先日開催された「チャンピオンズミーティングMILE」。ジューンブライドイベの時に「ウマ娘」をやり始めて以降、無課金で頑張り続けていましたが、ついに今回、目標の1つであった「グレードリーグAクラス決勝進出」を果たせました。
しかし、私の手持ちはというとかなり壊滅的で、戦えるのはUE1のラインクラフトにUE4の青ルビー、そしてUE5の通常チヨノオーだけという有様。こんなのでよくまあA決勝行けたなと思います。
その決勝の相手はというと、通常ルビー×2、夏タイキ、嫁フラワー、通常ヘリオス、ヴィブロス。しかも、最もランクの低い子でもUE6、最高ではUDランクと格上のみ。相手に覇権キャラと言われる青ルビーがいないのと、ヘリオスが何故か逃げではなく先行運用されているのだけが救いですが、通常ルビーも強力なデバッファとして機能しますから、勝ち目はないなと思っていました。それでも一縷の望みを託し、レーススタート。その結果は…
ラインクラフト 7着
青ルビー 2着
通常チヨノオー 1着
まさかの…勝てちゃいました。
なんで勝てたのかと思って調べたら、どうも通常ルビーが2人とも機能不全だったようです。片方は中盤直前のスピード勝負に負けてドンジリになってしまい、順位条件を満たせず固有スキル・デバフスキルどれも不発。もう片方は順位は良かったのですが掛かってしまい、デバフはできても固有は不発という状況でした。クラフトはこのデバフをまともに喰らった上に、もともとスピード不足だったこともあって沈みましたが、チヨと青ルビーが加速して先頭を走るヘリオスと激突。残り200メートル目前でチヨノオーが固有スキルを発動して抜け出し、そのまま青ルビーごと後続を3/4バ身振り切りました。
結果的には、幸運に大きく助けられた形となりましたが、無課金なのに勝ててしまうとは……これでやっと、私もチャンミプラチナ称号持ちです。
ありがとう、チヨノオー。ルビーもクラフトも、お疲れ様。そして対戦して下さったトレーナーの皆様、ありがとうございました!
長くなりましたね、失礼しました。本編どうぞ!
【以下、年末発売『月刊トゥインクル特別号』より抜粋】
『東京大賞典が終わると共に、今年のウマ娘レースも全て終わりを告げた。そこで除夜の鐘が鳴る前に、特に12月に行われたGⅠレースについて振り返っておこう。新しい年のレースでどの娘を応援するか見繕うためにも。
最初は、来年のクラシック戦線を走るウマ娘たちから見ていこう。
結論から先に言えば、マイルGⅠは2つ揃って波乱の展開となった。
まずはティアラを志望するウマ娘たちが集うGⅠ「阪神ジュベナイルフィリーズ」。ここでは、1番人気に支持されたスイープトウショウ(チーム《ミモザ》所属)が5着。勝ったのは6番人気の伏兵、シュガーニンフェ(チーム《アルナイル》所属)だった。レースは2着入線のアルケドニンフェがリードする形であり、シュガーニンフェは終盤に外側から上がり3F34秒5の末脚で追い込んで差し切った。スイープトウショウは上がり3F34秒3の末脚を見せたものの始動が遅く、先頭まで届かなかった。
チーム《アルナイル》のトレーナーを務める入江美波氏は、本誌インタビューに「正直なところ、勝てるとは思ってもみませんでした。ですが、私にとっても初めてのGⅠ勝利であり、とても嬉しく思います。また、桜花賞と同じコースで走って勝てたので、少し自信になりました。ティアラ路線の制覇を目指して、シュガーと共に頑張ります」と笑顔を見せた。
《12月9日 15時30分発走
GⅠ 阪神ジュベナイルフィリーズ
阪神芝1,600(右・外) 晴 稍重》
1着 16番 シュガーニンフェ 1:35,9
2着 17番 アルケドニンフェ クビ
3着 15番 ビエナピース 3/4
4着 18番 クイーンズゲーム ハナ
5着 4番 スイープトウショウ クビ
