天皇賞・秋が来る前に、同じ東京のレース描写をシュウウウウウッ!!
皆様ごきげんよう、シルヴァーブレイズですわ。
ただいま枠入りの真っ最中。Oaks の発走は目前ですわ。
この一戦、絶対に勝たねばならない……私に期待してくれる母上や trainer さん、あるいは観客の皆様方のために!
『樫の女王を目指すウマ娘が府中に集う! オークスで戴冠するのは誰だ!
上位人気3人をご紹介します。3番人気に選ばれたのはこの娘です、スイープトウショウ!
この評価は少し不満か? 2番人気はこの娘、フローラステークスを制したスリーキングダムズ!
1番人気はもちろんこの娘、桜花賞ウマ娘シルヴァーブレイズ! ファンの期待を一身に背負って、無敗トリプルティアラに王手をかけられるでしょうか!』
さーて、いよいよ決戦です!
『ゲートイン完了、出走の準備が整いました! 2,400メートルの過酷な途、その彼方に輝く樫の冠を賭けて第■☆回オークス!』
ガシャコン!
『スタートです! 各ウマ娘きれいなスタートを切りました!』
観客席の歓声、そして実況の音声があっという間に遠ざかり、代わりに走るウマ娘たちの足音と風の音だけが聴覚を支配してきます。…そして、「私を絶対に倒してやる」と言わんばかりの、殺気と言うにも等しい強い敵意も、四方八方から感じられますわ。
今回の私の位置取りは、順位にして9位前後……【先行】と【差し】の境界線辺りです。この位置を取ったのにはちゃんと理由がありますわ。
今回の出走者の得意戦術は、逃げが3人、先行が6人、差しが6人、追込が2人。どちらかといえば前に付ける方が多く、そうなると後方を牽制するため競走の流れを遅くしてくる可能性があります。私は先行も差しも得意…どちらかと申しますと差しの方が好みですが、この流れに対応するためには、いつもより少し前目に付ける必要があるでしょう。それに前目に付ければ、逃げの強者スリーキングダムズさんを捉えられる可能性も上がります。ということで、いつもよりやや前目に出る作戦で行きます。
あっちからもこっちからも感じる、びりびりとした空気。共に走る皆様の瞳に宿る、何が何でも勝つ、私を倒すという意志。そう、これこそ正に私が求めていたもの。そして…この全員を打ち倒してこそ、真の強者なり。
とりあえず、スリーキングダムズさんの位置は絶対に見落とさないよう注意しなければ。放置すると逃げ切られる可能性が高いわけですし。
あっという間に corner に到達し、私は走りながら周囲の様子をちらりと確認します。まずはこじ開けられそうな箇所を確認し…ふむ、今回は内ラチ寄りが固められていますね。桜花賞での私の切り込みを脅威に思った、ということでしょうか。内には入らない方が良い…逆に外はやや緩いですから、外に出るべきでしょう。
向こう正面に突入し、競走も早くも中盤戦。1,000Mの通過にかかった時間は、どう考えても1分より長いです。かなり流れが遅いですね。
先頭は変わらず、スリーキングダムズさん。かなりの速度で逃げており、既に縦長も縦長の展開になっております。
私の位置は10番手、真ん中所の少し後ろです。先頭との距離はおよそ12バ身。
そしてここで私、大変なことに気付きました。
(加速が、間に合わない……!)
そう、スリーキングダムズさんの逃げ足が速すぎて、どうやら私の加速が間に合わないのです。このままでは、敗北は確実。
どうしましょう……今から私の走りをやっても、間に合う気がしません。しかも、あのスリーキングダムズさんの逃げ足は、並の方法では捕まえられないでしょう。
……ん?
ちょっとお待ちくださいまし。
「並の方法では」捕まえられない? ならば簡単な話ですわ。「正気」でならずば「狂気」にて戦えば良いのです!
