平穏な似た世界への転生。と思ったら何か違った   作:zaq2

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カルボゥ

「これ、響子ちゃんでしょ」

 

 

 それは唐突に訪れた。

 

 通いなれた街のバイク屋での事、マスターのおやっさんがスマホに映されているメイド服姿でバイクを跨っている写真を見せてきた。

 

 それは、まさにGWの帰り道、自棄になって(コスプレ姿)走っている自分の姿であり……後になって、黒歴史の一つだったと気づいた奴である。

 

 

「し、知りませんね」

「えー、知らない?SNSでバズってたよ?」

「エ、SNSとかはやってないので……」

「そうなの?ま、この黒のアールアールアールで女の子だと、響子ちゃんしかいないと思ったし」

「だ、男性が仮装でってのは」

「写ってるレーシングブーツ、うちで買った奴でしょ?カタログを眺めてあーだこーだとこだわってたやつだし」

 

 

 そう言われて、指さされているレーシングブーツ。

 まごうことなき、店長にあーだこーだと注文つけていた一品である。

 

 

「うぐっ……」

「はっはっはっ、ま、これ以上いたいけな女の子を虐めると、うちの娘がうるさいからね……けど、どうしたの、これ。響子ちゃんらしくないよね」

「えーっと、実は、旅先でレーシングスーツがボロボロになったので、代わりにと探したらアレしかなかったので、致し方なく」

「ああ、そういう、なるほど。って、大丈夫だったの?スーツがボロボロになるって、コケタとか?」

「いえ、そういうのではなくて、降りてる時に巻き込まれたとでもいうか、何というか」

「病院にはいったの?そういうのは、精密検査うけとかないと駄目だよ?」

「大丈夫です」

「そういう人ほど……」

 

 

 それから数十分ほど、店長さんに捕まって説教をうける形になった。

 

 店長さんは、大真面目な顔つきで話始めた内容は、若かりし頃に親友だった友人が、レース中の事故で転倒したのだが、大丈夫と言ってはそのまま帰宅した後、その後、脳卒中で亡くなったとか……

 

 実話が混じっていた内容でもあったため、かなり真剣に話をしてくれた。

 

 あれから、半月以上はたってるので、本当に大丈夫という事を伝え、少しでも異変が起きたら、すぐに病院に向かうと確約する事で、何とかその話から逃れられる事となった。

 

 

「それでさ、走行会に参加してほしいんだ」

 

 

 そして、急に振られるお話。

 何でも、野良バイカーたちの走行会に出てほしいという。

 草レースもするから、それにどう?という話だった。

 

 

「えっ?普通に嫌ですよ?」

「そこを何とか、知り合いだって言っちゃってさ……」

「それは店長さんが悪いんじゃないですか。それに個人情報ですよ?それ」

「うぐっ」

 

 

 そう、その知人のライダーたちにメイド服姿のライダーの話が出て、知り合いだと思うと伝えたらしい。

 

 なぜ、そこで個人情報をぶちまけるのかと、逆に問い詰め返し、意趣返しをしてやると思っていた矢先、

 

 

「じゃぁ、親友が乗ってたレーサー仕様のバイクに載せてあげるからさ」

 

 

 ……ほぅ、レーサー仕様ですか。

 ホンダかな?ヤマハかな?スズキさんかな?カワサキか……、もあるし、いやまて、海外のかも?BMWとか?

 

 いけない、妄想が妄想を重ね始めてきた。

 問い詰めるつもりが、好奇心には代えられない……

 

 

「……そ、それで、その子は何ですか?」

「"ブラバ"」

「ブ、ブラバって、あのブラバですか!?」

「おうよ、しかも、初期のキャブの奴」

 

 な、なんですと?

 それは本当なのですか?

 しかも今では珍しすぎるキャブ車ときた。

 

 

「行きます!行かせていただきます!何なら、コスプレ衣装もしていきます!!」

「どうしたの急に。食いつき良すぎて、オジサン引くよ……ま、まぁ、そういう事だからどう?」

「はいっ!よろこんで!!」

 

 

 ブラバに乗れる、ブラバに乗れる~ブラバに乗れる~~~♪

 交換用のオイルと廃棄分を頼みに来てよかった。

 

 前世でお世話になった、前世での相棒だったブラバ。

 今世では生産も終わってしまったブラバ。

 

 そりゃぁ、もちろん手に入れたいとは思った。

 思ったけ事もあったけれど、今世は今世と割り切る形にしたかったので吹っ切った。

 

 

 けれど、乗れるとなるとそれは別。

 これは、大サービスとしてコスプレ衣装だろうと何だろうと応えてあげますか!

