大地を駆ける一筋の流れ星   作:Red October

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こちらの更新は少々久しぶりになりました。
でもエタらせはしませんよ!



Act.005 学園生活と大流星

 皆様、ごきげんよう。シルヴァーブレイズですわ。

 トレセン学園に入学してから早くも1週間ほどが過ぎ、私もそろそろ学園生活に慣れてきましたわ。あの波乱の入学の日も、まるで夢だったかのように感じます……残念ながら現実の出来事なのですが。

 さて、今回は私の学園生活の様子の一端を、お見せしたいと存じます。

 

 

 私シルヴァーブレイズの朝は早いです。寮は朝5時から外出できるようになるのですが、外出解禁と同時に起きているのですわ。かなりの早起きだという自覚はもちろんありますが、早起きする鳥が虫を取る、と申しますゆえに。

 さて、そんな早起きをした私が一番最初にすることは何かと言いますと…第一に着替え、そして第二に tea time です。相方を起こさないように静かに着替えた後、私物の茶葉と軽食を持って部屋を抜け出すのですわ。向かう先は寮の談話室です。

 全く便利な時代になったものですわね……紅茶は白い袋を1つ湯に浸せば淹れられますし、軽食でも栄養に配慮したものが出回っているので、朝練前の軽食にはありがたい限りです。私は「カロリーメ◯ト」なる代物の固形物がお気に入りですわ。

 

「おはようシルヴァーブレイズ。相変わらず早いねぇ、朝練かな?」

「おはようございます、フジキセキ先輩。そうです、軽く腹ごしらえだけして、ちょっと走り込んできますわ」

「熱心なのは良いけど、事故と怪我には気を付けてね」

「お心遣い、ありがとうございます。肝に銘じます」

 

 食堂では、大抵寮長のフジキセキ先輩と顔を合わせますわ。鍵の束を持っているあたり、おそらくあちこち開けて回っているのでしょう。

 素早く軽食と紅茶をお腹に入れ、5時20分頃に寮の外へと駆け出して行くのです。目的はもちろん朝練ですわ。ただ、「まだ本格化もしていない段階だから、あまり無理をしないように」と trainer さんから指導を受けていますから、無茶はしませんわ。やることは単純に、3 miles 程度の走り込みと、兎飛びなどの筋力強化です。

 何となくですが、私はどうやら長い距離を走る方が性に合っているようです。今はまだゆっくり走ることしかできませんが、本格的な鍛練ができるようになったら、この距離をなるべく短い時間で走れるようにしたいですわね。

 

 

 朝練が済んで寮に戻ってきたら、ちょうど7時頃になっていますわ。朝食の時間です。

 そして寮に戻ってきて最初にすることは、同室の仲間を夢の世界から引きずり出すことですわ。

 

「起きてくださいましモントバンさん。早くしないと朝食を食べ損ねますわよ」

「んぅ……眠い……」

 

 ほとんど開いていない目を擦りながら寝床から這い出てくるのは、私と同室になったリナルドモントバンさん。後ろで三つ編みにした腰までの長さの鹿毛(さすがに今は解いておりますが)と、右に付けた赤い花の髪留めが特徴の方です。見ての通り結構な寝坊助さんでして、毎朝遅刻寸前に飛び出すような方なので、私が無理やり叩き起こしているのです。

 まだ半分以上眠っているモントバンさんの髪に櫛を入れ、三つ編みに束ね、さらに着替えまでして、急いで部屋から引っ張り出すのが日課になっております……これ、冬場とか大丈夫でしょうか? 寒いのが嫌で起きられない、なんてことになったら大変面倒ですわね。

 

「ほら行きますよ、朝食の時間です」

「分かった……ふわぁ……」

「大欠伸してないで、少しはシャキッとしてくださいませ」

 

 モントバンさんを半ば引きずって食堂に向かうのが、いつものことなんですの…。

 そして朝食も大変なのです。二重の意味で。

 なぜ二重なのかって? 1つめの理由は、下手をするとモントバンさんの口の中に朝食を突っ込んでやらなければならないからですわ。私は御世話係ではないというのに。

 そして2つめの理由…こちらの方が深刻なのです。とある景色を見ないようにしなければならないからですわ。

 

「スペちゃん、朝からそんなに食べられるの…?」

「はい! 今日はちょっと朝練したので、いつもよりご飯が進んじゃいます!」

 