では、「狂気」としてどんな方法があるでしょうか。私が知る走り方で今すぐ再現できそうなのは、基本的に《シリウス》の皆様の走りばかり。メジロマックイーン先輩、ライスシャワー先輩……は駄目ですわ。あの2人は「先行」の走りですから、今の状況では使えません。カルンウェナン先輩…も得意距離が短いですから駄目。アップツリー先輩の差し足……うーん、良いのですが少し役不足。もう一手欲しいところ……。
閃 き ま し た わ
狂気で走るつもりなら……いっそ突き抜けてやりますわ!
朝練でしか試しておらず、公式戦はおろか team training でも披露していない、つまり誰にも明かしていない方法が1つあります。私は体格に恵まれてはおりませんから、負担の大きさに閉口して敬遠していたのですが……あの走法なら……あの加速力があれば、きっと届く!
ぶっつけ本番? 存じたことではありませんわ。英国のことわざでいうなら、All is fair in love and war. つまり、
「いっけーですわー!」
その一言に決意を乗せ、私は思い切り turf を踏み込みました。
ダンッ!
その足からは、普段とは全く異なるとんでもない足音が聞こえました。
『スタートです! 各ウマ娘きれいなスタートを切りました!』
『皆集中してましたね、好レースが期待できそうです!』
『期待通りの結果を出せるか? 1番人気、6番シルヴァーブレイズ!』
観客たちがわっと沸き立つ中、スタンド最前列に陣取る各チームの面々や、集団でスタンドに座っているウマ娘たちが歓声を上げる。
「「「キングダムズ様ー! 今日こそお勝ちになってー!!」」」
「良い感じだスイーピー! そのまま落ち着いていけ!」
当然、チーム《シリウス》の面々とシルバーアクセサリも負けていない。
「「「頑張れブレイズ(ちゃん)ーっ!!」」」
スタート直後でまだ固まっているウマ娘たちの集団の中でも、赤いジャケットと白い大流星の組み合わせを見つけるのはさして難しくない。シルヴァーブレイズを含むウマ娘の集団は、あっという間にスタンド前を駆け抜けていった。
『やはり先頭は14番、スリーキングダムズが行きました。その後ろに17番ブラッククイーンと3番フローズンスカイが続いています。
3バ身離れて7番のシュガーニンフェ、その外から11番エレガンジェネラル、さらに18番バイトアルヒクマも並んで、少し後ろから9番グリンドストーン、13番ニジノアヤメも来ています。第1コーナーから第2コーナーに入りまして、1番人気シルヴァーブレイズは中団にいます。さらに2番のリボンマーチと12番アクアリバー、名家の誇りを示さんと踏ん張る! そこに負けじと15番シンフォニック、8番トウホウライデンが並んで、後ろ1バ身4番ブリーズエアシップ、内に16番アンタゴニスト、さらに5番イッツコーリング、そして10番ロイヤルタータンに1番スイープトウショウという体制で、1,000メートルのタイムは1分4秒6となりました、かなり遅いペースです!』
『シルヴァーブレイズとスイープトウショウを警戒したのでしょう。2人にとっては厳しい展開になりましたが、果たしてここから逆転してくるのか! スリーキングダムズが逃げ切る脚を残せるかも、重要なポイントです!』
「…だいぶ警戒されてるな」
「どうしたんですか、トレーナーさん?」
チーム《シリウス》の西郷秀明トレーナーは、実況放送を聞いてぽつりと呟いた。それにサニーウェザーが反応する。リボンカプリチオ、アップツリー、ライスシャワーは両手を組み合わせて握り締め、メジロマックイーンもコースを注視していた。それとは対照的に、ゴールドシップはレースすら見ておらず、手元のルービックキューブをいじくり回している。
「1,000メートルが1分4で、ペースが遅い。ということは、逃げ・先行勢が脚を溜めると同時に後方勢を潰しにかかっている。ブレイズとスイープを警戒してる、ってことだ」
「なるほど……」
「うちの娘、大丈夫でしょうか…?」
サニーウェザーが納得したところで、シルヴァーブレイズの母シルバーアクセサリが心配そうに言った。
「まだ何とも言えません。ブレイズを信じましょう……ブレイズは、そう簡単には負けませんよ」
そう返しながら、西郷トレーナーはふと気付いた。
