えた俺と小泉さんはバスに乗りながら帰路へとつく、だが……
小泉「その味付き玉子、どうするの?」
凛「贈り物だよ」
小泉「誰に」
凛「悠だけど」
小泉「……」
小泉さんが無言で額を俺の肩に埋める。
凛「ヤキモチか?」
小泉「わかってるでしょ?私、こう見えて凛君の事、何でも知ってるから」
凛「ついてくか?一人で行くよりはマシだし」
小泉「うん、変な気起こしたら許さないから」
凛「何もしないから安心しろ」
俺達はバスを降りると悠の家の方まで向かった。
凛「ここだな」
ピンポーン
悠「あ、はー―い」
ガチャ
悠「どちら様、って凛君!!そして小泉さん!!」
眼をぱちくりしなながら悠は驚く。
凛「よっ、悠。遊びに来たんだけど、迷惑だったか?」
悠「いや、寧ろ大歓迎!!上がって」
だがこれが、後に判断を誤ったと後悔することになるのだった。