〜エマーソン〜
波動エンジン。
それはイスカンダルの使者たるサーシャ・イスカンダルが持ち込んだ技術である。
人類は既にナノマテリアルの力を借りることで縮退炉の一種である重力子エンジンを、さらに大出力化した超重力子エンジンの実現に成功している。
だがその性能向上も、頭打ちになりつつ有った。現在のアイオワ級といずも級を比較した、超重力子エンジンの一基当たりの出力は1.01倍とほぼ変わっていない。
であるからして、艦全体の性能向上のためにはエンジンを大量に積む必要がある。
また、このエンジンの性能限界により実用艦での一度のワープ最大距離は500光年と見積もられている。
それ以上のワープ距離を稼ぐには艦を巨大化させて多数のエンジンを載せる必要があるが、艦の巨大化によってワープに使用するエネルギーも増えるためどこかしらで頭打ちになるのだ*1。
であるからして、波動エンジンという新たな技術というのは地球連邦にとっては暁光であった。性能限界を見せ始めた、超重力子エンジンへの代替機関になるか否かまで話されたのだ。
そのため技術的観点より実験艦の様相を含みながら生まれたのが、ヤマト級である。
波動エンジンと超重力子エンジンの混載により新技術と冗長性を持たせた一番艦ヤマト。既存の技術のまま機関の数量を増やし系統分けをした事で1日のワープ回数を増加させた、冗長性しかないムサシ。
そして波動エンジンを二基搭載した、完全なる波動エンジンを主機関*2とした3番艦のキイ。
それぞれ一回のワープ距離は450光年と増大しており、地球連邦軍はイスカンダルへの行程を凡そ多めに見積もって2年としている。
またムサシへ大量の機関を突っ込んだおかげで、スペースが足りなくなり物資が多く積み込めなくなっているが、その分ヤマトとキイに詰め込む予定である。
そもそも乗る人間も一隻あたり50人程度であるため、必要物資は少ないのだが。
そもそも地球連邦といえども、波動エンジンというものに初めて触れたわけではない。M理論に基づいた機関を入手した機会は幾つかあった。
それがガミラス帝国艦隊の鹵獲艦である。此方の機関──ーゲシュ=タム機関──ーをガミラスの公用語を解読し、整備手法を確認した上で、リバースエンジニアリングを実施、模造品の試作を実施している。
だが模造品では出力が超重力子エンジンの出力より劣るため、改善余地があると判断され未だに研究途上であった。
その地球連邦のエンジンが発展途上であった地球連邦にとって波動エンジンの起動に必要な波動コアと波動エンジンに関する技術は渡りに船であった。
すぐさま波動エンジンが試作され、ナノマテリアルにより複製された波動コアにより起動した波動エンジン試作型は良好な試験結果を残した。
またその試作波動エンジンが地球連邦のワンオフ艦である試験艦クリハマに搭載、波動エンジン搭載したお陰で実現可能となった兵装を乗せ様々な試験航海に投入された。
なおこの際に記録された一度のワープ距離は地球連邦の最大距離を大きく更新した690光年であった。
斯くして、波動エンジンに関する諸処技術的問題が解決された。
試作による結果が良好であったこともあり、波動エンジンの増加試作生産が開始された。
この増加試作品はヤマトとキイ搭載用のエンジンであり、ヤマトが搭載する波動エンジン一基の始動はイスカンダルと地球連邦の架け橋として、サーシャが持ち込んできた波動コアを使用しての起動であった。
そのため、大々的な火入式がポップしてきたのである。
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2199年5月某日。イスカンダル遠征隊が出発する10日前であり、ヤマトが艦長を人生の墓場に沈めた次の日に、ヤマトの波動エンジンの火入式が開催された。
火入式は軍関係者や副大統領を始めとした政府関係者のお歴々方に、重症であったが医療用ナノマシンにより完全復活したサーシャと地球連邦内の多くの
当日は第一種制服を纏ったヤマトが一瞬のしてメンタルモデル状態の正装たる白いドレスに変化させた後に、艦内を手足の様に操りエンジンルームへと一人でたどりつく。
そして手に起動ユニットシリンダーを持ったまま超重力子エンジンを起動させ、波動コア・コンジットベイへ波動コアが設置。
