大地を駆ける一筋の流れ星   作:Red October

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いよいよクラシックレースのラスト1冠が目前ということで、各メディアがいろいろと賑やかになってるようですよ。



Act.044 各媒体より② ─いよいよクラシック締め括り!─

《◯◯年10月1日発売『月刊トゥインクル』より抜粋》

特集『秋の華、菊の花が咲く前にこれだけは読め! トライアルレース一斉振り返り!』

10月といえば、クラシックレースの最後の一戦が行われる時期である。そこで、クラシックレースに繋がる4つのトライアルレースを振り返り、各選手の実力を改めて確認したいと思う。

 

9月12日(土)15時26分発走 阪神レース場第11R GⅡ「ローズステークス」

 最初に行われたのは秋華賞トライアルの1つ、ローズステークス。1番人気に支持されたのは、オークス2着のスイープトウショウだった。春クラシック戦線からの実力者である。

 しかし、夏の間に実力を上げてきたウマ娘たちも多かった。このレースを制したのは、中団から早めに仕掛けたゴルトシュレーゼル、タイムは1分59秒0。ただ、スイープトウショウも3着入線して秋華賞への優先出走権を獲得している辺り、実力は確かである。

芝1,800(右・内) 晴 良

1着 ゴルトシュレーゼル 1,59.0

2着 デイズオブグロリア クビ

3着 スイープトウショウ クビ

 

9月13日(日)15時42分発走 中山レース場第11R GⅢ「紫苑ステークス」

 続いて、もう1つの秋華賞トライアル、紫苑ステークスである。GⅢレースであるが、今年はGⅢとは思えないほど出走メンバーが充実していた。1番人気のスリーキングダムズを筆頭に、名門アクア家の令嬢アクアリバー、桜花賞2着のトウホウライデン、オークス4着のニジノアヤメ等、実力者揃いである。

 GⅢとは思えない熱い競り合いの果て、優勝を飾ったのはスリーキングダムズだった。タイムは1分58秒5と、紫苑ステークスの過去記録では早めの時計である。

芝2,000(右) 晴 良

1着 スリーキングダムズ 1,58.5

2着 ニジノアヤメ 1/2

3着 アクアリバー 1/4

 

9月20日(日)15時35分発走 中山レース場第11R GⅡ「セントライト記念」

 3つめは菊花賞トライアルの1つ、セントライト記念である。出走者の中に春クラシック戦線で著明な成績を挙げた者はおらず、夏の間に実力を付けたウマ娘たちによる意地と実力のぶつけ合いとなった。

 この戦いを制したのはキタサンブラック、レース序盤から先頭に立ち堂々と逃げ切ってみせた。上がり3ハロンのタイムも34秒9とこれまでより縮んでおり、夏の鍛練の成果を存分に見せつけたと言える。

 余談ながら、このレースではキタサンブラックも含めて低人気の伏兵が上位を占めており、まだ見ぬ実力者が息を潜めている可能性が示唆された。

芝2,200(右・外) 晴 良

1着 キタサンブラック 2,13.8

2着 トランペットリズム 1/4

3着 サクセスフォース アタマ

 

9月27日(日)15時30分発走 阪神レース場第11R GⅡ「神戸新聞杯」

 最後に、神戸新聞杯である。おそらく4つのトライアルレースの中で最も人々の話題をさらったレースと言っても過言ではないだろう。

 忘れもしない9月3日、秋華賞のトライアルレースに出る選手が発表される最中、突然のチーム《シリウス》からの発表に仰天した人は多かったはずだ。ティアラ路線の最有力候補と目されたあのシルヴァーブレイズが、神戸新聞杯に出ると言い出したのだから。出走理由についてブレイズは、「ティアラ路線のウマ娘は三冠路線のウマ娘に比べて弱いと言われがちな傾向がある。その評判を自らの脚で覆したく、秋華賞の優先出走権がないことを承知の上で敢えてこの競走を走ることにした」と語った。ただし、「この競走に勝ったとしても、菊花賞に出ることはない。予定通り、秋華賞を目指す」とのことである。

 レースは、皐月賞2着の2番人気ゲンジツスチールをはじめとする先行勢が牽制し合い、それをシルヴァーブレイズを含む後方集団が追走する流れとなって、1,000Mの通過タイムは1分5とかなりのスローペース。そのまま最終コーナーまでもつれ込み、ホームストレッチに差し掛かるところでゲンジツスチールが頭一つ抜け出した。しかしそこに、大外からシルヴァーブレイズとオボロイブニングが強襲。最後の100メートルでシルヴァーブレイズがゲンジツスチールを差し切り、1バ身離して1着を取った。

