ようやくクラシック級11月後半に到達…まだ先は長い。1つずつ描いていきます。ひとまず、目の前のジャパンカップです!
あと、先日の宝塚記念はレガレイラで見事に爆死しました(涙)
勝ったメイショウタバルの親はゴルシ…宝塚に関してはゴルシ産駒も注意すべきかもしれない。
皆様、ごきげんよう! シルヴァーブレイズですわ!
挨拶の様子がいつもと違う、と察した貴方は鋭いですね。今、私、だいぶ気分が高揚しているのです。それもそのはず。
今日は11月29日。そう、「ジャパンカップ」当日ですわ! そして、あと1時間もしないうちに発走なのです。
今度の敵は、これまで戦ってきた連中とは違う。これまでの相手は、GⅠを1勝しているかどうかも怪しい、という相手ばかりでしたが、今度はGⅠを複数回勝っている選手が多数、それも人によっては凱旋門賞などの名だたる大競走を走ってきた方もいます。総じて経験豊富な方ばかり。
おまけに、ジェンティルドンナ先輩を筆頭に、私よりも体格に優れた方がいるし、位置取り争いの激しい欧米から来られた方もいる。どれほどの強敵となるか、想像ができません。
……だからこそ、闘志が燃えるというもの。
如何なる強敵であろうと打ち倒してこそ、真の実力者。
どんな
「ブレイズ、入って良いか?」
「ええ、どうぞ」
既に勝負服への着替えは終わり、気合いも十分ですわ!
「ブレイズ、相手が相手だから緊張……は、してないみたいだな…。むしろ戦意が凄そうだ」
「ええ、私は今、最高にわくわくしていると言っても過言ではないでしょう。今回はこれまでの中でも最高級の出走者ばかりが集まっている……そんな実力者たちをどうやって倒すか、それを考えるともっとわくわくしますの…!」
自分でも、そろそろ戦意を制御しないと大変なことになりそうだと思えますわ…。
「ま、まあ、そういう考え方もあるのは分かるんだけどな…。すごいこと考えるな……普通、ジェンティルドンナを筆頭にトップクラスの実力者ばかりって言われたら、少なからず怯むぞ……」
どこか呆れた様子の trainer さん。
「それじゃ、おさらいと行こうか」
「はい!」
戦場は東京レース場の芝2,400Mで、これは「オークス」と全く同じ条件です。馬場発表が「良」なのもあの時と同じですね。ただ、前回が春なのに対して今回は秋ですから、同じ「良馬場」でも芝の長さがあの時と違う可能性がありますね……少し注意すべきでしょう。
「今回の位置取りは?」
「理想論を申し上げるなら先頭集団…可能なら4番手辺りでなおかつ内側を取れるのが最善ですね。相手は、英国では負け無しのイラストリアスさんにかのジェンティルドンナ先輩です。どちらも先行脚質ですから、全体の流れを速くすることが鍵になるでしょう。
もちろん、その他の方も強敵揃いですから、油断なりません。特に手強いあの2人を軸に、他の方にも対処できる策を考えています。
勝利の要決は、こちらの強みを活かしながら、相手の弱点を徹底的に衝くことです。イラストリアスさんは日本の芝に慣れきっておらず、そこを衝くべきでしょう。ジェンティルドンナ先輩は、
私の強みは、3,000M級でも余裕を持って走れる
逆に言えば、これしか作戦の立てようがなかったのです…。後ろにもナカヤマフェスタ先輩やウオッカ先輩等、侮れぬ実力者は多いのですが、前方に位置するだろう2人のせいでそちらの対応を優先せざるを得なくなってしまいました。
「分かった。
今回は流石に相手が厳しいどころの騒ぎじゃない。全員比類無い実力者だ。それでも…勝ってくるつもりだな?」
「当然ですわ。負けるつもりで勝負なんてしませんよ」
「だよなぁ…そこまで覚悟決めてるなら、俺からは何も言わない。頑張っておいで」
「ええ。それでは…行ってきます!」
さあ、あと少しで
『ここは負けられない1番人気、13番 シルヴァーブレイズ!』
『このメンバーの中でも見劣りしない仕上がりですね。ここまで無敗の実力は本物です。シニア級の強豪を相手にあの"流星の末脚"が通用するか、楽しみですね!』
Paddock で私を待ち受けていたのが、歓声を上げる群衆と1番人気の評価でした。まさか先輩方を差し置いて私が1番人気とは……身に余る光栄です。皆様のご期待に沿えるよう、最善を尽くすとしま…おや?
