この話は少し前に遡る。
今日は龍介の高校合格祝いという事で、翔の店の仲間7人で某テーマパークへ遊びに来た。
7人で外へ遊びに出かけるのは、これが初めてだった。
頑張った龍介のご褒美に、翔がみんなで遊びに行こうと誘ったのだ。
龍介、真琴、駿がまだ一度も行った事が無いと言うので、某テーマパークへ行く事になった。
奇数だと乗り物に乗る時に一人余ってしまうので、翔が龍介の家庭教師をしていた自分の彼女も誘おうとしたが却下された。
社会人組の3人は気にならなかったが、真琴と駿はデートしたいなら2人で行けと猛反対した。
主役の龍介も、先生と一緒に乗りたいな、でも目の前で見せつけられるのは死んでもヤダなとか何とか、ブツブツ悩んでいたが、やっぱり無理と拒否したので結局7人になった。
朝から龍介はウキウキで、入場早々、色々なキャラクターと一緒に写真を撮ったり、大ハシャギだった。
純は、そんな可愛い弟のような龍介の様子をカメラに収めながら、これだけでも来て良かったと思った。
人混みはあまり好きじゃなかったが、友達と行く遊園地は久しぶりでテンションが上がる。
春休み前の平日だったので、少しは空いてるみたいだったが、近隣の学校から卒業遠足に来てる団体もいて、園内はとても賑わっていた。気を抜くと迷子になりそうだ。
こういう時、玲音はとても頼りになる。
元々何度か来た事があるのは玲音くらいだったが、玲音は園内のマップを概ね覚えていて、案内役を買って出てくれた。
体も大きくて目立つので助かる。
その上、世話焼きで、あっちに美味しいポップコーンがあるとか、トイレはあっちだとか、ファストパスを取ってくるとか、一人でやたら張り切っていた。
発起人の翔は久しぶりの遊園地にすっかり舞い上がっていて、頼りになるのは玲音だけだった。
一度、真琴がはぐれた時もすぐに迎えに行って連れ戻してくれた。
というか、真琴が方向音痴だったのは意外だった。
ちょっと飲み物を買いに行っただけで、全く反対方向のエリアに行ってしまったのだ。
玲音はまったく引率の先生かお父さんみたいで、純は内心クスッとしてしまう。
まずはKリブの海賊やJングルクルーズなどのみんなで乗れる乗り物に乗って、全員でハシャいだ。
Kリブの海賊の最初の落っこちる所でキャーキャー騒いだり一緒に海賊の歌を歌ったり、Jングルクルーズで船長さんのノリに大笑いして盛り上がった。
カヌーにも挑戦した。意外と力とバランスが必要で難しかったが、陽気な翔や玲音が盛り上げて励ましてくれたので、楽しくできた。
ところが、Hテッドマンションに乗ろうとした時、急に玲音が自分は乗らないと言い出した。
もうすぐパレードも始まるし、場所取りしてくると言い訳してるが、何か様子がおかしい。
「もしかして、オバケ屋敷だから?」
玲音がギクっとした。玲音は極端にオバケが苦手なのだ。
翔「さっきKリブの海賊に乗ってただろ!?どこが違うんだよ?」
玲音「いや、あれはオバケじゃなくて海賊だろ?Hテッドマンションはオバケじゃんか!」
皆「はぁー???」
玲音があんまり強情なので、結局みんなが折れた。
さすがに玲音一人置いて行くのは何だか可哀想だったので、純と陸樹が玲音と3人でパレードの場所取りをする事にして、残りの4人で乗る事にした。
そこへ急に駿が自分も残ってもいいと言い出した。
「え?!怖いの?」「別に怖くないし!!」
結局、真琴に俺がいれば大丈夫だからと説得されて、渋々ついて行った。
玲音には悪いけど、Hテッドマンションは全然オバケ屋敷じゃない。
いくら駿が怖がりでも大丈夫だから楽しんでおいでと純は内心エールを送った。
それにしても、あれを怖がる奴なんているんだな。
霊感が強くて見えちゃうとか言われたら、そりゃ怖いけど、そういうタイプでもないのにww
ホント、玲音ってPUREなんだな。
普通なら呆れるとこかもしれないけど、何だか愛おしく感じてしまう。知れば知るほど面白い…
「お待たせ」
玲音に買ってきた飲み物とチュロスを渡した。
先に場所取りをしててもらい、陸樹と2人で買いに行ってきた。
玲音「2人ともなんか付き合わせてごめんな」
純「朝から遊びまくって疲れてたところだし、少し休むのもいいんじゃない。特に玲音は走り回ってたろ。」
陸樹「社会人組はのんびりいこうぜ」
2人の言葉に玲音がやっと笑顔になる。
玲音の笑顔を見るとほっとする。頑張り過ぎるのがちょっと心配になる時があるが、そういう所も玲音らしいと思う。
チュロスがあんまり美味しかったので、後で龍介にも買ってやろうとか、3人で和気あいあいとしゃべってたら、あっという間に時間が過ぎた。
乗り終わった4人も合流して、面白かったとか、どこがオバケ屋敷なんだとかいう感想を聞いてる内にパレードが始まった。
音楽に乗って手を叩いたり、キャストに手を振ったり、大盛り上がりだった。