 オークス以降故障説も囁かれていたブレイズだが、この走りを見ればそんな懸念はあっさり吹き飛ばされてしまう。やはり強い娘は強いのだ、ということがよく分かる。この強さを、秋華賞本番でも発揮してもらいたいものである。

 シルヴァーブレイズが菊花賞出走を辞退したため、優先出走権を獲得したのは2着のゲンジツスチールと3着のオボロイブニングとなった。

芝2,400(右・外) 晴 良

1着 シルヴァーブレイズ 2,25.9

2着 ゲンジツスチール 1

3着 オボロイブニング クビ

 

以上の結果から、優先出走権を確保したウマ娘はそれぞれ以下のようになった。

秋華賞:ゴルトシュレーゼル、デイズオブグロリア、スイープトウショウ、スリーキングダムズ、ニジノアヤメ、アクアリバー、シルヴァーブレイズ

菊花賞:キタサンブラック、トランペットリズム、サクセスフォース、ゲンジツスチール、オボロイブニング

勿論だが、この他にもクラシック最後の一冠を狙う実力者は多数潜んでいると見られる。今年のクラシックレースのトリはどんなドラマが繰り広げられるか、今から期待が高まっている。

 

 

《◯◯年10月1日発売『月刊トゥインクル』特別号より抜粋》

『クラシックレース・ラスト1冠! 栄冠を掴み取るのはいったい誰だ!?』

 4月4日の「桜花賞」から始まった今年のクラシックレースも、いよいよ大詰め。トライアルレースが全て終了し、役者は全て揃ったと言って良い。そこで、2つの路線の最後を締めくくる「秋華賞」「菊花賞」それぞれに出走するウマ娘たちの中でも、特に有力な選手を紹介&特集したいと思う。レース前に本書を手に取り、応援したいウマ娘を決める一助にしていただければ、本誌編集者一同にとってこれに過ぎる喜びはない。

 先に行われるのが、10月8日(日)開催の「秋華賞」だ。秋華賞は、「桜花賞」「オークス」と合わせて「トリプルティアラ」と呼ばれ、ティアラ路線の最後の1レースである。ティアラ路線は「皐月賞、日本ダービー、菊花賞(トリプルクラウン)の裏庭」などと呼ばれることもあるが、今年は例年と異なり、今年のトリプルクラウンすら上回りかねないほど注目度が高い。そして、ジェンティルドンナが3冠を達成した昨年のティアラ路線よりも、注目度が高くなっている。

 秋華賞への出走を表明しているウマ娘の中では、まず『シュガーニンフェ』が1人目の注目株だ。クラシック路線前半戦では桜花賞3着、オークス5着と悪くない成績を残しており、直近ではクラシック・シニア混合レースであるクイーンS(8/16札幌11R 芝1,800)で3着に入っている。最近勝ち星に恵まれていないものの、実力は確かだ。チーム《アルナイル》の入江トレーナーも「この夏の間に彼女はさらに力を付けました。オークスの2,400は少し長かったですが、タイムを見ていて2,000なら十分戦えると確信しています」とコメントしており、下剋上なるか期待が大きい。

 続いての注目ウマ娘は、桜花賞5着、オークス2着の『スイープトウショウ』だ。ローズS3着で秋華賞の優先出走権を掴み取っており、今回も終盤に後方から追い込んでくると見られる。チーム《ミモザ》の川添トレーナーも自信をほのめかしており、本番で魔法のごとき末脚を見せてくれるか、楽しみである。

 3人目の注目ウマ娘は、桜花賞7着、オークス3着の『スリーキングダムズ』。彼女が所属するチーム《リギル》の東条トレーナーは、「仕上がりは完全です。本人のやる気も十分ですし、期待しています」と発言しており、またローズステークスでは2着以下に3バ身半差の快勝を収めたことから、期待度の高いウマ娘である。

 この他にも、今度こそはとリベンジを狙うアクア家の令嬢『アクアリバー』や、オークス4着の『ニジノアヤメ』など、ティアラ最後の一冠を虎視眈々と狙うウマ娘が多い。

 しかし、今年のティアラ路線最大の注目株は、誰が何と言おうがこのウマ娘であろう。

 デビュー以来8戦8勝、「無敗の白銀女王」と呼ばれる1番人気のウマ娘『シルヴァーブレイズ』。朝日杯FSではレコード勝ち、桜花賞では4バ身差の完勝、オークスでも5バ身差の圧勝を収め、間違いなく今年のティアラ路線では最強格の存在である。

