翔のミュージックバー   作:太陽に恋したライオン

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玲音の困り事

夜遅くに今度出版社に持って行く原稿をチェックしながら、読んでもらえるだろうかと不安になる。

その時、右手のブレスレットがキラっと光った気がした。

 

これは、純からのちょっと早い誕生日プレゼント。純とは色違いだ。

 

「小説を書くのに行き詰まった時や不安になった時、これを見て思い出して。いつでも傍にいるよ。」

 

純の応援してくれる気持ちが嬉しい。これを見ると、一人じゃない、と勇気付けられる。

お守りみたいなものだ。

 

みんなといる時は元気印の玲音だが、実は独りで悩みを抱えこむタイプだ。

小説家になる夢を諦められず、介護施設のアルバイトや子供達の学童クラブを手伝ったりしながら、小説を書いている。

 

なかなか認めてもらえない中で、周りの友人達が社会に出て活躍している話を聞くと取り残された気持ちになり、将来への不安に押し潰されそうに感じる。

 

そんな日々の中で、翔の店は唯一の憩いの場だった。翔はよく相談に乗ってくれるし、集まる仲間達とワイワイ楽しく騒いでいると不安も忘れられる。

 

翔の店に来る客は自分と同じように夢にチャレンジしようと頑張ってる若者が多い。

中には陸樹のように立派な会社員もいるが。

陸樹は仕事ができて、カッコイイが、気取らず、気持ちのいい男だった。誰とでも仲良くなるのが上手い。

 

陸樹とよく一緒にいる純は、最初の頃、物静かでおっとりした印象だったが、口を開くとちょっと天然で、夜遅くなるほどテンションが上がって面白い。仲良くなりたかったが、ちょっと避けられてる感じがあって、あまり話をした事がなかった。

 

しかし、ある朝、仕事へ向かう途中で純から声をかけてくれてからは、ちょいちょい視界に入るようになった。

 

今度、思い切って自分から声をかけようと思ってた矢先の朝、暗い顔で歩いてる純を見つけて、猛ダッシュで追い付き、おはよう!!と声をかけた。

 

純は豆鉄砲をくらった鳩みたいに、ビックリした様子で逃げて行ってしまったので、やってしまった、とひどく後悔した。どうも空回りしてしまう所があるんだよな、不器用な性格が嫌になる。

 

でも、何だか、最後に夜、翔の店で、と言われたような気もする。

半信半疑で翔の店に行き、翔にどう思うか聞いていると、当の純がやって来て隣に座ってくれたので、いたくホッとした。

 

それ以来、すっかり仲がよくなって、お互いの家を行き来したりして、色んな話しをしている。自分の夢を笑わずにちゃんと聞いてくれて、応援してくれる大切な友人だ。

 

玲音は自分の言葉でたくさんの人を勇気付けたり、夢を持ってもらいたいと思って、小説家を目指しているが、自分自身の事になると肯定するのが難しい。

 

たくさんの人や地球上の生き物に愛情を分けたいと思うけど、自分自身がひからびそうに感じる事がある。家族と離れてると、そんな自分を肯定して、愛情を向けてくれる人間は数少ない。純にはとても感謝している。一緒にいるだけで落ち着くし、元気が湧いてくる。

 

ただ、ちょっと困ってる事があった。純は猫っぽい。普段こっちから絡みに行くとツレナイのに、2人きりの時に急に距離を詰めてきて、どぎまぎさせられる。無意識だと思うが、表情がとても色っぽい時があるのだ。毛並みの美しい黒猫というのが純のイメージにピッタリだった。男友達相手にドキドキするなんてどうかしてると思うが、純が綺麗なのが悪い

 

そんな時、純が家にやって来て、おもむろに、誕生日プレゼントだと言って、このシルバーストーンのブレスレットをプレゼントしてくれた。

 

「俺のとお揃いなんだ。玲音は太陽みたいにキラキラしてるからそっちの方が似合うと思って…」

 

純の左手には黒いストーンのブレスレットが渋く光っていた。

 

誕生日プレゼントにはだいぶ早かったが、純の気持ちが嬉しかった。

 

喜んで身につけると、花が開くように笑ってくれた。

 

その顔を思い出すと自然と玲音の口元に笑みがこぼれる。

 

繋がりを感じられるものを身につけていると心が強くいられる気がする…

 

玲音は再び原稿に戻りながら、頑張って仕上げて、純と一緒に見たかった映画を見に行こう、などと考えるのだった。

 

END

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