(ブレイズの位置は10位くらい…先行と差しの間くらいだ。ということは、ブレイズは得意の差し戦術を選択しながら、スリーキングダムズを捕らえるためにいつもより前目に着けたってことだな。ちゃんと考えたらしい)
そして、レースが中盤に差し掛かった、その時。
「ん?」
何かに気付いたらしく、西郷トレーナーが首を傾げた。それと同時に、
「なーんか、風向き変わった気がしねえか?」
それまで無言でルービックキューブを弄っていたゴールドシップも、不意に顔を上げ、反応を示す。
「そうですかー?」
リボンカプリチオが首を捻った。どうやら彼女には分からなかったらしい。その隣で、サニーウェザーとアップツリーも頭上に大きな「?」マークを浮かべている。だが、
「奇遇ですわね。私も、変わったように思います」
サブトレーナーを務めるメジロマックイーンまでもが、そう言い出した。
「マックイーン、何が変わったと思う?」
すかさず、トレーナーがメジロマックイーンに質問を投げる。
「そうですわね……」
少し考え、メジロマックイーンは答えた。
「気配、と言ってしまえばそうですが……レース場から聞こえる『音』、正確には『足音』ですわ」
「やっぱりか。そうだとしたら、誰かが仕掛けたってことになる。えらくタイミングの早い仕掛けに思えるが」
西郷トレーナーがそう言った時、興奮した様子の実況の声が響いた。
『なんとシルヴァーブレイズ、もう仕掛けるのか!? 果たしてゴールまでスタミナは保つのか!』
「「「「「えっ!?」」」」」
観戦していたチーム《シリウス》のメンバー一同+シルバーアクセサリは、全員が驚愕し、次いで混乱した。
「シュガー、頑張って…!」
「このスローペースはキツいな…スイーピー、頼むから今は暴発するなよ…!」
シュガーニンフェの担当たるチーム《アルナイル》の入江 美波トレーナーと、スイープトウショウの担当たるチーム《ミモザ》の川添 健二トレーナーが、それぞれの担当の勝利を祈っている。担当ウマ娘を出走させている他のチームのトレーナーも、同じように祈っていた。
その一方、ある意味外野とも言えるスタンドの観客たちは、レースを好き勝手に見ている。
「今回のブレイズの位置取りは何だ? 先行か? 差しか?」
好奇の視線をコースに向けたまま、ナカヤマフェスタは隣に座る小柄な黒鹿毛のウマ娘…キンイロリョテイに尋ねた。
「どっちかといえば差しじゃねえか?」
まだ半分ほど残っているフライドポテトを摘みながら、キンイロリョテイが答える。
「ただ、純粋な差しじゃねえな。ギリギリ先行に被るかどうかの、結構前目な位置だ。
おそらく、スリーキングダムズの逃げを警戒してんだろう。これまでの戦績を見る限りブレイズは差しが得意らしいが、アイツの逃げは強力なものだ、普通に走ったんじゃセーフティリード取られて届かない可能性がある。だから、差しの中でも前の方に着けたってことだろ」
「なるほどな」
モツをむしゃむしゃやっていたため、ナカヤマフェスタの返事はやや籠った声になっていた。
「…で、あれをどう見るよ」
これはリョテイの質問である。コースではブレイズがロングスパートをかけ始めたところだった。
「ゴルシの真似、だろうな」
モツをごくりと飲み込んで、フェスタが答える。
「ただ、ブレイズのあのちっさい身体でゴルシの走りをしきれるか分からんな。ゴルシとはパワーが違うし」
「確かにな。
1つ確かなことは……このレース、どうなるか分からなくなったってことだ」
「違いねぇな」
そんな風に論評するナカヤマフェスタ+キンイロリョテイのペアとは別の席では、
「これ、どうなっちゃうんだろう…!?」
「分からなくなったね…。ブレイズ先輩が無事に走り切れたら良いんだけど……」
心配そうな表情を浮かべるラインクラフトとシーザリオの姿があった。
一方、「パブ 流星の止まり木」にて。
「おいおい、こりゃヤバくないか!?」
「ブレイズちゃん、かなり無茶するねぇ…」
「ヤムチャしやがって、なんて言わせんなよ、ブレイズの嬢ちゃん…!」
ざわつく客たちを見ながら、マスターは背筋に冷や汗が流れるのを禁じ得なかった。
(見覚えがあると思ったが、おそらくブレイズのあれはゴールドシップの走りの真似だ。あの2人は確か同じチームだったはず。ならば、ブレイズがゴルシの走りを見習っても不思議はない。ないんだが…走りきれるか? ブレイズとゴルシじゃ体格=パワーがまるで違うぞ!?)
