俺がパーティーを辞めさせられた理由が特殊すぎるんだが。 作:ガラクタ山のヌシ
「さぁて、これからどうしよっかなぁ〜」
俺は取り敢えず貰った金を持って街中を歩き回る。
正直ずっとアイツらと冒険者やってるつもりだったから、今後のビジョンってのがよく見えん。
商人を初めて一旗上げるってのもツテやら専門の知識やら無いから無理だし、かと言ってノウハウを教わるってことになると、その過程で所持金をたっぷりと搾り取られそうなんだよなぁ…。
魔法の師匠は世界を旅する人だからどこにいるのか皆目見当もつかないし。
かと言って冒険者になるのを猛反対されたのを押し切って出て来た手前実家も頼れんし…。
そもそも冒険者ってのは、クエストの選り好みさえしなけりゃあその日の飯を食うには困らない程度の収入くらいは得られるモンだ。
ただ安全面のためか、どんな簡単な内容であっても大抵はパーティーを組んでいる前提である場合がほとんどな訳で…。
かと言って新天地で心機一転しようにもここの主な交通手段は馬車頼み。
歩きで一番近い街や村は少なく見積もっても三日はかかる。
移動魔法は魔法師会によって牛耳られ、登録外の人間には少なく無い罰金が課せられる。
そして俺は当然そんなモンには入ってはいないわけで…。
かと言って、クエスト以外でこの街の外にすぐに移動するのは難しく、勝手に出ていけばペナルティも大きい。
そんな俺にいま出来ることはと言えばだ…。
「くそぅ!!あんな奴ら、街中でうっかり転んで膝小僧を擦りむけばいいんだ!!」
俺はなんとなく酒場に来ている。
まぁ今は昼なので、酒は置いていない軽食屋としてやっているんだが。
「お客さん。ジュースで酔えるなんて凄いねぇ〜」
「真っ昼間から飲んだくれるほど落ちぶれちゃないやい!!」
っていうか…考えてみたら、そもそも冒険譚を纏められるほどの冒険者なんて本当にごく一部の凄腕だ。
まぁ確かに?リーダーのフィジカルは目を見張るモノはあるし、鼓舞や指揮のタイミングもバッチリでリーダーシップもあるし?前回ロクに話に加わって来なかった美少女二人だって方やエルフ族の優れた弓使いと方や教会のエース格なんて言われてた凄腕クレリックだけども…。
アレ?マジでアイツらなんとかなるくない?
「と言うか、そこまで未練があるんなら戻るようにお願いしてみても…」
「いいよ別に…今はただ愚痴りたかっただけだし…」
店主にめっちゃ気を遣われてる…。
そう思っていた矢先、その店主がぽん、と手を叩く。
「あっ、そうだ!!それじゃあ、あそこに行ってみればいいんじゃないかい?」
「あそこ?」
俺はムクリと起き上がり、視線で話の続きを促す。
「ああ。最近出来たっていう光喫茶だよ」
あぁ〜…光喫茶ねぇ〜…。
「なぁんか怖いイメージあるんだけど…」
「そうかい?私も行ってみたけど、出来たばっかで綺麗だし、防音魔法もバッチリで、思いのほか居心地よかったけどねぇ…」
「ふぅ〜ん…」
まぁどうせ暇だし、行ってみるかなぁ…。
やがて夕方となり、俺がいた店も酒場としての準備のために出ることとなった。
ごちゃごちゃとした道を抜けてやっと見つけた店に入ると、きちっとした服装の女性が受付に立っていた。
こちらに気づいた女性はニコリと微笑む。
「いらっしゃいませ♪当店のご利用ははじめてでございますか?」
「あぁはい…恥ずかしながら…」
「いえいえ、よろしければ説明差し上げますが…いかがいたしましょう?」
へぇ〜、助かるなぁ。
「あ、お願いします…」
「かしこまりました」
丁寧にお辞儀をすると、受付嬢は説明をはじめる。
「当店は光喫茶…正式名称『光通信魔法許可店』でございまして…」
「光通信魔法…って、あのですか?」
「はい」
光通信魔法…それは光魔法をああしてこうしてああやった結果出来たと言う魔法のことだ。
説明が雑なのは本当にそう伝わっているからで、決して俺の語彙力が死んでいるわけでは無い。たぶん。
「周辺諸国にある各協会には、御神体とされる大結晶がございますでしょう?」
「ああ、ありますねぇ」
前に一回、都の大神殿に行ったけど、本当にデカい結晶の塊が鎮座していたのが今でも印象に残っている。
「あの大結晶から魔力をヌッ=ス…つまりは特別な儀式を用いて他の小さな水晶に移すことで、前者はサ・バァ、後者はルゥタと呼ばれ、魔力によって接続されることになります」
うんうん。何故だろう。すごく冒涜的な気がして来たが、まぁ気のせいだろう。
「部屋に据え置きの端末型水晶がございますので、それに魔力を流していただければ、簡単に繋がれますよ♪」
「それで、お幾らになるんでしょうか?」
「そうですねぇ〜、まずは一時間コースで如何でしょう?」
ススッと時間の書かれた紙を差し出される。
「へぇ、結構安いんですね」
「はい♪みなさんそうおっしゃいますね」
ソシテ沼ニハマルノデスガ…。ボソッ…。
「うん?今何か?」
「いえいえ♪それではコースはお決まりですか〜?」
俺は取り敢えず一番安い部屋で短めの一時間コースを選び、渡された鍵の部屋へと向かう。
「うわっ…狭ぁ…」
部屋には椅子と、そしてさっきの説明にあった端末型水晶がぽつんとあるくらい。
そして部屋の広さは本当に人一人入れるくらいだ。
座った状態で両手を広げたらひじのあたりで壁に遮られてしまう…。
けどまぁ、これでもいいのもしれない。
俺は念じて、魔力を込めた手で水晶に触れる。
そうして出て来たページには…。
「二分の一チャンネル。またの名を0.5チャン…?」
そう表示されていた。