西暦2039年、温暖化の影響により地上での版図を大きく失った人類の前に、突如として世界各地へ霧と共に、第二次世界大戦時の軍艦を模した正体不明の大艦隊が出現した。
現代の科学力をはるかに超える超兵器と、独自の意思を持ち乗員なくして動く霧の艦隊と名づけられたその勢力により、人類はほぼ海上から駆逐された。
シーレーンも、海を隔てた長距離通信も絶たれ、人類は各地に孤立する。
事態の打開策も見出せぬまま、経済活動や政治・軍事の混迷により人類同士での内乱も生じ、衰退への道を転がり落ちていった。
というのも昔の話である。アドミナリティ・コードのもと、総旗艦に従っていた霧の艦隊は思うが儘に行動するという自由を手にした。
霧の艦隊の面々においてゆっくりと人間社会になじんでいくものも居た。
確かに混乱はあったものの、平和な世界へと戻りつつあったかに見えた。
2063年、米中による世界による主導権争いが激化し、最終的に核戦争へと発展。第3次世界大戦の勃発であった。
主要国家は核の炎に焼かれた。その際の霧の行動は多種多様であった。
親しい者を艦内に収容し自らを核シェルターとする者。傍観する者。霧である事を隠し親しい者と共にシェルターへ逃げる者。
そして、ヒトは愚かであると海へ戻る者。ナノマテリアルという万能物質により愛する者の仔を孕むもの。
文字通り多種多様に分かれたのだ。
最終的に米中の痛み分けで2068年に終了した第3次世界大戦の終結時には、地球70億人の人口は10億人まで割り込んだ。
だがそれでも人類は復活したのだ。国際連合が一新され、国家と言うのも希薄になってしまった。
放射線による汚染で生存が厳しい状地域が多い中、宇宙に活路を見出したのだ。
最初は月への移住から始めり、火星・土星・金星への移住が成された。
地球・火星・土星・金星でネットワークにより繋がりながらも独自の文化を醸造させたのだ。
それを見ていた
さて、ここで少し時を遡らせる。
時は月への移住計画が成功した2089年。
呉湾。そこには復興した呉の岸壁に腰かける一人の少女と、深紅の瞳で長い黒いドレスを身にまとったいかにも高貴そうな女性が後ろにたたずんでいた。
「ねぇコンゴウ?私宇宙に行ってみたいの。星がキラキラ輝いて果てしなく広い宇宙に」
「行こうと思えば行けるだろう。火星の-——」
「そう言う事じゃないんだよ。宇宙でどんな出会いができるのか、旅してみたいなって」
「旅・・・・・・か。分かった」
あぁ、無常である。地球で猛威を振るった彼女は果てしなく続く大海原にこぎ出でてしまった。とある少女と共に。
さて、時は飛び2132年。
地球並びにその他の移住惑星国家群は緩やかな連邦となっていた所に、火星より緊急電が来たのである。
戦闘艦と思しき宇宙艦が見つかったのだ。
これに騒然としたのは国際連合だ。火星政府が其の異星人の艦を秘匿しようとしたからか?
それもあるだろうが、若干違う。地球は宇宙に漕ぎ出る戦力の見通しが立っていたからだ。
そんなことより、侵攻の脅威があるという事なのだ。
いそぎ、侵攻の対応の手立てを立てなければならないのだ。
2133年、国際連合宇宙海軍発足。
2135年、一時の緊張状態にあった火星自治政府が異星人の艦の技術を公開した。
2138年。チハヤ姓の技術者がナノマテリアルを発見、それを元にコアを製作。
異星人の艦の技術とは全く別のオリジナリティあふれる宇宙戦艦を送り出した。
その名は
艦がある限り、“彼女ら”が健在な限りエネルギーを供給し続ける超重力子エンジン24基による莫大なエネルギーで持って光子を加速させ後方に放出し、通常最大速力は亜光速にまで達する。
そして、もう一つ。人類の活動権を一気に広げる者が装備されていた。
装置冷却の関係上12時間に250光年のワープを1回のみを限度としながらも、超重力子エンジン24基並列接続による大エネルギの暴力によってなせる業だった。
ちなみにその頃の霧の艦隊は自らを改造し、宇宙航行可能な物へと進化させていた。
2089年に飛び立った先達が戦術ネットワークを通じて技術の公開を実施していた。チハヤ姓の技術者は霧の協力者を得て“霧”の技術を解析。
ドレッドノートを世に送り出したのだ。
ドレッドノートを皮切りに、“元”霧だった艦が“新造艦”としてお披露目される。
各人お気に入りの艦長を見つけた上で、だが。
それからというもの、国際連合は特命全権大使を艦に乗せた状態で長距離航行を行うようになった。
国交を結ぶためである。侵略を受けなくなるようにするには国力を増す事。即ち、友好国と集団自衛権を構成しながら貿易を行い利益を出すことである。
ただ利益についても阿漕な方法を使用するなれば将来の禍根が残る可能性が高い。
国交を結ぶ事を第一とし、貿易や集団安全保障は二の次とされた。
そちらについてはゆっくりと醸成させれば良いだろうと。
国交を第一とするからには側から見ても、現地人をあまり刺激するような艦に全権大使を乗せ探索を行う必要があった。
そのような考えの元選定された艦は全て潜水艦型だった。
一般人でも分かる主砲を一切持たず、だがミサイルや侵食魚雷、クラインフィールドにより十分な自衛を行えると思われる艦を考えた際に自然とそうなったのだ。
SSSー0257“イオナ”を皮切りとして潜水艦型艦艇が作成されることになった。
当然のようにお気に入りの艦長とベタベタするメンタルモデルに微妙に居心地が悪くなる全権大使がよく見られたが、そんなことにはもう慣れた乗組員達の様子は日常茶飯事であった。
ともあれそのような事を繰り返し行い、ゆっくりと友好を深めていった地球はいつのまにか民主主義を標榜する巨大な連邦制惑星国家連合となっていた。