私と我と俺のお仕事。   作:CoCoチキ

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五話 幻の名店(2)

「ここは特異点か何かか?」

「店主曰く色々と試行錯誤した結果こうなったと言ってましたよ。その色々が謎なんですが」

 

 ーーー車のドアを開けるなり、リムが店へと「お菓子ぃいい!」と言いながら突撃していった。

 あ、でもその扉って「へぶ!?」………自動扉じゃなかったっけ?

 

 ーーー彼女が扉が開ききる前に突撃したため思いっきり顔を扉に打ち付けていた。

 ーーー心配になった俺はとりあえず彼女に声を掛けることにした。

 

「あ〜…大丈夫ですか?」

「お、お菓子ぃ」

 

 ーーー完全に目を回してやがる。どんだけ欲しかったんだよ。

 

「なんだい?新しいお客様かい?ここは自動扉だからそんなに急がなくてもいいよ?」

「あ、店主の奥さんじゃないですか、今日は会社の先輩方を連れてきました!」

 

 ーーー扉が開くとこの店の店主の奥さんが出迎えてくれた。

 ーーー奥さんは俺と俺の後ろにいる先輩たちを見て営業スマイルで迎えてくれた。

 

「ああ!いらっしゃい!ここではお菓子だけじゃなく料理も提供してるから気に入ったのならまた来ておくれ!…ところでそこのお嬢ちゃんは大丈夫かい?多分だけどさっきぶつかったのってその子だろう?」

 

 ーーーうわ言のように「お菓子ぃ」と呟く彼女を見ながらそう奥さんはいうがこれは自業自得のような気がする。いまも目を回している彼女をにるとどうにも先輩には見えない。偏見かもしれんけど。

 

「お菓子!」

「うわ!?いきなり起き上がるなよ!?」

 

 ーーー奥から漂ってくる甘い香りで目が覚めたのか。飛び上がって顎と頭が衝突するところだった。そんなアニメみたいな展開は御免被る。

 

「さあ!さあ!買いに行きましょう新人くん!」

 

 ーーーそれよりも後の二人ついて教えて欲しいんだけど。とは思ったものの漂ってくる甘い誘惑に逆らえず、そのまま店の中に入って行った。

 

 ーーーー

 

「お、おぉおおお!!」

「いつみても凄い量のお菓子だな〜あんなに美味しいのになんで人が来ないのか不思議だ」

 

 店内には様々種類のお菓子がショーケースに入っていて、見るものを魅了した。

 

「うちの旦那の趣味でこんなとこに店を建てなかったらもっと来てくれてたんだろうけどねぇ、ま、それでも来てくれるだけ嬉しいってもんさ!」

 

 ただ、この量のお菓子って全部が店主さん一人で作られてるんだよね。店主さんはどうやって作ってるんだろ?

 

「い、イチゴのタルトもある!私かすればここはお菓子の宝物庫!」

「蕎麦はあるのだろうか?いや、流石に甘味処には、あれは!」

「あ!アン先輩こっちに凄く大きなケーキがありますよ!」

「ん?おお、これは食べるのに苦労しそうだな」

 

 ーーー先輩たちは全員がバラバラに散らばって自分の欲しい商品を探していた。

 ーーーじゃあ、明日はお前の分だから、お前が選べよ。

 ーーー感謝する。

 

「ふふふ、明日はどの菓子にしようか悩むな」

 

 ーーーそうだな、饅頭が食べられなかったので饅頭というのも、いやいや、保存を効かせることも出来るしパフェというのも良いな、だがモンブランも捨て難いな。

 

「ふ〜む、悩むな」

 

 ーーーそう悩んでいると横からロールケーキのような物を差し出されていた。

 

「それではこちらなんて如何でしょうか?こちら、東の国から取り寄せた茶葉を使ったケーキでございます」

「店主!厨房の方はよいのか?」

「娘が居りますゆえ、あの子は手際が良い、私の教えたことをスポンジように吸収しますよ」

 

 ーーーこの家族はどこか人外っぽい動きをするからな、店主が大丈夫っていうんだから、大丈夫なんじゃね?

 ーーーそういうものか?

 

「しかし、貴様がこうやって我にケーキを勧めるということは、新作か?」

 

 ーーーヒソヒソと問いかける我と同じような声量で囁く店主

 

「新作でございます」

「買った!」

 

 ーーーここの店主は本当に気前が良い!新作などといった物は他の菓子よりも安く売ってくれるし、腕前も実に素晴らしいものだ!

 

「お買い上げありがとうございます。今後とも当店をご贔屓に」

 

 ーーー他の者も買い物を済ませたのか、ホクホク顔とやらで店を出る。

 ーーーこれならば、車の前で待機される心配の無かろう。これからは己で買うだろう。

 

 ーーー満足したような、ウットリとしているような表情で小娘が呟く。

 

「は〜まさかこんなところに幻のお店があるなんて」

 

 ーーー幻などと何度も言っているが。現に存在してる時点で幻などではないであろう、とは思ったがこれはツッコミせざるを得ない。

 

「幻とは些か言い過ぎであろう」

「ん?もう一つ口調があったのか?」

 

 ーーーあ、我としたことが浮かれてしまった。

 ((バカヤロウ!!))

