ーマキャベリー
2191年4月2日、クラリス恒星系地方艦隊リア泊地。
そこには1000光年の旅を終えたばかりの艦が羽を休めていた。
クラリス恒星系有人惑星リアには第24艦隊が、ティーフには第21艦隊が停泊していた。
アイオワ級宇宙戦艦3番艦“ミズーリ”が旗艦として、戦艦級を6隻、重巡航艦を12隻、軽巡航艦23隻を擁する重打撃艦隊である。
これまた不審船団という名の敵艦隊がいつ来るか不明であるため、また侵略のために不審船団という名の敵が地方艦隊では手に負えないような数が現れてもおかしくはないため、クラリス恒星系にて停泊をしているのだ。
第一線級の大型宇宙戦艦を映像でしか見たことがなく、身近な宇宙戦艦がドレッドノート級である惑星リアのエルフ耳の住民はその威容に頼もしいと感じているのが大多数いるのは確かだが、
連邦国防宇宙海軍の迎撃を抜かれ侵略されるかもしれないという恐怖を、心の中で抱いている者もいる。
だが、地球連邦の戦力は当然それだけではなかった。広い領域を防備するには多量の戦力が必要なのだ。
クラリス恒星系の二つ目の有人惑星“ティーフ“。普段は民間の宇宙貨物の発着が主で艦隊泊地を置いていない星だが。
この惑星でも艦隊が羽を休めていた。
もの珍しい軍用艦隊を見物するべく酒をちびちび飲みながらグダを巻いている酔っ払いの犬耳の現地人が多く見られたと言う。
1日前に到着したその艦隊は、クラリス恒星系から1350光年離れたロイヤー恒星系を拠点とする第21艦隊である。
アイオワ級宇宙戦艦12番艦“ウィスコンシン”を旗艦として戦艦級4隻、重巡航艦17隻、軽巡航艦26隻を擁する遊撃艦隊である。
2個艦隊による連合艦隊の総隻数は90隻。
地球連邦の歴史からしてもこれほどの大艦隊を組む事は訓練等でしか無い。
が、地球連邦が初めて受ける侵攻に、無力でいる理由なんてないのだ。
おそらく本気で侵略するつもりであるなら数百隻は用意してくるかもしれない。そう考えるとクラリス恒星系に集まった戦力はひどく少なく見える。
たかが90隻なんぞ捻り潰されるかもしれない。
現クラインフィールドを臨界させるエネルギーを投射する艦が多数を占めているのかもしれないのだ。
確かに地方艦隊の軽巡航艦1隻で10隻を撃破したが、その相手艦が地球連邦で言うコルベット級に相当するだけなのかもしれないからだ。
そのため、地球連邦の本拠地であり立地的に地球連邦のほぼ中心に存在する地球に停泊している艦隊が急行中である。
地球連邦にて1年前に作成されたいずも型宇宙戦艦1番艦いずもを旗艦とし、アイオワ級宇宙戦艦7隻、あたご型重巡航艦25隻、アトランタ級軽巡航艦34隻を擁する第1遊撃艦隊である。
だがその艦隊は間に合わなかった。
2191年4月10日、クラリス恒星系外縁部より新たに5光年前進配置した光子レーダーが大量の艦影を探知した瞬間に破壊された。
これを地球軍首脳はこれを先日撃破した敵艦隊の本隊であると判断。現地司令部へ迎撃を命じた。
「交戦に入る前に確実に警告を実施、その後指示に従わなければ交戦法規*1に従え……か。例の不明船の勢力と今回の不審船が同じ勢力とは限らないということか」
地球連邦宇宙海軍クラリス恒星系防衛連合艦隊
すでに全艦の出航準備は整っている。艦隊に停泊している艦がそれぞれの独自色で発光し海に映っている。
それは何処か異世界の艦であると思わせるほど幻想的な光景であった。
「全艦へ通達、出港!」
沖田が連合艦隊臨時司令として命令を発する。
宛はもちろん全ての艦である。
「あいさー!」
ピシっ! と軽い口調で返答したのは便宜上艦長となっているミズーリのメンタルモデルであるミズーリ*2である。
沖田の命令は、ミズーリを通じてメンタルモデルが共有する共通戦術ネットワークにアップロードされメンタルモデルを通じて他艦長に共有*3される。
出航の指令は即座に共有される。それはティーフに停泊していた第15艦隊も例外では無い。
主力艦の護衛となる軽巡航艦から先に出港し、最後に艦隊の要となる戦艦が出港する。
補助ロケットである重力子放射ロケットから放射される黒い光とメインロケットである光子ロケットから発せられる青白い光をたなびかせながら上昇する艦隊は、少なくともクラリス恒星系にある惑星の住人たちには心強く映ったのだった。
クラリス恒星系最外縁惑星第12惑星。典型的な木星型惑星であり、星の周囲を土星のような環を持っている。
沖田が選んだ戦場はその第12惑星近辺の宙域だった。
そして、90隻の大艦隊と推定300隻の超大艦隊が相見えた。
「むぅ‥‥‥」
そして沖田は数の不利を悟った。沖田のほおを一筋の冷たいお汗が流れ落ちた。
「じゅーぞー、大丈夫?」
自身に懐くメンタルモデルの声に気をとりなおし周りを見渡すと艦橋要員全員が沖田を見ていた。
彼の出身は技術職とはいえ、今は艦隊司令なのだ。皆を動揺させるような指揮官は落第だと帽子を被り直した。