「ブレイズさーん!」
え、あの最前列で手を振ってるのは…見間違いではなくアララギさん!? 両親らしい方と一緒にいる辺り、もしや府中住まいなのでしょうか。
手を振り返すと、ずいぶんご機嫌になってくれたようです。やれやれ、これは負けられない理由がもう1つできてしまった。
今回の相手は恐ろしい強者ばかりですが、私とて一角の実力者。戦の勝ち負けはやってみなければ分かりませんが、可能な限り勝利をこの手にしてみせる!
「ごきげんよう、シルヴァーブレイズさん。この日を楽しみにしておりましたわ」
「これはジェンティルドンナ先輩。こちらこそ、本日は胸をお借りします」
地下通路に出た途端、まるで私を待っていたように話しかけてきたのはジェンティルドンナ先輩。私にとって間違いなく過去最強の敵。
「直接対決はこれが初めてね。貴女が純金か金めっきか、見定めて差し上げます」
「ならば先輩には、失礼ながらこうお伺いしたい。…
「当然でしてよ、流星だろうと打ち砕いて差し上げますわ」
圧倒的自信…私の方が気圧されてしまいそう。
さて、この強者をどうやって打ち倒してくれましょうか。
「そうそう、レースとは無関係の話になりますが、チョコケーキの試作品は賞味しましたわ。なかなか良い風味でしたが、もう少し甘味を控えていただけるかしら。少々甘すぎて、上品な味と言い切れませんの」
「昨日お渡しした試作品ですね。承知しました、製法記録は残してありますので、それを元に改変いたします」
試作5号にして、ようやく及第点に近くなってきたようですね。それにしてもこの先輩、要求水準がかなり高い…予想も覚悟もしておりましたが、やはり一筋縄ではいきませんね。
「それでは、また後ほど。ウィナーズ・サークルにいる私に呼びかけることになるでしょうけれど」
「死兆星の意味を知ってなお挑まんとしますか…。それでは、その力とお覚悟のほど、見せていただきます」
私にも、自分の実力にここまでの自信を持てる日が来るかしら…。
「ようブレイズ。2日ぶりだな」
「こんにちは、ナカヤマフェスタ先輩。公式戦で戦うのはこれが初めてになりますね」
今度はナカヤマフェスタ先輩の登場です。競バ場で戦うのは初めてですが、あの差し足が爆発すれば大変なことになります…何せ
「此度はよろしくお願いします」
「ああ、こっちこそな。宣戦布告状は見たぜ、ラストランだし私も本気で行く。
アンタがいる時点で盤面がメチャクチャになるのは確定したようなもの…つまり嵐が来る。暴風と荒波を乗りこなすか、煽られて沈むか…ククク、楽しみにしてるぜ」
「こちらこそ。その胸、お借りしますよ」
俄然楽しみになってきましたわね…!
