「全艦突撃!」
彼の号令により全艦の光子ロケットに火が灯る。
艦隊は前進をしながら陣形を組み直し始める。
旗艦たるミズーリや戦艦群を中心として、重巡航艦と軽巡航艦を菱形として配列した陣形である。
その陣形は単に、少数不利側が戦力集中を行いその打撃力を以て中央の突破を図るものであった。
その陣形は必然なのか何なのか不明だが、日本の戦国時代における基本陣形の一つである魚鱗の陣に酷似していた。いつの時代も行き着く先は変わらないのだろう。
菱形陣形はかねてより領域が広く戦力の分散をさせる必要がある地球連邦にて開発された戦術Zに含まれていたものであった。
数的不利な状況で戦闘を優位に運ぶため考案された戦術Zは今の状況に適していたのだ。
菱形陣形の最前方は志願制である。勿論敵の圧力を最も受けるからである。陣形の最前方はアイオワ級宇宙戦艦アラバマである。菱形陣形の最前方は、クラインフィールドの制御に余裕のある戦艦が望ましい。
よってアラバマ艦長が進んで希望したのだ。アラバマの背後にはバックアップとして控えるアイオワ級宇宙戦艦ノースダコタが並び全面的なバックアップを実施するのだ。
「目指すは敵残存の大型艦!食い破れ!」
まさにこれが沖田戦法。地球連邦宇宙海軍の想定された戦術を熟知し、何のためにこの戦術があるかを理解しているがために優先目標は間違えない。そして戦意の衰えないそれは、技術系幹部とは思えないほどである。
さて沖田の号令の元、足並みを揃えてアラバマを先頭にチャージを敢行する地球連邦艦隊に陣形が崩れたガミラス艦隊が対応できたのは少数であった。混乱したガミラス艦によって乱雑に撃たれ偶然当たった攻撃の全てはクラインフィールドによって吸収され、地球連邦艦隊による攻撃はダンボールを貫くように過貫通する。
その状態で何とか体制を立て直そうとするガミラス艦隊の最先任も、その次の瞬間アクティブターレットによるビーム砲撃により轟沈した。
300隻もいたガミラス艦も菱形陣形の地球連邦艦隊と交戦した途端文字通り“溶けて”いき今や半数の150隻ほどに。
そしてさらに、先ほど大型艦を消し飛ばした小艦隊がアクティブステルス状態を解除する。小艦隊が放ったのは、地球連邦艦隊の最終兵器である超重力砲である。重力子をビーム状にして放つそのエネルギーは膨大である。
そのため防御並びに火力が高いと思われる大型艦を優先し、“最初に”超重力砲で“消し飛ばした”のだ。
その超重力砲発射艦隊は超重力砲を発射可能な重巡航艦2隻と護衛の軽巡航艦4隻のストライクパッケージを組み、割り当てられた目標に発射した。
その小艦隊は5個存在しアクティブステルス状態にて超重力砲発射のための重力子ユニットを展開状態のまま待ち伏せをしていた。
その5個小艦隊が、楔形陣形によって散らされたガミラス艦隊を掃討する為敵艦隊へ突撃を開始した。
それから1時間後、その宙域には静寂が戻った。
最終的に英雄的な軽巡クラスの小水雷戦隊の指揮のもと緊急ワープによる撤退によりガミラス艦隊を50隻ほど取り逃したものの、250隻を撃沈。うち重巡もしくは戦艦クラスと思われる大型艦を初手で8隻消し飛ばし、その他艦艇を150隻撃沈。
51隻は大破し漂流していた所を降伏したことによって拿捕を実施した。一方で地球連邦艦隊はほぼ無傷であった。
アラバマが攻撃を相当受けたことによりクラインフィールド臨界一歩手前まで追い込まれたが、すぐに後方に控えていたノースダコタが交代し、チャージを続行。
小破艦もなかったのである。
まさに一方的な戦果であり且つ、ガミラスと交わす8年に及ぶ緒戦の始まりであった。
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それから約8年後の2198年12月。
かつては第三次世界大戦により核戦争によって干上がった地球の大地も、いまや緑と人類の叡智たるビル群が立ち並び復興を謳歌していた。
蒼く煌めく大海原には地球を航行する民間船舶が平和を意識づける。
宇宙では戦争という名の小競り合いが未だ続いているが、宇宙から有人惑星への攻撃は未だ行われていない為、地球がどこかの世界線のように赤ちゃけた星と化した訳でもない。
深く蒼い海と同じように青い、キャンバスに散りばめられた雲がある蒼穹の空が広がる美しい光景のままであった。
そこにカモメの特徴的な鳴き声が聞こえる港は横須賀である。江戸幕府の横須賀造船所から始まり328年もの間軍港としての歴史をもつこの由緒ある軍港のある地域である。