 オークスでの激走で身体の調子を崩し、宝塚記念への出走を見送り、一時は松葉杖をついて歩行する姿も見られたことから、秋クラシック戦線への参加が危ぶまれていた。しかし、彼女が所属するチーム《シリウス》の西郷トレーナーは「彼女は確かにオークスで疲労していますが、骨折などの怪我はありません。6月いっぱいはレースに出る予定はありませんが、秋までには回復していると思います」と発言し、その言葉通りに彼女は帰ってきた。神戸新聞杯では2着以下に1バ身差で勝利しており、懸念は完全に払拭されたと言って良い。

 トリプルティアラはかつて、まだトリプルティアラが「桜花賞」「オークス」と「エリザベス女王杯」だった時代に、名門メジロ家のウマ娘メジロラモーヌが果たしたことがある。近年だと、ティアラ3冠ウマ娘としてスティルインラブやジェンティルドンナが有名だ。しかし、無敗トリプルティアラは今に至るも一度も達成されていない。その前バ未到の大記録に、シルヴァーブレイズは挑む。

 無敗トリプルティアラがかかったこのレースでは、シルヴァーブレイズの得意とする走りが「差し」であることもあり、彼女にはこれまでにも増して厳しいマークがかかることが想像される。それは「シルヴァーブレイズ包囲網」と表現しても良いほど、強烈なものとなるだろう。

 果たして今度こそ「シルヴァーブレイズ包囲網」が完成するのか、それとも白銀の大流星(シルヴァーブレイズ)はその包囲網さえ打ち破るのか。史上最強と言える「無敗の三冠女王」の誕生を心待ちにするファンも多く、世間の期待と注目度は高い。シルヴァーブレイズがその期待に応えられるのか、楽しみである。

 

 続いて行われるのが、10月22日(日)開催の「菊花賞」だ。トリプルクラウン路線の最終レースにして、クラシック級ウマ娘たちにとっては初となる、3,000メートルの過酷なレースである。

 昨年の菊花賞では、ゴールドシップが第3コーナー手前から常識破りの超ロングスパートで1着を勝ち取り、しかもウィナーズサークルでブレイクダンスまで披露して余裕ぶりをアピールしていたが、今年は誰が「最強」の称号を手にするであろうか。

 2冠達成したドゥラメンテは骨折の治療に万全を期すため不在、サトノ家の令嬢サトノクラウンは天皇賞・秋出走を選択して菊花賞を回避、という状況の中、我こそはという有力ウマ娘を何人かピックアップしよう。

 有力候補の1人目は、セントライト記念を勝った『キタサンブラック』。去年のホープフルS以降GⅠタイトルの勝利はないものの、彼女もまた有力バの1人である。チーム《スピカ》の沖野トレーナーも「夏の間に彼女は良い仕上がりになりました。今回こそは勝ちたいと思います」とコメントしており、今度こそGⅠウマ娘の栄誉に輝けるのか、注目が集まっている。

 続いては、神戸新聞杯にて菊花賞の優先出走権を確保した『ゲンジツスチール』と『オボロイブニング』だ。ゲンジツスチールは既に重賞で勝利を飾っており、GⅠ勝利こそまだだが皐月賞2着、ダービー4着と実力は相当なものである。ダービーの競走中に骨折を発症していたことが発覚したものの、治療後初のレースとなった神戸新聞杯では、勝ったシルヴァーブレイズと1バ身差の2着に食い込んでおり、実力十分であることが証明されている。菊花賞でも勝てる可能性は十分あるだろう。また、オボロイブニングは重賞勝利の経験はないが、ホープフルS2着、皐月賞4着、ダービー5着と健闘しており、逆転の可能性を秘めた娘だ。チーム《ラス・アルゲティ》の千田トレーナーは、「あの娘は重賞勝利にこそ恵まれていないけど、GⅠ取れる素地はあるはずだ。今回は彼女の得意な長距離だ、俺は取れると信じてる」と話しており、期待の膨らむウマ娘である。

 この他にも、クラシック春戦線の直前に骨折で離脱したものの復活の兆しを見せる『ロートケーニヒ』や、リズム家の俊英『トランペットリズム』など、菊の一冠を狙う者は数多い。今年はどんな激戦になるか、そして誰が勝つのか、予想が付かない。

 