続いて、12月14日開催のGⅠ「朝日杯フューチュリティステークス」だ。短距離からクラシックディスタンスまで様々な猛者が集うこのレース、無敗で出走した1番人気アウダーチ(チーム《エレクトラ》所属)だが、ハイペースの展開でスタミナを消耗し、ゴール直前で4番人気のシルヴァーブレイズ(チーム《シリウス》所属)に差され、レコード優勝を決められた。《エレクトラ》の相原千夏トレーナーは、「結果そのものは悔しいです。ですが、自分自身とアウダーチを見直す良い機会になりました。次のGⅠ…NHKマイルカップは取りに行きます」と発言しやる気を見せた。また、《シリウス》の西郷秀明トレーナーは、「ブレイズに不利な距離だったことは否めませんでしたが、彼女はそれをひっくり返す快勝を果たしました。引き続き、彼女の走りを応援していきます」とコメントを発表した。
《12月14日 15時30分発走
GⅠ 朝日杯フューチュリティステークス
阪神芝1,600(右・外) 曇 重》
1着 17番 シルヴァーブレイズ 1:32,9(R)
2着 2番 アウダーチ 1/4
3着 5番 ビコーペガサス クビ
4着 13番 ウォーキートーキー 1/4
5着 11番 ブラボーアール アタマ
次に、クラシック戦線の主役を担うウマ娘たちが走る「ホープフルステークス」である。1番人気に支持されていたチーム《スピカ》のキタサンブラックが、見事後続を半バ身振り切って優勝を飾った。無敗のまま3連勝でGⅠを制する辺り、彼女の実力と沖野晃トレーナーの指導力が確かなものであることの証左である。沖野トレーナーは「キタサンはうちのチームの期待のホープと言える実力の持ち主です。クラシックレースでも彼女が輝けるよう、サポートしていきます」とコメントしている。
《12月21日 15時30分発走
GⅠ ホープフルステークス
中山芝2,000(右・内) 晴 良》
1着 11番 キタサンブラック 2:00.9
2着 6番 オボロイブニング 1/2
3着 18番 ピアレスシャウト クビ
4着 5番 イマジンサクセス 2
5着 2番 ビターパルフェ 1/4
最後に、ダートレースのジュニア級決戦となる「全日本ジュニア優駿」である。勝利を収めたのは、チーム《プロキオン》のラッキーターンだった。バ場・距離問わず好タイムを出していたあのハッピーミークの妹というだけあって期待されていた娘だが、見事期待に応えた形だ。《プロキオン》の桐生院葵トレーナーは、「彼女の走りを見ていると、最初に担当になったミークを思い出しました。ミークはシニア級から勝ち星が増えてきた晩成型でしたが、妹さんはもしかするとクラシック級でも良い成績を収めてくれるかもしれません。ターンと一緒に頑張ります!」と意気込んだ。
《12月23日 15時30分発走
GⅠ 全日本ジュニア優駿
川崎ダ1,600(左) 晴 重》
1着 7番 ラッキーターン 1:42,0
2着 1番 ゴールドシュシュ 1
3着 10番 フェニキアディール アタマ
4着 14番 スローモーション クビ
5着 4番 リードエスエフ 1/2
今度は、クラシック・シニア混合戦線を見ていこう。まずは、年末の大一番と言える「有マ記念」であるが、……』
「やれやれ…」
皆様、ごきげんよう。シルヴァーブレイズですわ。
本日は12月24日、世間的にいう「クリスマスイブ」です。休憩時間に「月間トゥインクル」を読んでいたのですが、競走結果はまだ良いとして…問題は、その後ろの特集です。
『【来年のクラシック戦線は大荒れか!? ジュニア級芝マイルGⅠを制した2人の伏兵とは!】
今年のジュニア級芝マイルGⅠ「阪神JF」「朝日杯FS」を制したのは、4番人気以下の伏兵だった。高い人気のウマ娘たちを打ち破った2人のウマ娘は、いったいどんな子なのか? 今回は、阪神JFを勝ったシュガーニンフェと、朝日杯FSを勝ったシルヴァーブレイズ、この2人を追ってみた。』
何ですのこれ……こんな仰々しく書き立てなくても。というより、私は trainer さんが立てた戦略に従って走っただけですから、その私にこんな目を向けるのは筋違いにも程があると思うのですが。
それはともかく、記事を見ていると気になる名前がありますね。
「イブニングさん、やりますね。キタサンさんに半バ身まで迫るとは……やはりあの方の末脚は侮れない」