本バ場から差し込む陽光を背景にしたナカヤマフェスタ先輩の背中が、影絵のように遠ざかっていく。それを見送り、自分も本バ場に出ようと1歩踏み出しかけた、その時でした。
【はじめまして、失礼いたします】
突然後ろから響いた、聞き覚えはあれど直接聴くのは初めての英語。年齢の割にかなり落ち着いた雰囲気を感じます。
振り返った先にいたのは、横に広いつばの黒帽子を被り、金色の肩章を着け金色の button をはめた紺色の上着と、白い slacks を履いたウマ娘。おそらくこの勝負服は私のと同じ、軍服、それも英国の軍服を元にしたものでしょう。帽子から僅かにはみ出ている頭髪は銀色。身長は私よりずっと高いです…おそらく155㎝はあるかと思います。体型は中肉、女性らしい丸みを帯びる一方でしっかりと鍛えているのが見て取れます。アイスブルーと表現される、薄い青色の瞳が印象的ですね。
初めてお会いする方ですが、この方は私も知っている。ジェンティルドンナ先輩と並び、今回の敵の中で最も警戒すべき者として情報収集に励んでいた故に。
【こちらこそはじめまして、イラストリアス様。遥か東の地にまで御足労いただき、感謝致します。
もしかするともうご存知かとは存じますが、改めまして。シルヴァーブレイズと申します。よろしくお願い致します】
左膝を後ろに引き、勝負服の skirt を軽く持ち上げながら右膝を軽く曲げて身体を沈み込ませる、いわゆる Courtesy をやってみせると、相手も同じ礼を返してきました。といっても向こうの勝負服は slacks なので、両腕は自然に垂らしたままですが。
【丁寧なご挨拶に感謝を。私は英国からやって参りましたイラストリアスと申します。よろしくお願いしますね】
……立ち居振る舞いから考えて、この方はおそらく貴族でしょう。今年の「セントレジャーステークス」を無敗のまま制している…つまり私と同年代のはずですが、それに見合わぬ礼儀作法の丁寧さが窺えます。幼いうちからそういう礼儀作法を教え込まれていたと思われますが、そんなことをされるのは「
と考えていると、イラストリアスさんが何故かこちらを見詰めている…?
【あの、私の顔に何か…?】
【ああ、いえ、失礼致しました。緑色の瞳とは、なかなかお見かけしない瞳の色だったもので…】
どうやらあちらの国でも、緑と青の色違いの瞳というのは見かけないようです。
【気にしておりませんよ。瞳と、ついでに髪色に着目されるのは、私にとっては chamessi incident ですの】
【チャメシ…? ああ、よくあることってことですね。それにしてもその髪の美しい銀色は、流星なのですか?】
【そうです、初対面の方には必ず訊かれるのですが、これが地毛、つまり流星なのです】
【珍しい流星をお持ちなのですね。その赤いジャケットと合わせて、ターフの上でもよく映えそうです。私も狙ってみようかしら】
【ご随意にどうぞ。ただし、平伏する覚悟だけはお持ちになっておくことをお勧めします】
【ふふふ…日本に貴族はいないと聴いていますわ。紛い物が本物に勝るとは思わない方がよろしくてよ】
【では、このガラス玉を金の鎖に着けるとしましょう】
【その鎖は私のものですよ】
【よろしい……ならば戦争ですね】
【ええ、そのためにここまで来たのですから。楽しませてくださいまし】
【もちろん。せっかく遠路はるばる来てくださったのです。120%の成果を以てお応えできるよう努めますね】
当然のようにイガグリ、いえガンガゼを全力で投げつけあっている訳です。言語が英語なだけですわ。
どこの国のウマ娘も、考えることは同じと見える。ならば万国共通に通じる言語、すなわち「1st」という結果を以て、己の立ち位置を思い知らせるのみ。
では…そろそろ行くとしましょうか! 芝2,400の戦場へ!
