俺がパーティーを辞めさせられた理由が特殊すぎるんだが。 作:ガラクタ山のヌシ
「すっかり遅くなったなぁ…」
光喫茶で思いの外時間が経っていたことに驚きつつ、俺は店を後にする。
周囲はもう暗く、夕飯時だ。
ぐぅぅぅぅ…。
「腹の虫も鳴り出したことだし、昼頃寄った酒場でメシにでもしようかなぁ」
そんなこんなで、やって来たのは酒場として営業している店。
入り口のスイングドアを開けて、適当な席に着く。
幸いまだ混み合ってはいないようで、二人から四人組の冒険者パーティーらしきグループがちらほらいるくらいか。
机に置いてあったメニューを開いて、手を上げる。
「はぁ〜い、少々お待ちくださ〜い」
やって来たウェイトレスさんに注文をして、しばし待つ。
手持ち無沙汰に待つこと数分。
その時背後から怒声が聞こえて来た。
「ンだとコラァァァァ!!もっかい言ってみやがれぇぇぇ!!」
振り向くと、赤毛の日焼けした筋肉質な大男が似たような体格のスキンヘッドの男の胸ぐらを掴んでいる。
しかし、掴まれている方も興奮しているのかより挑発的なことを言う。
「ヘンっ!!何度でも言ってやるね!!」
いったい何をそんなに言い争って…。
「貧乳好きはロリコンと同じだってなぁぁぁ!!」
…いや、まぁうん。喧嘩してる人のうち、少なくとも片方は誰だかわかった気がする。
「だぁぁから!!貧乳は成長した結果として貧乳なの!!ロリが小さいのはあくまでも成長途中だから!!要はこれから大きくなる可能性があるわけでしょ!?そんなんが好きな連中といっしょにすんない!!」
「はぁぁぁん!?側からみりゃあ変わりゃしねぇよ!!素直にデカいのが好きって言えや!!」
「じゃかあしぃ!!今日という今日は…ってん?」
大男の片方と目が合う。
気のせいかと思ったら、本当に彼だったとは…。
「ゼニスくん!!ゼニスくんじゃーないかー!!」
「レイサムさん…まぁだそんなことやってたんですか…」
「がはは!!オイお前!!このゼニスくんはなぁ…俺と共に貧乳巨尻ダークエルフのおねーさんと結婚したい同盟を結んだ同士で…」
「そんな同盟、いつ結んだんで!?」
ガッシと肩を組まれる。
赤ら顔なヒゲ面から漏れ出る酒臭さ。
こりゃ結構呑んでるなぁ…。
ちなみに俺は好きになった人がタイプって人間だから、殊更にフェチズムを持ち合わせちゃあいないつもりだ。
レイサムさんも基本悪い人じゃ無いんだけど、酒が入ってたのとそう言う話題なのとで興奮してたんだろなぁ〜。
まぁ相手を殴んなかっただけまだ理性的か?
いやでも、俺と目が合わなかったらどうなってたか…。
その後、俺の頼んだ料理が来たのを理由にレイサムさんからは一度離れることができたんだが…。
「よっこいしょぉ!!」
レイサムさん?何故俺の向かいの席に座る?
「オウ。ちょうどオメェに聞きてえ事があってよ」
「聞きたいこと‥ですか?」
まぁ、大抵予想はつくけども…。
「噂で聞いたんだけどよ。オメェ、パーティー抜けたんだって?」
やっぱりその話題か…。
「えぇまぁ、事実ですけど…」
「なぁ、もしオメェさえ良けりゃあよ。うちのパーティー来ねぇか?」
理由を聞かないのは親切心なのかなんなのか…。
「いや、冒険者稼業からはしばらく離れようかと思ってまして…」
幸いまだ蓄えはあるし、もうちょいゆっくりしてたいしなぁ。
「なぁんでだよ?オメェくれぇの実力者なら、むしろ欲しいパーティーばっかだろ?」
むしゃりと肉を頬張りながらそんなことを聞いてくる。
俺のことを心配して言ってくれてるんだろう。
あとそれ俺が頼んだやつな。
「いや、なんかやる気が起きなくって…逆に冒険者以外の生き方を模索してみるのも面白そうかなぁって」
本当にアテも何も無いけども。
「ほぉ〜ん…だったらなおさらうちのパーティーに入っといた方がいいと思うがね」
食い下がるなぁ…。
「街から街へ移動する手形だって、個人よりもパーティーに発行される奴の方が効果もデカいだろ?」
いやまぁ…うん。それはそうなんだよなぁ。
「まぁでも、しばらくはこの街に滞在するつもりなので…」
「そうかい。そんじゃあ二週間後、俺らは出立すっからよ。気が変わったんならそれまでに声かけてくれや」
そう言って立ち上がり、元の席へと向かうレイサムさん。
結局俺の肉ほとんど食っていきやがってチクショウ。
あの人め…ちょっとだけ抜け毛が増えちまえばいいんだ。
レイサムさん。
ゼニスくんよりも上級クラスの冒険者で、魂の貧乳派。
昔助けられたつり目長身貧乳ダークエルフのおねーさんに性癖を破壊されたとかなんとか。