つい口に出してしまいましたが、そうです。以前の「選抜レース」やら「阿寒湖特別」で対戦したオボロイブニングさん。記録を見る限りだいぶ健闘していますね。
「それとラッキーターンさん…サニーさんには荷が重い相手ですね」
ラッキーターンさんも、私とは主戦場が違うので対戦機会は今のところないと思いますが、親友のサニーさんには手強い相手です。現に、メイクデビューと1勝クラスを勝って順調だったサニーさんに初黒星を喰らわせたのが、このラッキーさんですから。
と、ふと気付いてみるとそろそろ時間が迫っていますね。
「それでは…頑張るとしましょうか」
鞄に「月刊トゥインクル」をしまい、椅子から腰を上げます。何があるのかと申しますと…12月24日ということでお気付きかもしれませんが、教会の聖歌隊の出番ですわ。Christmas といえば、復活祭と並んで聖歌隊の大きな出番ですわ。
……長かった礼拝も、やっとこさおしまい。礼拝自体は良いですが、あの長時間と開会時間だけはもうちょっとどうにかならないでしょうか…。
すっかりお昼が遅くなってしまいました……こういう時は、昼食は「止まり木」に限ります。あそこの食事って、物によっては本当に早く出てくるからありがたいのです。
「いらっしゃい。…お、来たか。待っていたよ」
「こんにちは、master さん。聖歌隊の仕事で疲れました……英気を取り戻すために、上等品をお願いしますわ……」
「承知した。食事はフィッシュアンドチップスで良いか?」
「お願いします。紅茶は……」
「安心しろ、フォートナム&メイソンのアールグレイを用意してある。あと茶菓子に何か付けよう。クリスマス限定のプラム・プディングとミンスパイ、どっちが良い?」
「では pudding でお願いしますわ…御配慮、感謝致します」
「なに、嬢ちゃんのおかげでこの店もだいぶ盛り上がってきたんだ。クリスマスだし、恩返しくらいはさせてくれ」
「ありがとうございます。それと master さん」
「ん、どうした?」
「I wish you a Merry Christmas. 粗品ですみませんが、こちらをどうぞ」
……こんな小さな物で申し訳ないとは思いますが、あいにくこれくらいしか渡せる物がありませんの…。
「え……俺にプレゼントか?」
「そうですわ」
「ありがとう。開けても良いか?」
「どうぞ。中身は幸運のお守りですわ」
「幸運のお守り、ね。どれどれ……」
中身は片側の蹄鉄ですわ。それも、私が「朝日杯フューチュリティステークス」を勝った時に、実際に右の靴に着けていたものです。競走の1週間前に交換したものですからほぼ新品だったはずなのに、あの一戦だけで思った以上にすり減ってしまいました。
記念のため、蹄鉄の右外側側面に「◆◯th Asahi F.S. Cup」、左外側側面に「Silver Blaze」と彫ってありますの。あと、これ以上傷がつかないよう、透明なガラス箱に厳重にしまってありますの。
ウマ娘の蹄鉄は時折、"Uの字の中に幸運を呼び込み留めておくことができる"として、幸運のお守りとされることがあるのです。玄関扉に引っかけて飾る等の風習が、世界各地にあるのですわ。
蹄鉄の側面に掘った文字を見て、master さんが目を見開きました。
「蹄鉄か、こりゃ縁起物だな。……え…これまさか、この間の朝日杯フューチュリティステークスを勝った時の奴か?」
「左様です。実際に私はそれを着けて、走って勝ってきたのですわ」
「そんな記念品を、俺に?」
「そうです。受け取っていただけますか?」
「……ありがとう。まさかそんな大事なものをくれるなんて……これは縁起物として、またうちの看板娘の象徴として、大事に飾らせてもらうよ」
「看板娘なんて、そんな大げさな……」
「いや、マジで嬢ちゃんはうちの看板娘だからな? その証拠に、ほら」
Master さんがちらりと視線を送った先には、来店中のお客さんたち全員が私にキラキラした目を向けている光景が…。
えぇ……これはもしかして……。
「ご来店中のお客様にお願い申し上げます。本日シルヴァーブレイズ嬢は、店員としてではなく客としていらっしゃっています。サイン会や握手会などの交流を禁じはしませんが、良識の範囲内での振る舞いをお願いいたします」