東京レース場・スタンド。本日の目玉レース、GⅠ ジャパンカップを見ようと、大観衆が詰めかける場所。
その最前列は基本的に、出走するウマ娘の関係者しか立ち入りを許されない。その最前列に、チーム《シリウス》の西郷 秀明トレーナーはチームメートと共に詰めていた。
「すごい人出ですね…」
ダートレースではなかなかお目にかかれないような群衆に、サニーウェザーが目を回しかけている。
「もうスタンドいっぱいですわね…。10万、いえ15万を超えていても不思議じゃありませんわ」
メジロマックイーンが冷静に観衆の人数を推測している。多数の観衆が詰めかけたスタンドを体感してきた(特に春天の時)彼女には、こういう景色は見慣れたものであった。
「そんな大群衆の中で走れって言われても、無理ですよ…!」
「だねー。緊張して掛かって撃沈待った無しだよ」
カルンウェナンとアップツリーが頷き合う。
彼女たちも重賞を走った経験はあるが、GⅠレースには出たことがない。そのため、彼女たちの走ったGⅢやGⅡなどとは比較にならない大観衆に唖然とするばかりである。
「パドックではブレイズさんものすごくやる気あるように見えましたが、この群衆を見ても平気なんですかね…?」
「あの娘、心臓が鉄でできてるんじゃない…?」
実際シツレイな言われようである。
そんなことを言う間に本バ場入場が始まる。勝負服を着込んだウマ娘たちが1人ずつ姿を現し、その度に群衆から歓声が飛ぶ。海外から来たウマ娘に対しても結構な声量の歓声が飛んでいる辺り、どうやら彼女たちの母国から応援に来た人も少なからずいるようだ。
「いよいよか…頑張れよ、ブレイズ…!」
高所作業車を思わせる車のゴンドラがせり上がり、それに乗った発走委員が赤い旗を振る。楽隊がファンファーレの生演奏を行い、重ねるようにして一際大きな歓声が上がった。
『世界の強豪が栄誉を求めジャパンカップの府中に集う! 対抗する日本勢も、例年を上回る実力者の布陣で迎え撃つ! 2,400の彼方の栄光を掴み取るのは誰だ!!』
興奮を隠そうともしない実況の放送と共に、ゲート入りが始まった。
一方、スタンドの別席にて。
「頑張れー、お姉ちゃん!」
「ブレイズさーん、頑張って!」
同時に声を上げる2人の小さなウマ娘…背丈から推して小学校高学年くらいだろう。その直後にお互いを睨みつける。
「勝つのはお姉ちゃんだもん!」
両手を腰に当て、相手より少し高い背丈を利用して圧するように胸を張るのは、水兵帽をあみだに被り、青っぽい鹿毛のツインテールを青と水色のリボンで飾ったウマ娘。どうやら姉がこのジャパンカップに出走しているらしい。
「ううん! 勝つのはブレイズさんだから!」
左手の握り拳を胸に当てて負けじと下から睨み返すのは、両側頭部に黒いリボンで縛った三つ編みを垂らし、額の左側から鼻先に向かって太い流星を流し、左のこめかみに捩れて絡み合った2本の木の枝の飾りを付けたウマ娘。以前にちらりと登場したアララギである。シルヴァーブレイズがジャパンカップに出る、ということで応援に来たのだ。
互いの"推し"の勝利を願い、「ぐぬぬ」という感じで睨み合う2人。
「ちょ、2人とも、そのくらいに…」
黒い耳カバー付きの水兵帽を被ったボーイッシュな雰囲気のウマ娘…シュヴァルグランが、どうにか2人を宥めようとしている。ただ、声が小さく気弱な感じなのであまり有効的な介入になっていない。
その近くには別の小さなウマ娘が座っていた。艶のある黒っぽい銀色のストレートの頭髪を腰まで伸ばし、なかなか清楚な格好をしている…が、その左肩に下げた鞄には「バズーカ」と例えられるような長身の望遠レンズを装着したカメラが入っている。そして、
「今回のレース、軸はやはり7番のジェンティルドンナかな…。今回は良バ場だし、ウマ番が7番と真ん中らへん…6番のウオッカは差し、8番のソルダパシオーネは逃げだから、序盤のポジション争いでは幅を効かせやすいジェンティルが有利に立てる…。パドックでの体つきや雰囲気も十分だったし。
