私と我と俺のお仕事。   作:CoCoチキ

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十六話 ありえたかもしれない自分

「むふ〜昨日は癒されたな〜」

(俺はいつ暴走するかヒヤヒヤしたよ)

 

 それじゃあ今日のアブノマを……

 

(どうした?)

「これって既存こやつなのかな?なんか『T–01–j12』って書いてるんだけど」

(オーケー変われ)

 

 なんだかトラリン積極的になったよね。

 

「前みたいにお前自身が倒れられるのは避けたいからな、jがつくアブノーマリティなんて一体もいなかったよ」

(つまり、新種!まだ見ぬ可愛いに出会えるチャンス!)

 

 俺は時々こいつのポジティブが羨ましく思う時がある。なぜこうも前向きなのか。

 

 収容室に向かいながら俺はそんなことを思っていた。

 

「さて、今日のは、子供か?」

 

 子供かぁ、ヤバいな、もしかしたらこいつはかなり危険かもしれんな、俺の管理人としての勘がそう言っている。

 

 収容室内には部屋の角で三角座りで蹲っている子供のような実態がいた。

 そいつは俺が中に入り込んでも特に反応もせず。啜り泣く声だけが聞こえてくる。

 

「……」

『くれぐれもアブノーマリティに情を抱かないように。言っても遅いかもしれませんが』

 

 まぁ、昨日のあいつの暴走っぷりを見てたらな。

(そこまで酷くないよ!)

 いや、お前なにも知らない赤の他人が見たらペットにおっさんを小突かせて笑顔を浮かべてるヤベェ奴にしか見えなかったからな?

(ウソだ!)

 

 後ろでギャーギャー騒いでるバカを無視して俺は作業に取り掛かる。環境改善が必要には見えないくらいに、収容室は綺麗だった。

 収容したばかりなのだからそれも当然なのだが、啜り泣く声が聞こえる以外には何も変化がないから、どう作業すればいいのか困る。

 

『ゼロ!その子に対して愛着作業一択で!お願いします!』

 

 またイェソドからの連絡かと思えばまさかのマル先輩からの指示であった。

 この人は情報部門なにをしているんだ。

 

「マル先輩!?なんで情報チームの無線機から話してるんです?」

『子供が泣いていると聞いて飛んできました!』

「どこ情報ですそれ!?」

『マルクト!マイクを返しなさい!』

 

 あ、切れた………部門が違うとはいえマル先輩も上司だからな、大人しく言うこと聞いておくか。

 

 俺は愛着作業をやるために、アブノーマリティに近づくが、どうすれば良いのか分からなかった。

 子供の相手など生まれてこのかたやったこともなく唯一の経験はレリックが子供のころに会話をした程度だ、生身ではどう接すればいいのか分からなかった。

 

(そういう時は撫でてあげるんだよ!)

「な、撫でる?こうでいいのか?」

 

 俺は言われた通り、子供の頃に撫でられた時のように出来るだけ優しく撫でる。

 

「…ヒグッ……グス」

 

 啜り泣く泣く声が少しだけ落ち着いた気がする。

 

「……」

 

 どうやら完全に泣き止んだようだ。

 

 レリックには感謝しないとな、俺だったらどうすれば良いのか分からなかったよ。

(良いってことよ!昨日は小鳥さんと散々戯れたからね!)

 

「…さて、と」

「…!」

 

 俺が顔を向けると、そいつは怯えたように震える。

 

「別に、お前をどうしようって気はねえよ。なんで泣いてんのか聞きたいだけだ」

「ほ、本当に?」

 

 潤んだ瞳は良心に訴えかけるような感覚で、まるで俺が虐めて泣かせてるような罪悪感に襲われる。それもこのアブノーマリティの能力なんだろけど。

 

「ほんとほんと、ほら、お兄さん…ではないか。お姉さんに教えてごらん?」

 

 

 子供は少しだけ落ち着いた様子で、ポツリと呟く。

 

「…寂しい」

「………え?」

「とっても、寂しいんだ」

 

 俺はその言葉に聞き覚えがあった。

 

「お母さんや…お父さんも僕を一人するんだ」

 

 俺はその表情に覚えがあった。

 

「友達もいない」

【おい?どうした!】

 

 こいつは

 

「僕は…ひとりぼっちなんだ」

 

 

 

 ーーー昔の俺だ

 

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