大地を駆ける一筋の流れ星   作:Red October

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Act.014 初ライブと大流星

 皆様、ごきげんよう。シルヴァーブレイズですわ。

 少々時間が経ちまして、本日の競走は全て終了いたしました。本日のジュニア級メイクデビュー戦に参加されたウマ娘の皆様に、まずはとりあえず、お疲れ様でした、と申し上げたい気分ですわ。それから、今日の race で見事お勝ちになった皆様には、おめでとうございます、と申し添えておきます。

 シンボリルドルフ先輩やメジロマックイーン先輩の例を持ち出すまでもなく、メイクデビュー戦を制した方は、この後非常に優秀な成績を残される方が多いです。つまり、私にとっては侮れない rival になる可能性がある、ということですわね。(もっと)も、テイエムオペラオー先輩のように、メイクデビュー戦に敗れて未勝利戦に回った方にも優秀な方がいらっしゃいますので、今日敗れた方であっても決して油断できないのですが。

 

 それはともかく、今日私は勝ちました。それも2着に4バ身差という、誰にも否定させない、文句無しの完勝ですわ。偉大なる祖先に並び立つための「はじめの第一歩」としては、上々の滑り出しです。

 さて、race の後にすることといえば、大抵は winning run になる……はずなのですが、どうやら違うようですね。Run ではなく、live になるとのことです。私たち自身が舞台に立って、歌って踊らねばならないそうですわ。しかも、私は1着でしたので、central position を担わなければならない、とのことです。

 いったい何故競走の後に歌って踊らねばならないのか、疑問ではありますが……英国にはこんなことわざがあります。When in Roma, do as the Romans do.

 これは、日本流に言うなら「郷に入っては郷に従え」という意味ですわ。こういうことわざもあることですから、「高貴なる者の義務(ノブレス・オブリージュ)」の類だと思いましょう。但し、やるからには手は抜きません、全力でやらせていただきます。

 え? Winning live の練習ですか? もちろん、しっかりとやってありますわよ。

 世の中には、こんな名言があります。「賢者は他者の失敗に学び、愚者は自分の失敗に学ぶ」。一流ウマ娘たる者、すべからく賢者である必要があるでしょう。ですので、私はスペシャルウィーク先輩の失敗に学んだのですわ。

 

 白を基調とする live 専用の衣装に着替えた私は、現在、舞台袖にて出番を待っているところです。参加人数たった9人のささやかなものですが、応援に来てくださった方々、そしてTVの画面の向こうの皆様を盛り上げられるよう、精一杯努めるとしましょう。

 

 舞台ではちょうど第3Rを走った人々による live が行われています。つまりサニーウェザーさんが歌っているということです。

 耳をすませば、サニーさんの歌声が微かながら聴こえてきます。実は私、サニーさんの歌声は割と好きなんですよね、五月晴れの空のように澄んだ感じがあって。

 Winning live では、基本的に1着から3着に入った方が前に立ち、残りは後列で踊ることになると聞いております。今日の場合は、前列の central position が私、向かって前列左側が2着のトランペットリズムさん、前列右側が3着のリボンマーチさんになりますね。

 そんな話をしている間に、もうすく出番となるようです。それでは、参りましょう。

 教会の聖歌隊でも通用する私の歌声、とくとご覧あれ!

 

 

 一方その頃、ライブ会場観客席のうち最前列の一角を占領して、チーム《シリウス》の面々が座っていた。トレーナーたる西郷秀明、メジロマックイーン、アップツリー、ゴールドシップである。サニーウェザーは、ライブ後の写真撮影等があるためここにはいない。

 

「なあゴルシ、ちょっと聞きたいんだが」

「何だ?」

 

 薄暗がりの中、西郷トレーナーがゴールドシップに質問を投げた。

 

「お前さっき、ブレイズの歌声やたら綺麗だって言ってたよな? なんでそんなこと知ってんだ?」

「ああ、それか。アタシもこないだ初めて知ったんだけど、実はアイツ、普段から歌ってるらしいんだ。教会でな」

「教会?」

 

 又聞きしたアップツリーが首を傾げた。その隣でメジロマックイーンが「なるほど」と頷く。

 

「もしかして、ブレイズさんは聖歌隊にでも入っているのですか?」

「お、マックイーン正解。アイツめちゃくちゃ声綺麗なんだぜ! 初めて聞いた時ゃビビったぜ、アイツにあんな一面あるなんて知らなかったしな」

「へぇー、そりゃ楽しみだね!」

 

 事情を理解したアップツリーが、目を輝かせた。

 