今現在そこにあるのは海上自衛隊でもなく、地球連邦軍横須賀宇宙海軍基地である。
横須賀は戦争中とは思えないほど静かで平和であった。そもそもガミラス軍の五月雨状の侵攻では地球連邦の迎撃を抜くことができていない。未だガミラス軍は太陽系にすら辿り着けていないのだ。
その横須賀宇宙海軍基地のドックには長き長距離航行を待ち望む艦がいた。白い船体に青白い発光紋様が特徴の艦船は予定航行”3年“を予定している長旅の開始日を今か今かと待ち望んでいた。
その名はヤマト型特殊航行宇宙戦艦一番艦ヤマト。“波動エンジン”と重力子エンジンを混載している長距離航行特化型宇宙戦艦である。
「ん?カモメかぁ・・・・・・暇だなぁ」
その宇宙戦艦の艦首甲板にて大の字に寝っ転がっているのはヤマトのメンタルモデルである“ヤマト”である。
黒髪のロングで纏う白いドレスは何処かウェディングドレスを思わせるものだ。このヤマト、メンタルモデルらしからぬ情緒をしているが当然である。
形式上はメンタルモデルであっても士官学校に行くわけであるのだから、色々と“学び”人間臭くもなるものだ。
ここのヤマトの場合はいらない事も学んでしまったようだが。
ちなみに地球連邦宇宙海軍のメンタルモデルは総じて戦闘中や戦闘前後はいかにも私は兵器ですみたいな雰囲気を醸し出すが、停泊中で艦長と絡む時は並の女性らしい仕草をする事で定評がある。
「何処かに良い艦長転がってないかなぁ?」
残念ながらそんな都合のいい話が・・・・・・
「あ・・・・・・お?」
あった。
ヤマトの視線が埠頭を歩いている男性士官に釘付けになる。
肩章は一等宙尉であり、もう少ししたら三等宙佐になる可能性もある。
こうしてはいられないと、白いドレスから第二種軍装の白い制服に瞬時に切り替えると艦首甲板から一息に飛び降りた。
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「親方、上から女の子が!」
突如降ってきた第二種軍装の美少女に、思わずそう言わずにはいられなくなった幹部らしくない発言をした彼の名前は森下誠一等宙尉。
横須賀警備隊第1コルベット隊所属はやぶさ型コルベット3番艦ゆうなぎの艦長である。
重力を感じさせずふわっと着地した彼女は、黒いロングの髪を海風にたなびかせ前に手を合わせた状態で柔らかく笑みを浮かべると彼に話しかけた。
「初めまして、私は────────」
その後彼女たちが何を話したか。それは彼にとっては良い話しでも有れば悪い話でもあった。内容は当事者の二人のみが知る、永遠の秘密となった。
〜〜Tips〜〜
いずも型宇宙戦艦
全長:253m
次期主力艦隊旗艦として制作された宇宙戦艦。いずも型と言っておきながら、実際はアイオワ級の拡大型改良型。主力戦艦たるアイオワ級を束ねるため指揮系統装置や支援装置をもりもりに盛った移動する司令室。それでいて主砲とする17インチ3連装砲はアイオワ級より若干の威力に優れる。
イメージデザイン:アイオワ級を単純にデカくしたデザイン。ロケットノズルは宇宙戦艦ヤマトにおけるドレッドノート級前衛航宙艦を準拠。
機関:並列超重力子エンジンPW-3型42基
演算装置:比較的高度な自立航行や自立戦闘が可能。メンタルモデルの容姿は各艦による。
航行装置:光子ロケット1基(加速度:0.1c/sec)
重力子放射補助ロケット4基
防御性能:クラインフィールド→言わずとしれた最強のバリア。エネルギー兵器から物理兵器などあらゆる攻撃を無効化する。
クラインフィールドを破るにはバカでかいエネルギーを一気に投射し臨界させるしかない。
強制波動装甲:クラインフィールドを展開させるための装甲。なおナノマテリアルにより構成されているため、並の兵装では装甲を抜くことはできない。
メンタルモデル(共通):G−17デュアルコア×1
攻撃装備:超重力ユニット×7→重力子エンジンより生み出される重力子を発射するための発射ユニット。
ちなみに理論は宇宙戦艦ヤマト2199における波動砲とほぼ同じ原理だと思われる。
431mm3連装アクティブターレット×3
610mm魚雷発射管×24基(侵食魚雷装填可)
127mm単装高角荷電粒子砲18基
40mm4連装パルサーガン12基
対空レーザーシステム
VLS52セル
パッシブデコイシステム
アクティブステルスシステム
特殊航行性能:空間歪曲型超光速航行装置→12時間に一回300光年の移動が可能