彼ら彼女らは青春ラブコメを知らない   作:筋肉脳

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作間九十九は比企谷八幡と由比ヶ浜をからかう

 由比ヶ浜はそういって部室の扉を少しだけ開け、その狭い隙間からするっと滑り込むようにして入ってきた。先ほどまでの思春期に対する思考のせいか、それもまた思春期特有の人見知りという結論に至った。

 

「な、なんでヒッキーがここにいんのよ!?」

「いや、俺此処の部員だし」

 

 比企谷と目が合うなり彼女が発した言葉。あの比企谷に気付くとは、こいつ出来る……!なわけないか?なわけないな。

 対する比企谷の冷静な返し。流石、ボッチ。会話のつなげ方を知らないことに関しちゃ一流だな。俺もか?俺もだな。

 そんなくだらない思考を切って再度彼女を見る。

 

「あれ、なんでつくっさんまでいるの?」

「え? なんとなく?」

「ちげえ。お前も部員だろ」

「なんで誤魔化したし!?」

「え? なんとなく?」

「さっきと言ってること全然変わんない!」

 

 そうやって一人で盛り上がってる由比ヶ浜をおいて、教室の後ろにいくつかある椅子を持ってきた。

 

「まあ、そんなところで盛り上がってないで、とりあえず座れよ」

「あ、ありがと……」

 

 ちょうど雪ノ下と向かい合い座ろうとしたところを…………思いっきり椅子を後ろに引いてやった。由比ヶ浜はそのまま重力に従いバランスを崩し床に尻餅をつく。

 とても滑稽な姿で俺は大変満足です。

 

「やめなさい作間君。あなたって稀にとんでもなく幼稚な行動をするわね」

「いた~、もう、つくっさん意味わかんない!」

「雪ノ下、間違えるな。稀にじゃない頻繁にだ」

「分かっているのなら、やめてほしいのだけれど」

「ムリ」

 

 即答してやった。ここだけは譲れない! これが俺の生きがいなんだ!

 

「まあいいわ、これ以上言っても意味はなさそうだし。それで、由比ヶ浜結衣さん、ね」

「あ、あたしのこと知ってるんだ」

 

 由比ヶ浜は名前を呼ばれてパッと顔を明るくする。名前程度でそんなにうれしいか?

 

「お前よく知ってるなぁ……。全校生徒覚えてんじゃねえの?」

 

 比企谷がやっと会話に参加してきた。

 

「そんなことないわ。あなたのことなんて全然知らなかったもの」

 

 どうやらこのあなたはYOUという複数形の意味を持つようだ、比企谷に言いながら俺にも視線を移してきた。

 

「そうですか……」

「別に落ち込むようなことではないわ。むしろこれは私のミスだもの。あなたの矮小さに目もくれなかったことが原因だし、何よりあなたの存在から目をそらしたくなってしまった私の心の弱さが悪いのよ」

「ねぇ、お前それで慰めてるつもりなの? 慰め方下手すぎっつーか、最後、俺が悪いみたいな結論になってるからね?」

「そうだ、そうだ! 目をそらした雪ノ下が悪いんだー!」

「黙りなさい、作間君」

 

 茶々を入れたら怒られた。

 

「なんか……楽しそうな部活だね」

 

……今の会話でこの反応、中々に的を射ているな。バカなのに。

 

「別に愉快ではないけれど……。むしろその勘違いがひどく不愉快だわ」

「まあ、そういうなよ雪ノ下。マジでそう見えるぞ」

「……ッ。そんなわけないでしょう、大体――」

 

 俺が異常にニヤニヤしているのを見ると雪ノ下は反論を止めた。おそらくこれ以上言っても無駄だと悟ったんだろう。

 それを見ていた由比ヶ浜はあわあわあわてながら両手をぶんぶんと振る。

 

「あ、いやなんていうかすごく自然だなって思っただけだから! ヒッキーもクラスにいるときと違ってよくしゃべるし、つくっさんに至ってはよくわからないなーと思って」

「いや、喋るよそりゃあ……」

「え? クラスに面白い奴いないし?」

「酷いしっ!?」

「そういえば、由比ヶ浜さんもF組だったわね」

「え、そうなん」

「まさかとは思うけど知らなかったの?」

「し、知ってるよ」

 

 あれは誰がどう見ても知らない顔ですありがとうございました。

 

「そんなんだからヒッキー、クラスに友達いないんじゃないの? キョドり方、キモいし」

「ざまあ、比企谷、ざまあ」

「こいつマジうぜえ!?」

 

 由比ヶ浜は比企谷をバカにした目で見つつ言った。

 それよりも俺のあざ笑う対応に比企谷は気を取られたようだ。

 

「……このビッチめ」

 

 あ、比企谷は根に持つタイプだったな。

 

「はぁ? ビッチって何よっ! あたしはまだ処――う、うわわ! なんでもないっ!」

 

 由比ヶ浜は顔を真っ赤にして口に仕掛けた言葉を振り払うように手をばさばさと動かした。

 

「もう、遅いよ由比ヶ浜」

「別に恥ずかしいことではないでしょう。この年でヴァ―ジ――」

「わーわーわー! ちょっと何言ってんの!? 高2でまだとか恥ずかしいよ! 雪ノ下さん女子力足んないんじゃないの!?」

「……くだらない価値観ね」

「だから友達いないんだよお前……」

 

 雪ノ下が気温を一気に下げた。

 

「にしても、女子力って単語がビッチ臭えよ」

「また言った! マジヒッキーありえない! マジキモい!」

「「うるせえよ、ビッチ」」

「こっっの……っ! ほんとうざい! っつーかキモい! 死ねば?」

 

 わずかな沈黙、俺はその言葉を受けてどう返してやろうかと悩んだ後、比企谷が重々しく口を開いた。

 

「死ねとか殺すとか軽々しく言うんじゃねえよ。ぶっ殺すぞ」

「世界には生きたくても生きられないやつがいるんだぞ、そいつらの気持ちを理解しろよ。消すぞ」

「――あ、ご、ごめん。そういうつもりじゃ……」

 

 俺と比企谷の怒涛の攻めに押された由比ヶ浜は素直に謝った。やっぱりこいつあほの子だ。

 二人で内心由比ヶ浜を笑っていると――

 

「……あのさ、平塚先生から聞いたんだけど、ここって生徒のお願い叶えてくれるんだよね?」

 

 こうして奉仕部に初めての依頼人が来た。

 ちょっと待って、このアホの子この空気のままでシリアス入ってくの?

 




この切り方だとシリアス行きそう。最後がなければ。
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