大地を駆ける一筋の流れ星   作:Red October

64 / 67
2025年最後の更新です!
今回からシニア級に入っていきます! ようやくここまで来れた…折り返し地点に達したように思います。しかし、「百里の道を行く者は、九十九里を以て半ばとせよ」ということわざもありますから、気を抜かずに描いていきたいと思います。

本文に入る前に、私自身のおさらいを兼ねてシルヴァーブレイズのプロフィールを載せておきます。

名前:シルヴァーブレイズ(Silver Blaze)
キャッチコピー:二律背反の覚悟。地上の流星は今ここにある!
自己紹介:シルヴァーブレイズと申します。1人でも私の勝利を願う方がいるのなら、私は走りますわ。たとえ、死兆星と呼ばれても……。
学年:中等部(3年生。高等部への編入試験を控えている)
所属寮:栗東寮
誕生日:3月13日(実は金曜日であった)

身長:145㎝
体重:適正(鋼の意志でダイエット中)

耳のこと:周囲の物音や気配にとても敏感に反応する
尻尾のこと:不意に触れられると、反射的に蹴ってしまう

靴のサイズ:左右共に23㎝

家族のこと:女手1つで育ててくれた母に感謝している(実はブレイズは物心つく前に両親が離婚しており、家族写真なども碌に残っていない。そのためブレイズは父親の顔を知らない)

バ場適性:芝A、ダートB(本来はダートCだが、オグリキャップの因子で補強された)
距離適性:短距離G、マイルB、中距離A、長距離A(本来はマイルCだが、オグリ因子により補強)
脚質適性:逃げG、先行A、差しA、追込B

勝負服(1着目):願い星か? 妖霊星か?
初期ステータス(⭐︎3の時点):スピード88、スタミナ105、パワー75、根性85、賢さ80(成長率ボーナスはスピード+20%、根性+10%)
固有スキル:人事天命 God bless me!
初期スキル:雨の日◯、道悪◯、コーナー回復◯
覚醒スキル:Lv2から順に、「不吉な予感」「円弧のマエストロ」「自制心」「平常心」。


拙作での競走成績:11戦9勝(9 - 2 - 0 - 0)
主な勝ち鞍:朝日杯フューチュリティステークス、桜花賞、オークス、秋華賞(いずれも無敗のまま制覇)

[ヒミツ]
① 実は、英国料理しか作れない。
②実は、小太刀術を習っている。


(部外秘データ)
スリーサイズ:B74H54W74


Senior Stage
Act.059 1月は行く、駆け足で


 皆様、明けましておめでとうございます。シルヴァーブレイズですわ。

 挨拶が元旦のものになっているって? こちらが元旦なのです、ご理解くださいませ。

 年が明け、私たちはシニア級ウマ娘になった訳ですが、2月下旬に高等部への進級試験が迫っています。競走の他にも、人生を左右しかねない一大事が迫っているとあって皆様殺気立っているのが分かりますわ。

 私は「国語」以外には特に不安はありません。いつもの定期試験と同じようにやれば、問題はないと確信しております。それよりも目の前のことから片付けていきましょう。

 一番近い予定は、今月17日の聖歌隊コンクール。これは隊員の歌唱力の向上を目的としており、1人1曲を主題に沿って歌わねばなりません。今回は「死者を悼む曲」が主題となっております。

 この主題に沿った歌は、条件をよく見ると聖歌や讃美歌に限定されておりませんから、私にとって唯一の「如何なる時も本気で歌える曲」を使う以外にありません。あの曲も鎮魂の意図を持って作られていますし。

 

 

 迎えた1月17日。

 教会ではいつもの礼拝が済んだ後、午後から聖歌隊コンクールが始まっています。1人ずつ順番が回ってきており、いよいよ私の番です。

 歌う前に、必ず聴衆に一言挨拶するようにと言われておりますが、私の言うことなど決まっておりますわ。

 

「先にお断りさせていただきますが、私が歌う曲は決して聖歌や讃美歌ではありません」

 

 先に歌っている方々の曲は、「主よ御許に近付かん」とか「千の風になって」が多かったのです。

 