 総括すると、三冠路線は前半期の強豪が不在になったために群雄割拠の様相を呈し、ティアラ路線では史上初の快挙が達成されるかどうかというところである。誰が勝つにせよ、GⅠレースに勝った時点で歴史の一角に名を残すのは間違いない。さあ、あなたの"推し"を応援しに京都へ行こう。

(文責:乙名史悦子)

 

 

《10月5日19時オンエア TV番組「ウィークリーレーシング」》

 

「さて、ここまで今週の月曜日から今日までの目玉レースと、そのハイライトを紹介してきました。ここからは今週後半、そして来週前半の目玉レースを次々紹介していきます!」

 

 どこかのスタジオと思しき場所で、女性キャスターが喋っている。

 

「今週後半の目玉レースは何と言っても、そう、秋華賞! 10月8日日曜日、15時30分発走予定のGⅠレースです! 京都の2,000メートルを舞台に、ウマ娘たちがティアラ路線最後の一冠を賭けて激突します!

既に世間でもかなり話題になっておりますが、今回はその中でも世間の注目が高い3人の出走ウマ娘にお越しいただきました! 是非ともお話を聞かせていただこうと思います!」

 

 スタジオには、カメラに向かって左側にキャスターが座り、反対の右側に3人のウマ娘が腰掛けていた。

 左から順に、1人目は3人の中で最も身長が高い。美しい尾花栗毛をショートに切り揃え、美少年と見間違えそうな整った顔立ちのため、ウマ耳を見なければ美男子に見間違えられかねない。しかし、中等部とは思えない豊満な身体の持ち主である。左耳に王冠を模した耳飾りを被せ、さらにティアラを装着していた。その勝負服は、プレートアーマー様の手甲・胸甲・足甲に、豪華絢爛さを印象付ける赤マント、さらに左腰に剣と、まさしく騎士王といった出立ちである。

 真ん中、2人目はかなり背が低い。魔女を思わせる黒いとんがり帽子を被り、制服に似た服装の上から黒いローブを羽織り、さらに腰にはハリ◯タを思わせる魔法の杖と、誰がどう見ても魔女の見た目である。そしてワガママそうな不敵な面構えをしている。

 そして右の3人目も、2人目と同じく背が低い。見た目についての最大の特徴は左右色違いの瞳と頭髪だ。右目が緑、左目が青という日本人とは思えない色合いをしており、鹿毛のストレートの頭髪は先端に行くに従って色素が抜けたような銀色に変化している。この色の変化はいわゆる「流星」なのだが、頭髪全体を覆うほど大きい。そしてこのウマ娘の服装は、左耳に黒いハンチング帽を被り、金ボタンの赤ジャケット+白手袋+青いプリーツスカートに左右長さ違いの黒ソックスと、どこかイギリス王室騎兵隊「ライフガーズ」を連想させるものである。

 そう、左から順にスリーキングダムズ、スイープトウショウ、シルヴァーブレイズである。秋華賞の出走ウマ娘の中でも特に有力とされる3人であった。

 

「それでは、まず…」

 

 とキャスターが言いかけた瞬間、

 

「勝つのはこの私、天才魔法少女スイーピーよ!」

 

 全てを無視するかのように、いの一番にスイープトウショウが叫んだ。

 

「夏の間にすっごい特訓してきたし、薬草も聖水もたっぷり作ったから魔力も十分よ!

リコリス・コスモス・フラグランス! これで当日のレースもばっちりね! 見てなさい、誰が最強の魔法少女なのか、みんなに教えてあげるわっ!!」

 

 魔法の杖を振り回しながら呪文を唱えるスイープトウショウ。その勢いに呑まれ、キャスターも完全に言葉を失っている。

 ちなみにお気付きかと思うが、スイープの呪文は秋の花3種の名前を並べたものである。それぞれ「ヒガンバナ」「コスモス」「キンモクセイ」だ。1着のトロフィーに相応しい色を持つキンモクセイの名を出してくるあたり、スイープトウショウの熱意は並大抵のものではないらしい。

 

「す、スイープトウショウさんは後方から追い込む走りが得意でしたね。魔法のような素晴らしい末脚を期待しています!」

「ふふん、見てなさいよね!」

 

 キャスターの取りなしに、スイープトウショウもすっかり気を良くしたらしい。

 

「それでは続いて、スリーキングダムズさん! 桜花賞、オークス共に惜しい戦績に終わっていますが、秋華賞への意気込みはどんなものでしょうか?」

 

 話を振られたスリーキングダムズが、姿勢を正して答える。

 

