私と我と俺のお仕事。   作:CoCoチキ

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百五十九話 失った未来、失わない未来

 

 【 アビス視点 】

 

 なんだ……なんだその理由は!!ふざけておるのか!?トラベラーを置いて死んだだと!?

 

 「あ、アビスン落ち着いて」

 「もしも向こうの我が居たらそいつ殴り飛ばしてくれる!ふざけおって!」

 「こ、こっちの世界のことだから怒らないで」

 

 心配なのは分かる。だがなぜトラベラーを置いていった!孤独を嫌う此奴のことを!

 

 「正気の沙汰じゃない!」

 「気持ちは分かるけど落ち着いて!ここで怒っても仕方ないじゃない!」

 

 このトラベラーは我らのトラベラーと違い痩せている。見ただけで分かる、碌に食事が出来ておらんと言うことが。腹立たしい!実に腹立たしい!

 

 「ウガーーーーー!!!」

 「うわぁ!アビスンが怪獣みたいになった!?」

 

 我のこの怒りはどこへぶつければ良いのだぁ!

 

 「でも、良かった」

 「何がだ!」

 「もう会えないと思ってた、みんなに会えたから」

 

 ……それを言われたもう、何も言えんではないか。置いて行かれた当人が、怒らぬのと言うのに我が怒るほど不毛なことはない。

 

 「ほんの少しだけで良い…俺と一緒に居て欲しい。それ以外は望まないから、お願い」

 「分かった、だが少しと言わずもっと長く一緒に居てやろう。鏡を使えば貴様はいつでもこの世界に来ることが出来るのだから」

 

 せめて此奴の孤独を、癒せるように。

 

 「ありがとう、でも、こっちの俺に悪いよ。それに依存してしまいそうだ」

 「…紅茶、飲む?」

 「誰か知らないけど…ありがとう、紅茶好きなんだ」

 

 静かに紅茶を飲む姿は、今にも消えてしまいそうで。心配になる、可哀想なほどに弱っていて、もしこの世界に連れてくることが出来るならと考えてしまう。

 

 「…紅茶、ご馳走様…もう帰るよ」

 「え!早くない?もうちょっとゆっくりしていきなよ!」

 「ううん、帰らないと…ここの居たらもっとここに居たくなる」

 

 どれだけ言おうと、此奴は帰るのだろうな…人の為に命を捨てるようなやつだ。例え心が壊れても、此奴は人の為に生きるのであろう。

 

 「たまにで良い、この世界に遊びに来るのだぞ」

 「……分かった」

 

 向こうのトラベラーを見送り、再び鏡の割れる音が聞こえると、そこにはいつものあやつが立っていた。

 

 「ただいま〜」

 「トラリンお帰り!」

 

 いつもと変わらぬ様子に見えるが。少し疲れているように見えるのでトラベラーを抱き抱える。

 

 「あ、アビス?何してんの?」

 「…疲れたろう?少し休め」

 「あ〜やっぱりそう見える?…だよね」

 

 腕の中でトラベラーが力を抜いて項垂れる。向こうの世界で相当参っているようだ。

 

 「…お前らは俺のこと、置いていったりしないよね?……俺を一人にしないよね?」

 「あぁ、貴様が嫌と言っても一緒に居てやる」

 「そっか…そっかぁ」

 

 −−−帰ってきたらトラベラーも、精神的に弱りきっていた

 

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