伏黒兄の呪術奇譚   作:ノワールキャット

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第二話 伏黒黎斗

俺には一つ下の妹と二つ下の弟がいる。妹が伏黒津美紀(ふしぐろつみき)、弟が伏黒恵(ふしぐろめぐみ)という名前だ。

 

津美紀は父さんが再婚した女性の連れ子で血の繋がりはないが俺は本当の妹のように接している。いきなり家族となった俺と恵にも優しく接してくれた、とても良い子だ。俺は恵も津美紀も二人を命をかけて守ることを誓った。恵は母さんから託された唯一の弟、津美紀は俺たちに別け隔て無く優しく、明るく接してくれた恩がある。俺が守らなければならないこの二人を。

 

恵が小学一年生になった時だ津美紀の母親が蒸発した。唐突だった、三人で学校から家に帰宅したら暗い物抜けの部屋だった。突然の出来事に目を見開いていたが兄である俺がしっかりしなくてはならない。ひとまず今日の夕食をどうにかしなければならないが幸い食材は残っていたからなんとかなりそうだ。今日はとりあえずキャベツやもやしを使った野菜の炒め物、味噌汁にご飯。少し少ないだろうが今日はとりあえず凌げるだろう。

 

ガツガツと二人はご飯を食べ始める。俺含め育ち盛りである恵と津美紀はこの程度のご飯はすぐに食べ終わってしまう。それにしても二人は賢い。母親が家にいない理由をなんとなくだけど理解しているのだろう。恵は親がいない時期があったから慣れているかもしれないが津美紀はまだ受け入れられないかもしれない。子供にとって親は世界と言ってもいいだろう。それほど子供にとって親の存在は大きい。幼少期の教育の仕方によって性格も決まる。

 

「恵、津美紀宿題は終わったか?」

 

「うん!終わったよ!」

 

「そうか、今日は疲れただろ。早く寝ろよ」

 

二人が寝室に入り寝るのを見届けるとそっと寝室から出て俺は家を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タベルゥ?タベルゥ?」

 

「オモチャアルヨォォオ!」

 

家の近くにある裏山に俺は来ていた。この裏山は山頂まで道が整備されているが他は木が生い茂り昼間でも薄暗い。好き好んでこの森に来る人はほとんどいない。それが夜になるとどうだろう。暗さは増し、先を見ても闇が永遠と続いているこの森で頼りになるのは月明かりのみでそれも足元ぐらいしか分からない。そのせいで地域住民が「何か居る」、「人を食べる化け物が居る」といった根も葉も無い噂が広がっている。何故こんな噂が広がっているかというとある事件がきっかけでこの噂が広がるようになった。

 

昔、大学生だった五人グループがこの森に入って行方不明になった事件があった。1週間後、三名の大学生が発見されて保護されたが結局、残りの二人は見つかることは無かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"生存者"として。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人の大学生が保護されてさらに1週間後、"それ(死体)"は見つかった。裏山の小川付近でハイキングをしていた人が発見したそうだ。あまりにも酷い内容だったそうでニュースに取り上げられることは無かったが地域新聞にはしっかりと記録が残っていた。

 

大学生〇〇の死体は左上半身と右腕、右足首のみとなっており食いちぎられたような痕跡があった。

大学生△△の死体は全身の欠損が酷く内臓が露出しており食いちぎられた後と鋭利な爪で引っ掻かれた痕跡があった。

 

遺体の惨状から熊による害獣事件として警察は判断したそうだ。

 

間違いなく呪霊によるものだろう。まず熊がやったとして熊が獲物を手放す理由が無い。熊は執着心が強い動物だ、残した獲物はとっておき後に食べるだろう。何か毒があったなら手放すと思うが遺体の原型は留めていないのだからそれもありえないだろう。

 

思いつく物だとこくらいだが害獣事件として処理するには不自然な点があった。

裏山で濃密な禍々しい死の気配を学校から帰る時に感じ取った。そして、僅かだが人の叫び声も聞こえた。裏山に呪霊がいると思い図書館で新聞の記事を漁り害獣事件として処理されたあの事件から犯人は呪霊と確定することが出来た。

 

俺が殺さなければならない呪霊を恵を津美紀を守るために。

 

真っ先に狙われる可能性があるのは恵だ。恵は呪霊が見えているし術式も持っている。恵が4、5歳くらいの時だ、白と黒の犬を召喚していた。父さんは目を見開き呟いていた。それは術式の名称、名前は十種影法術(とくさのかげぼうじゅつ)。父さんの実家の相伝の術式だそうだ。実家のことはよく知らないが実家の話をする時、ものすごく顰めた顔をするから相当嫌いなのが表情から分かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても多いな」

 

案の定、裏山の森には大量の呪霊が居た。一体、いったい大した事はないが数が多いのが問題だ。『量より質』という言葉があるが処理しきれないほどの大群で攻められたらどんなに精鋭の兵士でも返り討ちにあう。それだけ数の暴力とは凄まじいものだ。求められるのはどれだけ早く、どれだけ多く相手を殺せるかだ。

 

「来い瑞樹!」

 

瑞樹に大鎌を取り出してもらい戦闘態勢を取る。

 

「さぁ、舞踏会(殺戮ショー)の始まりだ」

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