翔のミュージックバー   作:太陽に恋したライオン

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"ただの友達"じゃなくて

純は、今日、バイト終わりの玲音と映画を見に行く約束をしていた。

 

玲音のバイト先である学童クラブに行くと、ちょうど玲音が出てきたところだった。

 

園庭にいた子供たちが玲音に手を振っている。

 

優しくて明るい玲音は子供達に人気があるに違いない。

 

何人かが純の事に気が付いてザワザワし始めた。

 

その内の一人が「わー、先生の彼女って背が高いね!美人だしモデルさんみたい!」と言った。

 

すると別の子が「何言ってるんだよ、男だろ!ただの友達だよ!」と反論した。

 

正直、どちらの言葉にも少々ドキッとした。

俺って女っぽいのかな?とかカップルに見えるんだなとか。

 

でも、”ただの友達”という言葉に、男だと"ただの友達"になるんだと突き付けられた気がして、グサッときた。

 

玲音は一瞬当惑した顔をして、純を見た。

 

目が合ったけど、思わず目をそらしてしまった。作り笑いはできなかった。

 

すると玲音が子供たちの方に近付いて、

子供たちの目線にかがんでから、優しい声で、でも真っ直ぐな目で

 

「この人は”ただの友達”じゃなくて、

俺のとてもとても大切な人だよ。

男とか女とか関係なく、好きな人。」

 

と答えた。

 

子供達はちょっと目をぱちぱちしていたが、玲音の真摯な態度が本気だと伝わったのだろう。

 

「そっかー、よくわからないけど、”大切な人”なんだね!」

「じゃあ、”大切な人”さん、玲音先生をよろしくね!」そう言って見送ってくれた。

 

並んで歩きながら、何だかじーんとしてしまった。

 

正直、その後見た映画の内容があまり入って来ないくらい、さっきの言葉を何回も頭の中で繰り返した。

 

相手は子供なのだから、”ただの友達”のままでもよかったに違いないのに、わざわざ否定してくれたことが嬉しかった。

 

玲音のことだから、子供に嘘をつきたくなかったのだろう。そして、純に対しても。

 

そういうところが本当に好きだ

 

涙がにじむくらい嬉しかった。

 

帰り道、マンションまで送ってくれた。

もっと一緒にいたくて寄っていくように誘った。

明日、バイトが休みなのは知ってる。

 

玲音はちょっと迷ったけど応じてくれた。

 

とりあえず、いっしょにお酒を飲む。

飲まないとうまく気持ちを伝えられる自信が無かった。

 

「J、大丈夫?何か言いたいことがあるんだろ?」

 

飲み過ぎだと思ったのか、玲音が心配そうな顔をしてる。

 

ちょっと酔って呂律が回るか不安だったけど、思い切って切り出した。

 

「今日のこと、すごく嬉しかったんだ。

 

正直、ただの友達って言われた時にちょっと、グサッときたから。

 

子供達の言ってることは間違ってないし、普通はそうだよなって思って。

 

でも、玲音が否定してくれて、俺のことをちゃんと紹介してくれたことが本当に嬉しかった。」

 

玲音が背中をぽんぽんとしてくれる。

 

「俺は正直、昔、女の子と付き合ったこともあるし、別に男を好きになったことがあるわけじゃない。

 

だから、自分の気持ちに戸惑いも小さくなかった。

 

俺は男なのに、おかしいのかなとか。

 

でも、玲音が玲音だから好きになった。

ただ、それだけだったんだ。

 

だから、玲音が男とか女とか関係なく好きな人って言ってくれて、同じ気持ちだと思った。

 

自分の気持ちを肯定してもらえたみたいで、何か、やっと自分の気持ちに自信が持てた気がする…」

 

いつの間にか涙が溢れそうになった。

 

玲音がそっと目尻にキスをしてくれた。

 

嬉しくて、玲音の頬に軽くキスを返して、肩に頭を預けた。

 

そして、そのまま酔いが回って眠ってしまった。

 

目が覚めたらソファで、玲音の肩に頭を預けて、腕の中にいたので、心底びっくりした。

 

昨日の晩のことは、朧げにしか覚えていない。

 

ガバっと起き上がると、玲音も目を覚ました。

 

「あ、やっと起きたww おはよう」

 

「お、おはよう。俺、いつから寝てた?」

 

「話し終わったらすぐ。って、まさか、全部覚えてないとか?!」

 

「い、いや!玲音の気持ちが嬉しかったって言ったのは覚えてるよ!玲音が目元にキスしてくれたのも!

その後は覚えてない…けど」

 

「ふーん、覚えてないんだ…」

 

「お、俺、何かした?」

 

「…キスした」(頬に…)

 

「え?!そ、そうだっけ?記憶が曖昧で…何かしたような気もするけど…」

 

だんだん恥ずかしくなってきた…赤面してくる。

 

「じゃあ、もう1回して、今ww」

 

「は?!」

 

玲音がイタズラっ子の顔になってる!

 

ちょっと悔しくて「また今度ね!」と言った。

 

「えー、何で?」

 

「何かムカつくから!」

 

プイっと後ろを向いたら、長い腕が伸びてきて、ギュッっと後ろから抱き締められた。

 

「お願い」耳元で囁かれた。

 

何なんだよ!もう!

 

急に駄々っ子みたいに甘えてくるなんて、ズルい…

 

玲音が腕の力を緩めた。

 

振り向くと目の前に玲音の満面の笑顔があった。

 

俺の太陽

 

どちらからともなく、そっと触れるだけのキスをする。

 

それだけで、全てが報われた気がした。

 

体を離すと、玲音が照れくさそうな顔で言った。

 

「さっき言い忘れた事がある」

 

「?」

 

「Jがしてくれたのはほっぺ」

 

「?!おっまえなぁ!おかしいと思った!」

 

むくれる純にごめんと言いながら玲音が笑った。

 

なんだかんだいつも振り回されてる気がするけど、それが嫌じゃない。

結局、一緒に笑ってしまう。

 

コーヒーを入れに行って戻ったら、玲音がソファに横になって寝ていた。

 

やっぱり、寝てないんだな…

 

玲音と純は全然性格が違うから、玲音の行動にはいつも驚かされる。

そもそも、こんなやつは見た事がないけど。

 

玲音といると楽しいし、飽きない。

 

笑っている事が多い。

 

思いやりの深い心にいつも救われる。

 

玲音が笑えない時は抱き締めてやりたい。

玲音の笑顔を守りたい。

 

大好き

 

玲音にそっとキスをして、毛布をかける。

 

耳元でおはようって言ったら飛び起きるかな?

 

一人でコーヒーを飲みながら、そんなイタズラを考える。

 

玲音の寝顔を見ながら迎える朝に幸せを感じる純だった。

 

END

 

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