「だからといって、本会の主旨にも反しておりません。

かつて私の生まれ故郷を襲った大災害、それによって私の母方の祖父母と叔母を含む6千人以上の方々が、その命を失いました。その時に亡くなった方々の鎮魂のため、そして復興の誓いのために作られたこの曲こそ、私にとっては紛れもない鎮魂歌(レクイエム)なのです。

そして、その大災害が発生した日付が今日なのです。今日というこの日に、主題は"死者を悼む曲"……縁の巡り合わせを感じ、この曲を歌うと即決しました。

どうか最後までご清聴を……」

 

 口上を言い終わると同時に流れ出す piano の音。この前奏を聴くといつも思い出す…まだ幼かった頃の記憶として辛うじて残っている、祖父母と叔母の顔。

 

「♪地震にも負けない 強い心を持って

♪亡くなった方々の分も 毎日を大切に生きてゆこう」

 

 続いて思い(いず)るのは、直接この目で見た、あるいは報道で見かけた光景。

 積み木の如くに崩れ横倒しになった高速道路。

 一部の階だけ崩れて不恰好になった高層建築。

 竜巻のごとき黒煙を何本も噴き上げて燃える街並み。

 家々が軒並み潰れ、瓦礫の山だけが延々と続く住宅街。

 捻じ曲げられた線路と横倒しになった何輌もの列車。

 天井が落下して潰れた鉄道の地下駅。

 液状化で泥まみれになった海側の市街地。

 崩れて半分海没した波止場、傾いたまま空しく立つ街灯。

 ぶつ切りになった高速道路で、前輪が宙に浮きながらも辛うじて踏みとどまったバス。

 

「♪傷ついた神戸を 元の姿に戻そう

♪支え合う心と明日への 希望を胸に」

 

 だんだんと視界が滲んでいく…。目の端に湿っぽいものが宿るのが、はっきりと分かります。

 私の歌声が故郷にまで聴こえることがないことは、分かり切っています。しかし、だからこそ本気で歌わねばならない。故郷を遠く離れた東京にあっても、あの記憶と思いを決して忘れてはいないと証明するために。

 

「♪響き渡れぼくたちの歌 生まれ変わる神戸の街に

♪届けたいわたしたちの歌 しあわせ運べるように」

 

 ……そう、私が如何なる時でも本気で歌える唯一の曲の名は、「しあわせ運べるように」。あの忌々しい大地震で亡くなった6千人以上の御霊を慰める歌。一面瓦礫の山と化した街から10分で生まれた曲。

 

「♪地震にも負けない 強い絆を作り

♪亡くなった方々の分も 毎日を大切に生きてゆこう」

 

 いつの間にか、聴衆の方からすすり泣きの音が聞こえるようになっていますね。というより、大概の方が目を擦っていませんか?

 あと、審判員席の方からもすすり泣きが聞こえる気がするのですが、気のせいでしょうか…。

 

「♪傷ついた神戸を 元の姿に戻そう

♪優しい春の光のような 未来を夢み」

 

 ……っ、いけない。私自身が泣きそうになっている。

 たとえ聴衆全員を泣かしても、聖歌隊員たる私が泣くことがあってはならない。歌に込めた鎮魂の思いが揺らいでしまう。

 大きく息を吸い、溢れかけたものをぐっと堪えてサビへ。

 

「♪響き渡れぼくたちの歌 生まれ変わる神戸の街に

♪届けたいわたしたちの歌 しあわせ運べるように」

 

 …でも私の声が震えるのを防ぎきることはできませんでした。まだまだ未熟ですね…。

 さあ、もはや曲の終わりは近い。音楽に合わせて音階を半音上げて…届け私の想いよ、遥か西のふるさと・神戸まで!