 出ました、スペシャルウィーク先輩。あの山盛りのご飯だけは本当に勘弁して欲しいのです……見ているだけで胃がもたれた気がして、食欲ががくっと落ちてしまいますの。

 実は私、ウマ娘にしては少食なのです。丼ものでいうなら、大人用1人前でだいたい腹八分目、という塩梅なのです。あまりに多い量の食事を見ると、逆に食欲が失せてしまうんですの…。

 だというのに、周囲には大食いの方が多くて……何ならモントバンさんも例外ではありません。朝っぱらからご飯大盛り2杯とか、どうやったら胃に入るんですの…。

 うんざりしつつも、せめてスペシャルウィーク先輩の山盛りのご飯だけは見ないようにしよう、と視線をよそに向けた先には……まさかの包囲網ができていました。

 円卓1つをまるごと占領してうず高く積み上げられた食糧の山! ピラミッドのごとく積み上げられた握り飯に、丼いっぱいのスープとサラダ。真ん中ににんじんを突き刺された、5段重ねもの挽き肉の塊。そして大皿いっぱいに盛られた大量の果物。

 信じられないほどの量ですわ……。これが1食分だなんて……私なら、丸一日かけても食べきれませんわ。

 

「モグモグモグ……」

「どうやったら朝っぱらからそんなに食えんねん……」

 

 その大量の食糧を、まるで飲み込むかのように次々と頬張っていくのは、艶やかな銀髪が特徴的なオグリキャップ先輩です。どうやったらあの細い身体にあれだけの食糧が入るのか、全くもって謎ですわ……。そしてオグリ先輩の食べっぷりは、見ているだけで胸焼けしそうになるのです……。

 隣で呆れているタマモクロス先輩の気持ちも、よく分かりますわ…。

 それはそれとしまして、私の分の朝食はお腹に入るでしょうか? 典型的な English Breakfast なので、量自体は多くないはずですが……この胸焼けした状態で、果たして食べられるでしょうか…。

 

 

 どうにかこうにか朝食を完食して、始業の鐘が鳴る寸前に、私もモントバンさんも何とか教室の席に滑り込めましたわ。そして授業が始まります。

 トレセン学園の授業形態は、午前と午後で異なります。午前中は座学が主で、言語や数学、理科、社会科など…まあ要するに、普通の中等教育機関で行われる講義と同じことをやっているのですわ。当然のように各種考査もありますので、走りや踊りに(うつつ)を抜かして座学を(おろそ)かにしていようものなら、直ちに補修に引っ掛かることになります。もちろん、引っ掛かった場合は放課後の時間に制限がかかりますので、走りや踊りの練習に差し障ることになりますわ。

 そういうわけで補修を避けるため、私は講義の中で出てきた内容はなるべく講義の時間中に覚えてしまうよう、意識しております。こうしておけば、補修に引っ掛かることもそうそうないでしょうし、下手に宿題に悩まされることも減るでしょう。

 それに、生徒会副会長のエアグルーヴ先輩も言っておりましたが、knowledge is power …知識は力なり、です。そんな大事な武器を捨てるなんて所業、とてもできたものではありませんわ。

 

「弥生時代のものと見られる我が国の代表的な遺跡としては、佐賀県の吉野ヶ里遺跡が挙げられます。この遺跡は、邪馬台国のものだとする説もあり……」

 

 本日は、1限目が社会科です。それも歴史の講義ですわ。

 歴史とは、いわば過去の証明。過去が積み重なって、私たちが生きている「現在」があるのですから、過去を知ることはとても大切であると私は思っておりますの。だから、手を抜くことはしませんわ。

 だというのに、周囲をちらりと見渡してみると居眠りしている方が見受けられるのは何故でしょう。過去を知ってこそ現在に繋がり、よりよい未来を築いていけるというのに…。

 

 2時限目の国語に続いて、3時限目、数学。正負の数という単元です。

 まだ中等部の教育が始まったばかりだというのに、もう音を上げている方がいらっしゃるのは大丈夫なんでしょうか…?

