「お前!さっきのはどう言う意味だ!あの化け物の肩を持つのか!?」
ジェイコブが俺の胸ぐらを掴んでそう怒鳴りつけてくる。
「おい!ジェイコブ!」
「ルビー姐さんは黙ってくれ!こいつはよりにもよって仲間たちを大勢殺したあいつの肩を持ったんだぞ!」
俺のことを睨みつけながらジェイコブはルビーを黙らせるが。俺のことを掴んでる手をエヴァンジェリンが掴んで捻り上げた。
「…管理人に手を出すな。ジェイコブ」
「エヴァンジェリン!お前もこの女と同じ意見なのか!?」
「そうじゃないジェイコブ、管理人はこっちの事情なんて知らないし、俺たちだって向こうの事情は知らないだろ?まずは落ち着いて話し合うんだ!」
パニック職員を鎮めていただけあってエヴァンジェリンは冷静に仲裁しようとしていた。
「話し合うだって!?こいつと!?断るね!管理人!今すぐこいつをクビにさせろ!こんな危険人物残してるだけで害を被るぞ!」
「……彼女は本部ではなく支部の職員だ。私に彼女をどうこうする権利ない」
「そうかよ!お前はいつもそうだよな!管理人室から出てきたと思えば余計なことしかしやがらねぇ!しかも一人安全圏から命令するだけだから俺らの気持ちなんて分かるはずもないんだ」
ジェイコブの言葉に少しだけ心が痛む。俺も…管理人だったから。今だからこそ分かる。あの立場のプレッシャー、指先一つの命令で職員たちの命が失われていくという恐怖、今は無くなったけどあの時は毎日が同じ悪夢だった。
「……私には返す言葉もない、最善は尽くす」
「最善は尽くす!はぁ〜またその言葉だ!もう聞き飽きたんだよ!」
きっとジェイコブは何度も何度も仲間の死を見てきたんだろうな。でも、それでも。
「…お前の方こそ分かりきったような口を聞くな。何も知らない癖に」
「……んだと?」
「お前は良いよな?そうやって誰かのせいにすれば何も考えなくて済むもんな!」
俺は我慢が出来なくなりつい口を出してしまった。俺がもし本当にただの職員だったならジェイコブと同じ意見をしてたと思う。けど、それでも俺は管理人なんだ!
「今度は管理人の肩を持つのか、ふん!どっちつかずの八方美人か!」
今度は逆に俺がジェイコブの胸ぐらを掴む。
「そう思いたければ勝手にしてろ!管理人の業務のプレッシャーを知りもしない癖にぐだぐだと文句言いやがって!余計なことしかしない?管理人は管理人なりに自分に出来ることをしようと努力してんだろうが!お前は知ってるのかよ!指先一つで死んでいくあの恐怖と絶望を!俺のせいで死んでしまったという罪悪感を!」
視界が歪む。呼吸が荒くなる。
俺はあの時みんなに救ってもらった。でもそれじゃあここの管理人は誰に救ってもらうんだ?
「じゃあお前は分かんのかよ!いま言ったことの全部を!ムカつくんだよ“人殺し”の癖に被害者面しやがってよ!」
−−−バキ!
そう言い終わった瞬間にジェイコブがルビーに殴り飛ばされていた。彼女の表情は俺の方からはまるで分からなかったけど。怒っていると言うことは分かる。
「クッソ!ルビー姐さん!何すんだよ!」
「黙りな!お前は一度頭を冷やしてから出直してきな!女を泣かせて恥ずかしくないのかい!」
泣かせて?誰を?
「ごめんな?ほら、ハンカチで顔拭きな?可愛い顔が台無しだよ」
申し訳なさそうにルビーが俺にハンカチを差し出してくる。思わず目元に手を当てると濡れていた。どうやら泣いていたのは俺のようだ。
「…と、トラリン」
気が付いたら俺はチームの仲間に囲まれてた。レリックは手を忙しなく動かして慌てて、アビスは黙ったまま何も言わないけど、何かを言いたげにしていた。ジョシュアとアセラも黙ったままだったけど問いただす気はないみたいだ。
「……ごめん、言い訳にもならないけど。我慢できなくて」
俺は俯いて目を閉じる。目を合わせられないから、この時だけ視界の広いこの目を恨みがましく思う。
「分かってる。分かってるよ後輩の気持ちは、それにジェイコブっつったけか?今回に関してはあいつが悪い」
ぽんぽんと頭を撫でるジョシュアが目を鋭くさせてジェイコブを睨みつける。
「俺もここに来る前はフィクサーをやってたんだ。そして別の事務所と合同で依頼をすることがあってその時に偶々あいつを見つけた。この意味が分かるか?」
フィクサーの仕事のことはあまり詳しくないから首を横に振る。
「フィクサーってのは何でもやる便利屋みたいなもんなんだ。事務所によって分野は異なるけど、その中には人殺しも入ってる」
「…え?」
そう言えば、レリックも大きくなるにつれてフィクサーの仕事について何も言わなくなっていった、あれは自分の両親が人殺しをしてるのを教えたくなかったから?あの時の俺が何か警察みたいなことをしてるって思ってたから。
「俺たちフィクサーは誰しもが一人は殺しをしてる。だから俺たちには人殺しなんて罵る資格なんて端っからないんだ」
−−−ジョシュアの顔は俺には知られたくないという表情は見え隠れしていた。
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