 

 

   *   *   *

 

 

 走行会当日は快晴

 

 いやぁ、ほんとお天道様がまぶしい。

 草レースといえば、某レース場。

 そんなレース場においての走行会であります。

 

 

「響子ちゃん、本当にその衣装着るんだ」

「何ですか?店長さん。サービスで着てあげますと伝えたと思いますが」

「いや、そうなんだけどさ、その衣装でフルフェイスはちょっとどうなのかと」

「顔出しはNGで」

 

 

 そうなのである。

 サービス精神で、メイド服を着ている。

 なお、フルフェイスのメット被ってはいるけれど。

 

 

「まぁ、いいけど。知り合いには紹介させてね?」

「わかりました。ご主人様」

「うっ……ちょ、その恰好でそれはやめて」

 

 

 そうして、知人たちに紹介され、記念撮影を一緒に取り、何故か「えっちぃのはいけないと思います!」と言ってくれというお願いが出されたりもしたが、それらに応えていった。

 

 

 そうして、店長に率いられては、念願のブラバとご対面である。

 

 

 スーパーブラックバード、通称ブラバ。

 当初は最速という触れ込みで登場したマシンである。

 

 その言葉に惹かれた。

 "ニンジャ"や"ハヤブサ"ではなく、自分はこいつを選んだ。

 懐かしい思い出である。

 

 

 さて、走行会でも、ガチでやっても良いらしく新たなスーツに着替える。

 やはり、正装でないといけない気がしたからである。

 

 ピットから出ては、コースへとブラバを進ませる。

 低ギアで高回転にもっていったときの、急加速によるGを久しぶりに体感する。

 

 ああ、懐かしい、この音、この感触……忘れるモノか、忘れてなるものか、と。

 

 コースに出ては、周囲のライダーたちの走りを覗き見ては調整する。

 そういや、今世で公道走行には、ハング・オフで乗ってなかったと思う。

 

 公道じゃぁリーン・インも、コース取り間違うだけであぶないからね。

 

 そうして、コースになれ始めたころ合いに、脚の脛でタンクを挟みながら、リーン・インからハング・オフに切り替えていく。

 

 ああ、何だか懐かしいレースの思い出がよぎって……

 

 

 

 

 

 

 ……あれ?

 前世でレース場走った事ないのに、懐かしい……って?

 

 さっきまで普通に操作できてたのに、アクセル戻らないし、ブレーキの利きがおかしいし、「もっとだ、もっとだ」とか幻聴やら聞こえては、透明な腕みたいなのが、私の腕に重なる様にハンドル握ってるし……

 

 

 

 

 …… 

 今度は、オカルト(そっち)系なん?

 

 

    *    *    *

 

 

「マスター、大丈夫なんスか?女の子に大型載せちゃって」

「大丈夫だよ、響子ちゃんならね」

「ほんとに大丈夫っスか?」

「うちの店でアールアールアールを転がしてる女の子が、実は響子ちゃんだからね」

「えっ?まぢッスか……あんな清楚系な姿してるのに」

「ほら、ホームストレッチ流してくるよ」

「うわっ、はっや……」

「速いけれど、これは……いや、そんなハズは……アイツが乘ってるみたいな……」

「どうしたんスか?」

「いや、何でもない、気のせいのハズだけど、あれはカルボゥ(カラス)の走りと……」

 

 

 

    *    *    *

 

 草レースの下位だったのに、いつの間にか順位を繰り上げる走行になってしまっている。

 というか、ごぼう抜きとか、何なのよコイツ。

 

 いう事聞かないし、聞かないけれど操作しないと、めちゃくちゃな操作とコース取りしてくるしで、まともに走ってくれない。

 

 こういう場合はどうするべきかと、一瞬悩んだが悩むことをすぐに辞めた。

 

 

 

 

 結論

 

 

 

 思いっきり走らせてやればいい!

 そして、自分も楽しんでしまえ!と、

 

 

 KA・RA・TEモード発動!!

 主導権をコチラにいただき、ギリギリのラインでコーナーを攻める

 

 "オマエェ、ソノ、ソクド……"

 

 

 うるさい!

 この薄っすらと見えてるレールの隙に捻じ込めなきゃいけないぐらい集中しなきゃならないのよ!

