伏黒兄の呪術奇譚   作:ノワールキャット

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第十一話 博打と影

領域展開...莫大な呪力を消費する代わりに自身の生得領域を結界を介して展開する呪術の極致。展開した領域は術者のホームグラウンドの為、術式の精度、能力及び術式の発動速度も上昇する。領域内での術式に基づいた攻撃は絶対必中であり、防ぐ方法はシン・陰流(かげりゅう)簡易領域(かんいりょういき)か自身も領域を展開することである。

 

しかしそれは秤の領域には無意味である。

 

「【領域展開(りょういきてんかい)()坐殺博徒(ざさつばくと)】」

 

(これがこの領域内でのルール!)

 

秤金次の領域展開の必中効果は領域内でのルールを相手に開示し、強制的に理解させる無害な物である。その為、領域の押し合いに強く、術式の発動が速い。

 

「どんだけ博打(ギャンブル)が好きなんだよ!」

 

「面白みのない人生なんて俺は嫌なんでね」

 

パチンコ代をモデルにした領域が展開される。秤の領域は攻撃が予告演出となり、1/239の確率で大当たりを引く、ゲームのような領域だった。

 

(呪いがニューテクと絡むことは聞いたことはある。呪いが絡むと言うことは術者...術式にも絡む可能性があるのは必然と言うべきだろう。だが...パチンコの術式なんて術式は聞いたことがない。運絡みの術式の上に大当たりを引かなければ本領を発揮出来ない...忍耐強さが勝負の鍵)

 

「いいぜ、忍耐強さなら俺も負けねぇよ」

 

─────バッ!

 

(速い!)

 

─────ガチン!

 

(シャッター!)

 

影で刀を生成した黎斗は飛び掛かり、秤に斬り掛かる。黎斗の速さに驚いた秤だが予告演出である緑色のシャッターを出現させ、斬撃を防ぐ。

 

「リーチだ」

 

登場人物である山口夕輝が2枚揃い、そして流れ出る映像。

 

『遅刻遅刻〜!』

 

(期待度の低いICカードリーチか)

 

─────ビッ

 

手刀を食らわせようと振るうが、通り抜けて終わる。

 

「妨害は無意味か...」

 

(無事に改札を通れれば大当たり...だけどこれの期待度は低い)

 

場面が改札へと変わり、カバンを持って改札へと向かう主人公である山口夕輝。

 

『おっとっと!』

 

結果は外れ、改札で引っ掛かって終わる。そして、改札に囲まれた最初のステージへと戻る。

 

「外れか...残念」

 

「随分と面倒くさい領域に術式だな」

 

「だから、面白いんだろ。刺激のない人生なんてごめんだね」

 

「そうか...」

 

─────バッ!

 

「その戯言、すぐに言えなくしてやる」

 

(速い!こいつ、瞬発力が凄まじいな!)

 

─────バキッ!

 

「っ!」

 

裏拳を顎に食らわせ、拳を振りかぶる。秤は避け、拳を掴むと黎斗を押さえ付け、蹴りを入れるが影を収束させ、固めると秤の攻撃を防ぐ。自身を掴んでいる秤を掴み返し、黎斗は飛び上がると空中で一回転し、秤を投げ飛ばす。黎斗は秤の着地地点で待ち構えている。

 

─────バリィーン!

 

「続行!」

 

「!?」

 

ガラスが割れるように空間が割れ、秤の居た場所が投げ飛ばされる前に戻っている。秤が使ったのは【擬似連】。1シークエンスのやり直し、一度目の発動で大当たり確率が20%を超える。

 

「本当にやり難いな!」

 

「何度も言ってんだろ!それが良いんだろ!」

 

─────代々木上原

 

場面が移り変わり、うっかり特快便意我慢リーチに変わる。

 

『え...これ新百合まで停まんねぇの!?』

 

(くそっ!今までにないタイプのせいで戦い難い!)

 

─────経堂

 

影で幾つかの短剣を生成し、秤へと飛ばすが秤は全てを叩き落とす。

 

─────登戸

 

互いの頬に一発ずつ食らい、距離を取る。

 

─────新百合ヶ丘

 

『ふぅ...何とか間に合ったぜ』

 

─────ドガッ!

 

「っ!」

 

─────ベキッ!

 

秤の突然の特攻に反応出来ず、呪力を纏うのが遅れた黎斗は秤のパンチを両腕で受け止めた。骨の折れる音が鳴り、黎斗は苦い表情を浮かべる。そのまま、殴られた勢いを利用し、距離を取ると領域が閉じる。

 

音楽(ミュージック)...スタートぉ!」

 

大当たりを引いたことで秤から膨大な呪力が溢れ出し、音楽が流れ始める。

 

「さぁ、こっからはずっと俺のターンだ」

 

「...それはまだ早計だろ」

 

黎斗は反転術式で折れた腕を治癒する。反転術式が使えるとは思わなかったのか、秤は驚きの表情を浮かべた。

 

「【玉犬(ぎょくけん)】」

 

今の秤に通常の式神をぶつけても大した脅威にはならない。例えそれは十種影法術でもだ。無限に溢れ出る呪力...単純だが、好き勝手に使え、呪力量を気にする必要がないのはかなり大きい。呪力も増えたことで、出力も上がると読んだ黎斗は厄介だと思った。それでも対応する術はある。

 

「【灰狼(はいろう)】」

 

黎斗の影が蠢き、作られたのは狼男と言える巨大な狼。額には道反玉(ちかへしのたま)足玉(たるたま)の紋様が刻まれ、毛並みは野性味が溢れ、荒々しく逆立っている。全体的に濃い灰色となり、黒と白が混じっている。

 

(ぬえ)満象(ばんしょう)貫牛(かんぎゅう)

 

次に鳥、象、牛の順に影絵を作る。蠢いた影が形を作り上げる。作られたのは白い体毛に天を穿つような一本角を生やした馬形の式神。

 

「【麒麟(きりん)】」

 

灰狼と麒麟は黎斗が式神の特性を混ぜ合わせて生み出した拡張術式(かくちょうじゅつしき)の式神で破壊されても再召喚が可能で比較的リスクの小さい黎斗のオリジナルの式神である。

 

灰狼は玉犬白と黒を組み合わせ、攻撃力、速度、耐久力が強化された式神。

 

麒麟は満象を器に鵺と貫牛の特性を組み合わせ、黎斗の影で補填した式神。

 

「試合なんだ、勝ちは貰うぞ」

 

「式神無しで戦えねぇお前に勝ちは譲らねぇよ」

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