 

「♪響き渡れぼくたちの歌 生まれ変わる神戸の街に

♪届けたいわたしたちの歌 しあわせ運べるように」

 

 最後に、サビの最後の一節をもう一度。

 

「♪届けたいわたしたちの歌 しあわせ運べるように……」

 

 …っ、はあ…やりきった。これで届いたでしょうか…。

 改めて見回すと、観衆も審査員も全員泣いてしまっている……ええと、これ、どうしましょうか…。

 というより、私のこの歌、どうも聴いた人を大概泣かせてしまうようですね…。今朝早くの"あれ"、大丈夫だったのでしょうか。

 正月休みが終わってすぐ、神戸市役所の方から電話がありまして、1月17日に震災発生時刻に合わせて追悼式をやるからそこで鎮魂の意を込めて、私に「しあわせ運べるように」を歌ってほしいと依頼があったのです。私の学業や他の予定との兼ね合いもありましたので、最終的に"神戸市内の放送関係者を東京に派遣し、私が東京から歌声を神戸に届ける"という形に決着しました。それで注文通り、午前5時46分から始まった式典に合わせて歌声をお届けしたのですが……歌も終盤になったところで、放送関係者が役に立たなくなっていることに気付いて、本来なら放送関係者が〆るべきところを私が〆るという事態に陥ったのです。

 

『以上をもちまして、歌のお届けを終了致します。失礼致しました。……(放送機械の電源を切ってから)あの、あなた放送専門の方ですよね? なんであなたが泣いてるんですか、自分の感情を抑え込むことも職業意識として必要でしょうに』

『だっで……うぅっ…グスッ……』

 

 こんな感じで大泣きしていたのでは、放送の役に立つものではありませんよね。

 それにしても、感情を抑え込めるはずの放送関係者を泣かせてしまったとなると、電波の向こう側にいた神戸市民の方々、大丈夫だったのでしょうか…。全員泣いてしまって式典が全く進まない、なんてことになっていなかったら良いのですが。

 

 まあ、済んだことを気にしても仕方ありません。とりあえず、私の歌は済んだのですから、私にできることは速やかに壇上から退出するのみ。

 一礼して壇上から引き下がる私に向けられた拍手は、そう多くはありませんでした。大泣きしている方ばかりでは仕方ありますまい。

 

 最終的な選考結果は…私は1位を獲得できました。審査員曰く「魂が震え、亡くなった方に対する鎮魂の意が十二分に感じられた」とのことでした。

 このコンクール、来年も行われるんでしょうか。行われるのなら是非とも参加したいものですね。

 

 

 その翌日、1月18日。

 今度は寮の部屋の郵便受けに、応援者(ファン)たちからの多数の手紙に混じってURAからの封筒が入っていました。それを見てふと思い出したのが、去年のことです。そういえば、この時期に届いたURAからの手紙で、最優秀ジュニア級URA賞の内定を伝えられたな、と。

 それに、私は史上初の tiara route での無敗三冠という実績を残しましたから、その手の賞に選出されても何もおかしくありません。

 もしかして…と思いながら封筒を開けてみると、見事に予想通りの文章が書かれていました。

 

『最優秀クラシック級URA賞受賞の内定通知書

及び授賞式のご案内

 

シルヴァーブレイズ殿

貴方は本年度のトゥインクル・シリーズにおいて、比類無き競走成績を修められました。

URA理事会での協議の結果、貴方の成績は我が国におけるウマ娘競走界の盛り上げに大きく貢献したと認定し、最優秀クラシック級URA賞を授与することに決定いたしました。

以下に記す式次第の通り、出席をお願いいたします』

 

 ふむ、やはりこうなりましたか…。頑張って勝ち取った甲斐があったというものです。

 さて、勝負服に不具合がないか確認しておかないと…。あ、その前に trainer さんと母上に連絡ですね。

 《シリウス》部員共有のLANEから trainer さんの"アカウント"を探し、連絡を送信。

 

『URAから通達が届きまして、最優秀クラシック級URA賞の受賞が内定しました。1月21日(土)の18時からURA本部にて受賞式があるそうで、トレーナーさんと共に出席するようにと命じられております。予定の調整をお願い致します』

 

 これでよし。続いて母上に電話を。呼び出し音は数回。

 

『もしもし、ブレイズ?』

「母上もご壮健そうで何よりです」

『その堅苦しい挨拶は相変わらずね』

 

