皆様、明けましておめでとうございます。シルヴァーブレイズですわ。
今回なのですが、どうやら本編とは少々異なるようです。作者さんから書き置きを貰っていますわ。それによると…『今回は正月ということで、ブレイズのキャラストーリーの第6、第7話をお送りします』とのことです。そういえば以前に第5話までお届けしましたね。第1から第4話は「エイプリルフール記念】シルヴァーブレイズ キャラストーリー 第1〜第4話」、第5話は「Act.039 樫の冠とファン投票」にてお届けしております。
それでは、キャラストーリーの続きをどうぞ。
《第6話 Blaze's secret.》
ある休日、トレーニングに必要な物の買い出しのために外出していると、たまたま教会の近くを通りかかった。
ちょうど讃美歌「アメイジング・グレイス」が聞こえてくる。少し立ち止まって耳を澄ませていると、歌声に聞き覚えがあるのに気付いた。
(この声は、シルヴァーブレイズの……?)
歌声が気になり、つられるようにして教会に入ったのだった。
[カットイン挿入]
聖堂に入ってみると、聖歌隊が讃美歌を歌っているところだ。その隊列の中央に、シルヴァーブレイズがいる。
そういえば彼女はクリスチャンだったな、と思い出した。ここにいるのもそれが理由だろう。
結局、聖歌隊の歌唱と牧師の説教を最後まで聞いてしまったのだった……。
[ストップウォッチの針が一周するカットイン]
ありがたいお説教が終わった後……
「あら、trainer さん。こんなところで奇遇ですわね。」
シルヴァーブレイズがこちらを見つけて話しかけてきた。(この時点ではシルヴァーブレイズは白い礼拝用ローブを着ている。帽子は付けていない)
「いつもここで歌っているのか?」
「はい。週に1回は確定で歌っています。それとは別に、週1回は礼拝に来ておりますわ。」
食事の時などでも、シルヴァーブレイズは礼拝を欠かしていない。敬虔なクリスチャンなのだろう。
「それで、trainer さんはどうしてここに?」
買い物をする予定であることを話した。すると……
「それでしたら、私もご一緒してもよろしいでしょうか?
実は私も、蹄鉄や日用品など買うべきものがありまして……。」
「いいよ」
「ありがとうございます。では、着替えてきますので、申し訳ありませんが少々お待ちください。」
[カットイン挿入]
「お待たせしました。それでは、参りましょう。」
(私服に着替えてきた。なおこの時のシルヴァーブレイズは、クリーム色の長袖ブラウスに薄紫のロングスカート、黒のハンチング帽という格好で、懐から懐中時計の鎖がぶら下がっている。肌露出はかなり少ない)
姿を見せたシルヴァーブレイズを見て驚いた。一瞬、別人かと思ってしまった。(髪と尻尾は黒色で統一され、もともとの鹿毛も白い大流星も完全に塗り潰されている。また、両目も茶色の瞳になっている)
「その格好は……?」
「ああ、すみません。これは変装なんですの。私はとにかく見た目が目立つので、それを隠そうというのです。」
どうやら毛を染め、カラーコンタクトレンズで瞳の色をごまかしているようだ。
こうしてみると、シルヴァーブレイズだとは言われなければ気付かないだろう。
「変装が上手いんだな」
「もはや探偵か暗殺者でも務まるんじゃないか、と自分でも思っております……。
ただ、人に化けるのは自信があるのですが、かくれんぼは苦手なんですの……何故かいつも見つかってしまいます……。」
確かにこれでは、人の中に潜り込めば気付かれにくいだろう。
シルヴァーブレイズの意外な一面を知ることができた。
[ウマ娘がトコトコ走るカットイン]
最初に立ち寄ったのは書店。新しいトレーニング理論の本が出たというので、見てみたかったのだ。
ちなみにシルヴァーブレイズも、買いたい本があるらしい。一旦彼女と別れ、目当ての本を探すことにした。
目当ての本を見つけ、買うことに決めてレジに向かうと、ちょうどシルヴァーブレイズが並んでいた。
その手に数冊の本が抱えられている。運動学、生理学、そして……
「『入門 タロット占い』?」
「ああ、これですか? 実は私、独学でタロット占いをやっておりますの。
以前にフクキタル先輩に勧められてから、ハマってしまいまして……。」
意外だった。シルヴァーブレイズが占いを嗜んでいるとは……。人は見かけによらないものだ、と感じた。
「さて、確か鍛練のための品の買い出しでしたね。おそらく蹄鉄も同じ店に置いているでしょうから、もう少しご一緒させていただきますわ。」
[ウマ娘がトコトコ走るカットイン]
「ふう、だいぶ買い込みましたわね。」
あの後、トレーニング用品の購入やらランニングマシンの契約やらでだいぶ時間を使ってしまった。
シルヴァーブレイズも、蹄鉄や日用品といった必要な物を買えたようだ。
「ちょうどお昼時ですし、昼食を兼ねて休憩にしませんか? いい店を知っているんですよ。」
[カットイン挿入]
シルヴァーブレイズが勧めたのは、商店街の外れにあるカフェテリアだった。
小さな店だが、家庭的で落ち着いた雰囲気がある。ちょっとした穴場、というところだろうか。(いつの間にやらブレイズは変装を解いている)
ブレイズ
「Master さん、こんにちは。いつものをお願いしますわ。」
店主
「おう、ブレイズの嬢ちゃんか! いらっしゃい! おや、そちらの方は?」
ブレイズ
「私の trainer さんですわ。彼には、お薦めの物をお願いします。」
店主
「あいよ! いつものとお勧めだな、ちょっと待ってな!」
手慣れた様子で注文している辺り、通い慣れているのが窺える。
「良いお店でしょう? ここは雰囲気も良いですし、紅茶もなかなか本格的ですの。私のお気に入りですわ。」
確かに、こんなところに良い店があるとは気付かなかった。穴場、ということだろう。
店主
「待たせたな! ほれ、注文の品だ!」
ブレイズ
「ありがとうございます。あら、これは…… master さん、紅茶の腕を上げましたね? 香りで分かりますわ。」
店主
「流石だな嬢ちゃん! 一瞬でバレちまったか!
