ケガをしたJをマンションに送り届けた時、
玲音が血相を変えて現れたのを見て、
あー、ヒーロー登場ってやつだ、と思った。
差し詰め、俺は倒される悪役って所だ。
Jは相変わらず能天気だったけど、さすがに玲音は怒ってたな。
そりゃそうだ。
俺だって、人の恋人を勝手に連れ出してケガをさせて帰ってきたら、一発ぶん殴る。
殴られ無かっただけマシだ。
すごく落ち込んだ。何やってんだろ。
翌日、正直、気は進まなかったが、いつもの習慣で翔の店へ行ってしまう。
翔は俺の顔を見るなり
「何かあった?ひどい顔してるけど」と言ってきた。
そんなに顔に出してるつもりは無いのに、さすがに翔は鋭い。
「ちょっと、自分に自信が無くなった」
翔は根掘り葉掘り聞く事なく、酒を出してくれた。
次に会った時、どんな顔をしたらいいんだ?
Jはともかく、玲音は俺の事を許すだろうか…
もう口を聞いてくれないかも?
そしたらJも今までみたいに接してくれないかもしれない…
頭の中で悪い想像ばかり浮かんで、珍しくネガティブモードに突入してた。
一人でヤケ酒をあおってると、今一番聞きたく無かった声で呼ばれた。
「陸樹!!!」
玲音がダッと駆け寄ってきて、土下座するんじゃないかレベルに頭を下げて謝ってきた。
「昨日はホントにごめん!!!!!
陸樹は何も悪くないのに、八つ当たりして!悪かった!!!」
呆気にとられた。
いやいや、恥ずかしくなるから、やめろ!
なんだ、その青春ドラマのノリは…
玲音のバカ正直っぷりに毒気を抜かれた。
横ではJがクスクス笑ってる。
ホントにど天然カップルだなー
「玲音、わかったから、もう頭上げろよ。騒いだら店に迷惑だろ」
「別に俺の店は構わないけどww」
翔の狸!ややこしくするな!
玲音が申し訳無い、と仔犬のようなキュルキュルの目で訴えてくる。観念した。
「お前が謝る事じゃないだろ。怒って当然だよ。
俺の方が悪かったって思ってる。
だから!もう終わりにしようぜ」
「じゃあ、仲直りだね!乾杯しよ!」
純がニコニコしながら、翔に飲み物を注文し始めた。
玲音もホッとした顔で笑ってる。
こっちもつられて、笑顔になってしまう。
飲みながら、いつも通りワイワイしてると、コッソリ純が耳打ちしてきた。
「玲音は陸樹にヤキモチ妬いてたんだって。可愛いとこあるよなww」
J、お前ってホント天然…
頬を緩ませてノロケ話を始める純に溜息が出る。
でも、それ以上に普段と変わらない純にホッとした。
俺のせいで玲音とケンカとかして純を悲しませる事になったら、後悔するどころじゃなかった。
コソコソするのもおかしいと思ってたけど、やっぱりもっと配慮すべきだった。
元に戻れて良かったと玲音に心の中で感謝した。
すると、純が席を立った時に玲音が話しかけてきた。
「Jって、天然だよな。陸樹はJに振り回されてるって思わないの?」
「あー、もう慣れたし、観念してるっていうか」
「Jが好きだから?」
「?!」
こいつ、酔ってるのか?ストレート過ぎだろ?!
返答に詰まってると、純が戻ってきてしまって、話は終わった。
でも、帰り際、玲音が寄ってきて
「俺はJの事を譲る気はないけど、陸樹とも友達でいたいって思ってるから」と耳打ちしてきた。
俺も、
「諦める気は無いけど、お前とは友達だと思ってる」と返した。
玲音はやっぱり天然な所もあるけど、真っ直ぐで気持ちのいいやつだ。
敵わないなと思う。
諦める気は無いとは言ったけど、邪魔したいわけじゃない。
なんだかんだ、2人の事が好きなんだよな…
談笑しながら前を歩く純と玲音を見ながら、不思議と温かな気持ちに包まれた。
END