 受話器の向こうから苦笑の雰囲気が伝わってきますね…。

 

『それで、何かあったかしら? 貴女が電話してくるのは、大抵何か大きなことがあった時だもの』

「ご明察です。選出されましたわ…URA賞に」

『あら、もしかして今度は最優秀クラシック級?』

「その通りですわ。それをご報告しようと思いまして」

『今回ばかりは私も、選ばれると思っていたわよ。年間戦績7戦5勝、しかも無敗トリプルティアラという史上初の快挙、おまけにまだ連対は外してない。これで選ばれなかったら、選考委員会の不正を疑うところよ。

それにしても…よく頑張ったわね』

 

 母上、よっぽど嬉しかったのですね…帰省してみたら、実家の居間には「オークス」制覇時の写真と triple tiara 無敗制覇時の写真が額縁に入って飾られていた上に、私のことを書いた雑誌や新聞の記事がほぼ全て取っておいてありました。しかし、いくらなんでも喜びすぎでは…?

 

「最後に瑕疵が残りましたけどね…」

『ジャパンカップと有マ記念ね。どっちも2着なんだから十分よ。しかも相手はジェンティルドンナにオルフェーヴルじゃない、全盛期の私じゃ逆立ちしても大差負けする相手よ。そんなの相手に健闘できたんだから十分じゃない』

「勝てなきゃ意味が無いと思うのですが…」

『なら、何故負けたかをよく分析してトレーニングしなさい。貴女しょっちゅう言ってるでしょう、戦争の勝敗は準備段階で8割決まるって』

 

 そうです。私が気を付けていることですわ。

 

「確かに……では、捲土重来を図るということで」

『…ふふ、ちょっと調子が戻ったみたいね』

 

 やれやれ、母上には大概私の感情を見破られてしまいますね…。

 

「そういう訳で、22日の朝刊をお楽しみに」

『ええ、そうするわ。それじゃ、怪我だけないようにね』

「母上も、どうかご自愛下さいませ。またいつか、帰省しますわ」

 

 さあて…勝負服を点検しておきますか。

 

『あ、そうそう。昨日なんだけど、みんな泣いてたわよ』

「え」

 

 昨日って、まさか。

 

『阪神・淡路大震災の追悼式典よ。私はラジオでしか聴いてなかったけど、貴女の歌で全員号泣、5分くらい式止まってたわよ。私も泣いちゃったし』

 

 ああ…やってしまいました。

 

『でも裏を返せば、それだけ良い歌声を届けたってことよ。来年はラジオ越しじゃなくて直接聴きたいって、みんなちらちら言ってたわ』

「式典進行止まるくらい泣いてもですか?」

『涙は喪の重要なプロセスよ。それに、そういう感情を揺さぶられるからこそ、記憶を風化させずに保てるものではないかしら?』

「確かに…」

 

 まあ、話としては分からないでもないですが…。

 

『そういう訳で、来年もよろしく頼むわよ。あ、私が言わなくても神戸市の方から直接依頼来るんじゃない?』

「に、逃げ場は…」

『ないと思うわよ。大人しく帰ってらっしゃい』

 

 …盛大にため息を吐きたいですわ…。

 

◇◆◇◆

 

 1月21日、URA本部の迎賓室にて。

 

『ただいまより、本年度のクラス別URA賞授与式を行います。壇上にご注目の上、名前を呼ばれた方は登壇してください』

 

 いよいよですわね…。

 

『まずは、各クラスのURA賞の授与を行います。本年度、最優秀ジュニア級URA賞に選ばれたのは…マイハーベストさんです!