13番のシルヴァーブレイズも捨てがたいけど、体格の小さい彼女はどうしてもポジション争いには不利だし、今回は外枠に欧米の人もいるから、バ群に埋もれる可能性がある…。そして終盤の加速勝負での叩き合いとなると、パワーに勝るジェンティル相手には苦しい…。ああ、でもブレイズが逃げに近いポジションで先行した場合は…序盤から中盤のペースとコース取り次第かもしれない。
今回のジャパンカップは間違いなく激アツ。歴史に残る一戦になる…!」
びっしりとラインを引いたスポーツ新聞にクリップペンシルで何やら書き込みながら、半分イッたような目をして早口でぶつぶつと呟いている。どこからどう見てもレースにイレ込みすぎたヤバい人である……それを小学生くらいでやっているというのがさらにヤバい。
そして今回はトレセン学園に程近い東京レース場でのGⅠということもあり、見に来ている生徒やトレーナー、教師などの関係者も多かった。
「ティアラ路線から4人も出走するなんて…! シーザリオ、誰が勝つと思う?」
ここにもそのうちの2人がいた。ラインクラフトとシーザリオである。
「私にも分からない…もしかしたら三冠路線や海外の人が勝つかもしれない。特に国内路線だとエルコンドルパサー、海外勢ではイラストリアスが強いからね。
正直なところ、ヴィルシーナはかなり厳しいかな…ブレイズさんも、初めてのシニア級との対戦だけあってどうなるか分からない。勝てるとしたらジェンティルドンナかウオッカだと思う…」
実に率直な意見を述べるシーザリオ。
「うーん、ブレイズさんはやっぱりちょっと厳しいかぁ…」
ラインクラフトが僅かに凹んだ。
「ただ、ブレイズさんも強いのは確かだよ。オークスで彼女が出したタイムは2分24秒4。半年前でこれだから、より強くなった今ならより速いタイムを出せる可能性もある。だから、ブレイズさんが勝つ可能性もゼロじゃないよ」
「それは確かにそうなんだけど…それでも相手が厳しすぎるよー!」
「それはそうだよね…」
どうもラインクラフトとシーザリオは、何だかんだシルヴァーブレイズを応援しているらしい。
その他にも、
「トレーナーさん? いくら
「そんなの知ってるよ! ブレイズだけじゃなくて他の出走者も見とこうって話! 特にエルコンドルパサーとかウオッカとか!」
チーム《エレクトラ》の
「それに…2,400なのにマイルレース並みのペースで進んだこともあったでしょ!」
「ああ、あの時ですか…オグリ先輩強かったですよね」
イブビンディとシーフクローの叩き合いのせいで凄まじいまでのハイペースで流れ、最後はオグリキャップとフォークインの一騎打ちとなったジャパンカップである。
「そう! そして、そんなハイペースがアダチのレースでも発生しないとも限らないんだから、見といた方が良いでしょ!」
「……結構強弁じゃありませんか?」
「まあ、アダチにそろそろ休ませようと思ってたのもあるけどね?」
「それ、トレーナーさんも休みたかっただけでは…?」
アウダーチの質問には答えず、相原トレーナーはちょうど本バ場入場してきたウマ娘たちに視線を向けた。それを見てアウダーチは、ああ、トレーナーも休み取りたかったんだな、と思った。
「さ、始まるよ! アダチ、データ収集の準備は?」
録画モードにしたタブレット端末を構える相原トレーナー。
「抜かりなく。情報を制する者がレースを制する……今回もとくと見せてもらいますよ、シルヴァーブレイズさん。全ては貴女を倒すために…」
そう言いながら、アウダーチは脇に立てていたローラーケースから買ったばかりのカメラと三脚を取り出した。カノンのEOS一眼レフとEF100-400望遠レンズの組み合わせ……そう、まさしくバズーカカメラである。カメラ本体32万円也、レンズ35万円也というとんでもない買い物であるが…既にGⅠを2勝し、その他のレースでも掲示板を外していないアウダーチには、これを私的にポンッと買えるだけの賞金が貯まっていた。シルヴァーブレイズの戦術を解析するためにと思い切って購入した新兵器、その
