あぁ、またか、また私は移されたのか。ただそこに在っただけだと言うのに、私はその花を枯らさなければならない。なぜだ?ただ美しき咲きたいと願うのはダメなのであろうか?ここでもやはり、私は花を付けることは出来ないのだろう。なぜなら私の花は望まれていないから。
昔は私の花を咲かせ人々を楽しませていたはずだ。美しく咲いて欲しいと願われたはずだ。それなのに私は望まれない。暗い場所へと移され、水もなければ根を張るための土もない。それならばいっそ、お前たちの血液を私の養分にしてしまおう。お前たちが望んだのだ!私に咲けと!それなのにお前たちは私を拒絶した!許すまじ、許すまじ、さぁ、来い、私を見にくるが良い。拒絶したことを後悔すりほどに美しく、残酷に咲き誇って見せよう。水がなければ血を吸い尽くし。土がなければそれ以外に根を張り!そうして私は満開の花を付けるのだ!
お前たちは言ったな?桜の下には何があるかと……その答えが知りたければ私の下まで来るがいい。その答えは″ここ″にあるぞ?
−−−これは私が身勝手なお前たちにくれてやる送り花だ。私の下で終わりのない眠りに付くがいい。
数えることすら億劫になり、私は揺さぶられるがまま新しい地へと根を張る。今度は地面は鋼鉄で出来ているがそんなことは関係ない。ここでも私は糧を得るだけだ。
−−−そのはずだった。
久しく感じなかった根に染み渡る水が。一人女性によって与えられた。
その女性は私に花を付けろと、美しく咲けと言った。私は再び望まれた。しかし、この恨みを忘れられるはずもない。私はその言葉に従うわけではないが、花をつける。女性はまたすぐ私の下に来て驚いていたが、それは好意的だった。ただ純粋に楽しみにしている。
その後も私の下へ来ては水をやり、地面に散らばる花弁を片付けていく。
女性の側には亡霊が存在していた。その亡霊は私の本性に気付いて女性へと忠告しようとするがその尽くが失敗に終わっている。思わず枝を揺らし笑ってしまった。
……私はまた望まれた。人々にではなく、風変わりの一人の女性に滑稽なものだ。私は恨み糧にしようとしていたはずなのに、ただ望まれた。それだけで私の心の内に在るモヤが薄れゆくのだから単純だ。
ならば私は私のことを望んだただ一人の彼女の為にこの花を咲かせよう。彼女が死する時、その亡骸をその姿のまま私の下に埋めよう。其方が息絶えるその時まで私は其方の為だけに満開の桜の花を纏おう。
−−−この簪は私からの契りだ。どうか、そのままの純粋な其方のままで居られるように願いを込めて
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