朝日杯フューチュリティステークスを制した実力を讃えての選出となりました!』

 

 まずジュニア級URA賞は、朝日杯FSを制したマイハーベストさんが受賞しました。うーん、 tiara route の後輩ラインクラフトさんも素晴らしい素質をお持ちだと思うのですが…阪神JF3着では、実績が少々足りませんでしたか。

 

『続いて、最優秀クラシック級URA賞に選ばれたのは……シルヴァーブレイズさんです!!』

 

 内定通知を見た時点で知ってはいましたが、公式に通知されるとやはり嬉しいものですね。

 

『今年の戦績は7戦5勝、それも史上初の無敗トリプルティアラを達成。さらに、ティアラ路線のレースについては、トライアルレースを勝った上で本番のレースも勝利しています。以上の戦績から、審査員全員一致での選出となりました!』

 

 満場一致でしたか。まあ、私の戦績を客観的に見て考えれば、こうなるのも道理だとは思いますが…何というか、面映いですね。

 

『続いてシニア級です。最優秀シニア級URA賞に選出されたのは……サイレンススズカさんです!!

今年だけで5戦5賞、それもGⅠを2勝、GⅡを2勝、GⅢを1勝と全て重賞を勝利しています。加えて安田記念は後続に5バ身差の圧勝、ラストランとなった天皇賞・秋でも8バ身差という衝撃の着差で優勝。その栄誉を讃えての選出です!』

 

 おや、ジェンティル先輩が選ばれるかと思っていたら、ススズ先輩でしたか。

 その後には短距離・マイル部門とダート部門のURA賞が発表されました。ダート部門を取ったのは、サニーさんの宿敵(ライバル)たるラッキーターンさん。そして短距離・マイル部門は、

 

『NHKマイルカップ及びマイルチャンピオンシップの同一年内勝利という功績を讃え、本年度の短距離・マイル部門URA賞はアウダーチさんに授与することとします! おめでとうございます!』

 

 サニーさんの同室生、アウダーチさんが選出されました。まあ、彼女も錚々たる戦績を残してますし、選ばれてもおかしくはないでしょう。

 壇上に上がってきたアウダーチさんが、こちらをちらっと見て片目を瞑ってきました。いわゆるウィンクですね。こちらも返礼しておきます。

 全員で賞状を手に並んで記念撮影した後、まだ発表が残っていました。

 

『それでは最後に、年度代表ウマ娘を発表いたします』

 

 ああ、そういえばそんなのもありましたね。

 

『本年度、年度代表ウマ娘に選出されたのは……シルヴァーブレイズさんです!』

 

 ……え?

 ちょっと待って…最優秀クラシック級URA賞のみならず、年度代表の座まで!?

 

『年間戦績7戦5勝、史上初の無敗トリプルティアラという快挙の達成。敗れた2戦もクラシック・シニア混合GⅠで2着。さらに、前年度も含めれば11戦9勝11戦連続連対です。この戦績は余人を以て替え難いと判断され、年度代表ウマ娘選出の運びとなりました! おめでとうございます!!』

 

 ちょっと……何というか、ふわふわと足元が定まらないような心地というか…。

 まさか、年度代表馬にまで選出されるなんて…この私が?

 

『URA本部長より、表彰状の贈呈がございます。シルヴァーブレイズさんは前へお願いします』

 

 は、話は分かりましたが…待って待って待って、ちょ、光栄すぎて言葉が出てこない…。

 

「賞状、シルヴァーブレイズ殿。

貴殿は本年のトゥインクル・シリーズにおいて、比類無い競走成績を収められました。また、URAを通して販売された競走ウマ娘グッズは過去最高額の売り上げを記録しており、そのうち実に48%がティアラ路線関連の売り上げでした。ティアラ路線の賑わいの一因が貴女であることは、紛れもない事実であると認めます。

従いまして、競走成績とURAへの貢献度を考慮し、貴殿を本年度の年度代表ウマ娘に選出致します。○●年1月21日、URA本部長 (たか)(さき) 斗真(とうま)

おめでとう!」

 

 お辞儀と共に賞状を受け取った瞬間、四方八方の記者たちから白い閃光(カメラのフラッシュ)が放たれる……少々辟易してしまいますわ…。

 

「それでは、年度代表ウマ娘の座を見事獲得したシルヴァーブレイズさんにインタビューしたいと思います。シルヴァーブレイズさん、年度代表ウマ娘選出、そして最優秀クラシック級URA賞受賞、おめでとうございます!」