Master さんの注意喚起に、親指をグッと立てたり頷いたりと好意的な反応を示すお客さんたち。
「うちの客が良い人ばかりで良かったな」
「全くですわ……」
さすがに四六時中
「それじゃ、料理はこちらでやるから、行っておいで。皆君の話を聞きたがっているようだ」
「そういたしますね」
ま、少しは休みをいただくとしましょう。
ふう、人心地つきましたわ……お客さんたちも皆良い人ばかりで、私の食事が終わるまでは待ってくださいました。Tea time を兼ねて交流会となったので、ちょうど良い感じでした。
「毎度ありがとうございます……ところで嬢ちゃん」
会計を済ませようとした時、master さんが急に声をかけてきました。
「何でしょう?」
「1月3日、空いてるか?」
「え?」
Master さん、どうかしたのでしょうか。
「1月3日なら、完全に暇ですわ。それに今年は里帰りするつもりはないです。学園の寮におりますよ」
「よし。済まないが、朝の9時に、ちょっと店まで来てくれないか?」
「新年早々に仕事ですか?」
「違う違う。君に見せたいものがあるんだよ。ついでに少しだけ手伝ってほしい」
「ふむ…承知しました」
いったい何があるのでしょうか。
◆◇◆◇
12月31日、ウマ娘たちが実家に帰省したり学園に残ったりと思い思いに過ごしている頃。
「「「かんぱーい!」」」
1年の最後の営業日を迎えたパブ「止まり木」にて、トレセン学園のトレーナーたちが細やかな忘年会を開いていた。メンバーは以下の通りである。
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全員、同じ時期にトレーナーになった者たちである。いわゆる「同期の桜」というやつであった。
彼らが手にしているのは、飲み会の乾杯の時のお約束ドリンクたるビールである。ただ、よく見ると液体の色が黄色いものの他に、
「うん、これなかなかヘビーな味だな。悪くないが、一気には飲めそうにないな」
イギリス式ビールを試した川添トレーナーが、唇に付着した炭酸の泡を拭き取りながら言った。
「それでしたら、半分ほど飲んだところで私をお呼びくださいませ。いわゆる"味変"して差し上げます」
彼らのテーブルの脇には1人のメイドが控えているが、そのメイドは左右の瞳の色が異なる上に頭髪が茶色と銀色のツートンカラーになっていた。そして、頭に乗せたホワイトプリムの上にウマ耳が突き出ている。
もちろんこのメイドの正体こそ、我らが主人公シルヴァーブレイズである。
「ブレイズ、大晦日になってもバイトなんて良いのか? 実家に帰るのも良かったろうに」
西郷トレーナーの質問に、ブレイズは優しい口調ではっきりと答えた。
「今はまだ時期尚早ですわ。志を果たして、いつの日にか帰らん、です」
「…なるほどな」
納得しながら、西郷トレーナーは再びビールを呷る。各トレーナーたちは既に、思い思いにつまみや食事に手を付け始めていた。
「ね、ブレイズの志って何なの?」
唐揚げをつまみながら、相原トレーナーが尋ねた。
ちなみにこの店、イギリス式パブを名乗ってこそいるが、日本の居酒屋にあるようなメニューもある程度取り扱っているのである。
「偉大な祖先に並び立つことですわ。そのためには、できる限り多くの競走に勝利し、私自身の名声を轟かせる必要があります。今はまだ、ほんの序の口です」
淀みなく答えるシルヴァーブレイズ。
「ほー、ブレイズの嬢ちゃん意識高ぇんだな」
「ちょ、おま!? 飲むの早くないか!?」
千田トレーナーは既にジョッキ2杯を空にして、イギリスを代表する酒であるスコッチウイスキーをマスターから受け取ったところである。西郷トレーナーが一瞬冷や汗を掻いた。実は西郷、以前に酔い潰れた千田の介抱を(なし崩し的に)やらされたことがあるのである。
「いやぁ、それにしても今年は俺たちの仲間が結構躍進したな!」
機嫌良さそうにそう言って、川添トレーナーがローストビーフにかぶりついた。
