伏黒兄の呪術奇譚   作:ノワールキャット

6 / 11
第六話 初コンタクト

巨大な熊の形をした呪霊を倒し終えた俺は体の痛みを我慢しながらなんとか家に帰宅した。寝室に入ると恵と津美紀はぐっすりと眠っており起きる様子は無かった。安堵の息を吐き、俺も布団の中に入り、眠りについた。

 

翌日、起床した時は筋肉痛が酷くてまともに動くことが出来なかった。正直言ってかなりヤバい。全身、動く度に針で刺されたように体が痛む。今日、学校が休みで良かったと思う。

 

反魂の共生(クロススピリット)は物を格納する術式を持つ蛇型の呪霊、瑞樹(みずき)がいないと使用は出来ない。反魂の共生によって身体能力と五感は常人離れした肉体へとなる。その代わり、使用した後は今まで接続時間が長いほど比例して体に負荷が掛かる。それにこれが出来るのは俺の父親である伏黒甚爾(ふしぐろとうじ)の魂の一部が瑞樹に宿っているからだ。

 

反転術式(はんてんじゅつしき)の習得に満象(ばんしょう)の調伏、反魂の共生。戦いの成果は上々、後は他の式神も調伏しつつ、術式を磨くことだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

御三家(ごさんけ)、それは現呪術界で最も権力を持った由緒正しき呪術師の名門である。御三家は五条家(ごじょうけ)禪院家(ぜんいんけ)加茂家(かもけ)の三つの家に分かれどの家も莫大な財産と広大な土地を有している。

 

「御当主様、相伝の術式を持つ少年を埼玉県△■市で発見しました」

 

「むっ、確かそこは未登録の術師が呪霊を祓った地区では無かったか?」

 

酒の入った瓢箪を手元に置き生地の良い和服を着込んだ年老いた男性。

 

「はい、おそらく御当主様が探しておられる相伝の術式を持つ少年が祓ったと思われます」

 

「そうかそうか。使いは?」

 

「すでに出しております」

 

「ふっははは!これで禪院家(ぜんいんけ)も繁栄するだろう!」

 

「はい、禪院家の未来も安泰かと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの呪霊を殺してから2週間経った。そこらへんにいる呪霊を殺すのは大して問題はないがやはり子供3人だけで生活するのはかなり厳しい。そもそも収入源が存在しない。父さんが残してくれた貯金も恵との生活で8割は無くなっている。最近はスーパーや農家さんの所から残り物や傷んだ物を頂いてなんとか生活しているが、この生活もどこまで続けられるか分からないし、貯金もいつか無くなってしまう。どうするか...最悪、自分の内臓でも売るか?反転術式があればもしかしたら失った内臓の再生も出来るかもしれないし。いや、このことを考えるのはやめよう。もし、失敗したら恵と津美紀を悲しませることになるし、何より母さんとの約束も心に誓ったことも守れない。そうなったら俺は自分のことを一生許せないだろう。

 

さて、今後の方針も考えることは大事だが最近、不審者を見かけるようになった。そいつらは全員、時代外れの和服に身を包んでいる。そして、奴らの視線は俺と恵に向けられている。父さんが言っていた、禪院家と言う古臭い風習に取り憑かれた碌でもない家だろう。目当ては恵と俺の持つ術式目当てだ。

瑞樹を介して父さんの記憶を覗いたが本当に碌なもんじゃない。何だ、あの時代外れな封建的な家は!男尊女卑っていつの時代だいつの!そんな家に行ったら間違いなく津美紀は酷い扱いを受けるに違いない。

 

禪院直毘人(ぜんいんなおびと)様がお呼びになられた。喜べ、お前らのようなガキ共が崇高の高い禪院家に来れるのだぞ」

 

(遂に接触して来たか)

 

「禪院家何だよそれ?」

 

「ふん、無知であるお前に教えてやる。禪院家とはな呪術界で最も格式の高い呪術の名門なのだ。お前らのような呪いに触れていないガキ共が一生来ることの出来ない家なのだ。その家の当主である禪院直毘人様がお前らガキ共をお呼びになったのだ、ありがたく思え」

 

クズだなこいつ。絶対、格下の人間を平気で見下すタイプだ。やっぱり腐ってるな禪院家って言う家は。

正直、禪院家に付いた方がお金の問題はどうにかなるだろうけど津美紀の扱いに期待出来ない。だから着いて行くのは論外。出来ることなら追い返し、不干渉にして欲しいが言葉で言っても無駄だろう。だから、やることは...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────シャキン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...はっ」

 

「悪いけどそれには乗れない」

 

─────ゴロッ!

 

「う、うあぁぁぁあ!腕があぁぁぁあ!俺の腕があぁぁぁあ!」

 

「当主に伝えとけ、俺達を禪院家に迎えたいんなら...俺を実力で分からせろって」

 

俺は呪力で相手の腕を斬り落とし、目の前で自分の腕を抑えながら蹲る禪院家の人間を一瞥しその場を去って行く。

恐らく、今の状況から考えるとこれが最善。恵も術式を持っているが戦闘は論外だ、と言うか俺がさせない、アイツらは幸せになるべきだ。それに、アイツらからしたら俺を下手に殺せないだろう。貴重な術式らしいからな。呪いを視認出来ない津美紀を人質を取り強制して来るかもしれないが俺が一緒に居れば基本的には問題ないだろう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。