「ありがとう存じます」

 

 これまた辟易するものの1つ、質問(インタビュー)の時間です。いや、「拷問」と書いて"インタビュー"よりはマシなのですけれど。

 

「今のお気持ちは如何でしょうか?」

「そうですね、私自身、まだ現実のこととして受け止めきれていないような気がします。史上初となる無敗三冠を達成したことですし、URA賞の受賞は予想していましたが、年度代表バなんていう名誉までは予想していませんでした。

名家の出自などではない私がこのような名誉を授けられることは、私にとっては光栄であると同時に驚きなのです。ですので、現在でもまだ信じきれておりません。それが私の今の気持ちです」

 

 嘘偽りのない本心です。

 

「シルヴァーブレイズさんは、適性は芝の中〜長距離でしたよね? ティアラ路線には適性の合わない桜花賞が含まれていましたが、走ることへの不安等はありましたか?」

「率直に申し上げるならば、そのような不安はありませんでした」

 

 実際にありませんでしたので、きっぱりと言い切っておきます。

 

「朝日杯を勝利したことで、自信がついていました。朝日杯といえば、桜花賞と全く同じ course を走る競走です。そこで優勝、それも勝ち時計を縮めたことで、私でも十分戦えるという自信がありました」

 

 あの勝利は、本当に自信になっていたのです。何より、1,600帯では非常に強力な存在だったアウダーチさんに勝てたのですから。

 

「では、今後の予定は如何でしょう? マイルレースへ出走することもあり得るでしょうか?」

「その点につきましては、確たることは申し上げられません。私はただ、適性を考慮しつつ走りたい競走を走るのみ」

 

 うちの trainer さんはウマ娘の意志を尊重して下さる方ですから、多少適性に合ってない競走でも出して下さるでしょう。さすがに短距離走は出走する気になりませんが。

 

「ということは、春シニア三冠及び秋シニア三冠を中心とする王道路線を走ることになるでしょうか?」

「適性だけで言えばそうなりますわ。ただ、先ほど申し上げたように、その路線一本で走り抜くとは限りません」

 

 さっきから後ろから視線を感じる…おそらくアウダーチさんですね。私が1,600帯に出る可能性があると知って、復讐心を燃やしている…というところでしょう。

 サニーさんからちらっと聞いていますわ、アウダーチさんがやたら私の走りを分析していること、いつの日か私と戦うことを夢見て鍛練を積んでいることを。

 

「王道路線となりますと、シルヴァーブレイズさんの他にも有力なウマ娘が多数出走してくると思われます。目標としている方はいらっしゃいますか?」

 

 そんなもの、答えなど2つしかない。

 

「最大の打倒目標はただ2人。ジェンティルドンナとオルフェーヴル。

たとえ1年かかろうと、この2人には打ち勝ちとう存じます」

 

 非常に高い目標ではありますが、何としても勝ってみせる!

 

「非常に高い目標ですね! 達成は困難かと思いますが、頑張ってください!」

「目標とは、常に高くあるものですわ。ジェンティルドンナさんもよく仰るでしょう、憧れるだけでは近付くことはできない…と」

 

 憧れるだけでは、ただ絵画を眺めるのと同じ。額に汗し、手に血を滲ませてでも、勝利を掴み取る覚悟を持ち努力せねば。

 

「以上、シルヴァーブレイズさんでした! 本年もどうか頑張ってください!」

「ありがとうございます。こちらこそ、精一杯やらせていただきます」

 

 私も決意を新たにできましたわ。あの2人に負けたままではいられない……必ずや勝利を掴み取ってみせる!