「ミズーリ」
「あいさー?」
「奴らへ停船命令を通達してくれ」
「あいさー!」
彼の言葉は地球連邦におけるすべての言語へ忠実に翻訳され彼の不審船団に届けられた。
そして彼の不審船団から返答が入ってくる。
その返答はYesでもはいでも、NeinでもNoでもなかった。いや、Noでも大概地球連邦軍からすれば良くない返答なのだが。
単純な拒否より、下品でかつ傲慢な回答であった。
「我々は栄光ある大ガミラス帝国軍である。貴様らに二つの選択肢を与えてやる。
どちらかを選ぶのかは貴様らの自由である。降伏し、二等ガミラス人として生きるか。今ここでガミラスに歯向かい、滅ぼされるか。
このどちらかを選ぶ権利が貴様らに与えられる。
3分待ってやろう、3分経っても返答がない場合はここが貴様らの墓場だ!」
明らかに侮った文章である。確かに合計300に対し相手が
だがあまりにも傲慢な物言いに唖然とするミズーリ艦橋。だが、その光景は各艦の司令塔でも見られた。
唖然とするその後に乗組員が見せる表情は怒りである。
だが、ここで冷静に飄々としている男がいた。沖田十三である。
「まぁ待て。ミズーリ、全艦に通達。予定通り戦術Zを行う」
「あいさー。戦術Zを全艦に通達する」
「よし、じゃあ奴らにこう返答してくれ」
彼の言動を聞き逃すまいと艦橋要員の視線を一斉に浴びる。
「“バカめ“‥‥‥そう返してくれ」
艦橋要員がふっと笑う。司令ならそう言ってくれると信じていたからだ。
彼ら、彼女らも軍人であるが人なのだ。誇りを傷つけられれば怒りもするのだ。
しばらくすると不審船団‥‥‥ガミラス軍が動き始める。だんだんと近づきガミラス軍の想定主砲有効射程内に入ったその時である。
「不審船団から高エネルギー反応、クラインフィールド展開」
300隻もの艦から赤いビームがこちらのに伸びてくる。
その赤いビームは、当然のことのように各艦が展開したクラインフィールドに全て吸収された。
そして‥‥‥
「攻撃始め」
地球連邦艦隊の攻撃の火蓋が斬られた。
ガミラス艦隊を統制しているであろう艦は大型艦であると想定される。
すなわち、高価値目標であり
狙うのは相手の頭脳。指揮を担っているであろう大型艦である。
ガミラス艦隊にあった大型艦は合計25隻。
そのうち、最も最大の艦は1隻のみである。すなわち、一番狙われると言う事だ。
突如宇宙空間を10本の重力波を帯びた黒い光が伸びる。その光は大型艦を狙ったものだ。
『発射』
そして次の瞬間、何処からか突如放たれた黒き一条の光がガミラス艦隊の上下左右より伸びた10条の線は吸い込まれるように艦を貫き、大型艦8隻の腹を貫いた。
大型艦が突如大爆発を起こし、その巻き添えとして護衛の艦が吹き飛ぶ。避けようとした艦も隣の間に衝突し、損傷を負った。
幸運掠ったかすっただけで済んだ艦も、装甲が抉れており良くて中破状態であった。
大艦隊は絶好調なほど混乱していたが、地球連邦側からすれば格好の的ができたも同然である。
「全艦突撃! 一隻もこの宙域から先へ行かせるな!」
〜〜Tips〜〜
アイオワ級宇宙戦艦
全長:274m
先に紹介したドレッドノート級を完全に代替させた地球連邦宇宙海軍の主力戦艦。主砲とする16インチ3連装砲は砲門数こそ減ったものの威力・速射力ともに上であり総合火力ではドレッドノート級を悠々と凌ぐ。
イメージデザイン:アメリカ海軍のアイオワ級に酷似している。ロケットノズルは宇宙戦艦ヤマトにおけるドレッドノート級前衛航宙艦を準拠。
機関:並列超重力子エンジンPW-3型36基
演算装置:比較的高度な自立航行や自立戦闘が可能。メンタルモデルの容姿は各艦による。
航行装置:光子ロケット1基(加速度:0.1c/sec)
重力子放射補助ロケット4基
防御性能:クラインフィールド→言わずとしれた最強のバリア。エネルギー兵器から物理兵器などあらゆる攻撃を無効化する。
クラインフィールドを破るにはバカでかいエネルギーを一気に投射し臨界させるしかない。
強制波動装甲:クラインフィールドを展開させるための装甲。なおナノマテリアルにより構成されているため、並の兵装では装甲を抜くことはできない。
メンタルモデル(共通):G−16デュアルコア×1
攻撃装備:超重力ユニット×7→重力子エンジンより生み出される重力子を発射するための発射ユニット。
ちなみに理論は宇宙戦艦ヤマト2199における波動砲とほぼ同じ原理だと思われる。
406mm3連装アクティブターレット×3
610mm魚雷発射管×24基(侵食魚雷装填可)
127mm単装高角荷電粒子砲12基
40mm4連装パルサーガン12基
対空レーザーシステム
VLS48セル
パッシブデコイシステム
アクティブステルスシステム
特殊航行性能:空間歪曲型超光速航行装置→12時間に一回300光年の移動が可能