いやー、この前紅茶の淹れ方を教えてくれただろ? あれからずっと練習して、ここまで来たんだよ!」
ブレイズ
「素晴らしいですね。……うん、味もイケますわ! これで紅茶はバッチリでしょう。」
店主
「おっ、そりゃありがたいね! そうだ、今度はお茶菓子の作り方を教えてくれないか?
サンドイッチには自信があるんだが、スコーンの腕を上げたくてな。
あと、嬢ちゃんのアップルパイが旨いって聞いたぞ、一度見てみたいもんだ!」
ブレイズ
「承知しました、またお教えしますね。来週など、空いている日はございますか?」
店主
「来週だな、土曜日の午前中が空いてるぜ!」
ブレイズ
「では、その日にいたしましょう。私も見本を作ってきますね。」
店主
「おう、分かった! いやー、来週の週末が楽しみだ!」
紅茶と茶菓子には並みならぬ情熱を持つ彼女は、どうやら学園周辺のカフェに大きな影響力を持っているようだ……。
いつの間にこんな人脈を築いていたのか、と驚かされる。
[ウマ娘がトコトコ走るカットイン]
「本日はありがとうございました、trainer さん。」
全ての予定を終え、学園に戻った頃には陽がだいぶ傾いていた。でも、充実した1日だったことは間違いない!
「俺の方こそ、ありがとう」
「いえいえ、私は大したことはしておりませんよ。
そうだ、ご予定がよろしければ、また cafeteria 巡りをしましょう。まだ穴場の店がいくつか、あるんですの。」
またお茶を楽しみたいな、と感じたのだった……。
《第7話 The end of summer.》
海辺の合宿所を借りて行われる、ウマ娘たちの夏期強化合宿。シルヴァーブレイズも当然これに参加し、実力向上に努めていた。
「はあっ、はあっ、はあっ……。砂浜走り20本、終わりました……。」
「お疲れ様、一度休憩しよう」
「承知しました。水分も補給しておきますね。」
シルヴァーブレイズはもともと暑さが苦手らしく、合宿が始まった直後は……
(以下、回想)
「暑い(全発音に濁点が入って濁っている)……溶けてしまいそうですわ……。」(汗だく)
「うう……直射日光が強烈……。暑いし、立ちくらみが……。」(顔色が青くなってお目目グルグル状態)
(回想終了)
といった具合に、高頻度でダウンする場面が見られた。
しかし、合宿も終わりに近付いた今はダウンする回数が目に見えて減っている。メンタル面でも十分成長できたようだ。
加えて、筋力や持久力も十分なほど付いている。走りの姿勢やタイムがそれを雄弁に物語っていた。
ということで、シルヴァーブレイズに1つ提案をしてみた。
「1日くらい休みを取らないか?」
「休日ですか? ふむ…言われてみれば確かに、夏合宿が始まって以降まともな休日がありませんでしたね。」
シルヴァーブレイズは少し考える様子を見せた後で、こう言い出した。
「それでしたら trainer さん、明後日を1日お休みにさせていただけますか?
明後日は夕方から夏祭りがあるそうです。それに興味があるんですの。
それと…実は午前中にも、trainer さんにお見せしたい所がありますの。」
何を見せてくれるのだろうか。シルヴァーブレイズに聞いてみたが、
「それは当日の、お・た・の・し・み、ですわ。」
とはぐらかされてしまった。
[ストップウォッチの針が一周するカットイン]
2日後、朝っぱらからシルヴァーブレイズに連れ出されてやってきたのは…
「朝の自主練中に見つけた場所ですの。いい景色でしょう?」
山を頂上付近まで登った所だった。
遠くまで広がる海、その青と対比をなすように白い砂浜と植物の緑が映える。ロケーションはかなり綺麗だ。
「うわぁ……!」
「たまたま発見できたこの場所で、朝一番を過ごすのが夏合宿の日課でしたの。
今はもう陽が高いですが、朝はこの左の方からゆっくりと太陽が昇ってくるんです。
その景色は、残念ながら私の語彙では言い表せませんわ。」
どうやらお気に入りの場所を見つけていたようだ。
ところで…ここはかなり標高が高い場所だが、自主練とは何をしていたのだろうか?