なお、アウダーチが購入したカメラとレンズの値段を知った相原トレーナーは、「ちょっと待って、これ経費だったら私の給料2ヶ月分くらい吹っ飛んでんの!? 何してんのよ…」と呆れて絶句した。
◆◇◆◇
東京レース場の外でも、シルヴァーブレイズを応援する動きが出ている。
ここはトレセン学園近くの商店街裏通り・「パブ 流星の止まり木」。
「いやー、改めてとんでもない出走メンバーだな」
「そうね…。あれだけのメンバーに挑むなんて、普通はできないよ。それに挑むブレイズの嬢ちゃんはマジで肝が据わってるね!」
「ジェンティルドンナ1人だけでも失神レベルなのに、エルにウオッカにメノに他もろもろ…? 冗談じゃねえぜ…」
この店にこの時間帯に集まっているのは、店の方が忙しくて一瞬だけしか店を空けられない人ばかりである。それも、結婚して相方に店を預けられる者か、従業員を雇える金銭的余裕がある者だけだ。
ただ、ここに来られない商店主も自分の店のTVくらい付けているだろう。
また、「流星の止まり木」に集まった客たちは、皆その格好に特徴があった。黒いハンチング帽を左に傾けて被った者、赤いジャケットと白手袋をきっちりと着こなした者。凝った者になると右目に緑色のガラスを嵌めたモノクルをかけた者や、頭髪を茶色から銀色に変化させるグラデーションに染めた者までいる。むろん、全てシルヴァーブレイズの勝負服をリスペクトしたものだ。
「マスター、今日のおすすめ紅茶は何だ?」
「本日はアールグレイ、それもマリアージュ・フレールとTWG一押しの逸品をご用意してございます」
「マリアージュってフランスの高級老舗じゃねえか! こりゃまたお
「ブレイズ嬢の好みがアールグレイですから、今回はそれに合わせました」
「おし、それ1つ頼む!」
「畏まりました。フレーバーは何を?」
「そうだな…じゃあレモンで!」
「承りました。少々お待ちくださいませ」
レース観戦のお供にと紅茶を注文する客も多い。
「なあマスター。これ、勝てると思うか?」
「これまでのとは別格の相手だしねぇ。何せあのジェンティルドンナが相手なんだし」
「他も錚々たるメンバーだ。ほんとに勝てんのかね、嬢ちゃんは」
流石に不安なファンも多いらしい。
「レースの勝ち負けなんて、やってみないと分かりませんよ。残酷ですが、私たちにできることは、ブレイズ嬢の勝利を祈るだけです」
いつもながら落ち着き払っているマスターである。が、その落ち着いた顔で大事そうに勝負服ぱかプチをレジの隣に置こうとしているため、絵面がシュールである。
そしてついに少し前、マスターはやらかしてしまった。無敗トリプルティアラを記念して販売予告されたシルヴァーブレイズの勝負服のレプリカを、発売と同時にポチッてしまったのである。
このレプリカ、なんと実際の勝負服と同じ生地で作られた、かなりしっかりした物である。断じてドン◯ーで売っているような薄っぺらい生地の安っぽい代物ではない。そのため、一式で6万円がすっ飛んでしまう買い物になったが、マスターは反省も後悔も全くしていない。
しかも、マスターがそのことを常連客に話した途端、「せっかくだから嬢ちゃんに似せたマネキン作って着せてやろうぜ!」という話が出て、あれよあれよという間に有志の手でマネキンが作られてしまった。このマネキンだが、ブレイズが懇意にしている呉服店の主人からの情報提供によって、しれっとブレイズと全く同じ身長・脚長・スリーサイズにされている。
そのレプリカ服を着せられたマネキンは今、カウンターの横に堂々と鎮座している。しかも、美容師をやっている有志がブレイズの髪型に似せたウィッグを作って被せてしまっている。そのため、素人が作ったにしてはえらくリアルな等身大人形になっている。顔がのっぺらぼうのままだが、そのうち絵心のある誰かがブレイズの顔を描いていき、ついでに「ブレイズ大明神」とか何とか呼ばれそうである。
こんな代物、シルヴァーブレイズ本人に見つかったら大目玉になるだろうが、関係者全員(マスター含む)ケジメも覚悟の上である。何やってんだお前ら、とツッコんではいけない。いいね?