「そうですね! 新しくGⅠを勝った方が2人も出ましたし!」
「その片方は川添さんじゃない! カレンチャンで高松宮記念取っていったでしょ!」
桐生院トレーナーが応じながら、フライドポテト(フィッシュ&チップス)をつまむ。相原トレーナーがそれにツッコミを入れた。
「あたしとしては、入江ちゃんとこの子が阪神JF取ってたのがびっくりだよ!」
相原トレーナーは、早くも皿を1枚空にしていた。手持ち無沙汰なのか、枝豆をつまんでいる。「本当それな、まさかうちのスイーピーが負けるなんて思わんかった」と川添トレーナーが口を添えた。
「あれは、シュガーが頑張ってくれたからです……」
ホクホクのステーキパイにはふはふと息を吹き掛けながら、入江トレーナーが静かに答える。
なお、ステーキパイというのは、パイ生地の中にビーフシチューを入れたパイのことである。
「私はただ、シュガーを信じただけですよ……」
「それでもだよ、入江さん」
テーブルの向こう側から、西郷トレーナーの声が飛んできた。
「結局俺たちトレーナーがレース場でできることは、自分の育てたウマ娘を信じることだけだ。レースを走るのはウマ娘たちであって、俺たちじゃないからな。
だから俺は、レースよりも普段のトレーニングや休養を大事にしてる。レースで負ける原因は、相手の分析不足やらポジションの不利やらいろいろあるけど、大概はトレーニングの中で対処できる問題だと、俺は思ってるからさ」
「………私たちの同期で真っ先にダービー取った西郷さんが言うと、言葉の重みが違いますね」
そう言いながら入江トレーナーはジョッキを取り上げ、ビールを美味しそうに飲んだ。…と思いきや。
「ちょ、入江さん!? 口元に泡がすごい着いてますよ!」
ジョッキを下ろした時には、サンタクロースよろしく上唇の周りを泡だらけにしていた。それに桐生院トレーナーが慌てる。
「ああ、ご安心を……これはこういう飲み方をするものなんです」
「え?」
桐生院トレーナーが首を傾げた時、西郷トレーナーがぽんと手を打った。
「ああ、バタービールか」
「え? 何それ?」
相原トレーナーが首を傾げる。そこにちょうど、シルヴァーブレイズが銀の蓋を被せた皿を持ってやってくる。
「お待たせいたしました。ご注文の、羊の curry 料理でございます」
「ありがとー! わ、美味しそ!」
「入江が飲んでるそれは、ビールに似てるけどアルコール飲料じゃないんだ。バタービールっていうノンアルの飲み物なんだよ。味はバタースコッチにちょっと似てるかな…シナモンや生姜でアレンジしてることもある」
「へー。何で西郷くんそんなこと知って…あぁ、ブレイズに教えてもらったのか」
納得しながら、相原トレーナーはスプーンを手にした。食べる速さはまさに体育会系のイメージそのもので、みるみるうちにマトンのカレー煮がなくなっていく。
「1回ブレイズに作ってもらったことがあってさ。…それ思い出したら、また飲みたくなってきたな。
すまんブレイズ、バタービール1杯貰えるか? できたら、前に作ってくれた物と同じのを頼む」
「かしこまりました。
それと川添トレーナー、beer の"味変"をしてまいりましょうか?」
「おぅ、悪いな」
「あ、あたしもバタービール1つ!」
「かしこまりました」
静かな所作でシルヴァーブレイズが引き下がる。その一挙手一投足が、かなり大人びて見える。これで中学生だとは、とてもではないが考えにくい。
「そうそう、西郷といえば今年もまたG1タイトル取ってきやがったな!」
唐突に千田トレーナーが割り込んできた。
「ゴルシで宝塚取ったと思ったら、最後にブレイズで朝日杯持っていきやがった。しかも朝日杯はレコード勝ちでな!」
「おい千田、大丈夫か? だいぶデキあがってんな」
すっかり赤くなっている千田トレーナーを見て、川添トレーナーが心配そうにした。
「川添、今度はお前に介抱頼むわ」
「んな!? ……しょうがねえな。西郷は前にやってくれたし。
にしても西郷、お前マジで良い子を引き当てたな。ブレイズの嬢ちゃん料理もできるんだろ?」
そこに桐生院トレーナーが会話に加わった。話しながらフィッシュ&チップスのフィッシュにビネガーを掛けている。