 

 キャブ車のこっちはここまで回転数落としすぎるとコーナー出た後に加速負けするのよ!

 ならば速度維持したままコーナーに度胸で突っ込むしかないでしょ!!

 あとはケツを滑らせて方向を変えて抜ける!ほらできた!

 

 というか!あなた、さっきから回転数下げすぎなのよ!ヘタクソ!!

 "ナッ、ヘタクソ……ダト"

 

 ええ、ええ、ヘタクソもヘタクソ、ドヘタクソ!!

 ここまで回転数下げられたら、コーナー立ち上がりで出遅れるのは当たり前でしょ!

 

 突っ込むよ!あんたもギリギリまで傾けて!!

 

 

 "ヤメ、ヤメ、コワ……"

 

 

 何が"怖い"よ、こんなのジーサンの修行で奈落の滝へ紐なしバンジーさせられた事にくらべれば、地面が近くて近くて、もう安心感が段違いよ!

 

 

 あと、さっきからうるさい!

 せっかく楽しみにしてた"ブラバ"の走行邪魔して、責任とって最後まで付き合いなさい!!

 

 バイク漫画でもいってたでしょ!

 度胸と根性でハイサイドを制したものが勝者となるって!!

 

 

 "アタマ……ネジ、ハズ……"

 

 

 何言ってるのか、ヨクワカラナイネ!

 ただ、貴様が言い出した事だよね?"もっと、もっと"ってさ。

 走りたかったんでしょ?だったら思いっきり走ってあげますよ!!

 

 

 "ひ、ひぃっ!クルってイルっ!!タ、タスケッ"

「はぁぁぁ!!」

 

 

 寺生まれでもないけれど、さらに気合を込めては最終コーナーを狂った速度でブッコンでテールを滑らす、そして方向をKA・RA・TEモードを使って無理やり変えてやっては走り抜ける。

 

 

 よし、コーナーでは、この速度でもまだいけると、ならば次はもっと速度だしてやってみよう!!

 

 

 集会を重ねるごとに、"私は風になっているのだ!!"という気分で、ストレスを発散する様に走っていた。

 

 

 夢中になって走り続けてはいたけれど、フラッグが振られてレースが終わった。

 そうして、ピットに戻ってきたら変な幻聴はいつのまにか聞こえなくなり、幻影も一緒になくなってもいた。

 

 あと、エンジンも掛からなくなっていた。

 なんでも、エンジンブローしていたと。

 

 

 あれ?ピットくるまで走れてたよね?

 えぇ、うそでしょ……

 

 

 

 ま、まぁ?

 ストレス発散できて楽しかったからよかったけれどね!(現実逃避)

 




補足
〇オカルト(ゴースト系)
・ゴースト
 店長の親友だったライダーの残留思念が霊化したもの。
 レースを完走できなかった悔しさと、走らなくなった怨が蓄積して誕生する。
 なお、生前と同じく恐怖心に打ち勝てず、すぐに昇天する事となった。


・親友(故人)
 レース中の事故では無事であったが、その後の帰宅で脳卒中で倒れ帰らぬ人に
 生前は、自分の苗字の烏丸(からすま)にちなんで、
 レース時は「カルボゥ」と呼ばせるほど拗らせていた面がある
 なお、恐怖心に打ち勝つ事ができず、成績は下位であった。
 

・店長
 オートバイ販売店の店長(二児の父)
 最近は、お腹がたるんできたことを娘に指摘されて筋トレ中
 昔はプライベーターチームとして出場していたが、
 親友を事故で無くしてからはガチのレース世界から身を引いた。


・店長の知人
 主人公のレースの走りに感銘し、以降、主人公を"キョーコネーサン"と呼ぶ様に


〇主人公
・カルボゥ(意味:カラス)
 本名:音無 響子
 店長から「ガチでやりすぎ」と再び説教を受ける。
 なお、本人はやり切ったため、スッキリしている。
 ※:
 修行の副産物で、頭のネジが外れて普通の人と比べ恐怖心の閾値が狂ってる。


・ブラバ(CBR1100XX Super Blackbird)
 前世での相棒
 なお、今回は初期型のため、キャブ車


・ケツを滑らせ
 ???「多角形コーナーリングだと?!」

・ハイサイド
 KA・RA・TE使って、無理やり車体を押さえつけてます。
 KA・RA・TEは万能である。イイネ?


評価やリクあったら、一考するかもしれません。
あと、〇ンダ車しか出してない気がしないでもない。
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