尋ねてみると……
「ここまで登るのに使った登山道、あれを走って登り降りするのです。」
「ええ!?」
道のりがかなり険しかったのを覚えている。まさか、それを全速力で駆けていたのだろうか!?
「ご明察、学園の坂路よりよほど過酷な道のりでしたわ。ですが、大抵のことには耐えられる根性ができたと思います。」
相変わらず、鍛練には熱心なシルヴァーブレイズなのであった。
(時計の針1周)
夕方になり夏祭りが始まると、シルヴァーブレイズはかなり楽しんでいた。
「むむむ……難しいですわね、金魚すくい……。(穴の開いたポイを持っている)」
ゴールドシップ
「なんだブレイズ、またボウズじゃねーか! アタシは20匹は固いぜ!
この金魚たちで作ってやるぜ! マグロにも負けねーでっかい魚をな!」
ブレイズ
「それ、目を作るために黒い金魚が必要じゃないですか!
そして、くっ、さすがゴールドシップさん……! でも私だって……!」
何度か挑戦したが、2匹が限界だった……。
[カットイン挿入]
パァン!(空気銃の発射音)
飛んでいったコルク弾は見事に空き缶に命中し……空き缶はパタリと倒れた。
ブレイズ
「よしっ、もう1発!」
屋台の店主
「かー、またやられた! お嬢ちゃん上手いねぇ!」
一方、射的ではものすごい実力を発揮。ほとんど百発百中の勢いで、ターゲットを倒している。
(パァン!)
ブレイズ
「やりました、もう1つ!」
屋台の店主
「お嬢ちゃん、頼むからそろそろ他の人に代わってやってくれぃ!」
[場面転換]
「もぐもぐ……むぐ、この『ヤキソバ』なる麺料理も美味しいですわね!
学園で食べたものとはまた味が違うのも良いですわ!」
一通り出し物を楽しんだ後は、花火大会を待ちながら食事である。シルヴァーブレイズは焼きそばとりんご飴が気に入ったようだ。
「食べる時は食べるんだな、ブレイズも」
「え? それは、今日は紅茶こそ飲んでいても、お茶菓子をあまりいただいていないからですわ。その分を食べているだけです。」
楽しみのためなら、お茶菓子も我慢できるようだ。…紅茶はさすがに無理だったが。
[場面転換]
(ヒュー……ドドン!)
その時、大きな音がして空に鮮やかな光の花が咲く。花火大会が始まったのだ。
「綺麗…… fireworks はいつ見ても美しいですわね……。」
夜空を見上げたまま、シルヴァーブレイズが呟く。
夜空を彩る花火に魅了されていると、シルヴァーブレイズがそっと肩を叩いた。
「どうした、ブレイズ?」
「実はですね trainer さん、これは私見なのですが……。」
そう切り出して、シルヴァーブレイズは花火を見上げながら続けた。
「ウマ娘の競走生涯とは打ち上げ花火のようなものだ、と思うのです。
昇ってゆく花火の高さは、積み上げた鍛練を。」
言いながら、花火の軌跡を追いかけてシルヴァーブレイズが指を指す。
「花火の大きさと派手さは、競走での駆け様と成績を表すのです。」
夜空に一際大きく開く光の花。それを見てギャラリーから感嘆の声が聴こえる。
「観客のこの声は、勝者が受ける祝福の喝采の大きさ。そしてその後は……。」
歓声が収まった時、その空には……
「何も残らない。そう、何も残らないのです。鍛練して、走って、勝ち取って……それでおしまい。後には何も残りません。
残る物があるとすれば、それは trophy と、人の記憶に焼き付けられた一瞬の煌めきだけでしょう。」
シルヴァーブレイズの発言にはっとさせられる。まだ幼い中等部生でありながら、彼女はここまで考えているのだ。
「夏の夜の花火、冬風に舞い散る枯葉、そういったものを見るにつけ、いつも思うのです。
人生とは儚いものだと……。」
そしてシルヴァーブレイズはこちらに顔を向け、寂しげな、しかししっかりした意志のこもった笑顔を見せた。
「最後に散るなら、せめて華々しくありたいですね。あの花火のように。」
そうだ、確かにレースが終わった後には何も残らないかもしれない。
けれど、人々の記憶に残りやすくなるように、花火を大きく、美しくすることはできるはずだ!
「秋以降のレース、勝とうな!」
「はい。Trainer さんと共に……!」
その時、空に一筋の白い光が走る。それが流れ星だと気付く前に、願い事を口にしていた。
「シルヴァーブレイズが勝てますように……!」
「Trainer さんと共に勝てますように……」
奇しくも願い事は一致していた。
シルヴァーブレイズと共に勝とう、そう思った。夜空を駆ける流れ星に誓って……!
以上、キャラストーリーは全てお届けしました。
さて、次の正月とかは何をお届けしようか…と、作者さんが悩んでますね。頑張ってほしいものですわ。