伏黒兄の呪術奇譚   作:ノワールキャット

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第十話 同級生

「さぁーて!今日から皆、呪術高専に入学して初授業な訳だけど...この殺伐とした空気は何かな?」

 

五条の問いに答える者は誰もいない。今、五条の目の前にはバチバチと火花を散らす生徒2人を見ていた。片方は伏黒黎斗(ふしぐろくろと)。癖っ毛一つない真っ直ぐな黒髪を伸ばした端正な顔立ちをした黒目の少年。もう一人は口元の髭の剃り残しと切れ目の入れた眉毛が特徴的な強面な男秤金次(はかりきんじ)

 

あと1人、我関せずを貫き口元にピアスをしたギャル風のファッションをした女性ではなく男星綺羅羅(ほしきらら)

 

お互いを睨み付けたまま一歩も引かない黎斗と金次。これでは埒が開かないと感じた五条は割って入った。

 

「はいはい、そこまで。入学初日にそんなバチバチしなーいの」

 

「...はぁ」

 

黎斗はその言葉を聞いて椅子に座り直すと金次を一瞥し、ため息を吐いた。

 

「テメェ!」

 

金次は黎斗の態度が頭に来たのか額に青筋を浮かべている。

 

「秤、そこまでにしな。黎斗もそんな態度しないの」

 

「「ちっ」」

 

(うわ〜、まるで昔の僕を見てるみたい)

 

五条はまるで自分の昔を見ているようだった。今でもクズだの人格破綻者だと言われる五条だが昔と比べたら相当丸くなったと思っている。昔の五条は初対面の人間に煽り散らかし、雑魚だと罵っていた。そして、気に食わないことがあれば、すぐに問題を起こし、すぐ同級生と喧嘩した。当時担任だった夜蛾学長に多大な迷惑を掛けていた。

 

「ふぅー。...よし!まずは自己紹介といこうか!僕はGLG(グットルッキングガイ)五条悟(ごじょうさとる)先生だよー」

 

五条は普段通り、明るいテンションを振る舞い自己紹介をした。

 

「はいじゃあーそこのピアスの君から順番に自己紹介していこうか!」

 

五条は廊下側に居たピアスを付けた男を指差した。

 

「...星綺羅羅でーす。女ぽい格好してるけど一応男でーす」

 

「はい次!」

 

「...秤金次だ。嫌いな奴は熱がねぇつまんねぇ奴だ」

 

「はい最後!」

 

「...伏黒黎斗。博打に価値を見出す人間をクズだと思っている。以上だ」

 

「はい!こんなにも仲の悪いクラス、僕初めて受け持ったよ。てなわけで〜君達!一回グラウンドにしゅーごーう!」

 

「「「はぁー?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五条と黎斗、秤、綺羅羅は高専のグラウンドに居た。五条の意図が汲めない3人は首を傾けた。

 

「黎斗と秤が何でそんなにお互いが気に食わないのか知らないけど、今日から一緒に学ぶ同級生だから僕としては仲良くして欲しいんだよね。それに呪術師と言う特殊な職業の中、交友関係は大事だからね。だから、黎斗と秤は一回本気で喧嘩しなよ。術式も使っていいガチの喧嘩。もちろん、相手を殺すのは無しだからね」

 

これは五条の経験から来ている。仲が悪かった同級生とも一度本気で喧嘩してからお互いのことを知り、仲を深めたからだ。喧嘩も一種のコミュニュケーション方法の一つで喧嘩は一番、自分を曝け出せる手段だと五条は確信していた。

 

「丁度いいな。俺はお前のことが気に食わなかった所だ。ここでボコしてやるよ」

 

「それはこちらのセリフだ。俺の考えがどれだけ大切か...身をもって教えてやる」

 

黎斗と金次...お互いが気に食わなかった理由は意見の食い違いである。黎斗は出来るだけ面倒ごと無く安定な生活を理想とし、金次は人生を大きく変えるには熱が必要でその熱をダイレクトに伝えるのが博打(ギャンブル)であるとのこと。お互いの意見は見事に真逆である。

 

「綺羅羅は僕の近くに居てね。2人は今まで僕が受け持ってきた生徒の中で一番だと思うから」

 

黎斗と秤は互いに一定の距離を取り、臨戦態勢に入る。

 

「じゃあ、僕の合図で始めてね。よーい...始め!」

 

─────ドゴーン!

 

お互いの拳がぶつかり合い、衝撃波が起きる。影から短剣を生成し、斬り掛かる黎斗。

 

初撃は互角、二撃目を手の甲で受け止める秤。そのまま押し上げ、空いた腕で黎斗の胴体を殴り付け、黎斗は咄嗟に影を固め防ぐ。

 

─────ガラッ!

 

「!?」

 

(俺の影が崩れた!どう言うことだ?それにコイツの呪力!何か違和感がある)

 

短剣を投擲し、形を崩して解除する。崩れた影で目眩しをし、頭上に跳び上がる。足を上げ、秤の脳天を狙った踵落とし。

 

手と首に呪力を集中させ、黎斗の攻撃を受け止める。

 

「勘がいいな」

 

「お前も淀みない呪力操作じゃねぇか」

 

(さっきから感じていた違和感...コイツの呪力...ざらついてないか?)

 

呪力特性や術式効果は単純な呪力強化では防ぐことは難しく、黎斗が咄嗟に生成した影で防ぐことは出来なかった。ただでさえ急ぎで作った武器なのだ...配列や呪力の流れが悪いことも相俟って最も簡単に破壊されたのだ。

 

「気付いたか。俺の呪力は他の奴らよりざらついてんだとよ。だから、俺の拳は誰よりも痛いぜ!」

 

─────ドゴッ!

 

(まるで鑢だな!じわじわと殴られたところが痛む!殺害は無しだから影に術式効果を上乗せさせることは出来ない!式神も破壊されては元も子もない!使い所が重要だ!)

 

「【脱兎(だっと)】」

 

兎が大量に生み出され秤を包む。視界を全て兎で埋め尽くされ、黎斗を見失う。呪力で黎斗を追おうとするも、黎斗の呪力で構成された脱兎がそれを阻む。

 

(撹乱は単純だが戦闘での基本戦術だ。見失った所を死角から穿つ!)

 

一方秤は脱兎に囲まれた中で右手を上に左手を下に...右手の人差し指と親指で円を作り、掌印を結んだ。

 

「【領域展開(りょういきてんかい)】」

 

「!」

 

(何だ!呪力が凪ぎ始めた!)

 

「【坐殺博徒(ざさつばくと)】」

 

脱兎、黎斗を含め、領域に閉じ込められる。改札機で埋め尽くされた領域で黎斗は【簡易領域(かんいりょういき)】を展開するよりも早く、秤の領域のルールが頭に流れ込んで来た。

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