「確かに、桜花賞もオークスもどちらも悔しい結果に終わりました。特に桜花賞では、競り合いに夢中になってバ場の重さを忘れていたために、文字通り足元を掬われることになりました。非常に悔しい結果であり、それは私も受け止めています。

だからこそこの秋華賞では、呪いだろうと魔法だろうと全て撥ね返し、1着という玉座に座ります」

 

 もちろんだが、この発言はシルヴァーブレイズとスイープトウショウへの牽制である。さっそくスイープトウショウが噛み付いた。

 そのおかげで、シルヴァーブレイズの左の眉が僅かに動いたことには、誰も気付かなかった。

 

「あら、スイーピーの魔法から逃れられると思ってるの?」

「スイープさんは、アーサー王の伝説はご存知ですか?」

「それくらい知ってるわよ! 聖杯とか魔法のアイテムみたいじゃない!」

「魔法のアイテムといえば、聖杯もそうですが、むしろこちらではないでしょうか」

 

 スリーキングダムズは、腰に吊るした剣を示した。

 

「これ自体は模造品ですが、これの元になったのは、魔法の力が宿るとされる聖剣エクスカリバー。自身の身を守り敵を討つ道具である剣に、魔法がかけられているのですよ。そういうアイテムこそ、レースという戦いに相応しいでしょう」

「むー、言ってくれるじゃない! スイーピーの杖だって負けてないんだから!」

 

 ぐぬぬ、と睨み合うスリーキングダムズとスイープトウショウ。と、そこへ、

 

「くすくす……ふふふふふ……」

 

 微かな笑い声が聞こえてきた。これまで一言も話していなかったシルヴァーブレイズが、口元に手を当てて静かに笑っている。

 

「では最後にシルヴァーブレイズさん、無敗トリプルティアラに王手をかけておりますが、今の心境は如何でしょうか!?」

 

 その場を誤魔化すかのように、キャスターが少々早口で尋ねる。それに対してシルヴァーブレイズは、微笑んだまま答えた。

 

「スリーキングダムズさんもスイープトウショウさんも、意気軒昂なようで何よりですわ。士気高きは結構なことではありませんか?

この様子ならば、当日は十分、いえ十二分の力を出して走ってくださるみたいです。だからこそ、」

 

 瞬間、凄まじい雰囲気が場を圧した。まるで重力がいきなり40倍になったかのような、とてつもなく重い雰囲気。

 

「「「!?」」」

 

 キャスターも2人のウマ娘も、思わず口籠もる。そこに、先ほどまでの穏やかな口調から一転した、重々しい声が響いた。

 

「…倒し甲斐があるというもの」

 

 もちろん声の主はシルヴァーブレイズである。だが、笑顔のまま彼女の額から目にかけて影が落ち、口元には糸切り歯を剥き出しにするかのような狂気を湛えた笑みを浮かべ、纏う雰囲気は覇者そのもの。無敗でダブルティアラを獲得した実力は伊達じゃない、と確信させるほど鋭く気迫に満ちた顔をしていた。

 

「無論、戦の勝ち負けはやってみなければ分かりません。

ですが今回の競走、自分で言うのも何ですが一番人気は俄然私です。つまり私が勝利し、無敗三冠という史上初の記録が達成される瞬間を心待ちにしている方が多い、ということです。そして私には、その願いを叶える義務がある。何故なら知っての通り、私は大流星(ブレイズ)を有しており、夢を叶える願い星たる責務を負うているのだから!」

 

 言いながら、シルヴァーブレイズは右手で頭髪をそっと掬い、靡かせてみせる。白銀色の大流星が照明の光で艶やかに輝いた。

 そして椅子から立ち上がり、シルヴァーブレイズはテレビカメラを真っ直ぐに見据えて宣言した。

 

「皆様、どうかお待ちくださいませ。『本年を以て史上初の tiara route 無敗三冠が達成された』という一行が歴史書に刻まれる瞬間を。

スリーキングダムズさんもスイープトウショウさんも、そしてこの場にいない他の秋華賞狙いの皆様も、全力でかかってくるがよろしい。今はまだ、誰にも負けはしない……当日は、本気の全開走行(ドライブ)にてお相手致します」

 

 当然、噛み付かない2人ではない。

 