 

 そして4時限目、英語。はっきり申し上げまして、この時間が私にとっては最も退屈ですわ。というのも簡単過ぎるんですの、授業内容が。be動詞と一般動詞なんて、欠伸しながらでも覚えられますし。

 

 

 私にとっての戦争というべき昼食の時間を乗り越えて、午後からは体育や各種芸術、技術・家庭科といった実技を伴う科目や、race に関する座学の時間が多くなります。

 え、意外? 何を仰いますの。私は先ほど、「中等教育機関と同じ授業が行われる」と申し上げたでしょう。なので、四六時中走っている訳ではありませんわ。ちゃんと芸術科の授業なんかもありますよ。

 本日はまず、5時限目が技術・家庭科の授業です。キャビネット図と等角図…でしたか、それの勉強ですわ。作図は良い…物の設計図を描いているみたいで、ちょっとわくわくしますわね。

 続く6時限目は、「ライブレッスン」…踊りのための授業です。まだ基礎的な内容ばかりですので、記録映像の視聴による勉強やら、身体作りと称して腹筋運動やら柔軟体操やら平均台歩行やら、そんなことをやっておりますわ。人によっては退屈な授業に感じられるかもしれませんが、こういう下積みが一番大事なのだと思うんです。どんな練習でも、真面目に取り組むのが重要でしょう。

 

 

 全ての授業とHRが終われば放課後ですわ。この時間帯は大体の場合「全体トレーニング」が行われ、日によっては何もなく下校することもあります。

 ちなみに team に所属している先輩方は、この時間帯に trainer さんの指導の下、練習に取り組まれます。

 今日は「全体トレーニング」がある日になります。基礎練習と称する、身体作りの時間ですわ。といっても、やることは走り込みやら腹筋といった、体育の授業の延長のようなものです。踊りの練習や、「併せ」と呼ばれる併走なんかに比べると味気ない、つまらないといった感想も漏れ聞こえますが、私はそんなこと毛ほども思っておりません。「ローマは一日にして成らず」という(ことわざ)もある通り、大事は小事の積み重ねによって成り立つもの。いわば基礎練習という石を幾つも積み上げてこそ、「ウイニングライブ」というピラミッドができるのです。だからこそ、手を抜くことは致しませんわ。

 あ、そうそう。「全体トレーニング」が始まる前にやっておくことがあるのを、説明し忘れていました。そのやっておくこととは、tea time です。紅茶無しで過ごすなんてとてもできません。え、放課後ティータイム? まあ、字義通りのことをやっているというわけです。

 ここまでの授業で小腹が空いていることが多いですから、この時間帯は紅茶に砂糖を多く入れ、同時に軽食を摘まむことになります。軽食は、どうしても忙しい時は購買で買った sandwich などになりますが…大概は自作した茶菓子になります。Grilled sandwich、 scorn、 apple pie などをよく食べておりますわ。

 紅茶はもちろんですが、私茶菓子にもこだわりがありまして、自分で作って食べ比べているのです。どの茶菓子とどの紅茶の組み合わせが美味しいのか、まだまだ探求が終わりませんの。

 ちなみにこの tea time ですが、友人と一緒に過ごすことが多いです。皆さんも何かしらのお茶菓子を持ち寄ってくださる他、たまにサトノダイヤモンドさんが上等の茶葉を持ってきてくださいますの。あれは本当にありがたいですわ。

 

 

 午後6時頃には「全体トレーニング」も終わり、私たちは寮に帰ることになります。

 そして寮に帰った直後くらいから、私にとって三度めの試練の時間が来ます。夕食の時間ですわ。しかも、皆さん授業や練習で疲れているせいもあり、ものすごい量を食されるのです。モントバンさんの場合は、この日は curry&rice を大皿で3杯も平らげていました……いったいどうやったら、あんな量が入るのやら。私は日替わり定食(今回はご飯と scotch carrots(にんじんハンバーグ)、温野菜サラダでした)が精一杯だというのに……。しかも、場合によってはそれすら入りきらないことがあるというのに。

 

「ブレイズちゃん、大丈夫? 顔色悪いよ…?」

「いえサニーさん、大丈夫ですわ……少々胸焼けしそうなだけです」

「それは大丈夫って言わないよ…?」

 

 かくいうサニーウェザーさんの食事量は、ご飯が少し大盛りなだけで私とそう変わりません。それだけが唯一の救いですわ……。

 

 夕食の後は、基本的に自由時間です。羽目を外さなければ、大抵のことはできますわ。読書も良し、TV視聴も良し、何もせずのんびりするも良し。私は何をするかというと、サニーウェザーさんやリナルドモントバンさん、キタサンブラックさん、サトノダイヤモンドさんなどの他のウマ娘の方と共に勉強会をやっていることが多いですね。「5教科」と称する座学系の科目、特に英語と数学で教えを乞われることが多いのです。