そして波動エンジンへ超重力子エンジンの出力を印加させて、起動させた。
その様子は中継やニュースで飛び回る。
波動エンジン起動後のヤマトは白く、どこまでも白くそして蒼い紋様が印象付けられる美しい船であった。
そう信じられる様な船だった。
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「宇宙戦艦ヤマト。大いなる和の船・・・・・・それが私」
「そうだな」
「私たち宇宙戦艦ヤマト三姉妹は人類の希望なの」
「そうだな」
「だからね?ねっ?ねっっ?」
火入れ式を見事にこなしたヤマトは、よりによって火入れ式の前日に襲った自身の艦長となる森下に婚姻届を突きつけていた。
森下誠のサイン以外の部分には全て記入されており、もはや後がない状態である。
そして森下はと言うと、冷や汗をダラダラと流していた。そもそも自身が艦長に選ばれ何とか見合う様努力しているが、やっぱり気後れしている。
だが艦長としての辞令はもう出ているし、婚姻的な意味でももうヤッてしまっておりやり逃げなんてする度胸もない(メンタルモデル相手にやり逃げはそもそも不可能だが)。
確かにこんな綺麗で美しくてもはや絶滅危惧種というか、雰囲気だけでも絶滅したヤマト撫子と言えるような彼女を嫁にするのは確かに幸せであろうが、絶対に釣り合わない。
そう思ってしまうのだ。
「ヤマト」
「本当に俺で・・・・・・良いのか?」
掠れた声で、だがきちんとヤマトの目をきっちりと見て話す。
だがそんな内心なんて見透かしているかの如く、彼女はふっと柔らかく微笑んで。
「貴方が良いのよ。誰から選ばれると思っているの?メンタルモデルは最も相性が良い人を艦長に選ぶの。だから自信を持ちなさい?
だって貴方は・・・・・・私が選んだ、ただ一人の艦長なんだから」
彼は紙ペラ一枚のとある欄にサインした。
そのピンク色の婚姻届の欄にはヤマトと森下誠の名前が並んでいた。
その日ヤマトは森下ヤマトになり、偶然同じ市役所に来ていたムサシに市役所の軒先で3時間の惚気を聞かせたと言う*3。
〜〜Tips〜〜
ヤマト級宇宙戦艦ヤマト
全長:253m
イスカンダルへの長距離航海と単艦での戦闘能力、そして外交的に問題ないほどの威圧を感じられないデザイン、そのすべてが調和した宇宙戦艦。主砲ならびに副砲は全て格納式であり、唯一見える武装も魚雷発射管のみと徹底されている。
外見からはせいぜい巨大な輸送艦程度にしか見えないだろう。
イメージデザイン:武装展開中の状態は大和型戦艦に準拠、基本的にイメージは霧の艦隊総旗艦ヤマトをイメージ。ロケットノズルは宇宙戦艦ヤマトにおけるドレッドノート級前衛航宙艦を準拠。
機関:並列超重力子エンジンPW-5型21基
波動エンジンHR-01型1基
演算装置:比較的高度な自立航行や自立戦闘が可能。メンタルモデルの容姿は霧の艦隊総旗艦ヤマトに準拠。
航行装置:光子ロケット1基(加速度:0.1c/sec)
重力子放射補助ロケット4基
防御性能:クラインフィールド→言わずとしれた最強のバリア。エネルギー兵器から物理兵器などあらゆる攻撃を無効化する。
クラインフィールドを破るにはバカでかいエネルギーを一気に投射し臨界させるしかない。なおこのヤマトの場合、ムサシクラスの超重力砲を食らってもピンピンしているため、物理アタックを加えた方が有効打を与えられる。
強制波動装甲:クラインフィールドを展開させるための装甲。なおナノマテリアルにより構成されているため、並の兵装では装甲を抜くことはできない。
■■■■:軍機
■■■■■■■■■■:軍機
メンタルモデル:G−21クアッドコア×1
攻撃装備:超重力ユニット×24→重力子エンジンより生み出される重力子を発射するための発射ユニット。
ちなみに理論は宇宙戦艦ヤマト2199における波動砲とほぼ同じ原理だと思われる。
なお片舷に12門配置されているため馬鹿みたいな超重力砲の弾幕が飛んでくる。
610mm魚雷発射管×24基(侵食魚雷装填可)
対空レーザーシステム
VLS84セル
■■■:軍機
パッシブデコイシステム
アクティブステルスシステム
特殊航行性能:空間歪曲型超光速航行装置→6時間に一回400光年の移動が可能