流石に今回はヤバい、とマスターも感じていた。
予想していたことではありました。けれど、これ……とんでもない走法ですわね!
両足にかかる反動がいつもの倍、いやそれ以上にまで跳ね上がっています。ちょっとでも気を抜けば、転倒して重大事故待った無しですわ!
それを避ける、つまりこの反動を制御するには、方法は1つしかないようです。両足の足裏を均等に接地させること。これしかありませんわ。
それと、反動を逃がし損ねればすぐに身体に恐ろしい負担がかかってきます。故に、この反動を上手く逃がすか、もしくは全て受け止めなければなりません。その方法はたった1つ……正確に爪先で大地を蹴り、できるだけ真っ直ぐに走り続けることだけ!
となれば、取るべき手段は1つのみ。つまり、ひたすら前に出ることですわ!
「くっ……ぎっ…! うぁ…!!」
ダンッ!
ダンッ!
ダンッ!
ダンッ!!
足音も、私のものとは到底思えません。まるで dynamite でも爆発させているかのような、そんな気がします。そして強烈な反動をできるだけ逃がさずに走っているおかげで、走るのではなく、前方へ飛び跳ねるような走り方になってしまっています。
当然、遠心力に引っ張られるせいで綺麗な cornering など望むべくもなく、大外へ大外へと身体が飛び出していきます。外ラチにぶつからないようにするのが精一杯ですわ。そしてその遠心力の強烈なことと来たら、上半身と下半身が泣き別れするんじゃないかと思えるような、殺人的なまでに凄まじいものです。全身の骨格の悲鳴が聞こえてくるかのようですわ。それでも…運動方程式でいうと F=ma です。これだけの遠心力ならば、それだけ加速していけるということ!
ものすごい反動……全身の筋肉が悲鳴を上げているのがよく分かります。ですが、もはや止められません。このまま走りきるしかない!
なんてめちゃくちゃな走法なんでしょう……こんなとんでもない反動を、よくまあ制御できますわね? ゴールドシップ先輩?
