怒らせちゃったな…
真琴は、最近ようやく、知人のつてでアメリカで修行するチャンスが巡ってきた。
彼女にその事を伝えに行ったが、自分との将来をどう思っているのかと泣かれてしまったのだ。
バーはまだ開店準備中で店長の翔だけがいた。
翔は知り合ったのは最近だが、年が近く、若くても自分で店を切り盛りし、自分の道を進む姿や同じような音楽が好きというところから、兄弟のように仲が良くなったのだ。
「何だ?その顔?」
「振られた…」
彼女に渡米の話しをして泣かれた事を話した。
「一緒に付いてきてくれって言えばよかったんじゃないの?人生は一度きりだし、後悔しないように、チャンスは掴みに行かないと。」
「好きな人や今までお世話になった人とか、裏切るような真似をしたくない…」
「自分に嘘をつくような人生を送る方が裏切ることになるんじゃねーの?」
真琴は橋の上から都会の夜景を眺めていた。
翔に背中を押されて、彼女にもう一度気持ちを伝え、一緒に渡米したいと伝えようと決心はしたが、不安で押しつぶされそうな気持になっていた。
渡米の件は、向こうの友人や知人のおかげで段取りはなんとかなりそうだったが、全部を独りで背負う重圧は大きい。
泣きたくないのに気が緩むと泣きそうになる。孤独で押しつぶされそうだ。
そこへ、大声で自分の名前を呼ぶ声がした。がしっと肩に腕がまわされる。
玲音と駿だ。
店でみんなが待っていると玲音が半ば強引に連れて行こうとする。
その笑顔と力強さに抵抗する気が失せていく。
振り返ると駿が困ったような気まずそうな顔をしている。
駿にはちゃんと相談しなくて悪かったと思っていた。
目でごめんと謝ると、笑って許してくれた気がした。
結局引きずられるように翔の店に連れてこられた。
店には仲間たちが集まっていて、真琴を待っていた。
全員集合とか、恥ずかしいだろ…
本当は嬉しくて泣きそうな気持ちだが、気恥ずかしくて顔が上げれない。。
でも、そんな真琴を温かく迎えてくれる仲間たちのおかげで、だんだんと自分の本当の気持ちを素直に話すことができた。
駿ともちゃんと話すことができた。
お互いの成功を祈って、乾杯した。
最後はいつものように、ただ笑って遊んで、お酒を飲んで、バカをやって、そんな当たり前の時間が何よりも愛おしく感じた。帰れる場所があるだけで、人って強くなれるんだな…
真琴は彼女に自分の気持ちを伝えに行くとみんなに宣言した。
翔が「じゃあ、これ持ってけよ。」と言って、
店に飾ってあったバラを渡してくれた。
いつもバラなんて飾ってたっけ?
真琴は翔の気遣いに感謝して素直にバラの花束を受け取った。
そして、逸る気持ちを抑えられず、そのまま、彼女の元へ向かった。
今度こそ、ちゃんと伝えよう。
彼女への愛と夢にチャレンジしたい気持ちの両方を。
END