 ーーーんな!?バカとはなんだ!

 

 脳内でワチャワチャと揉めていると、アン先輩にマル先輩がヒソヒソと耳打ちしているのが私の方から見えて、なにか真剣な表情をしながら、私の肩を両手で掴むと、声を掛けてきた。

 

「ゼロ」

「…な、なんであろうか?支配人」

 

 ーーーバレたのでは?と内心焦っていると支配人は生温かい笑みを浮かべ。

 

「私は仕事させ出来れば貴様の性格は気にしないぞ?」

 

 ………………

 

 (((優しさが痛い!)))

 

 ーーーこれは我も分かった気がするぞ。なんなのだこの生温かい視線は!絶妙に居心地が悪い!

 分かるでしょ!?っていうか初日であんたらやらかしすぎでしょ!マトモなのは私だけか!

 ((お前にだけは言われたくない!))

 

 ーーーなにおう!

 ーーーなんだよ!

 ーーー我と一戦交える覚悟はあるか!

 

 そうして脳内でしばらく睨み合って。一つの答えに辿り着く。

 

 ま、ロールケーキあるしいっか!

 ((意義なし))

 

 さて、脳内ワチャワチャが落ち着いたところで、どこまで車に乗せとけばいいのかな?

 ーーーそういや、誰も車から降りないな?いやでも、途中で降りるかもしれないぞ。流石に家までってことはないだろうし。

 

 またもや自分同士で悩んでいるとアン先輩が怪訝そうな顔をして話し掛けてきた。

 

「さっきから何を一人で百面相をしている」

「い、いえ、なんでもないです」

 

 私の家のルートにで走ってるけど。どうして誰も何も言わないんだろう。なんでか誰も降りようとしないし、それどころかこのまま家に着きそうなんですけど!?もしかしてこのまま職員でのお泊まり、もとい親睦会が!?

 

「ここで止めてくれ」

「え?……ここですか?」

 

 ここには確か道が広がってる公園ような所しか無かったはずだけど。先輩たちも次々と降りていった。

 

「????」

「あの、先輩たちも降りるんですか?」

「ああ、実はここの近くに俺たち社員のアパートがあるんだ。ここはその近道なんだ。まさか帰り道まで同じ方向とは俺も思わなかったが」

 

 社員の共同アパート……え?つまりみんな同じアパートとに住んでるってことなの?他の職員さんも同じところで?え、もしかして家暮らしなのって私だけ、いや、まさかね。

 

「お、お疲れ様でした」

「?…お疲れ、明日は新しいアブノーマリティの受け入れだからゆっくりと身体を休めるといい」

 

 そのまま先輩たちとお別れした私は玄関の鍵を開けて、お菓子を保存ポケット収納してから椅子に座って目を閉じた。

 次に目を開けた時にはもう一人の私と赤い瞳を持った女性がぼんやりと目の前に居た。

 

(今日なんか……濃い一日だったな?)

「そうだねぇ、人前だとこうやって顔を合わせすら出来ないし」

【そも、このように己と話すことないど普通は出来ぬからな?】

 

 いつからだろう。私に中にもう一人がいるって気付いたのは…お陰で寂しい思いをしなくて済んだのは良かったけど。時々、この人たちは夢の中の人で私はいまも夢を見てるんじゃ?なんて考えることがある。

 

(明日はどんなアブノーマリティが来るんだろうな?)

「う〜ん、私としてはマッチガール!」

【我はそうだな、宇宙の欠片だろうか?】

(どっちもTETHだろが、もうちょっと安全なZAYINとかはないのかよ)

 

 ここで改めて復習なんだけどTETHっていうのはアブノーマリティの危険ランクのことを示しているもので少しだけ危険なのがTETHで一番安全なのがZAYIN…だったけ?他にも教えられてた気がするけど覚えてないや。

 

【とにかく!念を押すようだが明日は我が食べる番だからな!ゆめゆめ忘れるでないぞ!】

「(分かってるって」)

 

 ーーーどれだけ念を押すんだよ。昔はこんなもの興味ないですけど?みたいな顔してたのにすっかり菓子にハマっちゃって、やっぱこいつ女性ってことだな…あれ?俺ってば凄く場違いじゃない?…今更か!

 

 この状態だと俺が何を考えてるのかわからないな〜まぁ、どうでもいいことだと思うけど。

 

(明日も早いしもう寝るか)

「【さんせ〜い】」

 

 自分会議みたいなのを終わらせて、私は布団に入り良い夢が見られますようにとお願いしながら眠りに就いた。完全に寝入る前に誰かに頭を撫でられたような気がしたけど。ここには私たちしかいないし。

 ーーーきっと気のせいだろう。

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