「何あれっ!?」
リボンカプリチオが驚くのも無理はない。
第3コーナーに差し掛かった時、大外へとシルヴァーブレイズが弾き出されてきたのだが、その走りは明らかにいつもの彼女のそれではなかった。普段の彼女の走りは、歩幅を少し長めに取るストライド走法だ。しかし、今の彼女の走りはいつもと違う。普段より1歩の歩幅が長く、普段の走りでの3歩分の距離を2歩で走る感じになっている。そのおかげで、半ば飛ぶような走り方だ。
おまけに、シルヴァーブレイズが走った後には、ちぎれた芝が宙を舞っていた。あの走り方は、まるで……
「おいおいおい嘘だろ!」
シルヴァーブレイズの走りを見たゴールドシップが叫ぶ。
「あいつ、いつの間にアタシの走りを盗みやがったんだ!?」
「やっぱり、見覚えがあると思ったら、ゴールドシップさんの走りでしたのね」
メジロマックイーンがツッコんだ。
そう、今シルヴァーブレイズが見せているのは、ゴールドシップが得意とする超ロングスパート走法である。1歩辺りの加速は小さいが、競走中盤から少しずつ加速をかけることで、スタミナが続く限り無限大に加速していくことができる。このため、レース距離が長ければ長いほど、選手の
しかし、この走法には欠点がある。身体にかかる反動が凄まじいのだ。体格とパワー、それに足首の柔軟性に恵まれているゴールドシップなら、その反動を制御できるのだが……シルヴァーブレイズは、ゴールドシップほど体格に恵まれていない。それに、いくらトレーニングしたとはいえ、まだ彼女はクラシック級の途半ばである。筋肉も完全には発達していないはずだ。そんな身体であんな走り方をするとなると……
「あいつ大丈夫か!? ケガしねーだろうな!」
ゴールドシップの心配も頷ける。
「今は、シルヴァーブレイズを信じるしかない。
みんな、すぐにウィナーズサークルへ向かうぞ! 最悪レースコースへ直行するかもしれん、アイシングとスポーツドリンクの用意も忘れるな!
お母様は、すみませんがこちらでお待ちを。様子を見てきます」
「わ、分かりました」
いち早く立ち直った西郷トレーナーが、機敏に指示を飛ばした。
「トレーナー、ビニール袋要るか!?」
「ありがたい、頼んだ!
それとカプリチオ、ツリーと一緒に担架借りてきてくれ!」
「分かりましたっ!」
「任せてください!」
「サニー、行くぞ! マックイーンとライスはここで、ブレイズのお母様と一緒にいてくれ!」
「は、はい!」
「任されましたわ!」
「う、うん!」
チーム《シリウス》の面々があたふたと動き出す中、レースもいよいよ終盤である。
『大ケヤキを越え、4コーナーへ!』
『ウマ娘たちがどう動くのか、目が離せません!』
『シルヴァーブレイズ、すごい脚で上がってきた!?
さあいよいよ直線だ! どのタイミングで誰が仕掛けるのか!
栄光まで400、最初に立ち上がったのはスリーキングダムズ! しかし外からシルヴァーブレイズがかわして先頭に立った!』
観戦に来ていたギャラリーや他チームの面々の目はシルヴァーブレイズに釘付けだ。
まさか、まだ身体もできあがっていないクラシック級ウマ娘、それも比較的小柄な者が、ゴールドシップの破天荒ストライド走法を真似するとは! 果たして大事故に繋がりはしないのか……全員が危機感半分、驚き半分でレースを見つめる中、シルヴァーブレイズはさらに加速する。いや、シルヴァーブレイズの表情が鬼気迫るものになり、歯を食いしばっているところを見るに、反動を制御しきれず、止まれないのだろう。
『シルヴァーブレイズ、完全に抜け出した! 速い速い!
追い縋るスリーキングダムズ、外側からスイープトウショウが上がってきた! その後ろからシュガーニンフェも来ている!
トウホウライデンは苦しいか! 末脚が伸びない!
追い上げるスイープトウショウ、粘るスリーキングダムズ、しかし、抜けた抜けた抜けた!
強いッ! 6番シルヴァーブレイズ、独走体制だ!』
スリーキングダムズもスイープトウショウも遥か後方に置き去りにして、シルヴァーブレイズがスパートをかける。……いや、そう思っているのは、レースの知識がない一般人の観客だけだ。少しでもレースに詳しい者や、ウマ娘たち、トレーナーたちは確信していた。あれはスパートではなく、「暴走」であると。
『200を通過!