「というかゴルシ、お前やたら詳しいな」

「あ? そりゃ週末だってのに、ブレイズが朝早くから1人でどっか出掛けてくのを見たもんだから、気になったんだよ。そしたらこれさ」

「ストーキングしてたのかよ……」

「名探偵ゴルシちゃんアイは誤魔化せないぜ!」

「やれやれ」

 

 呆れた様子でトレーナーが肩をすくめた時、舞台袖から複数の人影が出てきた。

 

「ん、始まるみたいだな」

 

 トレーナーの言葉を合図に、チーム全員が沈黙して舞台に視線を向ける。同時に、観客席のざわつきも潮が引くように落ち着き始めたが、なかなか静まらない。

 何せ今回のライブのセンターは、トレーナーの名声もさることながら、その独特の髪色と日本生まれのウマ娘らしからぬ容姿、そしてメイクデビュー戦で見せた凄まじい実力故に話題となっているシルヴァーブレイズだ。その姿を一目見ようと、結構な数の客が押しかけてきているのである。

 やっとのことで観客席が静かになった時、照明が切り替わってスポットライトが点灯され、ステージを照らし出した。その中心にいるのが、他ならぬシルヴァーブレイズである。ライブ用の衣装「STARTING FUTURE」がよく似合っていた。

 初ライブともなれば、誰しも相応に緊張するものである。特に気の弱い子の場合はそれが顕著に出る。完全に上がってしまって、自分の名前くらいしか言えなくなるウマ娘だっているのだ。

 しかしシルヴァーブレイズは、まるでもう何度もライブを経験しているかのように、落ち着いた口調で話し始めた。

 

「皆様、こんばんは。既に私の名前はご存知かと思いますが、改めまして。シルヴァーブレイズと申します」

 

 自己紹介と同時に、ライブ用衣装のスカートを摘まみ、見事なカーテシーを決めるシルヴァーブレイズ。その優雅な仕草に、ちょっとしたざわめきが起こる。

 

「まずはこの live を直接見に来てくださった皆様に、そして画面の向こうでこの live を見ているであろう視聴者の皆様に、心より御礼申し上げます。同時に、今日の race を応援しに来てくださった皆様には、重ねて御礼申し上げます。本当に、ありがとうございます」

 

 深々とお辞儀をするシルヴァーブレイズ。

 

「今日をもちまして、私たちは Twinkle Series の Junior class にその名を連ねることになりました。ゆくゆくは Classic class、Senior class へと歩を進めることになるでしょう。

私たちの行く先に待つものは何か、それは私にも分かりません。それでも私たちは、前に進まねばなりません。

私たちウマ娘は、何のために走るのか。理由は、人それぞれ異なるでしょう。私の場合は、偉大なる祖先に並び立つことが走る理由です。祖先の名に恥じぬ戦績を残せるよう、精一杯頑張りたいと思いますので、今後とも応援よろしくお願いいたします」

 

 初舞台だというのに、シルヴァーブレイズは全く気負う様子もなく、演説でもするかのような堂々たる態度で話を進めていく。

 

「それでは、……もう何番煎じになっているかは分かりかねますが、最後までお聴きいただけますと幸いです。私たちの『Make debut!』、お聴きください!」

 

 曲名のところが英語になっているせいで、シルヴァーブレイズの発音は曲名だけやたらとネイティブになっていた。

 照明が再び切り替わり、スポットライトが消えると同時に青い光が淡くステージを照らし出す。先ほどまで喋っていたシルヴァーブレイズを含め、9人のシルエットがおぼろげながら浮き上がった。

 薄闇の中、ファンファーレに似た前奏が流れ始める。

 

♪響けファンファーレ 届けゴールまで

♪輝く未来を 君と見たいから

 

 シルヴァーブレイズが歌い始めた瞬間、西郷トレーナーを含めたチーム《シリウス》の観覧者全員が、ゴールドシップの言いたかったことを理解した。

 シルヴァーブレイズの歌声は、鈴でも転がしているかのように美しいのだ。声優でもやらせたら、ハマり役なんていくらでもあるに違いない。スクールアイドルの声でも当てさせれば、クオリティの高い演技ができるだろうことは想像に難くないほどだ。

 しかもそれでいてハリがあり、しっかりと鼓膜に響いてくる。これならば確かに、聖歌隊でも十分に通用するだろう。

 なお、歌詞に含まれる「ファンファーレ」と「ゴール」という英単語であるが、当然というか何というか、ブレイズの発音にかかって凄まじくネイティブになってしまっている。

 