「何を言ってるのよ! 勝つのは天才魔法少女スイーピーなんだから、覚悟しときなさいよね!!」

「その言葉はそっくりお返しします。1着の玉座に座るのはこの私、スリーキングダムズになるでしょう。ブレイズさん、前半期の借りは返していただきますよ」

「その心意気や良し。当日はお互い、正々堂々と戦いましょう」

「以上、秋華賞直前インタビューでした! この後は、秋華賞に出走するウマ娘たちの中から、当番組が選抜した方の学園生活の様子をお届けします!」

 

 バチバチに火花を散らし合う3人のウマ娘の横で、どこか必死な様子でキャスターが〆た。そして映像は、今出演していた3人を含む数人のウマ娘の学園での様子を収めたVTRへと切り替わるのだった。

 

 

《同日21時頃 ウマ娘系掲示板「阿寒湖住人の集い」 10月4日設立スレ

【咲かせよう】阿寒湖住人スレ part 2,199【秋の華!】より抜粋》

618:阿寒湖住まいの名無し

今週のウィークリーレーシングもおもろかったな

 

619:阿寒湖住まいの名無し

今北産業

残業のため見れず、ハイライト教えてクレメンス

 

620:阿寒湖住まいの名無し

>>619

目玉はスプリンターズSと秋華賞の特集でござるかな

 

621:阿寒湖住まいの名無し

>>619 主にその2つだな

 

622:阿寒湖住まいの名無し

スプリンターズSな、とうとうパール引退だとさ

 

623:阿寒湖住まいの名無し

>>622

シーキングザパールか!

 

624:阿寒湖住まいの名無し

>>623 そ、あのオーバーリアクションおもろかったんだがな…もう見れんのか…

 

625:阿寒湖住まいの名無し

日本で初めて海外GⅠ取ったウマ娘だったから、偉大なのは間違いない

 

626:阿寒湖住まいの名無し

パール姉さん、お疲れっした!

 

627:阿寒湖住まいの名無し

本当にお疲れ様でござる

 

628:阿寒湖住まいの名無し

さぁて、過去を振り返ったところで次は未来の話だ!

 

629:金色旅程

>>628

うむ、特に秋華賞関連は興味深い

 

630:阿寒湖住まいの名無し

>>629 おお総大将!!

 

631:阿寒湖住まいの名無し

>>629

ステゴ総大将!ステゴ総大将じゃないですか!

 

632:阿寒湖住まいの名無し

>>629阿寒湖総大将チッスチッス

 

633:阿寒湖住まいの名無し

>>629

これは総大将、ようこそでござる

 

634:銀星

こんばんは。

皆様お揃いでしょうか?

 

635:阿寒湖住まいの名無し

>>634 おっとブレイズまで!こん

 

636:阿寒湖住まいの名無し

>>634ブレイズバンハバンハ!!

 

637:阿寒湖住まいの名無し

>>634

ブレイズ嬢、こんばんはでござる

 

638:阿寒湖住まいの名無し

ばんわ!

主役のお通りだぞ道空けろ!

 

639:阿寒湖住まいの名無し

タイミング良いな、さっそくブレイズに聞こうじゃないか

秋華賞特集とあのインタビューをな!

 

640:阿寒湖住まいの名無し

>>639 それ賛成!

 

641:阿寒湖住まいの名無し

よしブレイズ、話してくれ!

 

642:銀星

承知致しました。

では放送順からとしまして、先にインタビューからですね。

 

643:阿寒湖住まいの名無し

>>642 おーし頼む!

 

644:阿寒湖住まいの名無し

wktk

 

645:阿寒湖住まいの名無し

wktk

 

646:阿寒湖住まいの名無し

バチバチだったもんな

 

647:阿寒湖住まいの名無し

キャスター焦ってて笑ったw

 

648:金色旅程

一流ウマ娘の圧って凄まじいからな

 

649:阿寒湖住まいの名無し

>>648

総大将が言うと説得力マシマシでござるな

 

650:銀星

私の感触としては、スリーキングダムズさん、スイープトウショウさん、どちらも手強い相手です。夏の間に相当鍛えてきた、というのがはっきり分かりました。

 

651:阿寒湖住まいの名無し

さすが東条トレーナー

 

652:阿寒湖住まいの名無し

そういやキングダムズはリギルだったっけ

 

653:阿寒湖住まいの名無し

で、ござるな

 

654:阿寒湖住まいの名無し

スイーピーもGⅠで好走してんだ、手強いのはそらそうよ

 

655:阿寒湖住まいの名無し

スイープのトレーナーってどんな人だっけ

 

656:阿寒湖住まいの名無し

>>655お兄ちゃん!

