私と我と俺のお仕事。   作:CoCoチキ

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百六十四話 伝説の獣

 

 「貴方も彼女の魅力が分かるのね。でも彼女は私のモノだからあげないわ」

 「管理人が優しいから好きだよ〜美味しいご飯いっぱいくれるしいっぱい遊んでくれるから!」

 −ワカル~

 

 俺は何もないことポチを引き剥がして床にそっと下ろすと抱きつこうとしてきた。が、溶ける愛が止めて恋バナ?を始めた。いや、溶ける愛に関してはあれ牽制か?ポチは分かってなさそうだけど。

 

 「なんだかポチがいつもより大人しいねぇ。話の合うアブノーマリティが一緒にいるからか?いや、そもそもアブノーマリティを収容室の外に出して良いのかい?」

 

 ルビーが言うことは当たり前のことなんだけど。うちの支部はアブノマとほぼ共存状態になってるから何も問題ないんだよな。怒らせなければ。

 

 「あ、指示が入った」

 

 こっちではアン先輩ではなく管理人の指示を聞いてアブノマの世話をするらしんだけど…その管理人本人がすぐ隣にいる状態でタブレットに指示を出すのか。直接声をかけた方が早くない?

 

 収容室に向かいながらそんな疑問が浮かぶ。

 

 収容室に入ると、身体が石になったみたいに固まった。

 

 「おやおや、随分と目が多くあるんだねぇ、小娘」

 「…から…だ…うご…かん」

 「それはそうだろうさ、直接ではないとはいえ私の眼を見たんだ。動きも鈍くなるさ」

 

 えぇ、何それ俺こいつの鎮圧する時不利ってことじゃん。

 

 「あ、ちょっとマシになった」

 「…へぇ?随分と愛されてるようだね」

 「えっと、あんたはバジリスクで良いんだよな?」

 「あぁ、親しみを込めてバジちゃんと呼んでくれても良いんだよ」

 

 いや、急にお茶目になられても。

 

 尻尾でハートを作りながらそう言ったバジリスクに思わずガックシと来る。

 

 「まず、その血の臭いをなんとかしてくれるか?明らかに人間ヤりましたって感じの臭いをプンプ醸し出しながら言われても全くフレンドリーになれないんだわ」

 「ここでは水浴びが出来ないからね。しょうがないさ」

 

 そう、この収容室に入った時から血の臭いが充満していて石化してなかったらちょっと鼻を摘んでたくらいだ。

 

 幸いにも精神面に関しては『規制済み』のお陰で鍛えられてるからなんとも思わない。

 

 「しかし…分からないねぇ」

 「分からないって、何が?」

 

 俺が聞き返すとバジリスクは俺の身体にその大きな身体を巻きつけて大鳥と同じ黄色の瞳で覗き込んできた。

 

 「あぁ…小娘、いま私が蛇眼を使っていたらお前は死んでいたよ……それなのにまるで当たり前のように目を合わせるんだね」

 「質問の答えになってない」

 

 殺気が無かったから何もしなかった、もしこいつが何かするつもりだったらノータイムでやってきたろうし。

 

 「…人はなぜ自分と違うと言うだけで怖がるのだろうね?拒絶するのだろうね?理解できないよ」

 「……お前がさっきから言ってる理解が出来ないからだろ。理解出来ないから怖いと思うし関わりたくもないと思うのが常識だ」

 

 俺も昔はどう接すれば良いのか分からないから、あいつ以外の友達は出来なかった。

 

 「……なら、分からないなら産まれたばかりの罪のない生き物をどう扱おうが良いとでも?」

 「え?なんの話をしてるんだ?」

 

 バジリスクの怒気が強くなった気がする。心なしか締め付ける力も強くなってるような。いやこれ強くなってるわ。すっごいギュウギュウ締め付けてくるわ。

 

 「私はこの施設で産まれたただ一匹の蛇でしかなかった。それが今ではどうだ?見ただけで人を殺すことができる怪物に成り果ててしまった。奴ら人間が産み出しておきながら、実験動物のように扱い、用済みになればこのような檻の中へと入れ閉じ込める。さて…理解できないからと言っていた化け物を生み出した人間とどちらが罪深いんだろうねぇ?」

 

 頭を更に近づけて覗き込む瞳の奥からは人間に対する怒りと憎しみが刺すように注ぎ込まれていた。

 

 「……俺の主観で良いのなら答えれるけど。どうする?」

 「…聞かせておくれ」

 

 これを聞いているだろう管理人には悪いけど、管理職としての仕事だと思って聞いてもらう。

 

 「その人間に責任があると俺は思ってる」

 「それはなぜ?」

 

 間髪入れず問いかけてきたバジリスクに目を合わせてしっかりと言う。

 

 「まず、実験動物として扱ったのなら元はお前は飼われてた蛇だったと言うこと、何がどうしてアブノマになったのかは分からないけど。お前をそうしたのならその責任を取るべきだ…そいつらは恨まれてもしょうがないことをやった」

 

 これ、間違いなくここの職員たちを全員敵に回すような発言だよな。自覚はしてる。

 

 「私の味方をしてくれるのかい?」

 「そうなるのかな?…でも俺だって人間の中に大切な人たちがいるから全部を肯定してるわけじゃない」

 

 さっきとは打って変わって穏やかになり、巻きつけた身体を解いてくれた。

 

 「それでも良いさ…この苦しみをほんの少しだけでも理解してくれる人がいるのならね」

 

 満足そうにシュルシュルと鳴くバジリスク。

 

 −−−もしかしたらこいつは理解してくれる人が欲しかったのかもしれない

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