「始まるぞ!」
TVの中で発走委員が赤い旗を振り上げる。楽隊による生演奏で迫力あるファンファーレが鳴り響く中、画面に「GⅠ ジャパンカップ 東京 芝2,400M」のテロップが表示された。
「頑張れよ、嬢ちゃん…!」
誰かの呟く声。誰かがゴクリと唾を飲み込む音が小さく響く。
発走の刻はすぐそこに迫っていた。
そして、東京より遥か西の地にて、
「相手が厳しいけど…頑張って、ブレイズ」
ショウワ・エラ・アトモスフィア漂うアパートの一室にて、TVに映る我が子の姿を見てシルバーアクセサリはそう呟いた。
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東京レース場のスタンドにヴィブロスとクロノジェネシスがいたのには、皆様は当然気付いていますよね。あと、ヴィブロスが絡んだことで、仮称アララギちゃんの正体が見えてきた方もいらっしゃるかもしれません。
ちなみにうp主は、これを書いている真っ最中にガチャ更新が来たので試しに回してみたら、たった10連でクロノちゃんゲット。直ちに育成してかなり面白い娘だと思ったので、即刻登場と相成りました。なおクロノが持ってるバズーカカメラの元ネタとされるカメラとレンズを調べて、その値段に目玉が飛び出そうになった模様。お前ほんとに中学生なん? そのどえらい値段の代物をどうやって買ったんだ!? しかもレンズは複数個持ってるみたいだし!
そしてシルヴァーブレイズがチャメシ・インシデントとか言っている。彼女がそんな言葉使いますか? おかしいと思いませんか? あなた。
いつもご愛読いただきまして誠にありがとうございます!
それでは次回予告です。今回の担当は、お、新顔さん!
「初めまして、クロノジェネシスといいます!」
ああ、さっきスタンドで予想しまくってた娘か。レースに詳しいな?
「はい。私、歴史が大好きで…特に、トゥインクル・シリーズの歴史を作ってきた名レースの数々を見ていると、胸が熱くなってくるんです。いつかは私も、自分の蹄跡を歴史に刻みたいと思っています」
ほう、となるとトレセン学園入学希望か…頑張って!
「はい!
あ、次回予告ですね。次回『府中の彼方に勝利を夢む』 更新は少し待っててください!
それと私の予想ですが、軸はやっぱり7番のジェンティルドンナですね! 本命ジェンティルさん、対抗はブレイズさんとエルコンドルパサーさん、穴でウオッカさんってところでしょうか! 理由としては、今回が良馬場であることと近くに逃げもしくは後方脚質の方が多いことから、序盤及び中盤でジェンティルドンナが好位置を取りやすいこと、そして最後の末脚勝負では加速で有利に立てるからです! 去年はテイエムオペラオーにクビ差届きませんでしたが、あの加速があれば今年は届く可能性が高いと思います! ブレイズさんは、加速ではジェンティルに不利ですが、スタミナはありますから早め仕掛けで3コーナー辺りから進出すればもしかしたら勝てるかもしれませんね! エルコンドルパサーさんは…」
なんかものすごく夢中になってるけど、延々と長くなりそうなので今回はここまで!