 

『それでは続きまして、年間最優秀トレーナー賞の授与式に移ります。

本年度の年間最優秀トレーナーは…チーム《シリウス》の西郷秀明トレーナーです!』

 

 あら、こちらは私の trainer さんでしたか。でも、よく考えてみると当然のことかもしれません。何せ《シリウス》の戦績は…

 

『ゴールドシップによる宝塚記念2連覇、そしてシルヴァーブレイズによる無敗トリプルティアラ、どちらも我が国のウマ娘レース史上初の快挙…言い換えれば歴史的偉業です。そんな壮挙を成し遂げられた西郷トレーナーにこそ、本年度の最優秀トレーナー賞は相応しいと判断され、満場一致での選出となりました。

西郷トレーナー、おめでとうございます! 表彰状並びにメダルを授与しますので、壇上へどうぞ!』

 

 …ですよね。史上初の快挙を2つも成していれば、選出されるのも無理はないでしょう。

 恙無く進行していく式典。後は trainer さんの写真を撮影して終わり…と思いきや。

 

『今回は、同一チームのトレーナーとウマ娘がそれぞれの年間最優秀賞に選出されるという、素晴らしい結果になりました。その功績を讃えて、トレーナーとウマ娘によるツーショット写真を以て記念写真としたいと思います!

シルヴァーブレイズさんは、年度代表ウマ娘選出の賞状を持って登壇してください!』

 

 …は? え?

 私に、trainer さんと並んで写真に写れ、ってことですか? ……致し方無し。

 

「以上で表彰式を終了致します。それでは皆様、引き続きパーティーをお楽しみくださいませ!」

 

 やれやれ、今日1日でさんざん写真を撮られすぎました……写真撮影には少々食傷しましたわ。

 

「ブレイズさん、年度代表ウマ娘受賞おめでとうございます」

「ありがとうアウダーチさん。そういうアウダーチさんも、短距離・mile の最優秀賞を受賞しているじゃありませんか」

「流石に年度代表は響きが違いますよ。全ウマ娘が、一度は受けてみたいと願う栄誉…それを私の目の前で受けてみせるなんて、流石は我が宿敵(シルヴァーブレイズさん)です」

 

 …ん? なんだか、発音と意味するところが違うような…?

 

「そこでそんなブレイズさんに。…また機会があれば、公式戦で戦いませんか?

ブレイズさん言ってましたね、憧れるだけでは近付けないと。それはつまり、努力を積み上げることが必要ということですね? そして…磨き上げた己の身体や戦術を、より強力な相手とぶつけ合うことで、いつかは高き目標に至る、ということでしょう?

その台詞、そっくりお返しします。今のところ、マイル戦で私を破ったのはブレイズさん、貴女だけです。貴女から見たジェンティルドンナさんが、私にとってのブレイズさんなんですよ。私は、公式戦で是非とも貴女と雌雄を決したいんです。またどこかで戦わせてもらえませんか?」

 

 …この方も大概ですわね…。

 

「それ、学園内の種目別競技会とかじゃ駄目なんですの…?」

「できればやはりレース場で競い合いたいんですけどね。それもやむ無しでしょう…まあ良いです。いつか挑戦状を送らせていただきますね」

「…良いでしょう。アウダーチさんの都合もあるでしょうし、相談でも挑戦でも承りますわ」

 

 ジェンティルドンナ先輩、しばしばヴィルシーナ先輩と全力併走していますが…あの先輩の立場が少し理解できましたわ。これが、"上に立つ者、挑まれる者"ってことですか。

 アウダーチさん、ありがとう。おかげで大事なことを学べました。さて、いつ戦うことになっても良いように、備えておかねばなりませんね。

 そうそう、戦いといえば…サニーさんにも重要な一戦が迫っていますね。2月初頭の《フェブラリーステークス》。私も追い切りに協力しておりますが…サニーさん、緊張しておりますね。果たしてどこまで戦えるのやら…。




なんとか今年中の投稿が間に合った…!
UAがもうすぐ9万、総合評価1,200ポイント超…ご愛読ありがとうございます!
評価9をくださいましたまーちステークス様、ほいっつぁ様、勝小吉様
評価10をくださいましたまめ猫様
ありがとうございます!! また、新たにお気に入り登録して下さいました皆様、ありがとうございます!