 

657:阿寒湖住まいの名無し

>>656 端的で草

 

658:阿寒湖住まいの名無し

 

659:阿寒湖住まいの名無し

www

 

660:阿寒湖住まいの名無し

>>656 お兄ちゃん?

 

661:阿寒湖住まいの名無し

>>660カレンチャンのトレーナーだ!

 

662:阿寒湖住まいの名無し

>>661 あーあの人か!!

 

663:阿寒湖住まいの名無し

そういやそうだった!

 

664:金色旅程

それで?負けるつもりはねえんだろ?

 

665:銀星

>>664

戦の勝ち負けはやってみなければ分かりませんが、負けるつもりで勝負は致しません。1番人気は紛れもなく私ですから、皆様の夢を叶えるべく戦って勝ちを得るまでです。

 

666:阿寒湖住まいの名無し

>>665 おおー言い切ったな

 

667:阿寒湖住まいの名無し

>>665 無敗を貫くやつァ言うことが違うぜ!

 

668:阿寒湖住まいの名無し

やべえ、今から興奮してきた

 

669:通りすがりの勝負師

ふ…さて、ここで一つ勝負と行かないかい?

 

670:阿寒湖住まいの名無し

>>669

おっと勝負の賭けか? ブレイズの勝ちににんじん2本で

 

671:阿寒湖住まいの名無し

>>669 なら俺はブレイズの勝ち、にんじん1ケースだ!

 

672:阿寒湖住まいの名無し

>>669ブレイズの勝ちに500円賭けようかね

 

673:金色旅程

>>669

ウマ娘レースに賭けは御法度だろうが!

そしてフェスタてめえ、焚き付けんじゃねえ!

 

674:通りすがりの勝負師

>>673バレたかよ、相変わらずカンの良い

 

675:阿寒湖住まいの名無し

>>674

え?もしやナカヤマフェスタ殿でござるか?

 

676:阿寒湖住まいの名無し

あっと危ない、勝負師のノリに巻き込まれるとこだった

 

677:阿寒湖住まいの名無し

>>674 フェスタさんちーっす!

 

678:阿寒湖住まいの名無し

>>674 一か八かのアウトロー勝負師さんじゃないすか!

 

679:阿寒湖住まいの名無し

こんなとこにフェスタが来るなんて珍しいな

 

680:通りすがりの勝負師

>>679私だってこういうとこを覗くこともある。

仕方ない、チップは当日まで取っておくぜ。じゃあな

 

681:金色旅程

>>680

だからテメーはブレイズを趣味のタネに使うの辞めろ!

 

682:銀星

>>680

相変わらずですわねあの先輩も…。

 

683:阿寒湖住まいの名無し

>>682 ブレイズも苦労してんなー

 

684:阿寒湖住まいの名無し

違いない

 

685:阿寒湖住まいの名無し

それで、インタビューの後の特集、あれ何でござるか?

 

686:阿寒湖住まいの名無し

>>685 あれ?

 

687:阿寒湖住まいの名無し

>>686 あれって何ぞ

 

688:阿寒湖住まいの名無し

>>686

>>687

ほら、バイト中にりんご早切りしてたでござろう

 

689:阿寒湖住まいの名無し

>>688あーアレか!

 

690:阿寒湖住まいの名無し

包丁の筋が見えなかった…俺の目をもってしても…!

 

691:阿寒湖住まいの名無し

>>688 めっちゃカッコよかったぞ

 

692:金色旅程

あれ、どんな訓練したらできるんだよ

 

693:銀星

>>692

どんなと申されましても……切り方を脳裏に描いて、その通りに両腕を振るえば良いとしか……。

 

694:阿寒湖住まいの名無し

>>693それができねーんだわwww

 

695:阿寒湖住まいの名無し

>>693 両腕に持ったナイフを目にも止まらぬ速度で振り回して、空中でりんごを8等分するって何なんだよ!

 

696:阿寒湖住まいの名無し

石川五右衛門の刀捌きで草

 

697:阿寒湖住まいの名無し

あれは誰にも真似できんでござるよ

 

698:金色旅程

お前マジでやべー奴だな

 

699:阿寒湖住まいの名無し

総大将までやべー奴認定してんの芝生えるw

 

700:阿寒湖住まいの名無し

芝2,400だわwww

 

701:銀星

うーん、強いて言うとするなら、投げナイフを練習してみては如何でしょうか?

