霧の艦隊、宇宙にて再編す   作:英国の珍兵器

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”汝平和を欲さば、戦への備えをせよ“

 ー作者不詳ー




First combat

 

 地球よりアンドロメダ星雲側へ2万1000光年離れた、地球連邦所属クラリス恒星系外縁部。

 

 クラリス恒星系には有人惑星が二つ存在し、平和を謳歌していた。

 クラリス恒星系は地球連邦の領域の際外縁部に位置するため、防衛のための地方艦隊1個艦隊が配備されている。

 

 

クラリス恒星系地方艦隊

ドレッドノート型宇宙戦艦3隻

      12番艦SSB-0012 ビスマルク(旗艦)

      13番艦SSBー0013 フェーシェン

      14番艦SSBー0014 ルーデル

あしがら型宇宙重巡航艦5隻

 

もがみ型宇宙軽巡航艦11隻

 

はやぶさ型コルベット26隻

 

 地方艦隊の主な任務は宇宙海賊への対処、有人惑星へ衝突されると思われる小惑星の破壊、有事の際の一次対処並びに人心慰撫である。

 

 特にクラリス恒星系地方艦隊は有事の際の一次対処の側面が強いため、当初から就役しているとはいえ戦艦クラスを3隻配備している。

 

 地方艦隊では戦艦級の配備は基本的に旗艦となる1隻を基本としている為、2戦級とはいえ多めの戦力を配備している。

 

 

 

 

 それであっても通常の地方艦隊はいかんせん暇である。

 それはクラリス恒星系地方艦隊でも同様であった。

 

 海賊艦対処のために準戦闘状態(アラート待機)を保っている艦がもがみ型宇宙軽巡航艦1隻とはやぶさ型コルベット3隻のみである事からも伺える。

 

 2191年3月。

 同恒星系外縁部

 

「あれか、通報があったのは」

 

 アラート任務についていたもがみ型宇宙軽巡航艦モービルが、際外縁部に設置されている無人光子レーダーサイトからの10隻という普段よりも多い不信船通報を受けた。

 

 通常より多い不審船情報より、緊急出動待機命令をクラリス恒星系地方艦隊司令部より発令、アラート待機していた艦全ての出動が発令された。

 

 モービルは、はやぶさ型コルベット3隻と共に泊地としていた有人惑星リアの海より重力子エンジンの推力より得られる光子ロケットを最大出力で吹かし直角にて上昇。

 

 リア重力圏を1分30秒で離脱したのち、通報された不審船情報位置へワープアウトした。

 

 そして艦に搭載されている光子レーダーより不審船の位置情報を確認。

 

 接近のため第一戦速まで増速しながら、オープンチャンネルによる停船命令をかける。

 

 その返答は無し。

 

 アラート艦隊はさらに接近する。

 

 ようやく目視が可能な60光秒まで接近した。

 

 相手艦は魚を思わせるような形状をしていた。黄色い発光体にその形状がより魚類を思わせるのは気のせいだろうか。

 

「きょうか、相手艦に停船の挙動無し。停船要求無視してるよ」

 

 艦長席に座る八月一日(ほづみ)きょうか二等宙佐に話しかけているのは、副艦長でありもがみ型宇宙軽巡航艦モービルメンタルモデルであるモービル三等宙佐である。

 

 メンタルモデルらしく抑揚があまり無い声で報告するモービルに八月一日(ほづみ)きょうかは諦めずに他の通信手段で呼びかけを行う事とした。

 

「モービル。相手に発光信号、国際旗、無線通信で停船を継続して呼びかけて」

 

「分かった」

 

 諦めず他の手段でもって停戦要求を発しようとしている八月一日だが。

 

 そもそもの相手は停戦要求の意図が通じていてもいなくても実行することは変わらなかいのだ。

 

「敵艦に高エネルギー反応」

 

「クラインフィールド展開!も、コルベット隊の前に出て!」

 

「分かった」

 

 矢継ぎ早にホヅキへ指示を出す。はやぶさ型コルベットの前に出るよう指示したのは、はやぶさ型コルベットがクラインフィールドによる防御手段を持たないためと言うのともう一つ。

 

 海賊船等に対処するため安価にかつ量産性を重視したために、ナノマテリアルによって構成された船体ではなく通常装甲によって建造されたものであるからだ。

 

 そのため、艦隊戦には参加することは望ましくない艦である。

 

 現代日本で例えるならば海上保安庁船であろうか。

 