 これが、私の1日の過ごし方の例ですわ。

 それと、ここまで全く書いておりませんでしたが、食事の前には必ず神に祈りを捧げています。以前にお話しましたが、私はキリスト教徒(プロテスタントですわ)なので、食前の祈りは欠かせないのです。それと、眠る前には聖書を紐解くようにしていますわ。

 

◆◇◆◇

 

 栗東寮にてシルヴァーブレイズが勉強会に参加していたちょうどその頃、トレセン学園近くのとある居酒屋にて。

 

「入学初日のウマ娘をチームに入れるたぁ、どういう了見だ? しかも2人も」

 

 ビールのジョッキを片手に少々赤ら顔になっているのは、チーム《スピカ》の沖野トレーナーである。その沖野トレーナーに、《シリウス》の西郷トレーナーは絡まれていた。

 4月初旬は、トレーナーにとっては「嵐の前の静けさ」というべき時期である。GⅠレースのラッシュが目前に迫っているからだ。クラシックレースの初戦となる「桜花賞」に「皐月賞」、シニア級ステイヤーたちが名誉を競う「天皇賞(春)」、マイル路線の節目となる「NHKマイルカップ」や「かしわ記念」に「ヴィクトリアマイル」、さらには「オークス」と「日本ダービー」。

 GⅠレースだけでもこれだけあるのに、GⅡやGⅢのレースも多数が目白押しである。つまり、トレーナーにとっては当分忙しい時期が続くのだ。

 忙しくなる前に互いを励ましあう会、という名目の飲み会を、トレーナーたちが開いていたのである。

 

「勘弁してくださいよ沖野先輩。あれは私じゃないですよ」

「とはいえ、入れたのは事実なんだろう?」

「うっ……いやまあ、そうなんですけど……」

 

 向かいの席から飛んできたツッコミに、西郷トレーナーは何も言い返せなくなった。

 そのツッコミを放ったのは、チーム《アンタレス》の黒沼トレーナー。日焼けしたような浅黒い肌と、筋骨隆々の身体が特徴的な男性である。

 

「で、その新入生ってのは誰を入れたんだ?」

「ええと、シルヴァーブレイズとサニーウェザーです」

「あっ、シルヴァーブレイズって俺が目ぇ付けてた奴じゃねえか!」

 

 先に取りやがってこのこのー、と沖野トレーナーが西郷トレーナーを弄り回す。

 

「まぁまぁ沖野先輩、その辺に……」

 

 チーム《プロキオン》の桐生院トレーナーが取りなした。ちなみに彼女は、西郷トレーナーとは同期である。

 

「へぇ、そのシルヴァーブレイズって子、あんたが目を付けてたの? ってことは、素質ありそうね」

 

 唐揚げに箸を伸ばしながら、チーム《リギル》の東条トレーナーが口を挟む。スーツにメガネという、理知的な性格をそのまま写し出したような格好の女性だ。

 トレーナーは大なり小なり、ウマ娘の素質を見抜く力を持っている。その中でも沖野トレーナーは、ウマ娘の走りを観察しなくても、ウマ娘のトモの観察と触診で素質を見抜けるという特技の持ち主なのだ。……欠点は、少女の足を触る変態にしか見えないことである。このため彼がウマ娘に蹴られるのは日常茶飯事である。

 

「ああ、ありゃなかなか素質がある子だ。…あの回し蹴りは応えたぜ」

「ウマ娘の回し蹴りを喰らって平然としているなんて、本当に大概ですね…」

「おう南坂、その言い方はやめろや」

 

 はし巻きをつつきながら呆れているのは、チーム《カノープス》の南坂トレーナーである。メガネをかけた優男風の男性トレーナーだ。

 

「で? 実のところ、お前はどうやってシルヴァーブレイズをチームに入れたんだ?」

 

 沖野に話を蒸し返された西郷は、あからさまに迷惑そうな雰囲気を醸し出しながら口を開いた。

 

「だから、あれは私じゃないんですって。どうも、ゴールドシップが目を付けて追い回した末、拉致同然に連れてきたらしいんです。サニーウェザーに関しては、拉致されてきたシルヴァーブレイズを心配して、一緒に入ったようなものですし」

「ああ、そういえば何やらサングラスとマスクで変装したウマ娘たちが追いかけっこをしてたそうだが、それお前んとこのだったんだな」

 