「これは……!」

「な、言ったろ? ブレイズのこれは、1回聴いたらもう忘れらんねーんだよな!」

 

 トレーナーが目を見開き、ゴールドシップが得意そうにしている間に、照明のスイッチが入ってステージ全体が明るくなっていた。バックダンサーを務める6人のウマ娘たちを従え、右にトランペットリズム、左にリボンマーチを控えさせて、シルヴァーブレイズが踊っている。トレーニングを優先してしまったため、時間的にライブの練習が足りていないのではないか、と西郷トレーナーは心配していたのだが、そんな心配は全くの杞憂に終わった。シルヴァーブレイズは、初心者らしからぬキレッキレぶりで踊っていたのである。

 なおゴールドシップ曰く、「実はブレイズの奴、時間足りねーっつって、寮でもライブの練習してたぜ」とのことである。そのせいで、宿題をする時間が大分犠牲になっていたそうだ。ただ、「アイツ宿題片付けんのもはえーんだよな。カップラーメンが伸びきる前に全部片付けちまうんだ。アイツの頭ん中どーなってんだろな」とはゴールドシップ談である。

 

♪駆け出したらきっと始まるstory

♪いつでも近くにあるから

 

 美しい歌声が、会場いっぱいに響き渡る。周囲を見るまでもなく、会場にいる全員が聞き入ってしまっているのが、《シリウス》面々にははっきり感じ取れた。

 そのまま観客を魅了しながら、つつがなくライブは進んでいき、最終盤。

 

♪ I believe 夢の先まで

 

 歌い終わると同時に、舞台中央でポーズを決めるセンター3人組。

 特にシルヴァーブレイズは、アドリブでウインクを決めている。このためもあって、シルヴァーブレイズの言う通り「何番煎じか分からないほど繰り返されたライブ」にも関わらず、このライブは大盛況のうちに終了したのだった。

 

◆◇◆◇

 

 シルヴァーブレイズのライブが終了して1時間ほどが経った頃、京都市内某所の料亭にて。

 

「それでは、サニーウェザーとシルヴァーブレイズのメイクデビュー戦勝利を祝して、乾杯!」

「「「「かんぱーい!」」」」

 

 西郷トレーナーの音頭に、《シリウス》メンバーの唱和が続いた。

 すき焼きの鍋とジュースを囲んで、メイクデビュー戦勝利の祝賀会が行われていたのである。ちなみに、メジロマックイーンはしれっと抹茶パフェを頼み、満面の笑みを浮かべて食らいついていた。

 

「ゴルシ先輩ずるいですよ! 肉もう少し分けてください!」

「ゴルシちゃんソウルが肉を求めてんだよ!」

 

 初っぱなからゴールドシップとアップツリーが肉の奪い合いをしている。結果的にこの奪い合いは、双方の箸で引っ張られた肉がちぎれた拍子に箸がゴールドシップの左目に突き刺さったため、ゴールドシップが動けなくなってアップツリーの勝利となった。

 

「目がぁぁぁぁぁ!」

「わあぁぁ大丈夫ですかゴールドシップ先輩!?」

 

 サニーウェザーがワタワタしている。

 

「やれやれ、騒々しいですわね……」

 

 その様子を冷めた目で見詰めているのが、シルヴァーブレイズだ。自身の取り皿によそったすき焼き(野菜多め)を静かに食している。非常に対照的な反応である。

 中学生・高校生らしいわちゃわちゃとした席を見渡しながら、西郷トレーナーは腹の底で呟いた。

 

(こうしてみると、サニーウェザーやメジロマックイーンと比較して、シルヴァーブレイズは妙に大人びているんだよなぁ……)

 

 西郷トレーナーも、他のトレーナーや生徒からの噂はいろいろと聞いている。それを総合して考えてみると、シルヴァーブレイズは決して自閉的ではない。むしろ友人やクラスメートを誘ってお茶会を開いたり、テイエムオペラオーのオペラ上演に付き合ったりと、社交的な方だ。しかし、あまり感情的にならずに理屈で物事を考える、年齢不相応に落ち着いている部分がある等、どうも不思議と大人びているのだ。このキャラクターの差は、いったい何なのだろうか……。

 

「Trainer さん? 器が空になっていますが、お代わりをお取りしましょうか?」

「ん? あぁ、ありがとう」

 

 そして今も、西郷トレーナーの器が空になっているのを目ざとく見つけて、気を回してくれる。何というか、いろいろなことに気が付くのだ。

 シルヴァーブレイズのキャラクターに少し興味を抱いた西郷トレーナーは、これを機会に彼女に話しかけてみることにした。もしかすると、彼女の全く知らない一面を見ることができるかもしれない。