先頭シルヴァーブレイズ、リードは4バ身! 駆ける、駆ける! 流星が大地を駆けている! スイープトウショウ届くか、届かないか!』
後続の面々に大きな差をつけて、シルヴァーブレイズはゴール板の前を駆け抜け……走る勢いが止まらない。ゴールインした直後から、なるべく上方へジャンプするようにして止まろうとしているようだが、あのストライド走法による加速力は尋常ではなく、容易には止まれないようだ。
『シルヴァーブレイズ、今ゴールイン! 圧倒的な実力差を見せつけ、レースを制して止まらない! シルヴァーブレイズ止まらない! もはや暴走状態か!』
このままでは、シルヴァーブレイズは減速が間に合わず外ラチに激突し、大怪我……最悪の場合、競走ウマ娘としては引退どころか命を落とすことにすらなりかねない。何せ時速70㎞で走行できるのだから。
観戦していた他のウマ娘たちやトレーナーたちがそう思った時、シルヴァーブレイズは最後の手段に踏み切った。いきなり腰を落としたかと思うと、身体を横に捻り、ターフに倒れ込んだのだ。そのままゴロゴロとターフの上を転がっていく。無理矢理の減速方法だ。
すわ故障による転倒かとスタンド中に悲鳴が響く中、実況放送の声だけが高く響き渡っていた。
『ああっとシルヴァーブレイズ、ついに転倒! 大丈夫か!?』
『一瞬、腰を落とすのが見えました。おそらくわざと転び、無理やりブレーキをかけたのでしょう。
あのとっさの判断力には、目を見張るものがありますね』
スイープトウショウやスリーキングダムズを先頭に、着外敗戦した面々も含めてウマ娘たちが続々とゴールしていく。だが、このレースの勝者が誰であるかなど、誰の目にも明らかだった。
『このレースはシルヴァーブレイズの完勝でした!
オークスで戴冠したのはシルヴァーブレイズ! ここまで6戦6勝、無敗のダブルティアラであります!
秋の京都へ、伝説は引き継がれてゆく! 無敗トリプルティアラ達成なるか!?
2着スイープトウショウっ! ギリギリのところでスリーキングダムズを差し切りました! 3着スリーキングダムズ!』
シルヴァーブレイズのレース経過
「差し」を選んでスタート
↓
序盤から中盤にかけてはやや後方に付ける
↓
「不沈艦、抜錨ォッ!」発動
↓
レース終盤で固有スキル「人事天命 God bless me!」+加速スキル「王手」発動
↓
3~4コーナーでごぼう抜き、残り400でスリーキングダムズを捉える
↓
ゴールイン
着順
1着 6番 シルヴァーブレイズ タイム2,24.4
2着 1番 スイープトウショウ 5
3着 14番 スリーキングダムズ クビ
4着 13番 ニジノアヤメ 1
5着 7番 シュガーニンフェ 1/4
というわけで、掟破りのゴルシ走りを採用したブレイズが、何とか凌ぎ切ってティアラ2冠めを獲得。しかし、ゴール直後にぶっ倒れてしまったということで、果たしてブレイズは無事なのでしょうか?
ブレイズの様子は次回にて描写します。で、次回予告担当は…
「わたし、ラインクラフトです!」
はい、本コーナーでは初登場のラインクラフトさんです!
「えーと、次回予告ですね!
ブレイズ先輩、あんな走りもできるんだ…。最後の直線でズバーッと抜いていくだけじゃなくて、ステイヤーの先輩方みたいな脚の使い方をするなんて…。ううん、阿寒湖特別を勝ったブレイズ先輩なら、あんな走りもできるよね!」
確かに、ブレイズは本来ステイヤーだからな!
「そんなブレイズ先輩だけど、派手に転倒しちゃって大丈夫かなぁ…?」
…今はまだ何とも言えないな。ブレイズを、信じるしかない…!
「そうだよね……きっとブレイズ先輩が無事だって、信じてる!
次回『樫の冠とファン投票』 更新はちょっと待っててくださいっ!」
P.S. いつの間にか評価が600ポイントを超えてる…!
評価5をくださいました桶の桃ジュース様
評価9をくださいましたパンダkkk様
評価10をくださいましたヤマヨシ様、リュカ777様
ありがとうございます!!
また、新たにお気に入り登録してくださいました皆様、ありがとうございます!