翔のミュージックバー   作:太陽に恋したライオン

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玲音の嫉妬

最近気になっている事がある。

 

陸樹は純の事をどう思ってるんだろう。

 

陸樹は純の事で背中を押してくれたし、自分達の関係をわかってるはずだから、親友として純と接してるんだと思ってた。

 

でも、最近、陸樹の純への感情って、それだけなのかなって、疑問に感じる事がある。

 

純と陸樹は親友ですごく波長が合う。

玲音と仲良くなる前からよく一緒にいたし、今でも2人でよく食事に出かけたりしている。

純と玲音だと生活時間がうまく合わなくて、そんなに一緒に出かけたりはできない。

 

それに、陸樹はバイトの自分と違って、ちゃんと定職についていて、収入も高く、社会的に認められている。

 

純が何で、陸樹じゃなくて、自分に好意を寄せてくれたのか、正直よくわからない。

 

最近、たまに、陸樹に対してモヤっとした気持ちになる事がある。

 

人と自分を比べてみたってしょうがないと頭ではわかってるけど、自分の不甲斐なさに落ち込んだりする。

 

そんな事を考えながら、翔の店のカウンターで一人で食事をしていると、純と陸樹が一緒に入ってきて、ギクッとなった。

 

「あれ、玲音来てたんだ。今仕事帰りに陸樹と会って一緒に来たとこ。」

 

純はニコニコしながら、玲音の隣に座った。

陸樹は、よっ!、とだけ挨拶してその純の隣に座った。

 

何か、気まずい…

 

純は全く気にしない様子で、玲音と陸樹に仕事の愚痴を話しながら、食事とお酒を楽しんでいた。

 

陸樹がビリヤードをしに席を立つと

 

「玲音、今日は何か口数が少ないな。どうかした?」

「いや、別に…」

「ふーん、ならいいけど。あ、そう言えば陸樹が今度の日曜、高尾山にハイキングに行かないかって。」

「え⁈ 2人で⁈」

「さぁ?他に誰を誘ったか聞いてないけど。玲音はバイト?」

「う、うん」

「それじゃ、俺は暇だから、行ってこようかな、でも歩くの苦手なんだよなぁ。」

 

J、それ、デートに誘われてないか?

いや、普通に友達を遊びに誘ってるだけなのか?

陸樹はJが俺に言うと思わなかったのかな?

 

純が呑気に行こうかどうしようか、迷っているのを呆然と眺めながら、胸の奥で何か釈然としない思いがくすぶる。

 

でも、自分が一緒にいられないのに、行かないで欲しいとは言えなかった。

 

日曜日、今頃、2人は何をしているだろうなんて、つい考えてしまい、珍しく上の空になって、仕事で小さなミスを連発してしまった。情けない自分に腹が立つ。

 

仕事が終わると、いたたまれなくなって、つい純のマンションの前まで来てしまった。

 

すると、陸樹に支えられて、ヒョコヒョコ歩いている純を見つけて、びっくりして駆け寄る。

 

「J!どうしたんだよ?!」

「え!玲音?よく帰ってくるタイミングがわかったな?(相変わらずカンがいい)」

「い、いや、たまたまだけど、そうじゃなくて、どこかケガでもしたのか?」

「うん。大したことはないけど、下りで最後、コケちゃって、ちょっと足捻ったww」

 

玲音はちょっとイラッとして陸樹の代わりに純の体を支えるように腕を回した。

 

「後は俺が代わるから。早くちゃんと冷やした方がいい。手当してないんだろ。」

「玲音、ごめん…俺がついていたのに…」

「いや、陸樹が悪いわけじゃないよ、俺が運動不足なだけだから」

 

ますます、イライラしてくる。

こんな感情は初めてだった。

「とにかく、早く部屋へ行こう」とだけ言った。

 

陸樹がひどく辛そうな顔をしたのを見て、胸の奥がズキっとしたが、今はそんなことに構っている余裕が無かった。ちょっと強引に純を連れて行く。

 

部屋に入ると、無言のまま純をソファに座らせた。

 

足のケガの具合を確かめて、保冷剤で冷やして、包帯の代わりになりそうな布で足を固定していく。

 

「随分手際がいいんだな」

「救命講習受けてるから、応急手当くらいできる」

 

「ねぇ、何か怒ってる?」

「…自分の不甲斐なさに怒ってる」

「?」

「俺がいない時にJがケガしたのが何か許せなくて…行かないで欲しいって言えなかったくせに。

陸樹が悪いわけじゃないって頭ではわかってるのに、あんな態度取って…自分がこんなに心が狭いとは思ってなかった…」

 

「大げさだな、何か、最近変だぞ?」

「Jは陸樹の事、どう思ってる?」

「どうって?」

「俺は今日一日、陸樹がJと2人で遊びに行った事に嫉妬してた」

「えっ⁈」

「それで、気になってここまで来てみたら、Jが陸樹に支えられて、足を引き摺ってるし、正直、頭に血がのぼったんだ。でも、それは、俺の勝手な嫉妬なのに…陸樹とJに八つ当たりした。最悪だ、ごめん…」

「玲音が陸樹に嫉妬するなんて、逆になんか嬉しいけど…。でも、ホント、ケガしたのは、陸樹のせいでも、玲音のせいでもなく、俺が運動不足なだけだから!

最後疲れて、集中力が切れちゃったんだよww ごめん」

 

困った顔で無邪気に笑う純を見てたら、何だか雲が急に晴れるみたいに、細かいことはどうでもよくなってきた。

 

力をかけないように気をつけながら、ぎゅっと抱き締める。

 

「ごめん!傍にいれなかったのに、ヤキモチを妬いたり、怒ったりして」

「そんな事もういいよ。手当てしてくれてありがとう。玲音の気持ち考えてなくて、ごめんな」

 

嫉妬なんて感情は今までの人生でほとんど感じたことが無かった。人を好きになると色んな感情が湧き上がってくるものなんだな。

 

それはキラキラしたものだけじゃなく、薄暗いものもあるけど、それも含めて自分自身だから、ちゃんと認めて向き合っていきたい。

 

小説を書く玲音にとって、自分の心と向き合う事はとても大切な事だ。

 

明日、ちゃんと陸樹に謝ろう

 

それにしても…

横で、やけに楽しそうな様子で

 

「玲音が嫉妬するなんてなー、明日陸樹に教えてやろうww」

 

なんて言ってる純を見てると、悩んでた自分がバカみたいだなと思う一方

 

悪意が無いっていうのも、困りものだなww

 

陸樹とちゃんと仲直りして、Jの天然についてどう思ってるか聞いてみたいな。

そして、Jの事を実際どう思ってるのかも…

 

うまく伝わるかわからないけど、陸樹とJには友達でいて欲しいし、自分も陸樹と友達でいたいと思ってる。

 

人を好きになるっていう感情が最近複雑過ぎて、手に負えないと感じる事があるけど、Jはその点、すごく迷いが無くて羨ましい。

 

そういう自分とは違うところも好きになった理由かもしれないな。

 

横に純がいる安心感で自然と笑顔になる玲音だった。

 

END

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