 であるからして、クラインフィールドを展開できるモーベルが前に出るしかないのだ。だが、間に合わない。

 

 10隻の濃緑色の艦から伸びるエネルギービームは、一斉射にて36発の光条がモーベルのクラインフィールドに吸収されたが、12発は2隻のはやぶさ型コルベットに向かった。

 

「ゆうなみ、フレッチャー被弾」

 

 はやぶさ型コルベット2隻が被弾。すぐに轟沈することにはならなかったが、煙を吹き急速に速度を落としていく。

 

「くっ••••••正当防衛射撃!目標“敵"艦隊!打ち方始めーっ!」

 

「了解、主砲任意の目標。主砲発射」

 

 クラインフィールドを展開しながらはやぶさ型コルベット3隻を背後に庇ったまま、正当防衛射撃を宣言し主砲の攻撃を開始。

 

 クラインフィールド展開状態で主砲1基ずつ敵艦一隻に向け主砲を発射する。

 

 もがみ型宇宙軽巡航館モービルのアクティブターレットより発射された計15発の赤い軌跡は、緑の船体をしている5隻の腹に吸い込まれるように直撃し。

 

 爆散した。その間、不審船停戦命令開始からわずか2分。

 

 地方艦隊司令部による緊急出航により全ての出航可能な艦が出港はしたものの、アラート任務艦以外の艦が到着する暇もないわずかな時間で幕を閉じた。

 

 

 

 

 

「殲滅終了、オールグリーン。艦長、次の指示を」

 

「••••••艦隊司令部へ連絡。戦闘データと共に敵艦隊殲滅の一報を入れて」

 

「分かった」

 

 

 もちろん、地方艦隊司令部は頭を抱えた。

 

 当然正当防衛射撃でモービルの行動に悪き行動は見られなかったが、この1件により規模が拡大し戦闘が激化するきっかけになりかねなかった。

 

 

 

 その危惧は的を得ていた。

 2191年3月28日に起きたこの突発戦闘*1は8年へと長引く戦争へと発展した。

 

 この戦闘は味方4隻に対し10隻の不審船団を返り討ちにしたというありえない戦果で終わった。

 

 幸運にも損失艦がでなかったが、これで終わりではないことは十分に予測することができた。

 

 不審船団の所属は宇宙に覇を唱えているガミラス帝国所属艦であり、威力偵察艦隊であった。

 

 そう、本隊はすぐ近くまで迫っていたのだ。

 

 

 

 苦難の果てに宇宙にまで版図を広げた地球は、残酷な宇宙の騒乱に巻き込まれたのである。

 

 

 

 

 

 

 

*1
この戦闘は後にクラリス恒星沖事変と呼ばれることになる




〜〜Tips〜〜

ドレッドノート級宇宙戦艦

 全長:241m

 イメージデザイン:イギリスが開発した戦艦ドレッドノートを模しているが主砲の配置は背負い式である。ロケットノズルは宇宙戦艦ヤマトにおけるドレッドノート級前衛航宙艦を準拠。

 機関:並列超重力子エンジンPS型24基

 演算装置:比較的高度な自立航行や自立戦闘が可能。メンタルモデルの容姿は各館による。

 航行装置:光子ロケット1基(加速度:0.1c/sec)
      重力子放射補助ロケット2基

 防御性能:クラインフィールド→言わずとしれた最強のバリア。エネルギー兵器から物理兵器などあらゆる攻撃を無効化する。
      クラインフィールドを破るにはバカでかいエネルギーを一気に投射し臨界させるしかない。
      強制波動装甲:クラインフィールドを展開させるための装甲。なおナノマテリアルにより構成されているため、並の兵装では装甲を抜くことはできない。

 メンタルモデル(共通):G−13デュアルコア×1

 攻撃装備:超重力ユニット×3→重力子エンジンより生み出される重力子を発射するための発射ユニット。
      ちなみに理論は宇宙戦艦ヤマト2199における波動砲とほぼ同じ原理だと思われる。
      305mm2連装アクティブターレット×6
      610mm魚雷発射管×12基(侵食魚雷装填可)
      152mm単装レーザーカノン×8基
      76mm単装荷電粒子砲12基
      12.7mm単装パルサーガン12基
      対空レーザーシステム
      VLS24セル
      パッシブデコイシステム

 特殊航行性能:空間歪曲型超光速航行装置→12時間に一回250光年の移動が可能。

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