「私も、チームの子から聞いてますよ。お茶会した時はしばしば自作のお茶菓子持ってくるし、紅茶の淹れ方も上手だって」
「確かにな…うちのチームは休憩時間の時に軽いお茶会やることがあるんだけど、ブレイズはマックイーンと並んでお茶会担当になってるな。特にアップルパイが人気だよ」
「そーいや前に言ってたっけな、この店のアップルパイはブレイズの作った奴だって。かー、うらやましいもんだな!」
「他の子の仕事とか物品整理とかも手伝ってくれますし、結構気が利きますよね。何気にすごいですよねブレイズさん……」
「そんなことないって」
西郷トレーナーはそっとジョッキを掲げた。照れ隠しのつもりだったのだろうか。
「いっそブレイズに告って付き合っちまえば?」
「ッ!?」
しかし、川添トレーナーの爆弾発言で見事に台無しになった。
「ゲホッゲホッ……な、何言ってんだ!?」
「いや、お前まだ独身だったろ? 嫁候補としてブレイズはありだと思うが」
「おまっ、ブレイズが中等部生だって忘れてねえか!? 未成年、それも中学生に手ぇ出すとかどう考えても社会的抹殺確定案件じゃねえか!」
「ブレイズ嫁とか最高じゃねえかよぉ…」
「おい千田、お前も変なこと言い出すんじゃねえ! あと呂律回ってねえぞ、そろそろ控えろ飲むの!」
「ブレイズさんと西郷さん、お似合いだと思います……」
「おい入江、なんでお前までそっち側なんだ! 止めてくれよ!」
「良いですね、ご祝儀弾みましょうか?」
「桐生院、お前もか!」
「うまぴょい♪ うまぴょい♪」
「あーおーるーな相原ァァァ!」
わちゃわちゃし始めたところに、シルヴァーブレイズが注文のドリンクを持って戻ってきたが、思いっきり苦笑している。あれだけ大声を出していたら、ウマ娘でなくてもばっちり聞こえているだろう。
「お待たせ致しました。こちら、butter beer と Shandy Gaff でございます」
「シャンディガフ?」
「簡単にご説明いたしますと、beer の中に大量のショウガを投下したのですわ」
「ジンジャーエールか! なるほどな」
川添トレーナーがシルヴァーブレイズからジョッキを受け取り、ぐいっと飲んでみる。
「おっ、こりゃ旨いな! ビールの味ががらっと変わって、ショウガのおかげでずいぶん刺激的になってる。やるじゃねえか、ブレイズの嬢ちゃん」
「お褒めいただき恐縮です」
「良い嫁になれるぜ、ホント」
「良い嫁だなんて、私のような不束者がですか? おそれ多いですわ」
「こら川添! うちのブレイズにヘンなこと吹き込んでんじゃねえ!」
「ほーう、『うちの』? やっぱお前狙ってるんじゃねーか」
「バッ、ちが! そういうのじゃねえって!」
「りんごーん、りんごーん」
「やめろ入江ぇぇぇ!」
「……… ///」
「そしてなに無言で赤くなってんだブレイズ!」
「あー、やっぱり西郷くん狙ってるんだ?」
「ブレイズさんもまんざらでもなさそうですしね!」
「だからマジで違うっての! そしてブレイズ、お前まで火に油を注ぐなぁぁぁ!!」
結局弄られる西郷トレーナーなのであった。
ブレイズ、無言で赤くなってましたが、マジなのかどうか…。
それは、どこぞの「アイドル」じゃありませんが、嘘か本当か知り得ない、という奴です。
そして今回もネタ入りです。バタービールは分かりやすかったと思いますが…相原トレーナーが注文していた「羊の curry 料理」こと「マトンのカレー煮」は、もちろん気付きましたよね!!
今回を以て第2章…Junior Stageは終わりです。次回から新章、Classic Stageへと入ります!
ついでに次回予告といきましょうか。ブレイズ、頼む!
「承知いたしました。
先ほどお話があった通り、私もいよいよ『クラシックレース』の世界へと入ることになります。本当なら進路選択やら何やらあるのですが、私は既に tiara route と決めていますから問題ありませんね。と、その前に、何やら行事があるようですわ。
次回『2つの栄誉と1つの意志』 更新は今しばらくお待ちくださいませ」