 

「さっきのライブ、頑張ってたな」

「ありがとうございます。正直に申し上げて、何故走った後に歌って踊るのかいまいち理解しかねておりますが……『郷に入っては郷に従え』と申しますれば、これもある意味ノブレス・オブリージュの一種かと存じます」

「そんな大した意味じゃないよ。レースの時に応援してくれたファンの皆様に、感謝の意を示すんだ。それがウイニングライブだよ」

「応援に対する感謝ですか…その表現の仕方が、あの live ということですね」

「そういうこと。

で、そのライブなんだが、ブレイズ歌上手いな。練習を重ねてきたのか?」

「歌の練習そのものでしたら、かなりやっておりますわ。寮でも、教会でも」

「教会?」

「はい。私聖歌隊に入っておりますもので」

「なるほど聖歌隊か。それなら確かに、あの歌の上手さも納得だ。神様だけでなく、神父さんや信徒の皆さんも聴くものだから、下手なものは聴かせられんしな」

「左様ですわ」

 

 ちなみにこれは、知っていることでもあえて知らないふりをして会話を広げるきっかけにしようとしたものである。

 

「ってことは、君はクリスチャンなのか?」

「そうです。小学生の頃から入信しておりますから、お布施の額はともかくとしてそれなりの期間信仰しております」

 

 そういえばシルヴァーブレイズの家は決して裕福な方ではなかったな、と西郷トレーナーは思い出した。

 

「熱心なんだな」

「まあ……毎食前の祈りや日曜日の礼拝は絶対に欠かしませんし」

「となると、レースの勝利とかも神に祈ったりするのか?」

「それは少々違いますわ、trainer さん」

 

 西郷トレーナーの予想に反する答えが返ってきた。

 

「困った時の神頼み、とは言いますが、世の中こうも言うではありませんか、『人事を尽くして天命を待つ』と。確かに神様は、困った時に我々を助けてくださいますが、それはどうにもならなくなった時だけでしょう。打てる手を打たずに神様に祈るのは、怠慢という他ありません」

 

 世の中には、自身の走るレースまでも神様に決めてもらう(という名目で占いをして決める)ウマ娘もいるが、シルヴァーブレイズはその手の考え方には反対らしい。

 

「なるほど、自分にできることを全てやってから、神に祈るというわけか」

「はい。神に祈りが届いたとして、神の啓示はあくまで道路標識のようなもの。それに従い行動するのは自分自身のみです。

なればこそ、如何なる険しい道であろうとも切り開けるくらいには、力を付けておかねばなりません。…それと、舐められないためにも」

 

 最後の一言を口にした時、シルヴァーブレイズの顔が僅かに曇った。それを見逃す西郷トレーナーではなかった。

 

「舐められないために?」

「はい。私は名家の出などではありませんし、それに見ての通り身体が小さいですから、どうしても舐められがちなのです。何となくお分かりになるでしょう?」

「まあ確かにな。身体が大きい方と小さい方では、小さい方が侮られる傾向にある、というのは否定できないな」

「それにもう1つ。何となくお分かりになるかもしれませんが、小学生くらいの子供は同族意識が強く出ることが多く、…自分たちとは外れた特徴を持つ者に対してはこれを排斥する傾向にあるのです」

 

 少々遠回しな言い方をしているが、どうやらいじめに遭っていたらしい、ということは分かった。

 

「そういうのに対処するためには、方法は1つしかありません。すなわち、他を叩き潰せるだけの圧倒的な実力と、それに伴う名声です。競争でいうなら、他者より高い実力を持ち、多数の勝利を収めることです。

この学園のモットー『Eclipse first, the rest nowhere(唯一抜きん出て、並ぶ者無し).』を体現することこそ、あんな声や態度を引っ込めさせる有効な手段でしょう」

 

 過激な言い方ではあるが、一理ある。しかし、これを無条件に肯定するのは危険だろう。

 そう判断した西郷トレーナーは、言い方を変えてみることにした。

 

「舐められないように……か。確かに実力と実績を持つことはとても大事だ。

ブレイズ、君がやろうとしているのは、『相手に手出しをためらわせる』というアプローチだ。それも良いだろうけど、同時に『先手を打って味方を増やしておく』のも大事だよ」

「味方を増やしておく…それは、多くの友人を持つということでしょうか?」

「友人もそうだけど、俺が今言った味方というのは、応援してくれるファンの方々のことだよ」

「そちらでしたか。どうやって増やせばよろしいでしょうか?」

「重要なのはファンサービスを意識することだと思う。例えば、これ」

 