 

702:阿寒湖住まいの名無し

>>701 何故に投げナイフww

 

703:阿寒湖住まいの名無し

>>701

投げ要素どっから出てきたよwww

 

704:阿寒湖住まいの名無し

>>701もはや意味不明w

 

705:阿寒湖住まいの名無し

しかも投げるナイフと包丁の形ぜんぜん違うしw

 

706:阿寒湖住まいの名無し

すごすぎて真似も説明もできねぇwww

 

707:阿寒湖住まいの名無し

うーんこの非才でござるよ

 

 

・・・

・・

 

888:阿寒湖住まいの名無し

まさかブレイズに占い好きな一面があったとはなぁ

 

889:阿寒湖住まいの名無し

しかも独学でタロットかよw

 

890:阿寒湖住まいの名無し

ブレイズが占いやってんの想像できねえww

 

891:銀星

さてと、申し訳ありませんが私はそろそろお暇させていただきます。追い切りが結構きついのですわ…

 

892:阿寒湖住まいの名無し

乙カレー

 

893:阿寒湖住まいの名無し

乙です!

 

894:阿寒湖住まいの名無し

ブレイズ嬢、乙でござる!

 

895:金色旅程

お疲れさん、秋華賞頑張ってこい

 

896:阿寒湖住まいの名無し

さくっと勝ってこいよ!

 

897:阿寒湖住まいの名無し

>>896 ちょww無敗トリプルティアラさくっと取らすなww

 

898:阿寒湖住まいの名無し

>>896無敗トリプルティアラをサクッと達成とかいうパワーワードよw

 

899:阿寒湖住まいの名無し

意・味・不・明⭐︎

 

900:阿寒湖住まいの名無し

そんなサクッと取れるもんでござるかな

 

901:金色旅程

>>900

厳しい道のりだとは思う。だがブレイズだって夏の間に鍛えたはずだ。勝つと信じようぜ

 

902:阿寒湖住まいの名無し

>>901ですな

 

903:阿寒湖住まいの名無し

総大将の言う通りだ、ブレイズを信じよう

 

904:阿寒湖住まいの名無し

んだんだ

 

905:阿寒湖住まいの名無し

しかし、ブレイズは占い好きと…フクキタルが喜びそうだな

 

906:阿寒湖住まいの名無し

>>905

いや、フクとブレイズのスタンスはちょっと違うでござるよ

 

907:阿寒湖住まいの名無し

>>906 ん?どういうことだ?

 

908:阿寒湖住まいの名無し

>>906どゆこと?

 

909:阿寒湖住まいの名無し

>>906 どういうこっちゃ

 

910:金色旅程

>>906

フクキタルは何でもかんでも占い頼りだからな。だがブレイズはどっちかというと、「人事を尽くして天命を待つ」スタンスだ

 

911:阿寒湖住まいの名無し

>>910 さすが総大将、説明が分かりやすい

 

912:阿寒湖住まいの名無し

>>910ほーなるほどな

 

913:阿寒湖住まいの名無し

無闇に神頼みはしない…か

 

914:阿寒湖住まいの名無し

ブレイズ嬢は努力家でござるな

 

915:阿寒湖住まいの名無し

その努力を積んだ結果が、今のレース成績だろうね

 

916:阿寒湖住まいの名無し

>>915 だな。今度もブレイズが勝ってくれると信じよう!

 




ということで秋華賞直前のメディア回でした。やはりというか何というか、無敗トリプルティアラ目前のシルヴァーブレイズが最も注目度が高いようですね。阿寒湖スレの住人たちもブレイズには期待しているようで…。
あと、TV出演中のブレイズのセリフにネタが混じっていたのにはお気付きになったでしょうか? そしてそのネタ発言自体が、フラグになっているということにも。


評価9をくださいましたraburan様、ありがとうございます!!
また、新たにお気に入り登録してくださいました皆様、ありがとうございます!


さて、次回予告といきましょうか。今回の担当は…えっ!?

「あら、私が誰なのか、知らない訳ではないでしょう?」

いやもちろん知ってますし、チャンピオンズミーティングからチームレースからお世話になってますけど……あなた拙作で一度も登場してないでしょう!?

「そんなもの関係ありませんわ。後輩の成長を見届けるのも先達たる強者の務めでしてよ」

あー、はい。ということで予告担当は、

「私、ジェンティルドンナですわ。
次回、いよいよ秋華賞の始まりです。早速レース本番、といきたいところですけれど、オードブルがあってこそメインディシュが引き立たせられるというもの。順序は守られるべきですわ。
次回『秋華か徒花か、淀の舞台へ』投稿は少しお待ちあそばせ」
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