特に龍介が子供らしいワクワクした様子で楽しんでくれたので、場所取りをしてよかったと心から思った。
玲音に龍介が喜んでて良かったと耳打ちしたら、くすぐったそうに、うんうんと頷いて嬉しそうに笑った。
玲音の笑った顔は太陽みたいだな…
純は何故か、玲音から目が離せないでいた。
すっかり、パレードを満喫できたが、翔と真琴がハメを外して、めちゃくちゃ踊って注目を集めたのは、ちょっと恥ずかしかった。
Fタジーランドでは2人で乗るアトラクションが多くて、じゃんけんで分かれて乗ることにした。
でも、S雪姫で龍介を1人で乗せたのは失敗だった。
誰もがすっかり忘れてたけど、意外とホラーな作りなのだ。Hテッドマンションより、よっぽど怖い。
小さな子供向けの可愛い乗り物を想像してたっぽい龍介は、暗闇から急に出てくる魔女にうわっとかギャっとか悲鳴をあげていて、しまったなぁと一緒に乗った純と翔は顔を見合わせた。
龍介「何で教えてくれなかったんですか?!Hテッドマンションより、よっぽどオバケ屋敷じゃないですか!!」
玲音「オバケは出て来なかったろ?」
龍介「そういう問題じゃない!!!」
龍介は暗闇系が実は苦手だったらしい。まぁまぁとみんなでなだめるハメになった。
玲音がチュロスとはちみつ味のポップコーンを買ってきて、ようやく機嫌が直った。
「悪くない」
最初は憮然としていたが、美味しかったらしく、すぐにニコニコし始めた龍介を見て、みんなほっと胸を撫でおろした。
Pノキオもやや似た趣向なので諦めて、Pーターパンにだけ乗る事にした。
こっちは空を散歩してるみたいで楽しい。
「うわー本当に街の上を飛んでるみたいじゃん!」「楽しー!!」と人一倍ハシャいでいたのは翔と玲音だった。そういう波長が妙に合う。
ジェットコースター系も乗ったが、Sプラッシュマウンテンで陸樹が一人乗りを引いてしまい、写真撮ってもらえるのにと嘆いていた。
みんな面白い顔や怖がってる顔をして、愉快な一枚になった。
BッグSンダーマウンテンは夜に乗ったので夜景がすごく綺麗だった!
最後コウモリが飛んで来る所で龍介がまた叫んでたけど、まぁ楽しかったらしい。
ジェットコースターの後食べたターキーチキンレッグも美味しかった。
陸樹と駿の食べっぷりに、他の5人はちょっと唖然としたが。
終盤、駿と龍介と純が一緒にティーカップに乗ったら、すごいスピードでグルグル回されて、純は酔ってしまった。
陸樹が飲み物を買ってきてくれたり、玲音が背中をさすってくれたり、
みんなが心配してくれて、ちょっと恥ずかしかったが嬉しかった。
駿と龍介は責任を感じて、ホントごめんなさい!って恐縮していた。
そんな2人が可愛いくて、こっちがごめんって感じだった。
純が回復したので、I・ア・スモールワールドに乗ることにした。
船に乗って世界の海を航海し、世界中の子供達の歌声で癒される、のんびりしたい時にぴったりなアトラクションだ。
衣装や仕掛けがすごく凝っていて綺麗で見ていて楽しい。
海外に行ったことのある陸樹、真琴、翔は、世界の子供達の衣装の話とかで盛り上がった。
玲音は特に好きなアトラクションらしくて、目をキラキラさせていた。
駿が前に言ってたけど、玲音ってホント目が綺麗だよな
と、純は隣で横顔を見ながら思った。
最後はみんなで花火を見た。Mッキーやハートの形の花火もあって色とりどりだった。
フィナーレはたくさんの花火が一気にあがって、とても幻想的で綺麗だった。
空を見上げるみんなの笑顔が印象的だった。
花火の後は分かれてお土産を買いに行った。
龍介と翔は翔の彼女へのお土産を一緒に選ぶ事にした。
龍介は複雑な気持ちだったが、翔のセンスが不安なのと土産がかぶったら嫌だと思ってついていくことにした。
駿と真琴は共通のレッスン友達への土産を探しに行った。
純と陸樹は会社へ、玲音はバイト先への土産にお菓子を買いに行ったが、途中で玲音がいなくなった。
合流した時、玲音が今日の思い出にと言って、みんなにお揃いのキーホルダーをプレゼントしてくれた。
そして、また、この7人で遊びに来ようと約束した。
純は、
さっきはこれを買いに行ってたんだな。そういうところが玲音らしい。
今日一日楽しかったな
と、しみじみ思った。
写真フォルダは龍介の写真でいっぱいだけど、振り返ると、何故か玲音の事ばかりが思い浮かんできてしまう。
帰り、翔の車で龍介、玲音、純を、陸樹の車で駿と真琴を送る事になった。
龍介が嬉々として楽しかった思い出を語るのを聞きながら、
純と玲音は、次はいつみんなで遊びに行けるだろうなんて話をした。
みんなの休みを合わせるのは、結構大変なのだ。
玲音「そう言えば、来週見たかった映画が始まるんだよな」
純「それ、俺も見たかったやつ」
玲音「じゃあ、一緒に見に行く?」
純「い、いいよ」
思いがけず2人で映画を見に行く約束をして、急に心拍数が上がってくる純だった。
END