 西郷トレーナーはスマホを操作し、とあるウイニングライブの映像を見せた。そこにはスマートファルコンの姿が映っている。ファンの声援に応えて手を振ったり、笑顔を振りまいていた。

 

「それから、こんなのもある」

 

 スマートファルコンによる街頭ゲリラライブの映像を見せる。その中では、スマートファルコンはライブだけでなく、握手会やサイン会のような催しを開いていた。

 

「応援してくださる皆様との交流会、ということですか?」

「そう。こんな感じで愛嬌を振りまき、ファンの人数を増やしておくんだ。あんな風に人数が集まると、意外と大きな力を持つこともあるからね」

「戦いは数、ということですね」

「それから、数といえばこういう方法もかな」

 

 今度は、西郷トレーナーはウマスタグラムの画面を開いてみせた。フォロワー数300万を超えるインフルエンサーとなっている、カレンチャンのアカウントである。他に、マヤノトップガンのアカウントも示してみせた。

 

「投稿に多数の『ウマいね!』が付いているだろう? この1つ1つが、いわばファンの意見というわけだ。炎上目的でもない限り、好意的な意見ばかりだよ。

実際に会わなくても、今はSNSもあるからね。こういう形で応援してもらう方法もあるよ」

 

 西郷トレーナーの指摘に、シルヴァーブレイズは画面から目を離して頷いた。

 

「なるほど……よく分かりましたわ。ありがとうございます。

ただ、このSNSという方法は、使うには注意が必要ですね。私自身を切り盛りして商品として売るようなものですから、扱いを間違えると一気に瓦解しかねません。諸刃の剣になりますから、どこまでを見せて良いのか、はっきり決めておく必要がありそうですね。

それと、集団の持つ力は確かに大きいですが、それが暴走したりしないよう注意しなければ……」

 

 やはり聡い子だ…西郷トレーナーはそう感じた。何せこの一瞬だけで、SNSの危険性に自ら気付いている。

 それに、中学生にありがちな「調子に乗る」といった様子が見られない。かなり冷静に判断している。

 この大人びて慎重な性格なら、SNSで炎上する可能性は低いかもしれない。

 そして、まだジュニア級の時点だというのにここまで細かいことに気付く頭の良さもある。この頭脳に、あの莫大なスタミナと同世代の中でずば抜けた末脚が合わされば……同僚に言われたように、無敗クラシック三冠も狙えるかもしれない。

 

(俺に、本当にできるんだろうか? この子を、《トゥインクル・シリーズ》で目一杯活躍させてやることが……)

 

 サニーウェザーに声をかけられ、「同日デビュー記念」と称するツーショット写真を撮られるシルヴァーブレイズの姿をちらっと見て、西郷トレーナーはそう考えた。

 

(これまでの俺のスタンスは、先輩からの教えの通り、ウマ娘たちの意見が第一だ。それを続ければ良いとは思うが……まあ、おいおいだな。ライスシャワーのレースもあるし)

 

 そう結論付けて、西郷トレーナーはさっきシルヴァーブレイズによそってもらったすき焼きを頬張った。

 

「…あ、美味しい」

 

 そしてしれっと牛肉が多く入れられていることに気付く。シルヴァーブレイズなりの気遣いらしい。

 

(さて、これから忙しくなるぞ…)

 

 チーム《シリウス》の夜はふけていくのだった。




というわけで、シルヴァーブレイズの初ライブ+αでした。
西郷トレーナーからの説明により、ファンからの応援の重要性を知ったシルヴァーブレイズ。それは今後、どう活かされていくのでしょうか。


勝負服イベント「評判を覆すには」発生。
選択肢「走りで全部ひっくり返そう」と「ファンサービスを意識してみよう」から、「ファンサービスを意識してみよう」を選択。
根性が20上がった
ステータス「愛嬌◯」になった

ゲームで言うとこんな感じでしょう。


評価9をくださいましたぴょんすけうさぎ様、ありがとうございます!


それでは次回予告です。頼んだぜ、ライス!

「えっと、ライスシャワーです!
まだ梅雨も明けてないけど、ライスの走るレースが開催されるよ。ファン投票1位に選出されたんだ! えへへ、嬉しいな…。
何でも、今年はいつもの阪神レース場じゃなくて、京都レース場で開催されるんだって。みんなを幸せにできるように、頑張るぞー、おー!
次回『雨滴滴る京の射干玉の』 更新はちょっと待っててね」
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