ブレイズの故郷が明らかになりましたね。そりゃまあ神戸市民なら、「しあわせ運べるように」は特別な歌な訳です。
そしてブレイズのいう「あの忌々しい大地震」とは、もちろん阪神・淡路大震災のこと。ブレイズが思い浮かべた光景も、全て元ネタがあります。写真検索したらだいたい一発でヒットするでしょう。

・積み木の如くに崩れ横倒しになった高速道路→阪神高速。支柱が破壊されて横倒しになったあの姿は、阪神・淡路大震災と聞けば代名詞のように出てくる写真である。
・一部の階だけ崩れて不恰好になった高層建築→三菱銀行兵庫支店ビルとか、三光ビルディングとか。
・竜巻のごとき黒煙を何本も噴き上げて燃える街並み→今の長田区辺り。これも写真検索であっさり出てくるでしょう。
・家々が軒並み潰れ、瓦礫の山だけが延々と続く住宅街→詳細不明ながら、長田区とか湊区辺りと思われます。
・捻じ曲げられた線路と横倒しになった何輌もの列車→少々描写がぼんやりしていますが、おそらく阪神電車でしょう。石屋川車庫とか。
・天井が落下して潰れた鉄道の地下駅→神戸高速鉄道の大開駅。
・液状化で泥まみれになった海側の市街地→これも元ネタが若干ぼんやりしてますね、多分ポートアイランドとかでしょう。
・崩れて半分海没した波止場、傾いたまま空しく立つ街灯→メリケン波止場。今も崩れた岸壁の一部が「神戸港震災メモリアルパーク」として保存されている。
・ぶつ切りになった高速道路で、前輪が宙に浮きながらも辛うじて踏みとどまったバス→これまた阪神・淡路大震災の象徴的写真。ちなみにここも阪神高速である。

今回は、今年最後のチャンミ・桜花賞レギュレーションで、グレードA決勝を何とか勝てたので記念投稿です。
こちらがティアラクラフト・青ルビー・フーちゃんなのに対して、相手はおはマイル×2、シングレオグリ×2、青ルビー、スティルという絶望的編成。特におはマイルが怖すぎた…此奴に何回差されたか。
おはマイルが序盤加速スキル持ってなかったり出遅れたりで最後方からスタートしたのに対し、こちらは青ルビーこそ出遅れたもののフーちゃんとクラフトがワンツーで好位置を確保。青ルビーが徐々に追い上げる中、フーちゃんとクラフトが良いタイミングで加速を決め、トップ3を独占して最終直線に突入。最後に突っ込んできたおはマイルを半馬身振り切って、ティアラクラフトが1番に決勝線に飛び込みました。
ティアラ路線最強は君だ、クラフト! ありがとう!!

さて、そろそろ次回予告といきましょう。今回の担当は…

「さ、サニーウェザーです!」

なんかめっちゃ緊張してない?

「だ、だってGⅠですよ!?」

GⅠ? あ、フェブラリーステークスか!

「そうです……き、緊張する…! 格が違うし、出走してくる相手もみんな強いし…!」

大丈夫! このために今までトレーニングしてきたんだろ? 西郷トレーナーもチームメートも、君が勝てるようにと思ってトレーニングしてくれてんだから!

「そ、それは分かるんだけど……すごい緊張する…! ブレイズちゃんも先輩方も、なんであんなに平気そうに走ってるの…?」

いや、多分相応に緊張はしてると思うよ? 現にブレイズは緊張してるって言ってたし。

「ブレイズちゃん無敗トリプルティアラだったでしょ? なんであんな普通に走れるの? 特に秋華賞とか、すごいプレッシャーかかってたでしょ」

それは本人も自覚してたよ、多分だけどそれを力に変えたんじゃない?

「私そこまで心臓強くないよ…!」

あと、フェブラリーSを気にするのは良いけど、高等部進級試験あるの忘れてない?

「それ今思い出させないでくださーい…!」

ということで次回「逃げるな2月、決戦の刻」 投稿は少々お待ちくださ…って、これ次回予告してるのうp主じゃね?
あ、有馬記念はミュージアムマイル単勝こそ当てましたが、それ以外は惨敗…。メイショウタバルお前…要らんとこで親父の遺伝子発揮してんじゃねえよ…。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。