 思い出したように黒沼トレーナーがコメントした。

 

「全くですよ。カルンウェナンにウイニングチケット、ライスシャワーまで動員して、3,600メートル追いかけたっていうんですから」

 

 その瞬間、席上がしんと静まり返った。

 

「あれで苦手意識を持たれでもしたらどう責任を取れと……え?」

 

 酒の勢いのまま1人で話し続けていた西郷が、ようやく異様な沈黙に気付く。

 

「えっと、西郷くん? 一応確認したいんだけど、誰からどのくらい逃げたって?」

 

 おずおずと桐生院トレーナーが尋ねた。

 

「え、だから、ゴールドシップとカルンウェナンとウイニングチケットとライスシャワーから、3,600メートル…」

「それが本当なら、西郷お前、とんでもない奴を引き当てたな」

 

 黒沼のその一言で、西郷がはっとした顔になった。

 

「い、言われてみれば…!」

「ライスシャワーといえば、間違いなく一線級のステイヤーです。本気の走りではなかったでしょうけど、それでもG1ウマ娘から3,600も逃げる新人なんて、とんでもない素質の持ち主でしょう」

 

 しれっと南坂がツッコミを入れる。

 

「それにウイニングチケットもダービーウマ娘だし、ゴールドシップはこれからクラシックだけど『ホープフルステークス』も勝ってるしね。長距離もある程度戦えるでしょう。そんな3人から逃げ続けるなんて、きっと恐ろしいほどの素質があるわね」

 

 そして東条が止めを刺した。

 

「西郷くん、いいウマ娘に出会えたわね。そのシルヴァーブレイズって子はほぼ間違いなく、優秀なステイヤーになる素質がある……ちゃんと育てれば、クラシック三冠も狙いにいけると思うわ」

 

 その言葉に、西郷の喉がゴクリと鳴る。

 クラシック三冠とは、「皐月賞」「日本ダービー」「菊花賞」の総称である。これら全てのレースに勝ったウマ娘を「三冠ウマ娘」と呼ぶのだが、これを達成できた者は非常に少ない。現在に至るも、シンボリルドルフやナリタブライアンを含めて5人しかいないのだ。

 かくいう西郷自身も、ライスシャワーで「菊花賞」を、ウイニングチケットで「日本ダービー」を勝ったが、三冠達成はまだである。

 そんな栄誉を狙いにいけるほどの素質を持ったウマ娘が、成り行きとはいえチームに飛び込んできた……その事実に、西郷の心が震えた。

 クラシック三冠は、そうそう取れる栄誉ではない。類い稀な資質を持つウマ娘が、トレーナーの適切な指導によって圧倒的な実力を身に付けた上で、なおかつ運まで味方に付けなければ、成し得ない所業なのだ。だからこそ多くのトレーナーが憧れ、目指す目標の1つなのである。

 

「…負けてられないわね。私も素質ある子を見つけないと。ナリタブライアンに続く三冠ウマ娘を出してみせる」

「それは俺の台詞だな。ブルボンで無敗三冠を達成できるかと思ったら、最後の最後でライスシャワーに阻止されたからな…次は負けん」

「お、俺だって、三冠取りに行くぜ!」

「私もですね。今年こそG1勝利を…!」

「クラシック三冠の栄誉に手が届くかは分かりませんが、私も…!」

 

 そんな西郷とは別に、火花を散らし始めるトレーナーたちであった。




ざっくりとですが、シルヴァーブレイズの学園生活の一端をお送りしました。まあ中学生なら、平日の過ごし方はだいたいこんなもんでしょう。
シルヴァーブレイズの休日の過ごし方は、また別の機会にということで。

そして、シルヴァーブレイズの素質の一端もまた明らかにされました。あのおハナさんこと東条ハナトレーナーが、「三冠を狙えるレベル」と言い切るほどの素質…これは将来が楽しみですね。


それじゃ、そろそろ次回予告入ります! ブレイズ、よろしく!
「承知しました。
学園生活にも少しずつ馴染んできた私ですが…同じ学園にいる皆様には風変わりな方が多い…! まさか、ゴールドシップ先輩すら前座に過ぎなかったとは存じませんでした。というわけで、次回は他の先輩方との交流ですわ。
次回『出会いと大流星 歌劇王と科学者と……』 更新はしばしお待ち願います」
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